鬼怒川ゴム工業株式会社
製品・サービス
LINE WORKS OCR
お話を伺った方
ITソリューション部システムサポート課 課長 松浦 一浩さん
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見積書・発注書や手書き日報のシステム入力作業をLINE WORKS OCRで省力化。RPAとの連携により、帳票データの処理も大幅にスピードアップ

自動車用ゴム部品の設計・製造を主力事業とする鬼怒川ゴム工業株式会社では、製造現場で20年以上使用している古いマニュアルのデータ化、取引先との帳票類のやり取り、手書きの日々の出来高日報の内容をシステムに登録する作業に、手間と時間を要することが課題でした。これらの課題を解消するため、LINE WORKS OCRを導入し、Template OCRの活用やRPA(Robotic Process Automation)との連携により、文字を読み取ってデータ化する業務の効率化を図っています。

 

本事例のポイント
  • 他OCR製品では文字認識が難しかった、紙に印字されたマニュアル類をLINE WORKS OCRで読み取って迅速にデータ化
  • RPAをLINE WORKS OCRに連携させ、見積書や検収書のデータをシステムに自動的に取り込む仕組みを構築
  • 手書きの出来高日報の内容を読み取り、生産管理システムに速やかに反映させられる環境を整備

紙のマニュアルや帳票類のデータ入力を効率化するため、定評あるLINE WORKS OCRを導入

貴社の事業概要と近年の市場動向についてお聞かせください。

松浦さん:

当社は自動車用ゴム部品の設計・製造を主力事業としており、タイヤとワイパーを除くほぼ全ての部品を手掛けています。ドア周りのシール部品が売上の約50%を占め、他にエンジンマウントやホース類なども多数製造しています。ブレーキカップは世界シェアの約7割を誇り、多国籍エンジニアリング・テクノロジー企業のBoschにも納入しています。

 

自動車業界は成熟産業となり、生産規模が鈍化しても利益が出る企業体質への転換が求められています。そのため、近年は生産設備のさらなる自動化などによる効率化を推進しています。その一方で、いち早く中国のEV生産メーカーとの取引を開始するなど、マーケットの変化にも機敏に対応しています。

 

AI-OCRを導入する以前は、どのような課題をお持ちでしたか。

松浦さん:

主に間接業務の合理化に向けてDXを推進する意向を、先代の社長が打ち出したことがきっかけでした。それを受けてまず改善したいと考えたのが、生産現場におけるデータ活用をめぐる3つの課題でした。

 

1つ目は、製造ラインで使用している工場設備の点検マニュアルや操業時の安全マニュアルのデータ化です。これらのマニュアルは機器の保守や安全管理に不可欠ですが、原本は20年以上前にワープロで作成された文書を印刷したもので、元のテキストデータが残っていなかったことから、内容の改訂が困難でした。以前から原本のデータ化を検討していましたが、種類が多い上に1冊40~50ページほどあり、テキストを手入力するには大変な手間がかかるため、取り組みが先送りになっていました。

 

2つ目は、帳票の内容をシステムに登録する作業の煩雑さです。当社は試験機に取り付ける治具(ジグ)を協力会社に年間200個ほど発注しており、担当者が仕入れ先からの見積書に基づいて発注書を発行し、納品時には検収書の内容をシステムに入力しています。手作業では労力がかかるだけでなく、入力ミスも発生しがちなので、以前から自動化する手段を模索していました。

 

3つ目は、製造ラインにおける出来高日報のデータ入力です。当社が各地に持つ工場にはそれぞれ20~30の製造ラインがあり、各ラインで日勤・夜勤合わせて毎日40~60枚の出来高日報が提出されます。ただ、手書きで読みづらく、各拠点から集めた日報を担当者がシステムに登録し終えるまでに1日~1日半を要していました。そのため、生産実績が翌日にならないと確認できないことから、改善の必要がありました。

 

 

以前利用していた複合機のスキャナーにOCRソフトが付属していたため、それを使って出来高日報を読み取ることを試みました。しかし、工場ごとに形式が異なる日報の読み取り領域をドット単位で指定したり、スキャンしたデータをソフトに取り込んだりするのに手間がかかる上、製造ラインごとにスキャナーを配置するとなるとコストがかかります。そのため断念しましたが、後にAI-OCRが発達したことを知り、これらの課題解決に役立てられないかと思うようになりました。

LINE WORKS OCRを選定された理由をお聞かせいただけますでしょうか。

松浦さん:

自社でサーバーを立てずに手軽に運用できるクラウドサービスを利用したいと考えていたため、ベンダーに相談したところ、LINE WORKS OCRを推奨されました。実際の帳票を渡して読み取りテストを実施していただいたところ、印字されたテキストの認識精度が非常に高く、データ入力の大幅な効率化が期待できたため、導入を決定いたしました。

帳票類のデータを迅速かつ効率的に読み取れる環境の構築に向け、LINE WORKS OCR ReaderやTemplate OCR機能を活用

製造現場で使用される各種マニュアルのデータ化はどのように行われ、どのような成果が得られましたか。

松浦さん:

まず手始めに、Web画面上でアップロードするとOCR処理が実行されるクラウドアプリケーション「LINE WORKS OCR Reader」で、スキャンした紙のマニュアルを読み取らせテキストデータの抽出を実施しました。その内容を確認・修正後、Wordでレイアウトを調整し、別途切り出した図版などの画像を配置して製本しています。その大半はレイアウトや製本にかかる時間で、LINE WORKS OCR Readerによるテキストの抽出自体はすぐに完了します。

 

原本のテキストを手入力でデータ化する場合、マニュアル1冊につき約1カ月(140~160時間)かかると見積もられていたため、想定の4分の1ほどの所要時間で済みました。工数削減率は約75%で、担当部門からも「人が文字を打つよりずっと楽だ」と評価されました。何より、マニュアルがデータ化され、必要に応じていつでも内容を改訂できる状態になったことに大きな意義があります。

治具の見積書と検収書の読み取りはいかがですか。

松浦さん:

読取位置を事前に設定することでさまざまなレイアウトの帳票をテキストデータにできるLINE WORKS OCRのTemplate OCR機能を、自社開発したRPAにAPI連携させました。送られてくる定型の見積書を読み取らせると、そのデータをロボットが受け取ってシステムに入力することで発注が完了します。また、注文した治具の納品時には、電子帳票として発行された検収書を特定のフォルダに格納するとロボットがLINE WORKS OCRにそのデータを渡し、自動的に読み取ってデータ化されます。この仕組みは導入テストをほぼ完了したので、近く実務で本格運用を開始する予定です。

 

 

準備段階では、LINE WORKS OCRで変換したファイルと、システムに投入した元のファイルを投入時間や投入順序などで紐づけるロジックの開発に工夫が必要でした。また、RPA連携の汎用性を高めるために、対象となる帳票のナンバリングルールなど、ユニークなコード化を事前にしっかりと検討することが望ましいことも分かりました。

LINE WORKS OCR Template機能で定型書式の読み取り位置を設定(左緑枠)することで、同書式の書類のテキストデータ化が瞬時に完了する

 

このような事前準備が必要ではありますが、結果として基幹システムへの入力作業が大幅に効率化することが期待できます。見積書と検収書に記載された情報を人が確認してシステムに入力するには、それぞれ約10分ずつかかりますが、RPAとLINE WORKS OCRを連携させた仕組みを使えば、その作業が瞬時に完了します。1発注案件につき20分の作業を年200件省力化すれば、約20万円のコストカットにつながります。しかも、人手を介さないため、誤入力が発生することもまずありません

出来高日報の入力業務も「LINE WORKS OCR」によって省力化されたのでしょうか。

松浦さん:

こちらについては、製造ラインごとに集めた手書きの日報を複合機のスキャナーでPDF化し、LINE WORKS OCRのTemplate OCR機能に読み取らせてデータ化する試みを行っている最中です。熱間加工が多い製造ラインの作業者は手袋をしているため、日報は手書きにならざるを得ません。手書き文字はどうしても読み取り精度が落ちやすく、また作業者の中には外国人もいるため、日本語を書き慣れていなかったり数字の書き方などが異なる場合があります。さらに、帳票の網掛け部分の上に書かれた文字の読み取りが難しいこともあり、本格的な運用に向けて適切な記入方法を教育したり、日報のフォーマットをOCRで読み取らせることを前提としたものに変更したりすることを検討しています。DX推進には、ソリューションを導入するだけではなく、業務フローそのものを見直すことも不可欠だと思います。運用面の工夫と合わせて課題を解消できれば、生産管理システムに実績が反映されるまでのリードタイムが大幅に短縮されるので、引き続き取り組みを継続していきます。

業務生産性の大幅な向上が見込まれる「LINE WORKS OCR」とRPAの連携を、より多くの業務に適用させたい

LINE WORKS OCRの導入成果をどう総括されていますか。また、AI-OCRの導入を検討する企業へのアドバイスをお願いします。

松浦さん:

人が行っていた帳票の読み取りやデータ入力をLINE WORKS OCRに置き換えることで、作業負担の軽減と業務効率化、コスト削減に直結することを実感しています。特にクラウドアプリケーションとして利用できるLINE WORKS OCR Readerは、大掛かりな設備投資を必要とせず、紙帳票のデータ入力に課題を感じている企業が比較的低コストかつ短期間で導入でき、効果を出すことができると見込まれます。テンプレートの作成も以前使用していたOCRソフトと比較して容易で、短い教育期間で利用を開始できました

 

ただし、LINE WORKS OCRの導入効果を最大限に引き出すには、当社の取り組みのように帳票自体の様式の見直しや、ユニークなコード化なども必要です。システム化と運用改善は業務生産性の向上をもたらす両輪であると考えます。

 

もともと私はCADなどの製品管理データを扱うエンジニアでしたが、AI-OCRの導入で苦労することはありませんでしたし、Template機能の設定などもスムーズにできました。ITに深い知識や技術を持つ人がいなくても、容易に導入・運用できるのもLINE WORKS OCRの魅力だと思っています。

今後の業務効率化に向けて、どのような展望をお持ちでしょうか。

松浦さん:

まずは、LINE WORKS OCRとRPAの連携や出来高日報のデータをTemplate OCR機能で取り込む仕組みの本格運用に注力します。これらが軌道に乗ったら、調達や事務用品の発注など、ほかの定型的な入力業務にもRPA連携の適用範囲を拡大したいと考えています。現在、人手で行っている取引先との帳票データのやり取りを電子帳簿保存法の規定に則って保存する作業についても、LINE WORKS OCRとRPAを活用して自動化したいと考えています。

 

【お話を伺った方】

松浦 一浩さん

ITソリューション部システムサポート課 課長としてRPAやOCRの社内業務適用を主導する。

 

※掲載している内容(製品名含む)、所属やお役職は取材を実施した2025年4月当時のものです。