学校法人愛泉学園が市から運営を引継ぎ、2023年4月より民営化となった栃木県下野市にある吉田保育園。保護者へのお知らせは主に「紙のお便り」で発信していましたが、園児のカバンの中に入ったままで保護者の目に触れないことも多く、保育園からのお知らせが行き渡らないことが課題でした。そこで、保護者に一斉にお知らせできる掲示板機能に着目しLINE WORKSを導入。保護者全員にアカウントを付与し「紙のお便り」から掲示板の「デジタルお便り」へ置き換えることで伝え漏れがゼロとなりました。園児の成長の記録を確実に保護者にお渡しできるようになったことでデジタルを活用した子育て支援にもつながっています。
本事例のポイント
- 保護者全員にアカウントを付与し、掲示板でお知らせや日誌を更新
- 再通知機能やリアクション機能の活用により伝え漏れのリスクがゼロに
- 保護者へのお便りや園内の打合せ資料などのペーパーレス化を実現
日々の情報共有について貴園が抱えていた課題をお聞かせください。
小倉さん :
吉田保育園を運営するにあたり、以前から幼稚園で運用していた連絡ツールを導入する予定でしたが、有料アプリであることから費用がかさんでしまうこと、保護者から「民営化前までと同じように、紙の連絡帳やお便りでやりとりをしたい」というご意見が集まったことにより、一時見送りとなりました。
しかし、紙のお便りを園児のカバンに入れてお渡ししても、翌日もカバンの中に入ったままで中身を確認された形跡もなく、このままでは情報が行き渡らないのではと心配になることが度々ありました。
保護者の意見を尊重したいと思う反面、迅速かつ正確な報連相を図るには書面などのアナログなスタイルのみに頼るのではなく、ITツールの活用も不可欠であると感じていました。
森さん :
民営化前から吉田保育園では、昼食のおかずを園で用意し、主食の白米のみを各家庭でご持参いただいていました。主食が麺類やパンの日もありますし、その日は白米の持参が不要なので、保護者に事前に連絡する必要が度々ありました。
週に3回ほど、20名前後の保護者には、対面またはお電話でこの内容をお伝えしていましたが、当日に間違えて白米を持参されてしまうケースが多発していました。口頭による連絡は手間もかかり、伝え漏れや行き違いが起きてしまうリスクに常に悩まされていたので、素早く確実な情報共有が必要だと考えていました。
LINE WORKSを選定された決め手をお聞かせください。
小倉さん :
保護者が使い慣れているLINEの活用を視野に入れておりましたが、保育士のプライベートのLINEアカウントを使用せずに済むLINE WORKSならば、公私の棲み分けができるという点に魅力を感じました。使用感もLINEと似ているので、抵抗なく受け入れていただけるだろうという期待感もありましたし、無料のプランが選択できたのも導入の決め手になりました。
保護者全員へのアカウント付与に至った経緯と導入方法についてお話しください。
小倉さん :
当初、LINE WORKSアカウントは保育士のみに付与し、保護者とはLINEの外部トーク連携を使って連絡を取ってみてはどうかと検討していました。ただトークのみですと、保護者の皆さんからの返信やスタンプ、あるいは他の用件で情報が流れていってしまいます。そこで私たちは、必要な情報をカテゴリ別に出せて、情報を貯めておくことができる掲示板機能に注目しました。外部トーク連携では掲示板での情報共有ができないので、保護者にも園で使っているLINE WORKSアカウントを付与した方が良いという結論に至りました。
導入時、保護者自身のスマートフォンにアプリをインストールしログインできるように、LINE WORKSの公式ホームページに掲載されているマニュアルを引用してIDとパスワードを印刷した資料を作成しました。保護者一人ひとりにお渡しするのと同時に説明会も開催しました。導入の必要性を改めてご説明し、ご理解をいただきながら、2週間ほどで全員のログインが完了しました。
保護者のアカウントの表記名は、わかりやすさの観点から保護者ご自身の氏名ではなく、「園児名」にしています。ご家庭によっては、続柄も表記名に入れるケースもあります。園児名にすることで、保育園の連絡ツールということも実感していただけると思っています。
保護者への「紙のお便り」に代わる改善策としてLINE WORKSをどのように活用されているかお聞かせください。
森さん :
保護者への日々のお知らせは、掲示板をメインに活用し発信するようになりました。
グループトークでも一斉に発信することはできますが、グループトーク内でお問い合わせなどのやりとりが生じたら、その内容に関わりのない保護者にも通知が頻繁に届いてしまいます。掲示板でしたら、コメントに投稿されたお問い合わせの通知は投稿者である保育士のみに届きますので、過度な通知による保護者へのストレスを回避できます。1回の投稿で保護者全員にお知らせできるので、個別に転送する必要もありません。
掲示板から紙のお便り情報を一斉周知ができるようになったことで、伝え漏れのリスクがゼロになり、白米を間違えて持参してしまう方も激減しました。未読の保護者には個別に再通知を送る機能もあるので確実な情報共有ができるようになっています。
紙のお便りと違って、投稿と同時に保護者に通知が届くのでタイムリーな情報発信もできています。最近では掲示板の既読率が高く、投稿するとかなり早いタイミングで、すべての保護者が既読をつけてくれているという印象です。夕方にお迎えに来た保護者にその日の活動をお話しすると、「さっきLINE WORKSの写真で見ました」とお声がけいただくことがあり、意思疎通がしやすくなったと感じています。その日のことをその日のうちに伝えることができるようになり、お家でも園児と保護者が話題を共有できる材料になっているようで嬉しく思っています。「紙のお便り」から、理想としていた「デジタルお便り」へ置き換わってきたという手応えを感じています。
大切なお知らせは掲示板で一斉周知。未読メンバーへの再通知機能により伝え漏れゼロに
時間を指定して投稿できる掲示板の予約投稿機能にも助けられています。限られた勤務時間の中でも手が空き次第、手元のスマホから本文の作成も画像添付もすべて設定できます。お知らせする内容に合わせて投稿のタイミングは考えているのですが、投稿する時間に待機する必要がないことで時間の有効活用ができるようになりました。
掲示板ではお知らせのほかにも、園での日々の出来事や園児たちの様子を日誌として投稿しています。園内にも保育士の手書きで同じ内容を掲示していますが、今までは送迎に来る保護者しか見ることができない状態でした。当園では園児の祖父母がお迎えに来るケースも多く、送迎に来られないご両親にもLINE WORKSの掲示板を通して園の雰囲気を伝えられるようになりました。
また、掲示板ではテキストのカラー変更や絵文字の挿入、写真の添付ができるので、園児たちの気持ちや保育士の思い、保育の環境など、連絡帳だけでは伝えきれない部分も表現できます。園児と保育士のあたたかな関わりをより身近に感じてもらえるように工夫しています。
そのほかの日常的な報連相において、LINE WORKSをどのように活用されていますか。
小倉さん :
保護者からの園児の欠席の連絡は、園長か担任へ直接トークで連絡を入れていただいています。地域のお祭りに園児を引率して参加した日も、当日は園を留守にすることになりましたので、欠席連絡や問い合わせなどは園の固定電話ではなくLINE WORKSを使って保育士へトークするようお知らせしました。園児の出欠状況の把握は安全確認のための大切なフローです。時間や場所を問わずそれができるようになったことで、安全管理の質をより高く保つことができています。
森さん :
保育士全員に関わる連絡は、以前までは資料を作成し印刷して、すべての教室に配布して伝達していました。印刷や配布の手間がかかる上に、保育士からの反応がないときは全員に伝わったかどうか不透明でした。LINE WORKS導入後は、保育士のみのグループトークで伝達事項を共有するようになりました。グループトークではメッセージの内容を理解できた人はリアクションをつけるようにルールを設けています。これにより、過度な通知を避けながら保育士どうしの意思疎通が図れるようになりました。現在は、印刷と伝達にかかる時間のロスがなくなり、情報がきちんと浸透している安心感が生まれています。
園のSNS更新においては外注の担当者に依頼しているのですが、担当者にもLINE WORKSのアカウントを付与し、打ち合わせ用のグループトークを作成しました。本文に記載してほしい文章と一緒に、候補写真をアップロードし、アクセスできるURLリンクを共有しています。
リアクション機能による意思疎通や外注担当者へのアカウント付与により、やりとりが円滑に
小倉さん :
お盆期間は給食の発注数や保育士のシフトを調整するため、園児の出席状況を事前に把握する必要があります。以前までは回答書を印刷して保護者一人ひとりにお渡ししていましたが、今年はLINE WORKSのアンケート機能で集計しました。
LINE WORKSの活用により、保護者へのお便りや回答書、保育士用の資料の印刷が不要となり、ペーパーレス化にもつながっています。
LINE WORKSの導入を通してどのような効果を実感していますか。
小倉さん :
LINE WORKSの導入以降、「情報をしっかり伝達する」ということが実現できていると感じています。私たちが「伝達している情報」とは、園児の成長の記録そのものです。それを保護者にお渡しすること自体が子育て支援だと考えています。「今日も楽しかったのだろうな」と園児の成長を保護者が毎日実感できるような環境づくりを心がけて、「この園に預けてよかった、ここの保育士でよかった」と思っていただけるよう、今後もLINE WORKSを軸にして情報発信の体制を確立させていきたいです。すべては子どもたちのためでもあります。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
森さん :
リトミックや英語教室などの園のイベントは、すべてカレンダー機能に登録して全員に共有したいです。今は月間スケジュールを印刷して保護者にお渡ししていますが、カレンダー機能を活用すればペーパーレス化がより進むと思います。保護者向けのカレンダー、保育士向けのカレンダーなど仕分けて有効活用してみたいです。
小倉さん :
保護者には、アカウント情報やすべてのやりとりは園側で管理することができるとお伝えしており、LINE WORKSをオフィシャルなプラットフォームとして意識していただくよう働きかけています。トラブルが起きないよう見守りは必要ですが、ゆくゆくは保護者どうしが情報交換する場としても、LINE WORKSを気兼ねなく活用できればと考えています。みんなで子どもたちを守っていくための連携を築いていくためにも、保護者どうしも自然とつながりを持てるような環境を作っていきたいです。
【お話を伺った方】
園長 小倉庸寛さん
吉田保育園の園長。広報活動やイベント企画にも注力している。
主任 森円花さん
保育業務のほかSNS運営を担当。保護者と保育士と園児をつなぐ役割として、園のPRに努める。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年9月当時のものです。