江部松商事株式会社
製品・サービス
LINE WORKS OCR
お話を伺った方
江部松商事株式会社 システム部 課長代理 松井 進さん(左)
奏風システムズ株式会社 代表取締役
赤塚 剛さん(右)
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業務用厨房器具の総合商社がFAXによる発注書をAI-OCRに読み取らせ、販売管理システムへのデータ入力を自動化。この取り組みに成功したのを土台として、さらなるDXに弾みをつける

業務用厨房器具と食器の卸売り、企画・開発、コンサルティングを行う新潟県燕市の江部松商事株式会社は、全国約4,000の販売店を通じて、食にかかわる人たちが必要とする道具を提供しています。このほどその受注業務を省力化するため、販売管理システムの受注入力プログラムにAI-OCR のLINE WORKS OCRを採用し、CTI(Computer Telephony Integration)でイメージ化した FAXの発注内容を自動的に読み取りデータ化する仕組みを構築。人の手による受注データの入力作業を減らすとともに、ペーパーレス化や残業時間の短縮など多くの成果をあげています。

 

本事例のポイント
  • 手頃なコストで高精度なAI-OCRを導入し販売管理システムと連携
  • FAXで受信した発注書の内容が自動的に読み取られ、人手によるデータ入力作業が軽減
  • 入力データの正誤チェックのための出力枚数が減り印刷コストと紙資源を節約
  • 業務効率化にともない残業時間を縮減

 

1,500/日の発注書をFAXで受信。人の手で行っていた受注データの販売管理システムへの登録と、入力したデータの正誤チェックにかかる業務負担を減らしたい

御社は業務用調理用品の総合商社として豊富な品揃えを誇り、卸売りにとどまらずオリジナルブランドの開発からコンサルティングまで幅広い事業を展開されているそうですね。

松井さん :

当社は約8万5,000SKUのアイテムを取り扱っており、東京ドームに匹敵する広さの自社倉庫に約5万SKUの商材を常備して、全国の販売店様からの発注に即応しています。「こんな商品がほしい」「こんな商品があったらいいのに」という声をもとにオリジナルブランドも開発し、洋食器や金属加工品の産地として世界的に知られる燕三条地域のメーカーと連携してお客さまの細かなニーズに対応しています。

 

また、レストランや居酒屋など店の種類ごとに必要な備品リストを用意しており、新規開店・開業を目指す飲食店にベストなアイテムをご提案するといったコンサルティング業務にも力を入れています。様々なかたちで調理に関わる人たちに「便利」を提供することで、食事をされるお客さまに「幸せな時間」をお届けするのが私たちのミッションです。

 

AI-OCRを導入する以前は、どんな業務課題を抱えていましたか。

松井さん :

当社は1日平均2,000件以上の注文を受けていますが、卸売業界は全体的にデジタル化が遅れており、約6割にあたる1,200件ほどの発注書がFAXで寄せられます。受信したFAXはCTI(Computer Telephony Integration)で画像データに変換してモニターに表示し、社内で受注入力担当者が、もう1台のモニターを見ながら受注内容を販売管理システムに入力していました。

 

 

12名の受注入力担当者が受注データを入力するのにおよそ5時間かかるうえ、人手ではどうしても誤入力が発生してしまいます。FAX画像と照らしての正誤チェックは画面上でもできますが、多数の受注品を速やかに発送するには急いで確認する必要があるので、システムに入力されたデータを受注伝票として出力し、10名の担当者が約3時間かけてFAXの元データと照合していました。データの入力と確認に費やす1日の労力は合計90人時に上り、受注件数が増える休日明けや年度末には、さらに多くの人員と時間を割かなければなりません。

 

この業務負担を軽減させることに加えて、受注伝票の印刷に大量に使う紙資源を節約することも、以前からの大きな課題となっていました。

課題解消に向けてLINE WORKS OCRの運用に至った経緯を教えてください。

松井さん :

当社が30年ほど前から利用している販売管理システムを開発し運用をサポートしていただいているソフトウェア開発会社の奏風システムズさんから、FAXに記載された発注内容を自動的に読み取ってデータ化するAI-OCRの活用を勧められて興味を持ちました。

 

 

奏風システムズ 赤塚さん :

私どもは、マジックソフトウェア・ジャパン株式会社が提供するローコード開発ツール「Magic xpa」 を用いたビジネスアプリケーションの開発を中心に行っており、江部松商事様の販売管理システムも同ツールで構築しました。その販売元であるマジック・ソフトウェアに関わりのあるAIコンソーシアムに参加した際に、LINE WORKS OCRが画像を認識するデモを見て、書いた本人でなければ分からないような手書き文字まで読み取る識字能力の高さに驚かされました。

 

聞くところによると、LINE WORKS OCRは認識精度を高めるためのAIの研究開発に大きな力を入れ、学習に基づいたアップデートが頻繁に行われているということです。OCR の精度を競う世界的コンペティションでめざましい実績もあげており、多様な現場業務で役立つに違いないと確信しました。

 

認識率の高いAI-OCRは他にもありますが、その多くはランニングコストが高く、おいそれと企業さまにお勧めすることはできません。その点、LINE WORKS OCRは高精度でありながら他社のものと比較してリーズナブルな料金体系です。江部松商事様がデータ入力とチェックに苦労されていることは私どもも知っていたので、ぜひこれを活用して業務を効率化していただきたいと思いました。また、使いながら修正と改良を加えていくことができるMagic xpaとの組み合わせは、導入に向けて非常に有効だとも考えました。

 

 

松井さん :

実際にFAXによる注文書のCTI画像をLINE WORKS OCRで読み取らせるテストを実施したところ、識字速度は申し分なく、また識字精度もかなり高いことを実感しました。ただし、さすがに識字率100%とはいかないため、OCRが読み取ったデータを人が元データと突合して確認する作業まで省略することはできません。

 

しかし、「100点を求めたのでは前に進めない。生産性向上に寄与するのは間違いないのだからやってみよう」と当社の社長が決断したことで、AI-OCRを導入するプロジェクトがスタートしました。

 

OCRベースの受注エントリーを開発して販売管理システムと連携させ、現場担当者の意見を反映した操作しやすいUIを設計

AI-OCR導入プロジェクトの流れと、取り組みにあたってどんな工夫をされたかをお聞かせください。

松井さん :

受注処理をできるだけ効率化するため、注文書をAI-OCRで単純にデータ化するのではなく、販売管理システムの受注入力プログラムに組み込むことで、 人にかかる負担がより少ない仕組みをつくることを目指しました。

 

奏風システムズ 赤塚さん :

そのためにAI-OCRベースの新しい受注エントリーを当社がMagic xpaで開発し、読み取った受注データを担当者の方がモニターで確認してから販売管理システムに登録するフローを整えました。

 

松井さん :

プロジェクトを進めるにあたって我々システム部が特に配慮したのは、受注データを処理する現場の担当者に、このツールを活用することのメリットをしっかり理解してもらうことでした。AI-OCRを稼働させれば人の手によるデータ入力量が減るので、一部の受注入力担当者にはそれまでとは異なる業務に回ってもらうことになります。そのことを「IT化によって仕事を奪われる」と捉えるのではなく、「別の意義ある業務に就く」と感じてもらえるように説明を尽くしたつもりです。

 

プログラムの開発段階では、LINE WORKS OCRで読み取ったデータとFAXの元データをどう並べたら照合や修正をしやすいかについて担当者に意見を出してもらいながら、使いやすいUIを追求しました。

FAXによる受注(右)からLINE WORKS OCRが文字を認識し、受注システム(左)に自動登録される

 

手書き文字が含まれていても指定した項目別にLINE WORKS OCRが自動識別し、テキスト化できる

 

奏風システムズ 赤塚さん :

LINE WORKS OCRを活用したシステムの基盤を構築するのに約3カ月、それからさらに約3カ月かけて、現場のご担当者に実際の受注業務を想定した作業をしてもらうことで抽出した課題を修正。合計6カ月ほどの開発期間を経て、本格的な運用にこぎつけました。

 

ご満足いただける開発ができたと自負していますが、その背景には江部松商事様のシステム部、現場担当者様、当社のスタッフが一体となって意見を出し合いながら取り組めたことがあります。

 

FAXによる受注データ処理に要する労力がほぼ半減し、残業時間を短縮。確認のための受注伝票の印刷コストも減り、高い費用対効果を実感!

LINE WORKS OCRを活用することで受注業務はどう変化しましたか。

松井さん :

注文書のフォーマットはお客さまごとに異なるので、まずは発注数の多いお客さまのフォーマットからテンプレートを作成してスモールスタート。徐々にテンプレートを追加してLINE WORKS OCRで読み取れるお客さまを増やしていきました。

サンプル画像をベースにできるのでテンプレートの作成はとても簡単で、マウスで範囲指定して場所を選ぶだけでフィールドが作成でき、フィールドのコピー機能があるのも便利でした。

 

現在は、FAXで送付される発注書の5割近くが自動的に読み取られています。受注入力担当者が入力するデータと紙に出力して確認するデータの量がほぼ半減したことで、受注処理に要する作業時間もほぼ半減しました。

そのことで残業時間を縮減することができましたし、普段より量が増える休日明けの受注処理にも、以前よりゆとりを持って対応できるようになっています。

費用対効果についてはどう感じていらっしゃいますか。

松井さん :

AI-OCR サービスは読み取る項目数に応じた課金がなされるのが一般的だと聞きますが、LINE WORKS OCR は各発注書の情報量を問わないシート単位での課金であることを考えると、ローコストで十分な効果が得られたと満足しています。

 

FAXによる発注書を1日1,200枚受信すると、営業日が20日あるとして1カ月で2万4千枚に上ります。以前は販売管理システムに入力したデータに誤りがないかをチェックするためにそのすべてを受注伝票として出力していましたが、LINE WORKS OCRで読み取った発注書に関してはモニター上で元データと照合できるようにしたので印刷する手間とコストを省くことができ、さらに大幅な紙資源の節約となったことは、当社が掲げるSDGs活動にもつながりました。

 

最新技術を導入したのが刺激となって社員の改善意欲が向上。LINE WORKS OCRの活用範囲を広げつつ、より多くの業務効率化を図りたい

業務のこうしたデジタル化に対する社員の皆さんの反応はいかがですか。

松井さん :

システム部が主導してIT化を進めると、現場から「操作の仕方がよく分からない」「使いづらい」といった疑問や不満の声が上がりがちですが、AI-OCRの導入については開発段階から現場担当者に参画してもらったこともあり、そうした不満は皆無でした。

 

これまで人の手に頼ってきた受注データの入力を、AI-OCRのような最新技術で自動化できることを目の当たりにしたことで社員が刺激を受け、ITに対する関心と業務改善意欲を高めるきっかけとなったことも大きな成果です。

 

奏風システムズ 赤塚さん :

システム面で業務をサポートする私どもの立場としても、AI-OCRの導入に際して「どうすればより操作しやすいシステムになるか」を現場でよく話し合い、自分たちのアイデアをかたちにされたことは、本当に有意義な経験となったのではないかと思っています。

LINE WORKS OCRの活用やさらなる業務のデジタル化に対してどんな展望を抱かれていますか。

松井さん :

今はFAXによる発注書のデータ化だけに活用していますが、今後はその利用範囲を、人手に頼っている別の業務にも広げていきたいと考えています。膨大な量の商品を保管している倉庫のITインフラ整備を進めているので、在庫管理などにもAI-OCRを活用できる余地はあるはずです。

そうした取り組みを通じて目の前にある課題を1つずつクリアしながら社員のデジタル化やAI活用に対する抵抗感をなくし、DXを着実に推進しくつもりです。

 

 

奏風システムズ 赤塚さん :

自社がどれだけデジタル化を進めても、取引先が送付してくるFAXの発注書をなくすことはできません。その受注処理をLINE WORKS OCRで飛躍的に効率化されたことをご紹介すると、強い興味を示される企業さまが少なくありません。

 

また、「100点ではなくても追求する価値があるのならやってみよう」と取り組みを進めた江部松商事様の決断に共感される経営者の方もたくさんいらっしゃいます。この事例をより多くの企業さまにお伝えすることで、新潟県の企業の業務効率化や活性化に役立てればと思っています。

 

 

※掲載している内容(製品名含む)、所属やお役職は取材を実施した2024年5月当時のものです。