産業廃棄物処理を主力事業としている関西クリアセンター株式会社は、2019年よりLINE WORKSを導入し、全従業員での情報共有のみではなく、名刺管理サービスとのAPI連携によるアドレス帳への顧客情報の自動登録やAI配車サービス「配車頭」からのカレンダーインポートで、配車スケジュールの登録を実現しています。LINE WORKS上で動くミニアプリ「WOFF」の活用で社内申請や配車依頼、そしてそれらの完了通知をトーク上で完結するなど、従業員の業務負担を軽減する活用を進めています。
本事例のポイント
- 全従業員が抵抗なく使用できるLINE WORKSを業務プラットフォームとして活用
- kintoneをAPI連携させ、名刺管理や社内申請業務、産廃コンテナ管理を効率化
- SaaSサービスとの連携でドライバーの配車スケジュールの確認作業を簡便に
御社の事業内容をご紹介ください。
専務取締役 伊山さん:
当社は、1970年3月に設立された産業廃棄物中間処理業者です。産業廃棄物の収集運搬と中間処理、土木建設工事、金属リサイクルなどを手掛けています。現在、1日あたり1,520立方メートルという国内屈指の処理能力を持つ堺本社工場のほか、2020年5月に完成した泉州プラントが同年7月より稼働中で、両処理施設には日々、ドライバーが収集運搬した多種多様な産業廃棄物を載せた車両が出入りしています。
LINE WORKS導入前は、どのような課題に直面していましたか。
専務取締役 伊山さん:
少数精鋭で事業を拡大してきた当社は、早い段階からITによる業務改善を推進してきました。しかし、業界全体を見渡すと、まだまだFAXや紙の文化が根強く残っています。例えば、産業廃棄物の処理委託時に発行するマニフェスト(産業廃棄物管理票)は紙で作成しFAXで送付されるケースが挙げられます。また、1案件ごとに複数枚の文書があり、これらを5年間保存する義務があります。当社は、このようなFAXや紙文化が残る業界において、IT化による業務改革を進めるために、どのようにギャップを埋めるかを試行錯誤しながら日々業務に取り組んでいます。
常務取締役 環境事業部 部長 伊山さん:
LINE WORKS導入前は、経営層や事務職など一部の人たちだけがグループウェアを使用して情報を共有していました。しかし、泉州プラントの立ち上げをきっかけに全従業員に情報を発信する機会が増えてきました。従来のグループウェアは機能性の高さゆえに、操作方法の教育が必要になりますが、現場で作業している従業員はパソコンの操作が不慣れな人も多くいます。さらに、泉州プラントの稼働開始によって従業員数が倍以上に増えたことから、ITリテラシーを問わず現場の従業員とスムーズに情報を共有できるチャットツールの必要性を感じていました。
LINE WORKSを選定された理由は何でしょうか。
向井さん:
全従業員と円滑に情報を共有するためにチャットツールを探していたとき、LINE WORKSの存在を知りました。LINEと似た操作性を持つLINE WORKSならITツールの操作が苦手な人でも利用しやすいと考えました。
さらに、LINE WORKSにはチャット機能だけでなく、スケジュールや掲示板などの機能も搭載されおり、アドバンストプランであればメールやDriveも使えることから、当時導入していたグループウェアの代替として適していると考えました。
LINE WORKSを社内に浸透させるために、どのような工夫をしましたか。
常務取締役 環境事業部 部長 伊山さん:
最初は利用のハードルを下げるために、トーク機能だけを使ってみるよう従業員に促しました。それから、徐々に紙で掲示していた情報を掲示板に移行したり、健康診断に関する質問をアンケート機能で行ったりするなど、段階的にLINE WORKSへの利用度合いを高める工夫をしました。
紙で通知していた情報を掲示板やアンケート機能に載せ替えてLINE WORKSの利用を促進
グループを業務別に細分化したり、会議室や車両などの設備予約をカレンダーで行ったりするなど、1年ほどかけて使い方を試行錯誤し、全従業員がLINE WORKSを通じてほとんどのコミュニケーションができるようになりました。
試行錯誤した結果、グループを業務別に細分化し情報を整理することでコミュニケーションをLINE WORKSに集約。パートタイマーやアルバイトの方はLINE WORKSフリープランを使用し、外部トーク連携でグループにしている
さらに、LINE WORKSと他のSaaSをAPI連携させたり、2023年に提供開始されたLINE WORKS上で動くミニアプリ(WOFFアプリ)を開発したりすることで、多くの従業員にLINE WORKSの利便性を実感してもらっています。
向井さん:
ITツールに苦手意識の高い従業員でも「LINE WORKSなら使える」となったことから、さまざまな業務処理や通知をLINE WORKS上で行いたいと考えるようになりました。当初はLINE WORKSの標準機能であるテンプレートを活用してみましたが、登録した情報をデータベース化させたいなどの理由から、API連携を活用することを考えました。
API連携およびWOFF (WORKS Front-end Framework)を、どのように活用していますか。
・「Sansan」や「kintone」とLINE WORKSのアドレス帳を連携させ、顧客情報管理に活用
・AI配車サービス「配車頭」で作成した配車スケジュールをカレンダーに自動反映して配車予定の通知や確認を効率化
・WOFFアプリで社内の申請手続きを完結。申請側も管理側も負担を軽減
向井さん:
当社ではさまざまな情報のデータベースとしてkintoneを採用しています。LINE WORKSとのAPI連携によりkintoneにある顧客情報をLINE WORKSのアドレス帳に自動的に登録されるようにしました。具体的には、まず名刺管理サービスSansanで登録した名刺データがkintoneにAPI連携で自動的に一括登録され、さらにそのデータがAPI連携によってLINE WORKSのアドレス帳に登録・更新されます。同じ人物の名刺データはkintone内で最新情報に更新されるので、営業担当者は名刺をスキャンするだけでよく、普段使いしているLINE WORKSのアドレス帳で常に最新の顧客情報が確認できます。
山科さん:
自社の車両を使う業務にあたり、顧客から回収する場合は営業、2次排出先に運搬する場合は工場の主任など配車を依頼する社員が複数いるため、それだけ手配が複雑になります。そこで、産業廃棄物処理業界向けのAI配車サービス配車頭*とLINE WORKSのカレンダーを連携させて配車表をLINE WORKSのカレンダーに自動で表示させています。
具体的には、LINE WORKSからWOFF経由でkintoneに配車依頼を登録すると、それを元に配車担当者が配車頭でトラックの配車スケジュールを作成。そのスケジュールをLINE WORKSのグループカレンダーにインポートすることで、カレンダーを自動表示させています。そして配車が完了すると、配車完了通知をグループトークにBotで配信しています。
この仕組みにより、LINE WORKSさえ見ていれば各自の配車スケジュールが確認できるだけでなく、日々の配車スケジュールがプッシュ通知で気付けることで確認の手間も軽減しています。
向井さん:
kintoneをデータベースとしたLINE WORKS上で動くミニアプリをWOFFで開発し、有給休暇申請など各種社内申請が行える仕組みを構築しました。
WOFFアプリはkintoneのデータベースとAPI連携しています。送信された申請内容はkintoneに反映され、管理職はkintone上で申請の承認を行います。申請結果はBotを通じて申請者のLINE WORKSに通知され、管理者と労務担当者のスケジュールに申請状況が自動登録されるようにしています。
常務取締役 環境事業部 部長 伊山さん:
当社は年間約350日稼働しており、泉州プラントでは3班に分けてそれぞれ異なるシフトを組んでいます。休日出勤や振替出勤、早番・遅番の調整、有給休暇を含む各種休暇の申請など、シフトの変更に関する調整も必要です。WOFFアプリによる申請手続きは、申請者側の負荷軽減だけでなく、管理側もkintoneに一元管理できたことで業務負担が軽減し、効率的なシフト管理を実現しています。
WOFFアプリの活用はどのように拡大される予定ですか。
・スマホのGPS情報を活用してkintone上に産廃コンテナの位置情報を登録できるWOFFアプリを開発
・IoTセンサーで産廃コンテナの空き容量も可視化し、スピーディに回収に向かえる環境を整えたい
向井さん:
産廃コンテナの位置情報を確認できるWOFFアプリを開発しました。産廃コンテナは排出現場で産業廃棄物の保管に使われ、そのまま収集運搬にも使えるため多くの現場に移動・設置されています。しかし、どこにどんな種類・サイズの産廃コンテナが何個を設置されているか正確に管理できておらず、産廃コンテナの設置場所や個数を確認するのに手間がかかっています。
そこで、各産廃コンテナにQRコードを貼り付け、現場にいるドライバーがWOFFアプリでQRコードを読み込み、スマホのGPSの位置情報を登録することで、コンテナの所在地をkintone上で管理できる仕組みを構築しました。これにより、産廃コンテナの所在地を確認する手間が大幅に削減できると期待しています。
産廃コンテナに貼り付けてあるQRコードをWOFFアプリで読み込み、コンテナの位置情報をGPS取得ボタンで入力すれば、kintoneに産廃コンテナ所在地が登録される
さらに、IoTセンサーを産廃コンテナに取り付けてリアルタイムに積載量を把握できる通知機能を構築できれば、お客さまからの連絡を待たずに回収に向かうことができます。将来的にはこのような可視化の仕組みを目指したいです。
今後LINE WORKSの活用をどのように発展させていきたいですか。
専務取締役 伊山さん:
産廃コンテナの位置情報や積載容量の管理だけでなく、WOFFアプリを使って配車依頼の自動化も実現したいと考えており、WOFFアプリの入力内容を配車頭で自動的に処理する仕組みを構築中です。さらに、社内問い合わせを減らすために、チャットボットでマニュアルを検索できる環境を整備したいと考えています。
現在、産業廃棄物処理業界は合併などによる企業間競争がますます激しくなってきています。引き続き、業務プロセスの改善を進め、競争力を強化するためにIT活用を推進していきます。
【お話を伺った方】
専務取締役
伊山 雄太さん
総務・経理部門をメインに事業部の管轄を担う。業界課題に積極的に取り組む。
常務取締役 環境事業部 部長
伊山 正義さん
主に堺本社工場および泉州プラントの管理を担当。
総務部 情報システム課 課長
向井 武士さん
社内業務フローの効率化や子会社の管理などに従事。LINE WORKSのWOFFやBotの開発も担う。
運搬部 管理運行課 課長
山科 幸平さん
システム導入などを推進しながら、主に運搬部門における配車関連業務を担当。
*配車頭…廃棄物の収集運搬に特化したAIを用いた配車管理サービス。詳細はこちら
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年11月当時のものです。