職場の「言った言わない」はなぜ起きる?原因・対処法・防止策

職場の「言った言わない」は、口頭で伝えた内容が記録に残らず、伝えた側と受け取った側の記憶や解釈が食い違うことで起きます。   起きたときはどちらが正しいかより、事実の確認と業務の立て直しを先にします。

目次

    「言った言わない」が起きる主な原因

    職場の言った言わないの多くは、口頭の内容が記録に残らないことに、記憶や解釈のずれが重なって起きます。口頭の指示や相談の内容は会話が終わると当事者の記憶にしか残らず、人の記憶はあとから受け取った情報の影響も受けるためです。

    口頭のやり取りは記録に残らない

    メールやチャットでは、いつ誰が何を送ったかが履歴に残ります。口頭の指示や相談の内容は、会話が終わると当事者の記憶にしか残りません。後日食い違いに気づいても確かめる材料がないため、お互いが自分の記憶をもとに話すことになります。

    記憶はあとから変わることがある

    人の記憶は、あとから受け取った情報の影響を受けます。目撃証言を扱う心理学の研究では、出来事を見たあとに誤った情報を聞くと、その出来事の記憶が不正確になる現象が報告されています。この現象は誤情報効果と呼ばれます(参考: 厳島行雄「誤情報効果研究の展望」認知科学3巻1号)。

    人には、自分の考えに合う情報でその考えを確かめようとする傾向もあり、確証バイアスと呼ばれます。そのため、どちらかが嘘をついているとは限りません。お互いが本心から「言った」「聞いていない」と感じている場合もあります。

    聞き違いやあいまいな指示で解釈がずれる

    騒がしい場所や忙しい時間帯に受けた連絡では、聞き取れなかった部分を推測で補ってしまうことがあります。「なるべく早く」「いつもの感じで」といった指示も、期限や範囲の受け取り方が人によって変わります。伝えた側は伝えたつもり、受け取った側は分かったつもりのまま作業が進むため、食い違いに気づくのは結果が出てからです。

    伝言や一対一の連絡で情報が抜ける

    口頭の連絡を一人ずつ順に伝えていくと、途中で内容の一部が省かれたり、一人だけ伝え漏れたりします。シフト交代や休み明けのように、その場にいなかった人へあとから伝える場面では、とくに抜けが出やすくなります。

    起きやすい場面と、繰り返されると困ること

    口頭で指示や変更が伝わり、その場で記録を残しにくい場面ほど起きやすく、繰り返されると職場の負担が増えます。上司からの口頭指示、会議、取引先との電話、シフト交代、手がふさがる現場での声かけでは、期限や担当、対応済みかどうかが食い違いやすい内容です。

    場面 食い違いやすい内容
    上司や先輩からの口頭指示 期限、作業の範囲、優先順位
    会議・打ち合わせ 決まったこと、担当者、次の期限
    取引先との商談や電話 納期、金額、仕様の変更
    シフト交代・申し送り 対応済みかどうか、引き継ぎ事項
    介護・建設・飲食・小売など、手がふさがる現場での声かけ 聞き返せなかった指示、作業の順番

    言った言わないがめんどくさいと感じるのは、決め手になる記録がないまま、事実の確認や気持ちの整理に本来の業務とは別の時間を使うからです。担当や期限があいまいなまま作業が進めば、手戻りや対応漏れも起きます。同じことが続くと、相手に声をかけにくくなったり、念のための確認が増えたりして、仕事全体の進みが遅くなります。取引先との間で起きれば、納期や金額の行き違いとして信頼関係にも関わる問題です。

    「言った言わない」が起きたときの対処法

    言った言わないが起きてしまったときは、どちらが正しいかを決めるより先に、事実の確認と業務の立て直しを進めます。どちらかが嘘をついているとは限らず、お互いが本心から「言った」「聞いていない」と感じている場合もあるためです。

    1. すぐに否定せず、いつ・どこで・何を伝えたとされているかを聞き取る
    2. メール、チャット、議事録、同席者のメモなど、確かめられる記録を探す
    3. 業務への影響を先に手当てし、誰がいつまでに何をするかを決め直す
    4. 当事者だけで話がまとまらないときは、上司など利害関係のない人に整理を頼む
    5. 確かめられなかった部分はそこで区切り、今後の確認方法を決めて残す

    経緯の確認と、遅れた作業への対応は分けて進めます。決着を待つと作業が止まってしまうため、先に今の作業の進め方を決め、経緯は落ち着いてから確かめます。第三者に入ってもらう場合も、その人に頼むのは、どちらが正しいかの判定より、確かめられたことと確かめられないことの切り分けです。

    記録が見つからなかったときは、見つからなかったことを双方で確かめ、次からの確認方法の話し合いに移ります。原因の追及を長く続けると関係者の負担が大きくなり、再発防止の話し合いに時間を割けなくなります。

    言ってないことを言ったと言われたとき

    身に覚えのないことを言ったと言われると、すぐに否定したくなります。ただ、相手も本当にそう記憶している可能性があるため、最初の一言は否定より確認にしたほうが話し合いを進めやすくなります。

    たとえば「私は〜と理解していました。どの場面でのお話か、もう一度教えていただけますか」と、自分の認識を伝えたうえで、相手の記憶の手がかりを聞きます。関係するやり取りがチャットやメールに残っていれば、一緒に画面を見ながら確かめると、お互いを責める形になりにくくなります。

    個人でできる防止策

    個人でできる防止策は、指示の内容をその場で確かめ、大事なことを短い文章にして相手と共有しておくことです。何を、いつまでに、どこまでやるかを復唱で確かめると解釈のずれが減り、送り返した文章は相手も読み直せるので、ずれがあればその時点で分かります。

    復唱して、期限と範囲をその場で確かめる

    指示を受けたら「A社の見積もりを、明日の15時までに修正する、でよろしいですか」のように内容を言い直します。何を、いつまでに、どこまでやるかの3点がそろっているかを確かめると、解釈のずれを減らせます。

    「なるべく早く」と言われたときは、相手が答えやすいように「今日中と明日の午前中では、どちらが助かりますか」と選択肢を出して聞いてみてください。指示を出す側も、目的と期限、どこまで終われば完了かを添えて伝えると、受け取る側が確かめる手間を減らせます。

    大事なことは短い文章で送り返す

    口頭で決まった大事な内容は、その日のうちにチャットやメールで送り返しておくと安心です。「先ほどの件、確認のため送ります。見積もりの修正は明日15時までに対応します。認識が違っていればお知らせください」くらいの短い文面で十分です。

    送り返した文章を読むと、相手も内容を見直せるので、ずれがあればその時点で分かります。自分の手元に、いつ何を確認したかが残るのも利点です。メモを取る時間がないときは、日付と相手、決まったことだけでも書いておくと、あとで思い出す手がかりになります。

    職場で取り組む防止策

    職場では、文字で残す連絡の範囲と共有する場所を決め、手がふさがる現場でも声の連絡が残る方法を選びます。一対一の口頭連絡は伝えた相手以外に届かず、指示の変更や期限、取引先との約束のように食い違うと影響が大きい内容ほど、あとから確かめられる形が必要になるためです。

    文字で残す連絡の範囲を決める

    すべての連絡を文字にする必要はありません。指示の変更、期限、取引先との約束のように、食い違うと影響が大きい内容は文字で残すことを、チームで決めておきます。会議や打ち合わせでは、決まったこと・担当者・期限の3点だけでも議事録として共有しておくと、あとから確かめられます。

    関係者全員が見える場所で共有する

    一対一の連絡は、伝えた相手以外には届きません。関係者全員が同じ内容を見られるグループチャットや共有の掲示板に連絡を流すと、自分だけ聞いていないという食い違いが起きにくくなります。誰か一人が聞き逃しても、ほかのメンバーが気づけます。朝礼や短い打ち合わせで、その日の変更点を全員で確かめる時間を取るのも一つの方法です。

    手がふさがる現場では、声の連絡を記録に残す

    介護や建設、飲食、小売のように手がふさがることの多い現場では、連絡のたびにチャットへ入力する余裕がありません。従来のトランシーバーやインカムは声ですぐに伝えられますが、録音機能のない機種では話した内容が残らず、あとから確かめられません。

    こうした現場では、声で連絡しながら内容を文字でも残せる仕組みが選択肢になります。スマートフォンをトランシーバーのように使えるアプリには、話した声をグループに届けながら、自動で文字起こしして残せるものもあります。LINE WORKSラジャーもその一つで、文字起こしはアドバンストプランの機能です。

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    よくある質問

    言った言わないは、どちらが悪いのですか?

    どちらか一方だけの責任とは限りません。伝え方があいまいだった、確かめる機会がなかった、記録を残す決まりがなかったといった原因が重なって起きるためです。上司が間に入るときは、記録で確かめられることを整理し、次からの確認方法をチームで決めると、当事者も受け入れやすくなります。

    業務中の会話を録音してもよいですか?

    録音するなら、職場のルールとして決め、参加者に伝えたうえで行うほうが安心です。民事裁判では、相手に知らせずに録音したものでも、それだけで証拠から外されるわけではないとした裁判例があります(参考: BUSINESS LAWYERS「相手に無断で録音した音声データの証拠提出」)。ただし、著しく反社会的な方法で集めた録音は証拠として認められないとされ、録音が違法と判断されれば損害賠償を求められるおそれもあります。

    口頭の約束でも契約は成立しますか?

    成立します。民法第522条第2項は、法令に特別の定めがある場合を除き、契約の成立に書面の作成などの方式は要らないと定めています(e-Gov法令検索「民法」)。ただし口頭だけでは、あとから食い違いが出たときに、何を約束したかを示しにくくなります。取引先との納期や金額の取り決めは、打ち合わせのあとにメールなどで内容を確認し合っておくと安心です。

    同じ相手と何度も言った言わないになるときは、どうすればよいですか?

    相手の性格の問題として受け止めるより、やり取りの形を変えるほうが解決に近づきます。その相手との大事な連絡は、口頭で話したあとに短い文章で送り返すことを、自分から習慣にしてみてください。「行き違いがないように、文字でも送りますね」と一言添えると、相手も受け取りやすくなります。自分だけで続けるのが難しいときは、上司に相談し、チームの連絡ルールとして決めてもらう方法もあります。

    まとめ

    言った言わないを減らすために押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 原因の多くは、記録がないことと、記憶や解釈のずれ
    • 起きたときは、どちらが正しいかの判定より、事実の確認と業務の立て直しが先
    • 個人では、復唱と、決まったことを短い文章で送り返す習慣
    • 職場では、文字で残す連絡の範囲と、全員が見える共有の場所を決めておく

    次に口頭で大事な指示を受けたときは、内容を一文にまとめて送り返すところから始めてみてください。小さな確認を続けると、行き違いに早い段階で気づけるようになります。

    手がふさがる現場で声の連絡を文字でも残したい場合は、LINE WORKSラジャーも選択肢の一つです。スマートフォンをトランシーバーのように使える音声コミュニケーションツールで、ボタンを押して話すと、同じチャンネルのメンバーに音声が届きます。発話の自動文字起こしはアドバンストプランの機能で、トーク履歴の保持期間は7日間、LINE WORKSと併用すると3年間です。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。

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