関東圏と関西圏に有料老人ホームとシニア向けマンションを運営する大和証券グループのグッドタイムリビング株式会社は、24時間体制でご入居者のケアを行うスタッフ間の申し送りや業務連絡を効率化するためにLINE WORKSを導入。口頭や紙ベースで行われていた伝達がデジタルに置き換わり、重要な情報がスピーディかつ確実に担当者間で共有されるようになりました。介護スタッフや看護師など多職種間での情報連携も進み、働きやすく業務生産性の高い職場環境を実現しています。
本事例のポイント
-メモや口頭での連絡をトークに置き換え情報を迅速・確実に伝達
-入居者ごとのノートを作成して個別の対応マニュアルなどを共有
-職種の枠を超えた情報連携が促進され提供するサービスの質が向上
-AIサーモカメラとの連携で入居者の離設を防止する仕組みを構築
御社の事業内容をご紹介ください。
柳下さん :
当社は、関東(東京、神奈川、埼玉、千葉)と関西(京都、大阪、兵庫)に全29拠点の有料老人ホーム「グッドタイム リビング」と、関東(東京、神奈川、千葉)に全3拠点のシニア向けマンション「プラテシア」を運営しています。有料老人ホームでは、介護スタッフや看護師、サービススタッフ、清掃や洗濯業務を担当する生活支援スタッフなどが密に連携しながらご入居者の暮らしをきめ細かにケアしています。介護記録システムや居室見守りシステム、スタッフどうしが作業や移動をしながら意思疎通するためのインカムなど、各職種が間接業務を省力化しつつサービスの質を向上させるためのITツールも積極的に活用しています。
LINE WORKS導入前はどのような課題がありましたか。
柳下さん :
現場業務に携わるスタッフの大半が、会社のPCやメールアドレスを持っていません。そのためご入居者に関する情報の共有や、早番・遅番・夜勤間の申し送りなどが文書や口頭で行われており、より迅速・確実な業務連絡ができる環境を構築することが以前からの課題となっていました。
星野さん :
現場は24時間365日稼働しています。ご入居者の入居・退去や入退院、新型コロナウイルスの濃厚接触者発生など、全体に素早く周知すべきことはたくさんあるのですが、3交替制で勤務するスタッフに情報を一斉発信する手立てがないのは非常に不便でした。
田中さん :
現場スタッフが業務中に装着しているインカムは込み入った会話をするには適さず、記録も残りません。重要な伝達事項は手書きのノートで共有されていたためスピーディに伝わらず、確認のためにノートのある場所まで都度行かなければならないのも業務効率の妨げとなっていました。
筒井さん :
ご入居者の外出やご家族などとの面会予定はすべてのセクションの担当者が把握しておく必要がありますが、その情報を共有する手段も紙のカレンダーで、迅速・確実な情報共有ができないのが悩みの種でした。
木村さん :
ケアマネジャーは介護スタッフと密接に連絡を取り合って情報を共有しなければなりません。しかしお互いにさまざまな業務に追われる中で、対話する時間をとるのは難しく、手軽にコミュニケーションを図れる手段があればと思っていました。
塚本さん :
看護部門では、ホームドクターが処方した軟膏を所定の時間に所定の部位に塗布してもらうためにご入居者ごとの軟膏の一覧表を作成して印刷し、介護スタッフに渡していました。しかしその方法では、新しい処方が出たときにその情報を伝えるのにタイムラグが発生してしまいます。また、一覧表を作成・出力する手間もかかるので、この業務を何らかの方法で効率化したいと考えていました。
柳下さん :
会社からの通達・通知はグループウェアで社員に発信していますが、PCをほとんど利用しない現場スタッフは情報を受け取ることができません。各セクションのPCを有する一部のスタッフが紙出力して事務所などに掲示していましたが、その作業は煩雑なうえに情報の周知が徹底されないので、そうした状況も改善する必要がありました。現場には、スタッフが介護記録システムに入力した内容を手元で確認できるようにするため、各自1台携行できる共用のiPadとiPhoneを配備していたので、それらを活用した新たなコミュニケーションツール導入を検討するようになりました。
課題解決の手段としてLINE WORKSを選んだ理由と、導入準備から運用開始までの経緯をお聞かせください。
柳下さん :
PC、スマホ、タブレットなど会社から貸与しているあらゆるデバイスで活用でき、スマホの小さな画面でも見やすいこと、そして何より多くのスタッフがプライベートで使い慣れているLINEに操作感が近く、抵抗感を抱かずに受け入れてもらえそうなツールとしてLINE WORKSに注目しました。これらの条件をすべて満たすものはほかになかったので導入を決めました。運用コストが比較的手頃なのも選定理由の1つとなりました。
当社が運営する全施設への導入を前提に、まずは東京都のグッドタイム リビング 町田中町など3施設で利用を開始。運用に際してはセキュリティを担保するため会社が貸与したPC、スマホ、タブレットでのみの利用とし、外部のLINE WORKSやLINEなどとつながれる外部トーク連携機能の使用は制限しました。それ以外は特に制限を設けず、社内での自由な活用を促進しています。
先行導入した施設の中では、グッドタイム リビング 町田中町が特に活用法を積極的に試行錯誤しながら、多くの業務を効率化させています。私もグループのメンバーとなって利用状況をつぶさに把握するようにしており、その後、段階的に他の施設に導入を広げる過程で、町田中町の事例をモデルケースとして共有してもらうようにしています。
LINE WORKSによってスタッフ間のコミュニケーションはどう変化しましたか。
【グループ】伝達手段が文書・口頭からトークに移行し業務情報を確実に周知
【ノート】入居者ごとの情報や業務マニュアルを共有
星野さん :
グッドタイム リビング 町田中町全体や各セクション、また各セクションの管理者だけといった、多くのグループトークルームがつくられて活発なコミュニケーションが図られるようになりました。紙やメモ、口頭で行われていた伝達がトークに置き換わり、各スタッフがそれぞれの現場で業務をしながらリアルタイムで情報を共有できるようになったことが大きな変化です。
ジェネラルマネージャーとしては、介護記録システムに記録されたご入居者に関する膨大な情報の中から、特に留意してほしい事項が記載された画面のスクリーンショットをLINE WORKSのグループや個々の担当者に発信し、詳しい内容を介護記録システムで閲覧してもらうことを促しています。
田中さん :
勤務シフト間の申し送りも紙の連絡票からトークに移行し、始業前の把握がしやすくなりました。ご入居者の名前などで検索すれば関連情報がすべてリストアップされるので、必要な情報へのアクセスもスムーズです。グループにはご入居者ごとのノートをつくり、対応時の留意点などトークで押し流されて欲しくない情報を保存。介助の仕方や機材の使い方などの業務マニュアルもノートで共有し、テキストだけでは伝わりにくい情報に関しては画像も添付しています。
筒井さん :
情報がLINE WORKSで共有されるようになってからは、伝え漏れや聞き間違いが発生しなくなりました。情報発信する場合は既読機能によって誰に伝わったかが分かり、未読の相手だけに再度連絡することもできます。職種の枠を超えて瞬時に情報共有ができることは、結果的にご入居者に提供するサービスの質の向上につながっています。
ケアマネジャーや看護師の業務はどう変わりましたか。
【グループ】介護スタッフとの情報共有が活性化
【テンプレート】最新の処方情報が整理され、ペーパーレス化も推進
木村さん :
ケアマネジャーが介護の現場に出向くことは基本的にありませんが、介護スタッフからの報告を受けなくても、トークのやり取りを見ることで現場のリアルな様子を把握できるようになりました。また、以前は勤務時間帯の異なる介護スタッフ全体に情報を周知するのに苦労していましたが、グループに一斉に発信できるようになったことでも業務効率が大きくアップしています。
塚本さん :
ご入居者に処方された軟膏に関する情報を介護スタッフに伝えるため、「町田 軟膏処置表」というグループトークルームを設けています。ご入居者ごとのノートに、主な軟膏の名称、塗布する部位、タイミングなどを簡単に選べる書式をテンプレート機能でつくり、介護スタッフが常に軟膏に関する最新の情報をわかりやすく得られるようにしました。これなら事務室でPCを操作する必要がなく、手元のスマホで手軽に処方情報を更新できます。処置表の印刷が不要になったことで、ペーパーレス化の推進にも貢献できています。
ほかにどのような機能をよく利用されていますか。
【カレンダー】入居者の外出・面会予定を登録して全職員が把握
【掲示板】本社からの通達やデジタル社内報などを掲載
【アンケート】意見収集や日程調整を素早く実行
筒井さん :
紙のカレンダーに替わり、グループカレンダーにご入居者の外出や面会予定などを入力して全職員で共有しています。コロナ禍になってからはご入居者のご家族どうしが館内で接触しないように面会時間を1時間ずつに区切っていますが、その予約状況も一目瞭然なので調整もスムーズに行うことができます。
木村さん :
ご入居者に提供するサービス内容は予定に応じて臨機応変に変更しなければならないので、多職種が瞬時にご入居者の予定を把握できるようになったのは画期的な改善だと思います。
柳下さん :
本社からの通達やデジタル社内報も掲示板にアップするようになりました。現場スタッフがいつでも手軽に閲覧できるようにしています。
星野さん :
PCを支給されている職員が都度情報をプリントして掲示する作業がなくなり、以前と比べて周知も徹底されるようになりました。
塚本さん :
スタッフからの意見のヒアリングにはアンケートを活用しています。勤務時間が異なるスタッフへのヒアリングも簡単にできます。
星野さん :
作成・配布・回収が紙の用紙よりずっと容易なので、対応が難しいご入居者へのよりよいケアの方法に関してアイデアを出してもらったり、新型コロナワクチンの接種や健康診断等の日程を調整したりと、アンケート機能の活用範囲は広いです。
田中さん :
業務中のスタッフが装着しているインカムでのやり取りは全員に聞こえますが、個別に連絡を取りたいケースも少なくありません。館内には内線電話もありますが、介護スタッフは電話機のある場所へ行けない状況で通話をしたいことが多く、そのようなときはLINE WORKSの無料の音声通話機能を活用し、柔軟に連絡を取り合うことができています。
LINE WORKSとツール連携している活用方法について教えてください。
・入居者の離接対策としてAIサーモカメラで撮影された画像をLINE WORKSに自動送信
・クラウド勤怠管理システムと連携し、スマホからカンタンに打刻が可能
田中さん :
身体の状態などにより単独での外出が難しいご入居者の離設を防ぐため、館内に設置したAIサーモカメラが事前に登録された方の顔を認証すると、事務所でアラートが鳴るようにしています。しかし事務所にスタッフが不在だったり、アラートを聞き逃したりする可能性もあるので、撮影されるのと同時にAIサーモカメラと連携したLINE WORKSのbotがその画像を自動的に担当者のグループに送信する仕組みを構築しました。療法士と一緒の姿が写っていればリハビリのための外出だと分かるので、担当者が駆けつける必要がありません。以前はアラートが鳴るたびに職員が出入口に急行していましたが、LINE WORKSによって写真を確認できるようになってからは、必要な場合のみ対応すればよくなりました。
柳下さん :
その他にも、クラウド勤怠管理システムのリンクをその他のメニュー内に設置し、LINE WORKSからすぐにアクセスできようにしています。各自のスマホから出退勤を入力できるようになったので、現場では以前のように他業務で使用中の共有PCを出退勤入力のために中断する必要がなくなりました。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
柳下さん :
当社が運営するすべての有料老人ホームとシニア向けマンションへの導入を進めて、現場の全スタッフがLINE WORKSを使えるようにする予定です。
社内業務に関するFAQはグループウェアにアップしていますが、PCを持たない現場スタッフの多くが閲覧できない状況にあります。そこでLINE WORKSと連携させ、24時間365日いつでもチャットボットが現場スタッフの疑問に自動返答する仕組みの構築も検討しています。
本社の一部の部門で、LINE WORKSを導入していますが、業務現場からのIT機器の故障に際するシステム課への問い合わせがトークで行われるようになり、不具合の様子を示す画像が添付されることで状況を把握しやすくなるといった成果も得られています。将来的には全部門に展開して情報共有のプラットフォームに発展させたいと思っています。
【お話を伺った方】
柳下 奈々さん
全社のネットワークシステムやIT機器の導入・運用・保守全般を担当。LINE WORKSの運用管理者でもある。
星野 さくらさん
住宅型有料老人ホーム グッドタイム リビング 町田中町のジェネラルマネージャー(施設長)として、介護・看護・サービス部門・清掃部門を統括。
塚本 以津未さん
看護師として、入居者の体調管理や訪問診療時の医師の補助などを行う。
田中 史香さん
入居者に提供される訪問介護サービスの提供責任者として介護スタッフを統括する。
筒井 瑠美子さん
サービスタッフとして入居者への各種サービスの提供やフロント業務、事務全般に携わる。
木村 恭世さん
GTLケアプランセンター 町田中町のケアマネジャーとして居宅介護支援サービスのプランを立案。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2022年10月当時のものです。