醸造食品を製造するための機械やプラントを手掛け、「DXセレクション2023グランプリ」を受賞している株式会社フジワラテクノアートは、経営ビジョンの実現に向けた業務のデジタル化の第一歩としてLINE WORKSを導入しています。トークや掲示板を活用し、社内の情報共有や意思決定のスピードが格段に向上しました。ワークフローシステムとも連携し、さらなる業務効率化を推進しています。
本事例のポイント
- DXの第一歩としてITが苦手な社員も抵抗感なく使えるLINE WORKSを選定
- 情報共有や意思決定のスピードが向上し、お客様への対応力アップにも貢献
- カレンダー機能やワークフローシステムとの連携を活用し、業務の効率化を実現
御社の事業概要をご紹介ください。
藤原さん :
当社は味噌や醤油、日本酒、焼酎、みりんなどの醸造食品を製造する機械・プラントメーカーです。約1,500社と取引しており国内シェア80%以上を誇るほか、世界27か国への製品の輸出も行っています。2050 年を見据えて掲げた「開発ビジョン 2050」では、「醸造を原点に、世界で『微生物インダストリー』を共創する企業」となることを目標にしています。
ビジョンを達成するには現状維持というわけにはいかず、デジタル化による業務改革が必須でした。そこでDX 推進委員会を立ち上げてデジタル化計画を策定し、3年間で21ものITシステム・ツールを導入し、デジタル人材の内製化などに取り組んできました。このような取り組みが評価され、中堅・中小企業のモデルケースとなるDXの優良事例を選定する経済産業省の「DX セレクション 2023」でグランプリを受賞しました。
LINE WORKS導入以前はどのような課題を抱えていましたか。
藤原さん :
DXを推進するには、その必要性をビジョンと結びつけて社員全員に理解してもらう必要がありました。経営層からのメッセージは朝礼や総会などで周知していましたが、機械の据付やプラントの建設などで出張している社員も多く、すべての社員にタイムリーに情報を伝えることが困難でした。また、フルオーダーメイドである当社の製品づくりには技術やノウハウを要しますが、ナレッジを共有する環境が整っておらず、情報共有基盤の整備が必要だと考えていました。
頼さん :
DX推進委員会の発足当初、まずは社内の業務を洗い出すために、各部署へヒアリングを行ったところさまざまな非効率な業務が浮き彫りになりました。例えば、会議室を利用したい際は、予約を取りまとめる担当者との連絡は内線で行い、予約状況はExcelで管理していました。そして、全体へ周知させるために予約状況をまとめたExcelを紙に印刷して本社のホワイトボードに掲示していたのです。予約状況が変更される度に、その紙を貼り替える手間が発生していました。社員の予定管理もホワイトボードで行っていたため、確認するにはわざわざホワイトボードを見に行かなければならず、出張先にいる社員などタイムリーに予定を確認できない状況でした。まずはこういったアナログな業務をデジタル化して改善することから始めようと考えました。
佐藤さん :
私は年間200日ほど出張先に滞在していますが、本社など別の拠点にいる社員と連絡を取りたいときの連絡手段は電話やメールのみでした。電話は行き違いも発生しやすいですし、メールはいつ読んでもらえるのか分からないなど、思うように連絡が取れないことが多くありました。長期の出張を終えて久しぶりに会社に行くと、就業規則や案件の状況など会社のさまざまな情報が変化していて、浦島太郎状態になっていることもありました。
藤原さん :
組織力を高めるために、全社員が定期的に同じ情報を持っている状態を作ることはとても重要であり、このような状況に変えていくために、ビジネスチャットの導入を検討しました。
数あるツールの中からLINE WORKSを選ばれたのはなぜですか。また、運用ルールは定められましたか。
藤原さん :
アナログな働き方に慣れ親しんだベテラン社員が多く、当時はITリテラシーが決して高いとは言えませんでした。過去に別のITツールを導入したこともありましたが、使いこなせず定着しなかった経験もありました。社内のDXに向けて、誰ひとり取り残さず推進していきたい思いがあったため、ベテラン社員でも抵抗感なく、みんなが使えるツールを探していました。そこで多くの社員がプライベートで使い慣れているLINEにUIが似ている、LINE WORKSに注目しました。当社はお客さまに関する機密情報を扱うことも多く、セキュリティ面で安心できるクラウドサービスである点にも魅力を感じました。
頼さん :
LINE WORKSの利用は、当初は会社支給のスマホかPCに制限し、全社員にアカウントを付与して運用を始めました。導入直後に説明会を開催しましたが、それ以外に特別な導入教育を行うことなく、すぐにほとんどの社員が使いこなせるようになりました。
LINE WORKSの具体的な活用シーンと導入効果をお聞かせください。
・情報共有や意思決定のスピードが向上し、お客様への対応力UPに貢献
・案件の進捗状況もタイムリーに把握でき、ノウハウ共有の場として役立つ
藤原さん :
全社員、役員、部長、部門、案件ごとなどの目的別にグループを作り、電話やメール主体に行われていた連絡がLINE WORKSに置き換わったことで、情報共有が飛躍的にスムーズになりました。対面や電話、メールでは気を遣うような上司や他部署の担当者への質問も、トークなら気軽に連絡を取ることが可能です。LINE WORKS導入後は、以前よりコミュニケーションのハードルが低くなり、さまざまな案件に関する意思決定のスピードも向上し、お客様への対応力向上にもつながっていると感じています。
佐藤さん :
トークを見ていれば、どのメンバーがどのような課題を抱えているかがよく分かります。例えば、案件ごとに製造部や設計部、営業部などの関係者を含めたグループを作成しているのですが、施工現場での不明点などについて写真とともに連絡があると、離れた場所にいても速やかに的確なアドバイスができます。先輩が蓄積しているノウハウを共有する手段となっています。自分にメンションされていないメッセージであっても、やりとりをみればプロジェクトの状況を隅々まで把握できるのもグループ活用のメリットです。
さらに図面などは社内のデータベースにて管理していますが、変更・修正があった場合にはLINE WORKSトークでその旨を連絡してもらうため、誤って修正前の情報を参照することがなくなりました。現場が必要な部品を急いで調達してほしいときは、型番や図面の写真を本社にいる設計や調達の担当者に送ることで、迅速に対応してもらえます。以前は電話がつながらなかったり、送信したメールが確認されているかどうかわからず不安になったりすることもあったのですが、LINE WORKSで連絡を取るとレスポンスも速いですし、返信がなかったとしても既読かどうかで、相手の状況がわかりやすくなりました。
掲示板も積極的に活用されているそうですね。
頼さん :
掲示板は、経営層が発信するビジョンから、案件受注報告や各種議事録、RPAで自動化する業務フローのシナリオまで、全社に向けた情報を一斉に周知するのに役立っています。掲示板の閲覧を全社員に習慣化してもらうため、原則として昼休み前後の12時30分と終業前の16時30分の2回、と時間を決めて投稿しており、特に重要な情報は必読設定にしているので確実に見てもらえるようになりました。
佐藤さん :
掲示板を通じて会社の動きが手に取るように分かり、長期出張中でも社内の様子をタイムラグなく把握できています。本社にいないために情報が分からず、不安になるということがなくなりました。LINE WORKSが導入されてから、出張先にいても会社との距離感が近くなったと感じています。
外部トーク連携やカレンダーの機能も、業務効率化に役立っているそうですね。
佐藤さん:
製造部では、据付や建設の際に作業を依頼する外部の協力会社とスムーズに連携するために、外部のLINE WORKSやLINEとつながってやりとりしています。機密情報漏えい防止の観点から、外部とつながる場合は会社に申請して許可を得ています。
頼さん :
カレンダーは社員の予定を把握したり、設備予約機能で会議室や社用車、実験機器などを予約・管理したりするのに活用しています。以前のようにホワイトボードのスケジュール表を見に行く必要がなくなりました。手元のPCやスマホで、設備の予約情報を確認したり、予約できたりするので便利です。
藤原さん :
社員へのヒアリングや社内イベントへの出欠確認などに、アンケート機能を活用しています。紙のアンケート用紙を配付・回収したり、集計したりする手間がかからなくなりました。LINE WORKSによって、社員の意見も吸い上げやすくなり、双方向でコミュニケーションが取りやすくなりました。
頼さん :
ワークフローシステムの「サテライトオフィス・ワークフロー for LINE WORKS」を連携させ、申請・承認業務をLINE WORKS上で運用できるようにしました。以前は、別のツールを使っていましたが、承認者が外出先にいると承認作業のためにPCをVPNに接続する必要があったのです。このひと手間と、スマホからは承認ができないせいで、承認担当の出張や外出が多いと承認が完了するまでにひと月ほどかかるケースがありました。現在は、スマホから簡単に承認作業ができるため、早ければ判断まで1~2日で済むようになりました。社員からの評判も非常に良いです。
LINE WORKSから申請・承認作業が行えるようになり、承認手続のスピードが改善した
DX推進を含む御社のビジョン実現に向けた動きにも、LINE WORKSが役立っているそうですね。
藤原さん :
LINE WORKSはもはや当社にとってなくてはならない存在です。その一方で、対面でのコミュニケーションの重要性も実感するようになりました。重要な報告は対面で行うようにして日頃から関係構築をしているからこそ、ITツールを用いた意思疎通も円滑にできているのだと思います。対面やLINE WORKSでのコミュニケーションによってDX推進を含めたビジョンが浸透し、社員一人ひとりの理解を得られていると感じています。
頼さん :
LINE WORKSの導入をきっかけに、全社的にITツールへの抵抗が少なくなりました。今では多数のシステム・ツールを活用して業務効率化を実現させていますし、LINE WORKSを通して多くの社員がDX実現に向けて有用な意見を発信してくれています。
LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。
藤原さん :
以前は受注した案件をこなすだけで精一杯という状況でしたが、DX推進によってさまざまな業務が効率化し、ビジョン実現に向けた取り組みが前進しました。企業の成長にはデータの活用が極めて重要となります。LINE WORKSの導入をはじめとするDX実現に向けた取り組みでデータを蓄積する基盤が整ったので、それを有効活用してデータドリブンな経営を実現することがこれからの目標です。
【お話を伺った方】
藤原 加奈さん
取締役副社長を経て、2021年9月代表取締役副社長に就任。
頼 純英さん
経営企画室 課長とDX推進委員会 委員長を兼務する。
佐藤 文宏さん
製造部 プラントグループの課長として現場を管理する。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2024年4月当時のものです。