日本を代表する大規模商業施設やオフィスビルなどの電気設備工事業を営む株式会社第一建工は、現場の職人との円滑なやりとりを実現するためにLINE WORKSを導入。これまで職人が電話で連絡していた材料発注や現場の状況報告をトークに置き換え、大幅なコスト削減だけではなく施工のクオリティもさらに向上しました。導入当初は新しいツールへ抵抗感を示す職人もいた中で、段階的にLINE WORKSを浸透させていき、現在では全社の利用率が約90%にも上ります。
本事例のポイント
- 発注手続きを電話からトークに移行したことで誤発注数を半減し、1現場あたり数十万円単位のコスト削減を実現
- 現場の報告や相談をトークに集約。現場への移動がなくなり指示・確認が30分→5分に短縮し、残業時間を削減
- 掲示板やアンケート機能も活用し、普段顔を合わせない社員や職人とのコミュニケーションプラットフォームとして活用
御社の事業内容をご紹介ください。
小堤さん:
当社は大手電気工事会社のパートナー会社として、東京スカイツリーや六本木ヒルズといった都市部の大規模開発プロジェクトを中心に電気設備工事の一端を担っており、電力会社から供給された電力を建物内で使用できるようにする室内電気設備工事や通信に使用する設備を工事する弱電設備工などを手掛けています。従業員のうち現場で指揮をとる施工管理者と職人が7割を占めています。
LINE WORKS導入前の課題と、導入に至った経緯を教えてください。
矢代さん:
以前はチャットツールを利用しておらず、事務所や現場にいる職人どうしは主に電話で連絡を取っていました。ただ、現場で作業をしている職人がすぐに電話に出られることはあまりなく、大抵は折り返しの手間がかかっていて、情報共有が滞る場面が日常的に見受けられていました。
また、現場の状況を職人から電話で報告されることが多かったのですが、音声だけではどうしても伝わりにくい部分があり、かねてより電話に代わる連絡ツールを導入して職人との情報共有を円滑にしたいとも考えていました。
小堤さん:
2020年の初旬にLINE WORKSの導入を検討し始めたのですが、そのすぐ後にコロナ禍となり、当社が請け負う工事では遅延や中止や見直しが数多く発生していました。
また、当社の従業員は現場に常駐することが多いため、日頃から従業員どうしで定期的にコミュニケーションをとる機会を設けていたのですが、コロナ禍で対面でのコミュニケーションもストップせざるを得ない状況だったので、チャットツールには情報共有のプラットフォーム、そして業績回復の礎となることへの期待を寄せていました。
数あるツールの中からLINE WORKSを選んだ理由をお聞かせください。
小堤さん:
5~6社のチャットツールを検討しましたが、LINE WORKSが最も始めやすいツールだと判断しました。ベテランの職人の中には新しいツールへの抵抗感を抱く人も少なくありません。親近感を持っている人が多いLINEと似た操作性のLINE WORKSであれば、職人を含む従業員への普及がスムーズなのではないかと考えました。また、イニシャルコストがかからないという導入ハードルの低さも選定理由の一つです。
矢代さん:
建設業に特化したツールではない点もポイントでした。業界特化型のツールの場合、「施工管理」や「入退場管理」といったように業界特有の習慣に合わせて開発・提供されています。だからこそ便利ではあるのですが、他の業務に応用して使うのは難しくなります。一方、LINE WORKSは業界や企業規模を問わず使えるような汎用性に優れた設計のため、工夫次第で自社にあった使い方ができると判断しました。
全社での本格運用開始までにどのような準備をされましたか。
矢代さん:
2020年3月頃から、まずは事務所内の社員でLINE WORKSフリープランの利用を開始しました。フリープランでも十分にLINE WORKS活用のメリットを実感できたため、2020年4月からアドバンストプランを契約してLINE WORKSのアカウントを職人含む全従業員に付与し、全社に展開しました。
小堤さん:
当時はLINE WORKSを当社のプラットフォームとして機能させるためには、まずハード面を整える必要がありました。そこでLINE WORKSの運用開始にあたって社用スマホを全社員へ貸与し、LINE WORKSを活用しやすい環境を整えることにこだわりました。
新しいツールへの抵抗感がある職人さんにもLINE WORKSを使ってもらうために、どのような工夫をされましたか?
矢代さん:
せっかくアカウントを用意しても使ってもらえなければ意味がないため、LINE WORKS浸透への第1ステップとして、些細な内容であってもトークで連絡を取るようにしました。メッセージに既読が付くようになれば、第2ステップとして「急ぎの用事があるため電話ください」とトークで連絡して、職人にLINE WORKSを確認・使用する習慣をつけてもらいました。
まずはLINE WORKSに触れてもらい、その後にメインの連絡手段として実際に機能を利用してもらうことで、徐々にLINE WORKSを浸透させていった結果、現場で利用する職人が増加していきました。周りの職人がLINE WORKSを利用し始めると、自分も利用した方が便利になると感じてもらえたようです。今では職人を含めた当社全体のLINE WORKSの利用率は約90%にも上ります。
LINE WORKSの具体的な活用方法および導入効果を教えてください。
・グループトークで材料発注を行うことで発注の不備がなくなり、誤発注の防止と利益確保を実現
・職人どうしで画像を活用してやりとりすることで、遠隔でもスムーズな指示が可能に
・従業員評価にアンケート機能のテンプレートを活用
小堤さん:
まず、業務連絡を電話からLINE WORKSのトークに置き換えました。例えば材料発注をする際には、商社の担当者には自社でLINE WORKSアカウントを取得してもらっています。アカウントの取得後、外部連携機能を使って現場にいる職人と材料を取り扱う商社の担当者も含めた「材料発注用グループ」を作成し、そこで発注連絡をしています。これまでは職人が商社へ電話して発注をしていたのですが、職人からの発注は「あの商品が○個欲しい」といった抽象的な内容の連絡が多く、聞き間違いによるサイズ違いや色違い、言った・言わない問題などが原因で誤発注が相次いでいました。それに加えて発注の重複も頻繁に起こっていました。
LINE WORKSを導入した現在は、職人が段ボールなどに記載した発注メモの写真を撮影して、その画像をグループに投稿して発注しています。これによって商社側は発注内容を目視で確認でき、発注の重複がないかを含めた確認や発注内容の補足が確実にできるようになりました。
その結果、誤発注が半減し1現場あたりのコストがおおよそ数十万単位で削減されました。さらに材料の廃棄コストや保管コストも大幅に減り、当社全体で考えると大幅なコスト削減、利益創出ができたように感じます。
矢代さん:
誤発注が少なくなったことで商社側にもLINE WORKS活用のメリットを感じてもらえているのではないでしょうか。
工事現場や社内での情報共有にもLINE WORKSを活用されているそうですね。
矢代さん:
職人や管理者が参加する「現場管理グループ」を工事ごとに作成し、施工の状況報告や相談などをしています。LINE WORKS導入前は、若手の職人は主に電話や対面でベテランの職人に相談をしており、指示を受けた後、場合によっては作業場所を移動して報告することもありました。電話でアドバイスをもらう場合も伝えられる情報に限度があったのも事実です。
現在は確認事項があったらグループに現場の写真を投稿して質問しているため、離れた場所にいても現場の様子を正確に把握できるようになりました。重要なケースを除いて、質問に対する指示もわざわざ現場に移動せずに、LINE WORKS上で確認できるようになりました。例えばある現場ではこれまで30分かかっていた指示・確認が5分になるなど効率化が実現した結果、他の業務により多くの時間を充てられるようになりました。工事全体のクオリティの向上にも貢献できていると思います。残業時間の削減にもつながっているでしょう。
小堤さん:
また、掲示板には私が週に1度のペースで従業員に向けたメッセージを発信しているほか、現場への周知事項もリアルタイムで投稿するなど、全社への情報発信手段として活用しています。
さらに当社では従業員の評価にあたり、自己申告シートを記入してもらっています。これまでは紙に記入をしてもらっていましたが、LINE WORKS導入後はアンケートのテンプレートを活用して作成したフォーマットでも記入できるようにしました。今では職人を含む多くの従業員がLINE WORKSでシートを記入してくれています。
LINEと操作性が似ているLINE WORKSは使い始めるハードルが低いため、アナログな文化が残る建設業界でも浸透しやすいのが特長です。「段ボールの発注メモをトークに投稿する」という発注方法をはじめ、アナログとデジタルをうまく組み合わせられる点がLINE WORKSのメリットであり、アナログな文化が残る業界でも受け入れられやすいのではないでしょうか。
今後LINE WORKSの活用をどのように発展させたいとお考えですか。
矢代さん:
現在、カレンダー機能を社用車の予約や個人の予定管理などに利用していますが、従業員間でのスケジュール共有をさらに強化したいと考えています。当社ではさまざまな規模の工事が同時に進行しているので、いつだれがどの現場で働いているのかをカレンダーで簡単に確認できるようにすれば、人員調整はよりスムーズになるでしょう。
共用の社用車の予約にカレンダーを活用。今後は従業員個人のスケジュール管理にも役立てたい
また、現場に定点カメラを設置し、LINE WORKSのビデオ通話機能を通して本社からも現場の様子を確認できるようにしたり、逆に現場から動画を送ってもらって音や明るさ、振動などを写真よりもより正確に把握して遠隔指示などにも役立てたりできればと考えています。
小堤さん:
協力会社の職人さんにもLINE WORKSの活用を広めていって、「第一建工にお願いするとLINE WORKSでやりとりができるから楽だ」と思っていただくことで職人の確保にもつなげられれば、と考えています。
さらに、LINE WORKSならフランクにやり取りができるので、世代を超えたコミュニケーションのきっかけとしての役割も期待しています。
【お話を伺った方】
小堤 篤史さん
代表取締役社長。
矢代 紘一さん
工事に関わる事務関係全般やツールの管理など現場のサポート業務を担当する。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2024年2月当時のものです。