障害者就業・生活支援センター ピア宮敷は、千葉県いすみ市にある社会福祉法人 土穂会 ピア宮敷が、国の機関である千葉労働局と千葉県からの委託を受け運営している障がい者の支援機関です。障がいをお持ちの求職者とのコミュニケーションに課題を抱える中、求職者本人が使い慣れているLINEとチャットができるLINE WORKSを導入。速やかな意思疎通が実現し、自宅に訪問する必要が減り、移動時間を大幅に削減。業務時間外の連絡には自動応答にすることで職員のプライベートが守られ、適切な距離感で求職者への対応ができるようになりました。
【本事例のポイント】
- 求職者のLINEとつながることによりリモート支援が可能に
- 面談に要していた移動時間を大幅に削減
- 自動応答設定により、求職者との距離感と職員のプライベートを確保
御社の事業内容をご紹介ください。
鶴岡さん :
障害者就業・生活支援センターとは、全国各地の社会福祉法人などが国の行政機関である都道府県労働局から委託を受け運営している、障がい者のための支援機関です。就職を希望されるご本人との面談、ハローワークへの諸手続きのサポート、採用試験への面接同行、就職後の困りごとの相談、就職先の企業へのアフターフォローなど、就職活動中から就職後にいたるまで、ご本人が安定した生活を送れるよう支援しています。また、障がい者雇用を検討されている企業様へのアドバイスや利用できる制度のご案内なども担っております。なお、千葉県内には16か所の障害者就業・生活支援センターがあり、私たちは夷隅圏域(いすみ市・勝浦市・大多喜町・御宿町)を担当しております。
これまでどんな業務上の課題を抱えておられましたか。
鶴岡さん :
障がいをお持ちの求職者への就労支援は、これまで主に電話やメールで相談を受けてから、面談を重ねて進めていました。電話では正確な状況が把握できなかったり、こちらが意図していることが正しく伝わらなかったりと、意思疎通を図ることがむずかしいことが多々ありました。面談においても、自家用車をお持ちでない方や、公共交通機関が近くになく、ご来所のお願いができない方もいらっしゃいます。その際は私たちから訪問しますが、担当地区の範囲が非常に広く、お顔を見て話せば5分とかからない内容でも、場所によっては車で片道2時間かけて行かなければなりません。1日に複数のアポイントがあるので、スタッフは1日の仕事の時間配分にかなり悩まされていました。
溝上さん :
求職者がお持ちの障がいの種類や程度によっては、メールが使いこなせない方もいらっしゃいます。例えば知的な障がいをお持ちの方は、言葉を短い単語でしか理解できないので、こちらが長文を送ってしまうと余計に混乱させてしまう恐れがありました。SMSでは入力文字数に制限があり画像も送信できないので、伝えられる情報量が限られてしまいます。IT関連が苦手でスマホの通話アプリを使いこなせない方もいらっしゃるので、結局、直接会わなければやりとりが進まないということが多かったのです。
課題解決の手段としてLINE WORKSを選択した理由をお聞かせください。
鶴岡さん :
私たちにとって大きな決め手となったのは、LINE WORKSは求職者のLINEと直接つながりチャットができるという点でした。全く異なる新しいツールをご案内するよりも、障がいをお持ちの方が使い慣れているツールをそのまま活用できれば、ご本人への負担がかからずに済むと思いました。また、LINE WORKSとLINEを連携するときは特別な機材や複雑な手続きをする必要がないので、IT関連が苦手な方との間でもすぐにつながり、コミュニケーションをとることができます。新型コロナウイルスの感染対策として、当センターもリモートによる支援の導入も図っていかなければならない状況だったので、LINE WORKSはとても心強い連絡ツールとなると考えました。
障がい者の就職支援におけるLINE WORKSの活用シーンと導入効果をお聞かせください。
【トーク】一目でわかる情報伝達により移動時間が削減
【QRコード】名刺に印刷し、即時に連携
【おやすみモード】求職者との過度な連絡を控え、職員のプライベートに配慮
鶴岡さん :
求職者とは、担当職員との1:1のトーク機能でやりとりをしています。例えば、「履歴書の書き方がわからない」というご相談に対しては、記入例が掲載されている資料の画像データやPDFファイルを送信し、「これを見ながら書いてみてください」とお伝えしています。電話では説明しづらい資料でも、画像なら一目でわかるのでお互いに安心しますね。
こういったLINE WORKSで行うわずか5分のやりとりで、今まで通話や移動にかけていた時間が格段に減りました。移動だけでも、1件あたり少なくても往復1時間はかかっていました。例えば3人の方とLINE WORKSでつながって、やりとりができれば、3時間の移動コストを削減することができます。
溝上さん :
職員1人につき、多いときは1日当たり4~6件のアポイントがあります。時間が削減できた分、ほかの求職者との時間も確保できるようになったことはたいへんありがたいですね。
画像と文字のやりとりで意思疎通
鶴岡さん :
求職者のLINEとつながる際には、職員の名刺に印刷されたLINE WORKS IDのQRコードを読み込んでいただくことで簡単に友だち登録ができます。遠方にお住まいの方や、長期的なサポートを要するときなど、求職者のケースに応じてご提案しております。
鶴岡さん :
私たちは求職者と接するうえで、「文字として記録を残すこと」を心がけています。障がいの特性によっては、口頭での言葉より、文字に起こした言葉の方が理解しやすいからです。LINE WORKSのトークで、テキストや写真を送り合うことでスムーズに共通認識を持てるようになりました。今ではLINE WORKSが面談の役割を果たしています。
ご本人に対しても「これは記録として残ります」と必ずお話しています。第三者が見ている法的な記録ですと伝えることで、ご本人としてもプライベートのことをどこまで書いてよいかという良い線引きにもなりました。距離感が保たれ、対等な関係が築けています。
溝上さん :
各自で設定した時間は通知をOFFにできる「おやすみモード」にも大変助けられています。今までは会社支給の携帯電話で業務にあたっていましたが、勤務時間外にも求職者からの着信やSMSの受信メールが届き、それらが気がかりでなかなか休まらない日もありました。求職者への心地よい支援を目指すためにも、自分自身のプライベートも大切にしたいものです。職員のプライベートにも配慮してくれる機能があるということが、私はとても嬉しいポイントでした。
職員どうしではLINE WORKSをどのように活用されていますか。
【グループ】入電情報等、外出先でもリアルタイムに情報共有
【カレンダー】メンバー全員と共有し、アナログから完全移行
溝上さん :
基本的に職員は外出していることが多いので、必ず1名は電話受付として事務所に待機しています。障がい者雇用を推進されている企業やほかの就労支援施設、医療機関とも連携したり、担当地区の福祉課から求職者を紹介されたりすることもあるので、そういった関係機関からの問い合わせがあります。担当職員が不在で電話がつながらないことも多いので、その際にはトークグループへ「〇時〇分に、〇〇様から電話がありました」とすぐに共有しています。以前は職場に戻ってから回覧板を確認していましたが、トークグループなら即時に全員と共有できるので、外出先でもタイミングを逃さず折り返し等の対応ができるようになりました。
鶴岡さん :
カレンダー機能も毎日のように活用しています。外出先でもリアルタイムで入力したり、自分やメンバーの予定を確認したりすることができるので、求職者や関係機関からの問い合わせにもすぐに答えることができています。今までは事務所のホワイトボードでスケジュール管理をしていましたが、カレンダー機能を使いはじめて2か月ほどでホワイトボードへの書き込みがなくなり、自然に完全移行できました。
LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。
鶴岡さん :
私たちは当センターを利用された求職者が、就職されたあとも長く働いていけるようなサポートとして、同じ地域で在職されている障がい者の方々との交流会や、就労セミナーなども企画しています。その際に、アンケート機能を使って、求職者にどんなニーズがあるのかなど参考にしたいですね。今まで汲み取れきれなかった求職者の本音を、新たに発掘できるのではないかという希望が見えてきました。
溝上さん :
求職者のそれぞれの個性を活かすなど、ご本人に向き合っていくには、地域の皆様とのコミュニケーションもとても大切です。私はLINE WORKSで外部の方とつながり・情報共有し、「社会で働きたいという障がい者」と「雇いたいという企業」の架け橋となれるようなサポートを目指していきたいです。
【お話を伺った方】
主任就業支援員
鶴岡裕太さん
就業支援員
溝上忍さん
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2020年12月当時のものです。