業務用無線機の種類と選び方|5方式の違い・免許・通信距離・費用を比較

業務用無線機の種類は、特定小電力・デジタル簡易無線・IP無線など5つの方式に分かれ、免許の要否や届く距離、費用のかかり方が方式ごとに違います。   この記事では、5方式の違いとアナログ機からの切り替え、現場に合う方式の選び方を解説します。

目次

    業務用無線機とは:インカム・トランシーバーとの違い

    業務用無線機は、仕事の連絡に使う無線通信機器の総称で、インカムやトランシーバーも同じ仲間に入ります。

    トランシーバーは送信と受信の両方ができる無線機の呼び名で、インカムはイヤホンマイクを付けて、手を空けたまま話す使い方を指すことの多い言葉です。現場ではほぼ同じ意味で使われていて、呼び名によって性能が変わるわけではありません。

    携帯電話との大きな違いは、ボタンを押して話すと、同じチャンネルの全員に一度に声が届くことです。相手を一人ずつ呼び出す必要がないため、店舗や工事現場、イベント会場など、複数のスタッフが動きながら働く現場の連絡に向いています。届く距離や必要な手続きを決めるのは、呼び名ではなく、次に紹介する通信方式です。

    業務用無線機の種類:5方式の違いを比較

    主な方式は5つで、電波を直接届ける3方式は距離に上限があり、回線を使う2方式は距離の制限がありません。

    方式ごとの違いは次のとおりです。通信距離は見通しのよい屋外での値で、販売各社の案内に見られる一般的な目安です。

    方式 周波数帯・出力 免許・登録 通信距離の目安 主な費用
    特定小電力無線 422MHz帯など/10mW以下 不要 数百m〜1km程度(屋内は数十m程度) 本体の購入費
    デジタル小電力コミュニティ無線 142MHz帯・146MHz帯/市販機は500mW程度 不要 1〜3km程度 本体の購入費
    デジタル簡易無線 351MHz帯(登録局)・460MHz帯(免許局)など/最大5W 登録局は登録、免許局は免許 1〜5km程度 本体の購入費、申請手数料、毎年の電波利用料
    IP無線(専用機) 携帯電話の回線 不要 回線がつながる範囲 専用機の費用と月々の通信料
    IP無線アプリ 携帯電話の回線・Wi-Fi 不要 回線がつながる範囲 アプリの利用料と通信費(手持ちのスマートフォンを使える)

    上の3方式は端末どうしで電波を直接やりとりするため、携帯電話の圏外でも使えます。その代わり出力の上限が法令で決まっていて、届く距離には限りがあります。下の2方式は回線を経由するので距離の制限がない一方、圏外や通信障害のときは使えません。方式ごとの届き方は、トランシーバーの通信距離の解説でも詳しく紹介しています。

    特定小電力無線:免許不要で近距離の連絡向き

    免許も資格もいらず、技適マーク(電波法の技術基準に適合していることを示す表示)の付いた機器なら、買ったその日から使えます。出力は10mW以下と小さく、建物の中では数十mほどしか届かず、上下の階には届かないこともあります。ワンフロアの店舗や、飲食店のホールと厨房など、狭い範囲の連絡に向く方式です。仕組みや選び方は特定小電力トランシーバーの解説にまとめています。

    デジタル小電力コミュニティ無線:免許不要で特定小電力より遠くへ届く

    142MHz帯・146MHz帯を使う特定小電力無線局の一種で、特定小電力トランシーバーと同じく免許も登録もいりません。市販機の出力は500mW程度と大きく、見通しのよい屋外なら1〜3km程度届きます。チャンネルは18chと少なめです。屋外の駐車場や広い敷地など、特定小電力では届かないものの、デジタル簡易無線の手続きまでは必要としない場面の選択肢になります。

    デジタル簡易無線(デジ簡):登録すれば資格なしで数km届く

    最大5Wの出力を持つデジタル方式の簡易無線で、現場では略して「デジ簡」とも呼ばれます。見通しのよい屋外なら1〜5km程度届き、建設現場や警備、屋外イベントなど広い現場の連絡に使われています。無線従事者の資格はいりませんが、総合通信局への登録(登録局)か免許(免許局)が必要です。登録や免許がないまま使うと、電波法(e-Gov法令検索)第110条により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。

    社内の業務連絡に数台から数十台を使うなら、手続きが簡単でレンタルにも使える登録局で足ります。免許局は免許を受けた組織のメンバーだけで使う区分で、中継器を使った運用もできます。登録局の電波利用料は、1台あたり年290円(包括登録)または200円(個別登録)です。登録の手数料は、電子申請なら個別登録1,500円、包括登録1,950円です。いずれも2025年10月1日改定の額です(出典: 関東総合通信局「デジタル簡易無線局(CR)登録局のページ」)。免許局との違いや手続きの流れは、デジタル簡易無線の解説で紹介しています。

    IP無線(専用機):携帯電話の回線で離れた場所とつながる

    携帯電話の回線を使って音声を送る無線機です。回線がつながる場所なら距離に関係なく話せるため、離れた拠点どうしや車両を含む広い範囲の連絡に向いています。利用者が免許や登録を受ける必要はありません。その代わり、専用機の費用に加えて1台ごとに月々の通信料がかかります。仕組みはIP無線の解説をご覧ください。

    IP無線アプリ:スマートフォンをトランシーバーとして使う

    スマートフォンにアプリを入れて、トランシーバーのように使う方式です。仕組みはIP無線と同じで、携帯電話の回線やWi-Fiがつながれば、フロアや拠点をまたいで話せます。スタッフが業務用のスマートフォンを持っている現場なら、専用機を買わずに始められます。

    会話の履歴を残せたり、チャットと組み合わせて使えたりするアプリもあります。一方で、スマートフォンの電池の減りが早くなり、物理ボタンがないため手袋をしたままでは操作しにくいことがあります。Bluetoothのイヤホンマイクや、声で送信を始める機能で補えるアプリもあります。

    このほかの業務用無線:一般業務用無線とMCA無線

    5方式のほかに、専用の周波数で運用する一般業務用無線(自営の業務無線)と、中継局を多くの利用者で共同利用するMCA無線があります。どちらも無線局の免許が必要です。一般業務用無線はアンテナなどの設備を自前で設ける方式で、無線設備の操作に無線従事者の資格が必要になる場合があります。方式ごとの免許・資格の要否は、業務用無線の免許の解説で確認できます。

    MCA無線は、MCAアドバンスが2027年3月31日、デジタルMCAが2029年5月31日にサービスを終了します(出典: 総務省 電波利用ポータル「『MCA無線』サービス終了に伴う再免許等手続について」)。いま使っている場合は、MCA無線の終了と代替策の解説もあわせてご覧ください。

    業務用無線機の選び方:6つの確認ポイントと現場別の目安

    まず届いてほしい範囲で方式を絞り、次に手続きの手間や費用、圏外での使い方、記録の要否で比べると選びやすくなります。

    確認したい6つのポイント

    確認項目 見るところ 判断の目安
    通信距離 連絡が発生する地点どうしの距離と、間にある壁・床・金属設備 1フロアなら特定小電力、屋外の広い敷地ならデジタル簡易無線、上下の階や拠点間は回線を使う方式
    免許・登録の手間 手続きの有無と、台数が増減したときの管理 手続きを避けたいなら免許・登録不要の方式。デジタル簡易無線は5年ごとの更新も必要
    費用の構造 本体の買い切りか、月々の費用がかかるか 同じ台数を長く使うなら買い切り型、時期によって台数が変わるなら月額型が合わせやすい
    圏外・災害時 携帯電話がつながりにくい場所で使うか 山間部や災害時の備えには、回線に頼らない電波方式
    会話の記録 聞き逃した連絡を後から確かめたいか 電波方式の無線機は会話が残らない。記録が必要なら履歴機能のあるIP無線やアプリ
    使う環境 水や粉じん、手袋での操作、1日の使用時間 屋外や水回りは防水・防じん性能(IP67など)の高い機種、長時間なら電池の持ちを確認

    現場のタイプ別の目安

    現場のタイプ 相性のよい方式
    1フロアで完結する店舗・飲食店 特定小電力無線
    屋外の広い現場(建設・イベント・警備) デジタル簡易無線
    携帯電話がつながりにくい山間部・海上 デジタル簡易無線
    複数階の施設(介護施設・ホテル・病院) IP無線アプリ(または中継器を置いた無線機)
    離れた拠点どうし・車両との連絡 IP無線・IP無線アプリ

    スマートフォンをトランシーバーのように使うアプリには、LINE WORKS ラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すPTT方式で音声がグループに届き、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。ただし、回線がつながらない場所では使えないため、圏外になる場所が多い現場では無線機のほうが確実です。

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    アナログ無線機からの切り替え:使用期限と移行先

    350MHz帯・400MHz帯のアナログ簡易無線は2024年11月30日で使用期限を迎え、今は使えなくなっています。

    2024年12月1日以降にアナログの周波数で電波を出すと、電波法違反として取締りの対象になります。アナログとデジタルを切り替えて使えるデュアル方式の無線機も、アナログ側は使えないため、メーカーでアナログ側を止める改修(停波措置)を受ける必要があります(出典: 総務省 電波利用ポータル「簡易無線局のデジタル化について」)。

    買い替え先は、大きく次の2つに分かれます。

    移行先 向いている場合 注意点
    デジタル簡易無線 これまでと同じ操作感で、屋外の広い範囲や携帯電話の圏外で使い続けたい 登録か免許の手続きと、毎年の電波利用料がかかる。上下の階や離れた拠点には届きにくい
    IP無線・IP無線アプリ フロア間や拠点間もつなぎたい。業務用のスマートフォンがすでにある 月々の通信料や利用料がかかる。圏外や通信障害のときは使えない

    どちらか一方に決める必要はありません。屋外の作業はデジタル簡易無線、事務所や離れた拠点との連絡はアプリ、というように組み合わせる方法もあります。

    よくある質問

    業務用無線機は購入とレンタルのどちらがよいですか?

    使う期間で選ぶのが基本です。同じ台数を長く使うなら購入、イベントや繁忙期など決まった期間だけ使うならレンタルが向いています。登録局のデジタル簡易無線は、登録した人以外にも使わせることが認められているため、レンタルでも使えます。

    アマチュア無線を仕事の連絡に使ってもよいですか?

    使えません。電波法施行規則は、アマチュア業務を金銭上の利益のためでなく、個人的な無線技術の興味によって行う通信などと定めています。仕事の連絡には、業務で使える方式の無線機を選びます。

    災害時に強い業務用無線機はどれですか?

    携帯電話の回線を使わない特定小電力・デジタル小電力コミュニティ無線・デジタル簡易無線は、基地局の停電や回線の混雑があっても、電池が残っていれば電波の届く範囲で話せます。IP無線やアプリは離れた相手とも話せますが、通信障害のときは使えません。いざというときのために、予備の電池や充電の手段も備えておくと安心です。

    まとめ

    業務用無線機は、電波を直接届ける方式と回線を使う方式に分かれ、免許の要否や届く距離、費用のかかり方が違います。押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 免許・登録なしで使えるのは特定小電力・デジタル小電力コミュニティ無線・IP無線・IP無線アプリ。デジタル簡易無線は登録か免許が必要
    • 届く範囲は特定小電力が近距離、デジタル簡易無線が屋外で数km程度、IP無線とアプリは回線がつながる範囲
    • アナログ簡易無線は2024年11月末で使用期限を迎え、MCA無線も2027年と2029年にサービスが終わる

    方式を決める前に、連絡が発生する地点を書き出して、最も条件の悪い場所どうしで試し通話をしておくと安心です。

    フロアや拠点をまたぐ連絡、会話の記録が課題になっている場合は、アプリ型も選択肢になります。スマートフォンをトランシーバーのように使える LINE WORKS ラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。

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