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スプリアス規格とは|無線機が出す不要な電波の上限
スプリアス規格は、無線機が通信に必要な周波数の外へ出す不要な電波について、強さの上限を国が定めた技術基準です。不要な電波が強いとほかの無線通信に混信を起こすおそれがあるため、上限が決められています。トランシーバーや業務用無線機を使う事業者は、手元の機器が新旧どちらの基準かを確かめておくと、更新の計画を立てやすくなります。
総務省の定義では、スプリアス発射は「必要周波数帯の外に生じ、かつ情報の伝送に影響を及ぼすことなく低減し得る不要発射」です。変調の過程で必要な周波数帯の外に生じる、スプリアス発射以外の電波は帯域外発射と呼ばれ、両方をあわせて不要発射といいます(出典: 総務省「スプリアス発射とは」)。
電波法第28条は、送信設備の電波の質を総務省令の基準に合わせるよう求めています。スプリアスの許容値はこの基準の一つで、無線機の種類ごとの値を定めているのは無線設備規則です。
2005年12月の改正で変わったこと
スプリアス規格の新しい許容値は、2005年(平成17年)12月1日から適用されています。改正後の基準を新スプリアス規格、改正前の基準を旧スプリアス規格と呼びます。世界無線通信会議(WRC)で国際的なルールである無線通信規則が改正されたことを受けて、国内の省令と告示が改められました(出典: 総務省 電波利用ポータル「無線設備のスプリアス発射の強度の許容値」)。主な変更点は次の4つです。
| 項目 | 旧スプリアス規格 | 新スプリアス規格 |
|---|---|---|
| 制限する電波 | スプリアス発射 | 送信機の雑音などの帯域外発射を含む不要発射全体 |
| 基準の分け方 | 周波数の区分ごと | 無線業務の区分ごと |
| 測るときの状態 | 一般に変調をかけない状態 | 実際に使う状態(変調をかけた状態) |
| 規制する範囲 | 領域の区分なし | 中心周波数から必要周波数帯幅の250%離れた周波数を境に、外側をスプリアス領域として区分 |
許容値が厳しくなったのは、それまでの国内の値が新しい国際基準より緩かった無線機です。すでに国際基準を満たしていた無線機は、従来の値を維持しました(出典: 総務省「スプリアス発射の強度の許容値に係る技術基準の改正内容」、総務省「スプリアス発射の強度の許容値の見直し(概要資料)」)。
旧スプリアス規格の無線機はいつまで使える?使用期限と条件
旧スプリアス規格の無線機は2022年12月1日以降も当分の間使えますが、他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限られます。古い業務用無線機や特定小電力トランシーバーを使う事業者に関わる扱いで、総務省が2021年8月の省令改正で使用期限を延ばしました。終わりの時期は、2026年10月時点で決まっていません。
経過措置の流れを時系列でまとめると、次のとおりです(出典: 総務省 電波利用ポータル「スプリアス発射の強度の許容値に係る技術基準の改正に伴う経過措置」)。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2005年12月1日 | 新スプリアス規格の適用が始まる |
| 2007年11月30日 | この日までに製造された旧規格の無線機に限り、2017年11月30日まで旧規格のまま免許や登録を受けられる |
| 2017年11月30日 | 旧規格の無線機で免許や登録を受けられる期限 |
| 2021年8月 | 省令改正で、2022年11月30日としていた使用期限を当分の間に延長 |
| 2022年12月1日以降 | 他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り、旧規格の無線機を使える |
総務省は延長の理由として、新型コロナウイルス感染症の影響で無線設備の製造や移行作業が遅れたことを挙げています。2021年4月末の時点で、包括免許局などを除く国内の無線局の約8割にあたる約215.5万局が新スプリアス規格に移行し、旧規格のままの無線局は約59.8万局でした。業務別では陸上移動業務が約34.9万局、アマチュア業務が約18.8万局です(出典: 総務省「新スプリアス規格への移行期限の延長」)。
総務省は、移行期限を今後あらためて総合的に検討するとしています。期限が決まれば、その日以降は旧スプリアス規格の無線機を使えなくなるため、更新の時期を前もって計画しておくと安心です。
他の無線局に妨害を与えない場合に限るという条件
2022年12月1日以降、旧スプリアス規格の無線機には「他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り、使用することができる」という条件が付いています。総務省の説明では、新スプリアス規格の無線局と比べて位置付けを劣位とするための条件です。
旧規格の無線機の電波がほかの無線局の通信を妨げた場合は、使える条件から外れます。免許や登録を受けた無線局が電波法やそれに基づく処分に違反すると、総務大臣は3か月以内の運用停止などを命じることができます(電波法第76条)。
旧スプリアス規格の無線機で続けられること・できないこと
旧スプリアス規格の無線機は、今ある無線局でそのまま使い続けられますが、その無線機で無線局を新しく開いたり台数を増やしたりするには、原則として新スプリアス規格で検査を受ける必要があります。総務省が電波利用ポータルで公開しているQ&A(2021年8月版)による扱いは、次のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 続けてできること | 再免許、免許の承継、アンテナの老朽化による交換や設置場所の変更など、スプリアスの性能に影響しない変更 |
| 新規格への適合が必要なこと | 送信機そのものの改修、周波数の変更(チャネル設定の変更だけの場合を除く)、変調方式の変更、空中線電力を増やす変更 |
| 原則として新規格での検査が必要なこと | 2017年12月以降に、旧規格の無線機で無線局を新しく開くことや、無線機を追加すること |
| 認められないこと | 再免許の手続きを忘れて免許が一度失効した無線局を、旧規格の無線機のまま開き直すこと |
免許の有効期間は5年を超えない範囲で定められています(電波法第13条)。旧規格の無線機を使い続ける場合は、再免許の時期を設備の管理表などに入れておくと、手続きの漏れを防げます。
免許のいらない特定小電力トランシーバーも対象
免許のいらない特定小電力トランシーバーなども、スプリアス規格の対象です。総務省のQ&Aは、使用期限の延長と妨害を与えないという条件が、免許のいらない無線機器にも及ぶとしています。旧規則で受けた技術基準適合証明(技適)などの効力も、当分の間は有効です。
アナログ簡易無線の使用期限(2024年11月30日)との違い
スプリアス規格の経過措置と、2024年11月30日に終わったアナログ簡易無線の使用期限は、別の制度です。スプリアス規格は電波の質の基準で、免許の有無を問わず多くの無線機に関わります。アナログ簡易無線の期限は、350MHz帯と400MHz帯のアナログ方式の周波数を使えなくした措置です。
| 項目 | スプリアス規格の経過措置 | アナログ簡易無線の使用期限 |
|---|---|---|
| 対象 | 旧スプリアス規格の無線機(免許のいらない無線機を含む) | 350MHz帯と400MHz帯のアナログ方式の簡易無線局 |
| 期限 | 当分の間(2022年12月1日以降は妨害を与えない場合に限る) | 2024年11月30日(同年12月1日以降は使えない) |
| 目的 | 不要な電波を減らし、電波の利用環境を保つ | デジタル化で限りある電波を有効に使う |
アナログ簡易無線の扱いは総務省の簡易無線局のデジタル化についてで確認できます。手元の簡易無線機がアナログ方式なら、すでに使えないため、デジタル簡易無線の登録の手順と費用を確かめて入れ替えを進めます。
旧スプリアス規格の無線機に罰則はある?
免許や登録を受けた旧スプリアス規格の無線機を、条件を守って使うこと自体は、2026年10月時点で電波法違反ではありません。罰則の対象になる主なものは、免許や登録のない無線局の開設・運用や、総務大臣の命令に従わない運用です。どちらも電波法第110条で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められています。
第110条のうち、無線機の使い方に関わる主なものは次のとおりです(出典: 電波法(e-Gov法令検索))。
- 免許や登録を受けずに無線局を開設・運用する(第1号・第2号)
- 無線設備を技術基準に適合させるための修理などの命令に違反する(第7号)
- 電波の発射の停止や運用の停止を命じられた無線局を運用する(第8号)
旧規格の無線機で気をつけたいのは、再免許の手続きを忘れて免許が切れたまま使い続けることです。免許の有効期間が切れた無線局は不法無線局にあたり(出典: 北海道総合通信局「電波利用環境FAQ」)、旧規格の無線機のままでは開き直しもできません。上の第110条の違反を従業員が会社の業務として行った場合は、本人に加えて会社にも同じ条文の罰金刑が科されます(両罰規定、第114条)。
罰則の懲役は、2025年6月1日の刑法などの改正の施行で拘禁刑に改められました(出典: 法務省「拘禁刑下の矯正処遇等について」)。「1年以下の懲役」と書かれた解説は、改正前の表記です。
旧スプリアス規格かを確認する方法|技適番号で調べる
無線機が新旧どちらのスプリアス規格かは、本体の技適マークの横にある番号を総務省の検索ページで調べるとわかります。検索結果の「スプリアス規定」の欄に、新規格なら「新規定」、旧規格なら「旧規定」と表示されます。検索できるのは、1999年3月以降に技適などを受けた機器です。
- 無線機の本体で、技適マークの横に書かれた番号を確かめる
- 総務省の技術基準適合証明等を受けた機器の検索で、番号の種類(技術基準適合証明番号・工事設計認証番号など)を選んで入力する
- 検索結果の「スプリアス規定」の欄が「新規定」か「旧規定」かを見る
同じ型式名の無線機でも、証明を受けた時期によって「旧規定」と「新規定」の登録が別々にある例があります。型式名だけで判断せず、手元の機器の番号で確かめてください。
検索に出てこない機器は、1999年3月より前に証明を受けた機器などが考えられます。2007年11月30日以前に製造された機器も、旧スプリアス規格の可能性があります。判断がつかないときは、購入した販売店やメーカー、無線局を管轄する総合通信局に問い合わせてください。
旧スプリアス規格の無線機への対応策
旧スプリアス規格の無線機への対応として、総務省は新規格の機器への買い替え、フィルタの挿入、スプリアスの実測による適合確認の3つを示しています。いずれも免許人が総合通信局へ申請や届出をする手続きで、使う予定がなければ無線局を廃止する方法もあります。
| 対応策 | 内容 | 主な手続き |
|---|---|---|
| 新規格の無線機に買い替える | 更新の時期に、新スプリアス規格の無線機へ取り替える | 総合通信局へ変更申請または変更届。機器によっては変更検査が必要 |
| フィルタを挿入する | 送信機の出力端子とアンテナの間にフィルタを入れ、新規格に適合させる | 変更申請の許可後に測定し、工事完了届に強度確認届出書(測定データ)を添えて提出 |
| スプリアスを実測する | 今の無線機のスプリアスを測り、新規格に適合していることを確かめる | 測定データを強度確認届出書に書いて提出。同じ型式の複数台は、製造年月が最も古い1台などの測定で足りる |
| 無線局を廃止する | 使う予定のない無線局をやめる | 廃止の届出(免許局は電波法第22条、登録局は第27条の29)。免許などが効力を失ったら、アンテナの撤去など電波を出さない措置をとる(第78条) |
強度確認届出書は「スプリアス発射及び不要発射の強度確認届出書」のことで、様式は総務省の電波利用ポータルからダウンロードできます。測定に使う測定器は、較正から1年以内のものに限られます。製造業者などが測定して総務省が公表している機種と同じ型式であれば、届出書の測定データを省略できます(出典: 総務省「無線機器のスプリアス規格の変更に伴い規格にあった無線機器の運用が必要です」)。
実測は、登録検査等事業者や無線機の販売店などに相談できます。アマチュア局は、総務省が定める保証実施者のスプリアス確認保証も使えます。免許のいらない特定小電力トランシーバーは、新規格の機器に買い替えれば足り、総合通信局への手続きはいりません。
買い替えるときは方式から見直すこともできる
買い替えの時期は、今の方式のまま新しい機種にするか、ほかの方式に替えるかを見直す機会になります。費用と届く範囲、免許や登録の手続きの有無が、方式を比べるときの主な違いです。
デジタル簡易無線の本体価格は、販売各社の目安で1台3万〜8万円程度です。20台をそろえると、本体だけで60万〜160万円程度になります。免許のいらない特定小電力トランシーバーは、販売各社の案内による目安で、見通しのよい屋外なら1km前後、建物の多い市街地や屋内では100〜200m程度まで届きます。
上下階や離れた拠点をまたいで話したい場合は、携帯電話の回線を使うIP無線や、スマートフォンのトランシーバーアプリも候補です。回線が届く範囲で話せて、利用者が無線局の免許や登録を受ける必要はありません。方式を替えるか迷う場合は、方式ごとの届く範囲・手続き・費用の違いを比べて、連絡を取りたい範囲に合うものを選んでください。
スマートフォンをトランシーバーのように使うアプリには、LINE WORKSラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すと同じグループのメンバーに声が届き、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。回線がつながらない場所で使えない点は、IP無線やほかのアプリと同じです。
よくある質問
旧スプリアス規格の無線機を使い続けるには、届出が必要ですか?
使い続けるだけなら、届出はいりません。免許状に旧規格の使用期限が書かれていても、改正省令の附則で、期限の条件は付いていないものとみなされ、妨害を与えないという条件が付いたものとみなされます。免許状の記載が書き換わるのは、再免許などで新しい免許状が出るときです。実測などで新規格への適合を確かめたときは、強度確認届出書を総合通信局に出します。提出の期限はありません。
Wi-FiルーターやPHSも旧スプリアス規格の影響を受けますか?
2.4GHz帯・5GHz帯の無線LANやPHSなどは、旧規則で技適を受けた機器でも新規則の技適とみなされ、2022年12月以降も有効です。旧規則と新規則の規定に整合性がある無線設備として、総務省が経過措置のページで対象を示しています。それ以外の機器は、技適番号で「スプリアス規定」の欄を確かめると安心です。
中古の無線機を買って使い始めることはできますか?
使い始めることはできますが、技適番号を調べて「新規定」の機器を選ぶと安心です。旧スプリアス規格の機器で免許や登録が必要な無線局を新しく開く場合は、原則として新スプリアス規格で検査を受ける必要があります。免許のいらない機器でも、旧規格のものは使用期限が決まると使えなくなります。
まとめ
スプリアス規格は、無線機が出す不要な電波の強さの上限を決めた技術基準で、2005年12月の改正より前の基準によるものが旧スプリアス規格です。押さえておきたい点は次の4つです。
- 旧スプリアス規格の無線機は当分の間使えるが、他の無線局に妨害を与えない場合に限られ、終わりの時期は未定
- 旧規格の無線機で無線局を新しく開く・無線機を追加するには、原則として新規格での検査が必要。免許が一度失効すると、旧規格のままでは開き直せない
- 新旧の区別は、技適番号を総務省の検索で調べ、「スプリアス規定」の欄で確かめる
- 対応策は買い替え・フィルタの挿入・実測の3つ。使わない無線局は廃止の届出をする
手元の無線機の番号と、免許や登録の有効期限を一度確かめておくと、移行期限が決まったときにも落ち着いて対応できます。買い替えるときの比べどころは、連絡を取りたい範囲と必要な手続きです。
免許や登録の手続きを増やしたくない場合や、フロア間・拠点間の連絡が課題になっている場合は、アプリ型も選択肢になります。スマートフォンをトランシーバーのように使えるLINE WORKSラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。