物流DXとは|動態管理・配車管理システムの違いと進め方、補助金を解説

物流DXとは、機械化やデジタル化を通じて、物流のこれまでのあり方を変える取り組みです。   この記事では、求められる背景と取り組み領域、動態管理と配車管理システムの違い、中小運送会社の進め方と補助金を解説します。

目次

    物流DXとは|定義とデジタル化(IT化)との違い

    物流DXは、紙や電話の作業をデジタルに置き換えるだけでなく、集まったデータで業務や取引の進め方まで変える取り組みです。

    国土交通省は物流DXを、物流の機械化・デジタル化を通じてオペレーション改善や働き方改革を実現し、これまでの物流のあり方を変える取り組みと位置づけています。物流産業のビジネスモデルそのものの革新までを視野に入れている点が、単なるシステム導入との違いです(出典: 国土交通省「物流DXの推進」)。2026年3月に閣議決定された総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)でも、物流標準化や物流DX・GXの推進が5つの施策の柱の一つに掲げられています。

    よく混同されるのが、デジタル化(IT化)との違いです。運送会社の例で比べると、次のようになります。

    段階 内容 運送会社での例
    デジタル化(IT化) アナログの作業をデジタルに置き換える 手書きの日報をアプリ入力にする、事務所への電話での完了報告をスマートフォンからの入力にする
    物流DX 集まったデータを使い、業務や取引の進め方を変える 記録した荷待ち時間をもとに荷主と受付時間を見直す、運行の実績から配車計画を組み直す

    デジタル化は物流DXの入口にあたります。データが残っていなければ、業務の見直しも荷主との交渉も、経験と記憶に頼るしかないためです。

    物流DXが求められる背景|2024年問題・人手不足・法改正

    ドライバー1人が働ける時間に上限がかかったうえに人手不足と法改正が重なり、少ない人数で運べる仕組みが必要になっています。

    2024年問題と輸送力不足の見通し

    2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働の上限は年960時間になりました。あわせて改正された改善基準告示では、1年の拘束時間は原則3,300時間以内とされました。勤務終了後の休息期間は、継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らないことと定められています(出典: 厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」)。

    国の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」は、具体的な対応を行わなかった場合、2024年度に約14%、2030年度に約34%の輸送力が不足する可能性があると推計しました。総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)によると、2024年度の約14%は官民の取り組みで概ね克服できたものの、輸送力が逼迫している状況は変わっていません。2030年度に向けては、荷待ち・荷役時間の短縮や積載効率の向上に引き続き取り組む必要があるとされています。規制の中身は運送業の2024年問題の解説で詳しく紹介しています。

    人手不足とアナログ業務

    2026年版中小企業白書では、業種別の労働者の過不足感を見ると、「運輸業、郵便業」は建設業や情報通信業などとともに不足感が強い業種に挙げられています(出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書」第1部第1章第3節)。

    一方で、国土交通省が中小物流事業者を対象に行った調査では、運送事業者の業務は全体的にデジタル化が進んでいませんでした。アナログの業務を続けている事業者の50%前後が、多くの工程で機会があればシステムを導入したいと答えています。意向はあっても進められていない状態です(出典: 国土交通省「中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き」)。配車はホワイトボードと電話、完了報告は事務所への電話、日報は手書きという運用では、同じ人数で扱える情報の量に限りがあります。

    2026年4月からの物流効率化法の義務

    改正された物流効率化法により、2025年4月からすべての荷主・物流事業者に、荷待ち・荷役等時間の削減や積載効率の向上などの努力義務が課されています。2026年4月からは、一定規模以上の荷主・物流事業者が特定事業者に指定され、中長期計画の作成や定期報告が義務になりました。荷主には物流統括管理者(CLO)の選任も義務付けられています(出典: 国土交通省「物流効率化法について」)。荷待ち時間などを記録し、荷主と数字をもとに話し合える状態をつくることは、特定事業者に当たらない中小の運送会社にとっても意味が大きくなっています。

    物流DXの主な取り組み領域|輸配送・倉庫・荷主連携・現場の連絡

    物流DXは輸配送、倉庫・荷役、荷主との連携、現場の連絡の4領域に分けると、どこから手を付けるかを決めやすくなります。

    領域 主な仕組み・ツール 解決したい課題の例
    輸配送・運行管理 動態管理、配車管理システム、デジタコ、点呼システム、労務管理システム 現在地を確かめる電話、拘束時間の管理、点呼・日報の手作業
    倉庫・荷役 WMS(倉庫管理システム)、トラック予約受付システム、自動倉庫・無人搬送機 入出庫の手作業、トラックの荷待ち、ピッキングの人手
    荷主・企業間の連携 受発注のデータ化、電子伝票・電子契約、物流データの共有 電話・FAXでの受注、伝票の再入力、請求時の実績照合
    現場の連絡 業務用無線、IP無線、トランシーバーアプリ、ビジネスチャット 指示が届くまでの遅れ、聞き漏らし、やり取りの記録が残らない

    荷主・企業間の連携は、自社だけでは進めにくい領域です。総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)は、多画面問題を課題に挙げています。トラック予約受付システムや車両動態管理システムが荷主や倉庫ごとに別のベンダーから提供され、運送事業者の負担になっている問題です。取引先ごとに入力するシステムが増えそうなときは、データの出力や他システムとの連携に対応しているかを確かめておくと、二重入力を減らせます。

    動態管理と配車管理システムの違い

    動態管理は走っている車両の実績を見える化し、配車管理システムは配車計画を立てる仕組みで、連携させると手配が速くなります。

    動態管理とは|GPS・デジタコとの違い

    動態管理は、車両やドライバーの位置・状態をリアルタイムで把握し、配車計画と実際の運行のずれを見える化する仕組みです。配車担当の画面で、主に次の情報を確認できます。

    • 車両の現在地と移動経路
    • 到着予定時刻とのずれ
    • 走行・停止・荷待ちといった状態
    • 拘束時間・休息時間の積み上がり

    近い言葉に、デジタコ(デジタル式運行記録計)とGPSロガーがあります。3つは重なる部分もありますが、目的が異なります。

    用語 主な目的 主に扱う情報 リアルタイム性
    デジタコ 法令に基づく運行の記録 速度・距離・時間 事後の記録が中心
    GPSロガー 位置情報の記録 走行経路・停車位置 製品により異なる
    動態管理 運行状況の見える化と配車判断 位置・状態・予定との差 リアルタイムが前提

    デジタコは運行を記録として残すための機器で、動態管理はいま走っている便をどう手配するかを支える仕組みです。両方を連動させて扱える製品もあります。

    配車管理システムとは

    配車管理システムは、荷物・車両・ドライバー・ルートを組み合わせて、日々の配車計画を立てる仕組みです。ホワイトボードやExcelで行っていた作業を、データとして残しながら進められます。一般的な機能は次のとおりです。

    • 荷物情報(発地・着地・時間指定など)の登録
    • 車両・ドライバーの稼働状況の管理
    • 運行計画の作成と変更
    • デジタコ・動態管理・会計システムとの連携

    最後に配車を決めるのは配車担当です。経験のある担当者の頭の中にある判断材料をデータにし、ほかの人でも計画を組めるようにする道具と考えると、導入の目的がはっきりします。

    2つを連携させると変わること

    計画(配車管理)と実績(動態管理)がつながると、遅れが出た時点で代わりに回せる車両を同じ画面で探せます。ドライバーへの確認電話から手配を始める必要がなくなります。どちらか一方を先に入れる場合も、あとで連携できる製品を選んでおくと二度手間を防げます。

    物流現場の連絡手段も見直しの対象になる

    車両の状況が見えても、指示が届くのが遅ければ手配は速くなりません。連絡手段は物流DXの土台として見直したい領域です。

    MCA無線は2027年と2029年にサービス終了

    運送業で長く使われてきたMCA無線は、中継局を介して広い範囲で通話できる業務用無線です。提供元の一般財団法人移動無線センターは、MCAアドバンスを2027年3月31日に、800MHz帯デジタルMCAを2029年5月31日に終了すると発表しています(出典: 総務省 電波利用ポータル「『MCA無線』サービス終了に伴う再免許等手続について」)。利用中の場合は、終了日から逆算して移行先を決めておく必要があります。移行先の比べ方はMCA無線のサービス終了と代替策の解説にまとめています。

    通信手段の選択肢

    物流の現場で検討される主な通信手段は次のとおりです。

    選択肢 特徴 免許・登録 向いている使い方
    デジタル簡易無線 専用の無線機同士で直接通話する。携帯電話の回線がなくても使える 登録または免許が必要 倉庫・構内などの近距離の連絡
    MCA無線 中継局経由で広い範囲と通話する 免許が必要 2027年・2029年の終了に向け移行先の検討が必要
    IP無線 携帯電話の回線を使う専用の無線機 不要 広い範囲での運行連絡
    トランシーバーアプリ スマートフォンでボタンを押して話す 不要 配車担当・ドライバー・倉庫・拠点間の連絡
    ビジネスチャット 文字や写真のやり取りが中心で、記録が残る 不要 報告・記録・荷主との連絡

    1つにまとめる必要はありません。すぐに伝えたい連絡は音声、あとから確かめたい報告は文字、と使い分けるのが現実的です。トラックで使う無線機やアプリの違いはトラック無線・トランシーバーの選び方で比較しています。

    運転中の安全を前提にした使い方

    運転中に携帯電話を手に持って通話したり、画面を注視したりすることは、道路交通法で禁止されています(出典: 警察庁「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」)。スマートフォンを連絡に使う場合は、ハンズフリー機器を使う、走行中の返事は求めず停車中に確認してもらう、といった安全のルールを先に決めておきましょう。

    音声が文字で残る仕組みがあると、ドライバーは停車中に内容を読み返せ、配車担当も聞き逃した連絡をあとから確認できます。倉庫や構内のように持ち場を離れにくい現場では、トランシーバーのように一斉に声を届けられる連絡手段が役立ちます。

    スマートフォンをトランシーバーのように使えるアプリには、LINE WORKS ラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すとグループに音声が届いて履歴に残り、アドバンストプランでは発話を自動で文字に変換できます。インターネットにつながっていれば、離れた拠点や倉庫とも会話できます。

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    物流DXの進め方|中小運送会社の4ステップ

    中小運送会社は、業務の棚卸しで課題を決め、一部の車両や人から試し、効果を確かめて広げる順に進めると無理がありません。

    国土交通省の調査で、デジタル化したいのに進められていない運送事業者が挙げた課題は、導入費用や維持費用が中心でした。そのほか、社内での優先度が低い、推進する部署や人材がいない、どのシステムを選べばよいかわからない、といった体制や知識の面の課題もあります。次の4ステップは、こうしたつまずきを避けるための順序です。

    Step1 業務を棚卸しし、課題を絞る

    ツールを探す前に、いまの業務のどこに時間がかかっているかを書き出します。

    • 配車担当の1日のタスクと、それぞれにかかる時間
    • ドライバーと事務所の間の電話・折り返しの回数
    • 荷主との受発注・請求で紙やFAXに頼っている業務
    • 点呼・日報・デジタコの記録を再入力している作業

    書き出した業務は、時間がかかっている、ミスが起きやすい、特定の人しかできない、のどれに当たるかで優先順位を付けます。国土交通省の手引きでも、デジタル化に成功した事業者は最初に業務の課題と実現したい姿を描き、デジタル化をその手段と位置づけていたとまとめられています。

    Step2 時間で測れる目標を決め、ツールを選ぶ

    配車担当の確認電話を半分にする、締め日の実績照合を1日で終える、といった時間で測れる目標を決めてからツールを探します。選ぶときは次の3点を確かめておくと安心です。

    • 使っているデジタコや会計ソフトとデータを連携できるか
    • 一部の車両や人数から始められる料金体系か
    • ドライバーがスマートフォンで無理なく操作できるか

    Step3 一部の車両・人から、紙と並行して試す

    最初から全車両・全員を切り替えず、一部の車両やドライバーを選んで移行期間を設け、紙の報告とデジタルを並行して使いながら操作を覚えてもらいます。慣れた方法を残したまま一部から試すと、現場の負担と抵抗を小さくできます。

    Step4 目的を伝え、効果を測って広げる

    ドライバーから見ると、位置情報や点呼のデジタル化は監視のように感じられることがあります。導入前に、まず会社自身がツールのメリットを理解したうえで、ドライバーの労働環境の改善にもつながることを丁寧に説明しておきましょう。

    試したあとは、Step2の目標と比べて効果を確かめます。効果を金額ではなく浮いた時間で示すと、現場にも経営にも伝わりやすくなります。

    物流DXに使える補助金

    運送会社が使える補助金には、国のITツール向け補助金と国土交通省の物流事業者向け支援があり、内容は年度ごとに変わります。

    制度 実施 対象になりうる投資の例
    デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) 中小企業庁・中小機構 業務のデジタル化のためのITツール(クラウドシステムなど)
    中小企業省力化投資補助金 中小企業庁・中小機構 カタログから選ぶ省力化製品(カタログ注文型)、現場に合わせた設備導入・システム構築(一般型)
    中小物流事業者の労働生産性向上事業 国土交通省 配車計画・運行管理システム、車両動態管理システム、予約受付システム、テールゲートリフターなど(令和7年度補正予算による公募での対象例)

    対象や補助率、公募期間は回ごとに変わるため、申請前に各公式サイトで最新の公募要領を確認してください。IT系の補助金の申請の流れはデジタル化・AI導入補助金の解説で紹介しています。補助金に合わせて大きなシステムを選ぶと、補助の対象にならない維持費があとから負担になります。Step1で決めた課題に合うツールを先に決め、使える制度を探す順序がおすすめです。

    よくある質問

    デジタコの装着は義務ですか?

    車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用トラックは、運行記録計で瞬間速度・運行距離・運行時間を記録し、1年間保存することが義務です(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条)。アナログ式でも要件を満たせますが、デジタル式は記録をパソコンで集計しやすく、労務管理などに活用しやすくなります。

    物流DXだけで2024年問題は解決しますか?

    物流DXは対応手段の一つです。荷待ち・荷役時間の削減や運賃の適正化、中継輸送など、荷主や業界全体の取り組みとあわせて進める必要があります。DXは、同じ時間の中で無駄を減らすための土台として位置づけるとよいでしょう。

    物流DXが進むとドライバーの仕事はなくなりますか?

    国は自動運転トラックの社会実装を進めています。一方で総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)は、エッセンシャルワーカーであるトラックドライバーの役割は引き続き重要であることに留意する必要があるとしています。物流DXの主な狙いは、荷待ちや事務作業の負担を減らし、限られた人数でも運べる量を保つことです。

    まとめ

    物流DXを進めるうえで押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 物流DXは、デジタル化で集めたデータを使い、業務や取引の進め方まで変える取り組み
    • 背景は2024年問題と人手不足、2026年4月から本格化した物流効率化法の義務
    • 動態管理は実績、配車管理システムは計画を扱い、連携させると手配が速くなる
    • 中小運送会社は、棚卸し、目標設定、一部での試行、展開の順に進める

    何から始めるか迷う場合は、配車担当が1日に受ける電話の回数と、ドライバーからの報告が届くまでの時間を数えるところから始めてみてください。課題が数字で見えると、必要なツールは自然に絞られていきます。

    配車担当・ドライバー・倉庫の間の音声連絡を見直したい場合は、スマートフォンをトランシーバーのように使える LINE WORKS ラジャーも選択肢の一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。

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