物流DXとは|動態管理・配車管理システムの違いと進め方、補助金を解説

物流DXとは、機械化やデジタル化で作業の進め方や働き方を改善し、物流のこれまでのあり方を変える取り組みです。   背景には2024年問題と人手不足があり、2026年4月からは物流効率化法の特定事業者の義務も始まりました。

目次

    物流DXとは|定義とデジタル化との違い

    物流DXは、デジタル化で集めたデータを使い、配車や荷役、荷主との取引の進め方まで見直していく取り組みです。運送会社の場合、手書きの日報をデータで残すのはデジタル化の段階で、記録した荷待ち時間をもとに荷主と受付時間を話し合うところまで進めると物流DXにあたります。

    国土交通省は物流DXを、デジタル化・機械化によって作業の改善や働き方改革を実現し、これまでの物流のあり方を変える取り組みと説明しています。物流産業のビジネスモデルそのものの革新までを目指す点が、単なるシステム導入との違いです(出典: 国土交通省「物流DXの推進」)。2026年3月に策定された総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)でも、物流標準化と物流DX・GXの推進は、今後の物流政策の5つの観点の一つです。

    物流DXは、デジタル化やIT化と混同されることがあります。経済産業省の「DXレポート2(中間取りまとめ)」はDXを3つの段階に分けて説明しており、運送会社の例に当てはめると次のようになります。

    段階 DXレポート2での説明 運送会社での例
    デジタイゼーション アナログ・物理データのデジタルデータ化 手書きの日報や紙の点呼記録をデータで残す
    デジタライゼーション 個別の業務・プロセスのデジタル化 配車計画をシステムで立てる、完了報告をスマートフォンから入力する
    デジタルトランスフォーメーション 全社的な業務・プロセスのデジタル化と、顧客起点の価値創造のための事業やビジネスモデルの変革 記録した荷待ち時間をもとに荷主と受付時間を話し合う、運行の実績から配車と人員配置を組み直す

    業務や取引を見直すには、判断の材料になるデータが欠かせません。記録が残っていなければ、業務の見直しも荷主との話し合いも、担当者の経験と記憶に頼ることになります。

    物流DXが求められる背景|2024年問題・人手不足・2026年4月からの義務

    物流DXが求められる背景には、ドライバーの労働時間の上限と人手不足があり、2026年4月からは一定規模以上の荷主・物流事業者の義務も始まりました。トラックドライバーの時間外労働の上限は年960時間になり、直近30年間で物流件数は概ね2倍に増えたため、限られた時間と人数で運ぶための見直しが求められています。

    2024年問題と輸送力不足の見通し

    2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働の上限は、臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間になりました。あわせて改正された改善基準告示(2024年4月適用)では、1年の拘束時間を原則3,300時間以内としています。勤務終了後の休息期間は継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らないことが求められます(出典: 厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」)。

    国の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」は、2023年8月の最終とりまとめで輸送力不足の見通しを示しました。具体的な対応をしなかった場合、2024年度に約14%、2030年度に約34%の輸送力が不足する可能性があるという推計で、民間の研究機関が試算しました。総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)は、2024年度の約14%の不足を官民の取り組みで概ね克服できたとしています。それでも輸送力が逼迫した状況に変わりはなく、荷待ち・荷役等の時間の短縮や積載効率の向上などに引き続き取り組む必要があるとされました。

    小口・多頻度化と人手不足

    総合物流施策大綱によると、直近30年間で1件当たりの平均貨物量は約3分の1に減り、物流件数は概ね2倍に増えました。背景にはEC(電子商取引)市場の急成長があり、EC市場の規模は2015年から2024年にかけて約1.9倍に拡大しました。荷物が小口になるほど、同じ量を運ぶための配送の件数と手配の手間が増えます。

    人手の確保も課題です。中小企業庁の2026年版中小企業白書は、厚生労働省「労働経済動向調査」をもとに、労働者の不足感が特に強い業種として建設業、「運輸業、郵便業」、情報通信業などを挙げています。

    2026年4月から始まった物流効率化法の義務

    2024年に改正された物流効率化法により、2025年4月から荷主と物流事業者に努力義務が課されました。対象は、荷待ち・荷役等の時間の短縮や積載効率の向上などの取り組みです。2026年4月からは、一定規模以上の荷主と物流事業者が特定事業者に指定され、中長期計画の作成や定期報告などが義務になりました。特定事業者のうち荷主には、物流統括管理者(CLO)の選任も義務付けられています(出典: 国土交通省「物流効率化法について」)。

    トラック事業者で特定事業者に当たるのは、保有車両台数が150台以上の事業者です(出典: 国土交通省「改正物流効率化法の施行に伴う義務」リーフレット)。150台に満たない運送会社も、努力義務の対象です。取引先の荷主が特定事業者であれば、荷主の定期報告には荷待ち時間などの計測結果が含まれます。運送会社の側でも荷待ち時間を記録しておくと、荷主と同じ数字をもとに改善を話し合えます。

    物流DXの主な取り組み領域と期待できる効果

    物流DXの取り組みは、輸配送、倉庫・荷役、荷主との連携、現場の連絡の4つに分けると、自社の課題に近い領域から選べます。どの領域でも、手書きの記録や口頭での報告をデータに置き換えると、確認の電話や再入力にかかる時間を減らせます。拘束時間や荷待ち時間が記録として残れば、労務管理と荷主との話し合いの両方に使えるのも利点です。

    領域 主な仕組み・ツール 解決したい課題の例
    輸配送・運行管理 動態管理、配車管理システム、デジタコ(デジタル式運行記録計)、点呼システム、労務管理システム 現在地を確かめる電話、拘束時間の集計、点呼・日報の手書き
    倉庫・荷役 WMS(倉庫管理システム)、トラック予約受付システム、自動倉庫・無人搬送機 入出庫の手作業、トラックの荷待ち、ピッキングの人手
    荷主・企業間の連携 受発注のデータ化、電子契約・電子伝票、物流データの共有 電話・FAXでの受注、伝票の再入力、請求時の実績の確認
    現場の連絡 業務用無線、IP無線、トランシーバーアプリ、ビジネスチャット 指示が届くまでの時間、聞き漏らし、やり取りの記録が残らない

    国土交通省の「中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き」(2023年3月発行)によると、大企業・中小企業ともに、特定の担当者に頼っていた業務をデジタル化した事例が多く見られました。担当者が替わるときの引き継ぎの負担を減らせることも、物流DXの効果の一つです。

    荷主・企業間の連携は、自社だけでは進めにくい領域です。トラック予約受付システムや車両動態管理システムは、荷主や倉庫ごとに別の会社が提供していることがあり、使う側の運送事業者の負担になっています。総合物流施策大綱はこれを「多画面問題」と呼び、物流データの標準化を通じてシステム同士の連携を促す方針です。取引先ごとに入力する画面が増えそうなときは、データの出力や他のシステムとの連携に対応しているかを導入前に確かめておくと、二重入力を減らせます。

    動態管理と配車管理システムの違い

    動態管理は走行中の車両の実績を、配車管理システムは配車の計画を扱う仕組みで、2つをつなげると手配が速くなります。遅れが出た時点で、ドライバーに確認の電話をかけずに代わりの車両を探せるためです。

    動態管理とは|GPS・デジタコとの違い

    動態管理は、車両やドライバーの位置と状態をリアルタイムで把握し、配車計画と実際の運行のずれを確かめる仕組みです。配車担当の画面では、主に次の情報を確認できます。

    • 車両の現在地と移動経路
    • 到着予定時刻とのずれ
    • 走行・停止・荷待ちといった状態
    • 拘束時間・休息期間の積み上がり

    近い言葉に、デジタコとGPSロガーがあります。扱う情報は重なりますが、使う目的は次のように異なります。

    用語 主な目的 主に扱う情報 リアルタイム性
    デジタコ 法令で求められる運行の記録 速度・距離・時間 事後の記録が中心
    GPSロガー 位置情報の記録 走行経路・停車位置 製品により異なる
    動態管理 運行状況の把握と配車の判断 位置・状態・予定との差 リアルタイムが前提

    デジタコは運行を記録として残す機器で、動態管理はいま走っている便の手配に使う仕組みです。

    配車管理システムとは

    配車管理システムは、荷物・車両・ドライバー・ルートを組み合わせて、日々の配車計画を立てる仕組みです。紙や表計算ソフトで行っていた作業を、データとして残しながら進められます。主な機能は次のとおりです。

    • 荷物情報(発地・着地・時間指定など)の登録
    • 車両・ドライバーの稼働状況の管理
    • 運行計画の作成と変更
    • デジタコ・動態管理・会計システムとの連携

    最終的に配車を決めるのは配車担当です。ベテランの担当者が頭の中で使っていた判断材料をデータとして残しておくと、ほかの担当者でも計画を組みやすくなります。

    2つをつなげると変わること

    配車計画と動態管理の実績を同じ画面で見られると、遅れが出た時点で代わりに回せる車両を探せます。どちらか一方を先に導入する場合も、あとで連携できる製品を選んでおけば、入れ替えの手間を省けるでしょう。

    物流現場の連絡手段と運転中のルール

    物流現場の連絡は、すぐ伝えたい指示は音声、あとから確かめたい報告は文字と手段を使い分けます。運転中のドライバーには返事を求めず、停車してから確認してもらうルールも決めておきます。道路交通法は、走行中に携帯電話を手に持って通話することや、画面を注視することを禁止しているためです。

    連絡手段の選択肢

    物流の現場で使われる主な連絡手段は次のとおりです。

    選択肢 特徴 免許・登録 合う使い方
    デジタル簡易無線 無線機同士で直接通話する。携帯電話の回線がなくても使える 免許または登録が必要 倉庫・構内など近い範囲の連絡
    IP無線 携帯電話の回線を使う専用の無線機 利用者の手続きは不要 広い範囲での運行の連絡
    トランシーバーアプリ スマートフォンでボタンを押して話す 利用者の手続きは不要 配車担当・倉庫・拠点の間の連絡
    ビジネスチャット 文字や写真のやり取りが中心で、記録が残る 利用者の手続きは不要 報告・記録・荷主との連絡

    携帯電話の回線を使う機器は、電気通信事業者が免許に必要な手続きをとっているため、利用者が免許の手続きをする必要はありません(出典: 北海道総合通信局「電波利用環境FAQ(よくある質問)」)。車両との連絡にどの方式を使うかを決めるときは、トラックで使う無線機とアプリの種類と選び方を確かめてから候補を絞りましょう。

    LINE WORKSラジャーは、スマートフォンをトランシーバーのように使えるアプリの一つです。ボタンを押して話すとグループに音声が届き、やり取りは履歴に残ります。アドバンストプランでは、発話を自動でテキストに変換する機能も使えます。離れた拠点や倉庫とも、インターネットにつながっていれば会話が可能です。

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    運転中の連絡は停車してから

    道路交通法は、走行中に携帯電話を手に持って通話することや、画面を注視することを禁止しています。警察庁は、運転中にどうしても携帯電話を使う必要があるときは、安全な場所に停車してから使うよう呼びかけています(出典: 警察庁「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」)。

    物流DXの進め方|中小運送会社の4ステップ

    中小運送会社の物流DXは、業務を棚卸しして課題を絞り、一部の車両や人から試し、効果を確かめてから広げると無理なく進められます。この順番なら、費用と社内の負担を小さく抑えながら始められるためです。

    物流DXが進みにくい理由

    国土交通省の手引きにまとめられた物流事業者へのアンケートでは、運送事業者の業務は全体的にデジタル化が進んでいませんでした。一方で、アナログの業務を続けている事業者にその業務へのシステムの導入意向をたずねると、多くの工程で50%前後が「導入の機会があれば、導入したい」と答えています。

    デジタル化の意向はあると答えた事業者に導入の課題をたずねると(複数回答)、導入費用と維持費用を挙げる事業者が多くいました。社内での優先度が低い、デジタル化を進める部署や人材がいない、似たシステムが多くてどれを選べばよいかわからない、といった体制や知識の面の課題を挙げた事業者もいます。

    Step1 業務を棚卸しし、課題を絞る

    ツールを探す前に、いまの業務のどこに時間がかかっているかを書き出します。

    • 配車担当の1日のタスクと、それぞれにかかる時間
    • ドライバーと事務所の間の電話・折り返しの回数
    • 荷主との受発注・請求で紙やFAXに頼っている業務
    • 点呼・日報・デジタコの記録を再入力している作業

    書き出した業務は、時間がかかる、ミスが起きやすい、特定の人しかできない、のどれに当たるかで優先順位を付けます。国土交通省の手引きによると、デジタル化に成功した事業者は、最初に業務の課題とデジタル化で実現したい姿を描き、デジタル化をそのための手段と位置づけていました。

    Step2 時間で測れる目標を決め、ツールを選ぶ

    配車担当の確認電話を半分にする、締め日の実績確認を1日で終える、といった時間で測れる目標を決めてからツールを探します。選ぶときは次の3点を確かめておくと安心です。

    • 使っているデジタコや会計ソフトとデータを連携できるか
    • 一部の車両や人数から始められる料金体系か
    • ドライバーが使う端末で無理なく操作できるか

    Step3 一部の車両・人から、紙と並行して試す

    最初から全車両・全員を切り替えず、一部の車両やドライバーを選んで移行期間を設けます。紙の報告とデジタルを並行して使いながら操作を覚えてもらうと、慣れた方法が残るぶん現場の負担を抑えられます。

    Step4 目的を伝え、効果を測って広げる

    位置情報や点呼のデジタル化は、ドライバーの働き方に直接かかわる取り組みです。導入前に、何のために使うのか、ドライバーの負担がどう変わるのかを説明しておくと、現場の理解を得やすくなります。

    試したあとは、Step2の目標と比べて効果を確かめます。効果を浮いた時間で示すと、現場にも経営にも伝わりやすいでしょう。

    物流DXに使える補助金

    物流DXに使える補助金には、中小企業向けのIT・省力化の補助金と、国土交通省の物流事業者向けの支援事業があります。国土交通省の支援事業では、2026年の公募で配車計画・運行管理などのシステムや車両動態管理システムが対象例に挙がっています。補助率や上限額、公募の期間は回ごとに変わる点に注意が必要です。

    制度 実施 対象になりうる投資の例
    デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) 中小企業庁・中小機構 業務のデジタル化のためのITツール(クラウドシステムなど)。IT導入支援事業者を通じて申請する
    中小企業省力化投資補助金 中小企業庁・中小機構 カタログから選ぶ汎用の省力化製品(カタログ注文型)、現場に合わせた設備導入・システム構築(一般型)
    中小物流事業者の労働生産性向上事業(テールゲートリフター等導入等支援) 国土交通省 配車計画・運行管理などの業務効率化システム、予約受付システム、車両動態管理システム、テールゲートリフターなど(2026年の公募での対象例)
    中小物流事業者の労働生産性向上事業(物流施設におけるDX推進実証事業) 国土交通省 倉庫などの物流施設で、システム構築・連携と自動化・機械化機器の導入を同時に行う取り組み(2026年の公募での要件)

    申請前に各公式サイトで最新の公募要領を確認してください。デジタル化・AI導入補助金で申請する場合は、IT導入支援事業者を通じて手続きを進めるため、申請から補助金を受け取るまでの流れを相談の前に確かめておきましょう。補助の対象期間が終わったあとの利用料や保守費は、自社の負担になります。Step1で決めた課題に合うツールを先に決め、そのあとで使える制度を探す順番がおすすめです。

    よくある質問

    デジタコの装着は義務ですか?

    車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用トラックなどは、運行記録計で瞬間速度・運行距離・運行時間を記録し、その記録を1年間保存する義務があります(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条)。国土交通省は同規則の解釈及び運用についての通達で、運行記録計は荷待ち時間・荷役時間の可視化を含む労務管理にも有効だとして、デジタル式の導入を推奨しています。

    物流DXだけで2024年問題は解決しますか?

    物流DXは対応の手段の一つで、それだけで解決できるものではありません。荷待ち・荷役時間の短縮や運賃の適正化、中継輸送など、荷主や業界全体の取り組みとあわせて進める必要があります。物流DXで記録したデータは、こうした取り組みを荷主と話し合うときの材料になります。

    物流DXが進むとドライバーの仕事はなくなりますか?

    政府は、高速道路でのレベル4自動運転トラックの社会実装を、2026年以降のできるだけ早い時期に実現することを目指しています。そのうえで総合物流施策大綱は、自動運転トラックなどの社会実装が進むなかでも、エッセンシャルワーカーであるトラックドライバーの役割は引き続き重要であることに留意する必要があるとしています。物流DXで目指すのは、荷待ちや事務作業の負担を減らし、限られた人数でも必要な輸送を続けられるようにすることです。

    まとめ

    物流DXを進めるうえで押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 物流DXは、デジタル化で集めたデータを使い、業務や取引の進め方まで変える取り組み
    • 背景には2024年問題と人手不足、荷物の小口・多頻度化があり、2026年4月からは物流効率化法の特定事業者の義務も始まった
    • 動態管理は実績、配車管理システムは計画を扱い、2つをつなげると手配が速くなる
    • 中小運送会社は、棚卸し、目標設定、一部での試行、展開の順に進める

    何から始めるか迷う場合は、配車担当が1日に受ける電話の回数と、ドライバーの報告が届くまでの時間を数えるところから始めてみてください。課題が数字で見えると、必要なツールも絞り込みやすくなります。

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