セゾンカードを発行する株式会社クレディセゾンのインフォメーションセンターには、毎月20万件以上、年末などの繁忙期にはさらに多くの問い合わせがあります。以前よりIVR(自動音声応答システム)を運用していますが、自動応答の途中で顧客が電話を切る離脱率が高く、自動応答で完了できる用件も限られていたことから、課題解消に向けてLINE WORKS AiCallを採用。AIが用件を的確なチャネルに素早く振り分けることで離脱率が低減し、オペレーターによる対応件数も減少するなど、業務効率を大きく向上させることに成功しています。
本事例のポイント
- 顧客とAIの対話で用件を35種類に分類し、適切な後続処理につなぐ仕組みを構築
- オペレーター着信件数を30%削減
- IVRの多重階層化を解消
- オペレーターにつながるまでの待ち時間短縮でCSが向上
インフォメーションセンターへの顧客満足度を高め、オペレーターの業務負荷も軽減するためAIの活用を検討
LINE WORKS AiCallを導入する以前は、インフォメーションセンターの運用にどんな課題がありましたか。
池田さん:
お客さまからのお問い合わせにはIVRが自動回答しますが、以前はそのシナリオが6階層もあったため、回答にたどり着くまでに時間を要していました。そのため、お客さまが途中で電話を切られる「離脱」が頻繁に発生していました。
高橋さん:
IVRはすべてのお問い合わせに答えられるわけではありません。お客さまからの電話は月に約20万件に上り、うち半数の10万件ほどは音声メッセージでは対応し切れずオペレーターにつながります。東京と大阪にあるインフォメーションセンターには、総勢約450名のオペレーターがいます。しかし、常に全員が通話をしている状態で、電話がつながるまでの待ち時間がときには20分ほどに及ぶこともあり、CSを損ねる大きな要因となっていました。
小山さん:
お問い合わせの内容は多岐にわたるため、オペレーターには広範な知識やスキルが求められます。どんな用件にも対応できるようになるために一度に多くの業務知識の習得が求められ、新人オペレーターにはそれが負担となっていました。また、以前は用件が「諸変更」と「それ以外」の2つにしか分けられておらず、「それ以外」の受電を開始すると、お問い合わせ内容が多岐にわたり、座学研修で学んだ知識だけでは答えられない質問をされることも多く、そうした心理的負担から新人の離職率が高まる要因となり、採用・教育コストがかかってしまうのも課題でした。
池田さん:
お問い合わせの内容に応じた振り分けをAIに任せ、ダイレクトに希望のメニューに接続いただくことで、お客さまの待ち時間を短縮し、オペレーターの負担も軽減できると考え、インフォメーションセンターの機能にAIの活用を検討するようになりました。
LINE WORKS AiCallを選ばれたのはなぜですか。
池田さん:
LINE WORKS AiCallのAIによる応答は滑らかで、人と話しているような自然なやり取りができます。音声の品質も高く、お客さまが違和感を覚えずに対話できるだろうと感じました。対応をよりスムーズにするには、お問い合わせの内容を従来よりも細分化する必要がありましたが、LINE WORKS AiCallならその振り分けも的確に行われることが期待できました。また、他社サービスは従量課金制であることが多く高額になりがちでした。その点、LINE WORKS AiCallは定額制のため、イニシャルコストとランニングコストが他社のサービスの3分の2ほどと、コストを抑えられる点も魅力的でした。
AIが用件を35の項目に分類、オペレーターやIVRによる後続処理がスムーズに
LINE WORKS AiCallを活用した顧客対応の仕組みをどのように構築されましたか。
池田さん:
「AIナビ」と名づけたこのシステムでは、LINE WORKS AiCallが聴取したお客さまのお問い合わせ内容を35項目にカテゴライズするために事前学習したモデルでユーザー発話を分類します。私どもは以前からホームページ上でAIチャットボットによる自動応答サービスをご提供しており、そこで蓄積されたデータを「教師データ」として各項目に当てはめました。
そのプロセスでは、専属の担当者を配置して細かな分析をするとともに、NLUモデルだけではなく音声認識モデルのチューニングもしっかり行うことで、高い振り分け精度を実現しました。また、PBX、IVR、端末、ネットワークなど多岐にわたるシステムとの連携においては、各担当部門と緻密な調整をすることでUI/UXの統一を図りました。
LINE WORKS AiCallが用件を振り分けてからの後続処理は、「Webによる手続きの仕方をご案内するSMS送信」、「IVRによるご案内」、「オペレーターにつないでの対応」に大別されます。通話がオペレーターに転送された場合は、お客さまがLINE WORKS AiCallとの対話で話された内容を分かりやすくテキストで示すダッシュボードも開発して連携させました。

小山さん:
ダッシュボードに表示された内容によって、お客さまへの対応がよりスムーズになり、通話時間も短縮できます。運用に際しては、AIナビがオペレーターの業務負荷軽減とCSの改善に役立つことを、研修や説明会の場を設けて周知しました。
高橋さん:
ダッシュボードには、各オペレーターがAIナビによる振り分けが正しかったかどうかをフィードバックする機能も設けています。振り分け項目の正誤登録という新たな作業が加わることになりますが、AIナビの精度を高めて業務を効率化するのに不可欠だということも十分に理解してもらえるように努めました。

オペレーター対応件数を30%も削減。無人対応率も高まり業務生産性が飛躍的に向上!
AIナビの運用による定量的な成果について、教えてください。
高橋さん:
まずはオペレーター20人程度のデスクでスモールスタートし、段階的にAIナビで対応するデスクや拠点を拡大していきました。その結果、月に10万件あったオペレーターへの着信件数を3万件も削減することができています。例年、繁忙期の12月は着信数が30万件ほどに急増しますが、2024年の12月はオペレーター着信件数が前年比約30%減少しました。また、IVRによる対応の途中でお客さまが電話を切られる離脱率が減少し、自動音声応答システムだけで対応するIVR完了率については40%も増加しています。
池田さん:
以前のIVRは、冒頭のアナウンスに続いてお客さま認証のためカード番号を入力してもらっていました。そこで離脱が発生することが多かったのですが、AIナビでは最初にお問い合わせ内容をお聞きしてから認証手続に移るようにしています。お客さまにしてみれば用件を伝えた以上は回答を受け取りたいという心理が働き、それが離脱を防ぐ要因となったのではないかと推測されます。また、LINE WORKS AiCallのAIに顧客への対応を任せるのではなく、素早く最適なチャネルに振り分けることに集中させたことも功を奏したのではないかと思います。
高橋さん:
昨年にご利用明細書の発行手数料を変更した際、想定されるお問い合わせ件数の急増に対応するため、LINE WORKS社に依頼し、オペレーターを経由せずSMSで案内を送信するシナリオを用意していただきました。おかげで、急な要望にも関わらず、柔軟かつ迅速な対応により、オペレーターの負荷増加を防ぐことができました。
数値では測れない定性効果はどのようなものでしたか。
高橋さん:
IVRやSMS、オペレーターへ繋がるまでの長いアナウンスやボタン操作といった煩わしさが軽減され、顧客満足度向上に確実に貢献してくれていると思います。AIがお問い合わせ内容を聴取することへのクレームも少なく、多くのお客さまに受け入れられているように感じます。
小山さん:
オペレーターにとっては、ダッシュボードで事前に用件の概要を把握できるようになってから、通話に対応する心理的負担がかなり和らいでいると思います。また、お問い合わせ内容が細かく分類されたことで、新人オペレーターが自分に対応できる用件だけを受けられるようになりました。
LINE WORKS AiCallのさらなる活用に向けてどんな展望を抱かれていますか。
池田さん:
SMS完了率とIVR転送率の向上を目指し、2024年11月にSMS送付を増やすシナリオ改修を行いました。今後その成果が現れて無人対応が増加し、オペレーターの負荷がさらに低減することを見込んでいます。
現在はAIナビを問い合わせ内容の振り分けに用いていますが、将来的にはLINE WORKS AiCallの機能をさらに有効活用して、カードの利用状況確認やポイント交換、住所変更など、多くの手続きをAIナビ内で完結できるようにしたいと考えています。
小山さん:
他のデジタルチャネルともシームレスに連携させ、例えばWebサイトで確認した内容についてAIナビに質問したり、アプリからAIナビにアクセスして手続きを行ったりと、お客さまが自由にチャネルを選択できるようになることでUXも向上させたいですね。
高橋さん:
対応した内容をAIに学習させてより精度の高い自動応答を可能にすれば、オペレーターの負担がさらに軽減できると考えています。将来的には、過去の問い合わせ履歴やお客さまの属性情報などを活用し、より高度な応答やパーソナライズされたサービス提供につなげたいです。
【お話を伺った方】
池田 勇介さん
PBX、IVR、通話録音装置などの運用・保守に携わる。AIナビ導入にあたってはプロジェクトを統括した。
高橋 ももこさん
カスタマーサービスのDX推進担当として、顧客接点のデジタル化に携わる。
小山 美裕さん
オペレーター時代の経験を活かし、運用現場におけるAIナビの活用推進を担当。
※掲載している内容(製品名含む)、所属やお役職は取材を実施した2025年1月当時のものです。