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電波法とは:目的と定めている内容
電波法は、限りある電波を混信なく使うための法律で、無線局の開設から無線機の基準、罰則までを定めています。
電波法は1950年(昭和25年)5月2日に公布され、同年6月1日に施行された法律で、総務省が所管しています。第1条は、目的を「電波の公平且つ能率的な利用を確保することによつて、公共の福祉を増進すること」と定めています。同じ周波数を誰もが自由に使うと混信が起き、警察や消防、携帯電話などの通信にも支障が出るため、使い方のルールを国が決めているのです(出典: 電波法(e-Gov法令検索))。
電波法でいう電波は、300万MHz(3THz)以下の電磁波です。規制の対象となる無線局は、無線設備と、それを操作する人をひとまとめにしたものと定義されています。受信だけを目的とするものは、無線局に含まれません(第2条)。
業務で無線機を使う人に関係するのは、主に次の5つのルールです。
- 無線局を開くときの免許・登録(第2章)
- 無線機が満たす技術基準と技適マーク(第3章・第3章の2)
- 無線設備を操作する人の資格(第4章)
- 目的外の使用の禁止や通信の秘密など、運用のルール(第5章)
- 違反したときの行政処分と罰則(第6章・第9章)
無線局の免許制度:免許・登録・免許不要の3区分
無線局を開くには原則として総務大臣の免許が必要で、例外として登録で使えるものと、免許も登録もいらないものがあります。
第4条が定める原則と例外を、業務で使う無線機にあてはめると次の3つに分かれます。
| 区分 | 手続き | 業務でよく見る例 |
|---|---|---|
| 免許局 | 総務大臣の免許を受ける。無線局ごとに申請し、審査を経て交付される | デジタル簡易無線(免許局)、タクシーや運送会社の業務用無線、放送局、携帯電話の基地局 |
| 登録局 | 総務大臣の登録を受ける。免許より手続きが簡単だが、登録するまでは使えない | デジタル簡易無線(登録局) |
| 免許も登録もいらない無線局 | 手続きは不要。ただし、条件を満たす機器に限られる | 特定小電力トランシーバー、市民ラジオ、無線LAN、コードレス電話 |
免許も登録もいらない無線局の条件
総務省は、免許も登録もいらない無線局を次の3つに分けて説明しています(出典: 総務省 電波利用ポータル「免許及び登録を要しない無線局」)。
- 発射する電波が著しく微弱な無線局(ラジコンの送信機、一部のワイヤレスマイクなど)
- 市民ラジオ(26.9〜27.2MHz帯・出力0.5W以下で、技適を受けた機器だけを使うもの)
- 小電力の特定の用途の無線局(出力1W以下で混信を防ぐ機能があり、技適を受けた機器だけを使うもの。特定小電力無線局・無線LAN・コードレス電話など)
業務の連絡でよく使う特定小電力トランシーバーは3つ目に当たり、無線電話用の出力は原則10mW以下に抑えられています。仕組みや届く距離は特定小電力トランシーバーの解説にまとめています。
登録局は、免許がいらなくても登録が必要
デジタル簡易無線の登録局は、免許の代わりに総合通信局の登録を受けて使います。登録をしないまま電波を出すと、免許なしで無線局を開いた場合と同じ罰則の対象です(第110条)。申請の流れや費用はデジタル簡易無線の解説、方式ごとの免許の要否は業務用無線の免許の解説で紹介しています。
携帯電話やスマホのアプリで利用者が手続きをしない理由
携帯電話も免許が必要な無線機ですが、電気通信事業者が免許の手続きをしているため、端末を使う人が手続きをする必要はありません(出典: 北海道総合通信局「電波利用環境FAQ」)。携帯電話の回線を使うIP無線や、スマートフォンのトランシーバーアプリで、利用者が免許や登録をしないのはこのためです。Wi-Fiも、技適の付いた機器なら免許のいらない無線局にあたります。
技適マーク:国内で無線機を使うための前提
技適マークは無線機が電波法の技術基準に合っていることの表示で、免許不要で使えるのはマーク付きの機器だけです。
技適マークは、携帯電話や小型の無線機など小規模な無線局に使う機器が、電波法の技術基準に適合していることを示す表示です。総務大臣の登録を受けた機関による証明・認証や、製造業者などによる自己確認を経た機器に付けられます(出典: 総務省 電波利用ポータル「基準認証制度の概要」)。機器に記載された番号は、総務省の技術基準適合証明等を受けた機器の検索で照会できます。
海外向けのモデルや個人輸入品には技適のないものがあり、国内で電波を出すと、免許なしで無線局を開いたことになるおそれがあります。市民ラジオや特定小電力無線局の免許が不要なのは、技適マーク付きの機器だけを使う場合に限られるためです(第4条第2号・第3号)。技適マーク付きの機器でも、出力を上げる、アンテナを付け替えるといった改造をすれば同じです。
総務省は、技術基準に合わない無線機を製造・輸入・販売しないよう業者に努力義務を課し、市場で購入した無線機の電波を測定する無線設備試買テストの結果も公表しています。通販サイトで売られていることは、国内で使えることの保証にはなりません。
無線従事者の資格が必要な場合
無線設備の操作には原則として資格が要りますが、特定小電力トランシーバーや簡易無線で話すだけなら資格は不要です。
第39条は、無線設備の操作を、無線従事者(総務大臣の免許を受けた資格者)が行うか、その監督のもとで行うことを原則としています。資格は総合・海上・航空・陸上・アマチュアの5分野に分かれます(第40条)。
一方で、免許のいらない無線局の操作や、陸上の無線局で話す操作(通信操作)、携帯電話の通信操作などは、資格のいらない簡易な操作とされています(電波法施行規則(e-Gov法令検索)第33条)。現場のスタッフが特定小電力トランシーバーやデジタル簡易無線、IP無線で話すだけなら、資格はいりません。
資格が必要になるのは、アマチュア無線を運用する場合や、業務用無線の設備を調整する場合などです。資格の要る操作を無資格で行うと、30万円以下の罰金の対象になります(第113条)。資格の区分は、総務省の無線従事者制度のページで確認できます。
運用のルール:アマチュア無線の業務利用と通信の秘密
無線局は免許の目的の範囲でしか使えず、アマチュア無線を仕事に使うことや、傍受した通信を漏らすことは禁止されています。
アマチュア無線は仕事に使えない
第52条は、無線局を免許の目的や通信の相手方の範囲を超えて運用することを禁じています。アマチュア無線は、金銭上の利益のためではなく、個人的な無線技術の興味によって行うものとされています。
総務省は、無線従事者免許や無線局免許を持っていても、アマチュア無線を仕事に使えば電波法違反になると注意を呼びかけています。罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、会社やその代表者も罰則の対象です。同じページでは、仕事に使う無線として、デジタル簡易無線(登録局)、特定小電力無線、IP無線、トランシーバーアプリが挙げられています(出典: 総務省 電波利用ポータル「アマチュア無線は仕事に使えません!」)。
無線通信の秘密を守る
第59条は、特定の相手に向けた無線通信を傍受して、その存在や内容を漏らしたり、窃用(自分や他人の利益のために使うこと)したりすることを禁じています。たまたま聞こえた他社の業務連絡を外部に話したり利用したりすると、第109条の罰則の対象です。反対に、自社の連絡を第三者に聞かれないための備えはトランシーバーの盗聴対策の解説で紹介しています。
電波法違反の罰則と行政処分
免許や登録なしで無線局を開くと1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、業務での違反は会社も罰金の対象です。
業務で無線機を使う場面に関係する主な罰則は、次のとおりです(出典: 電波法(e-Gov法令検索)第9章)。
| 違反の内容 | 条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 免許や登録を受けずに無線局を開設・運用する(技適のない無線機を免許なしで使う場合など) | 第110条 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| アマチュア無線を仕事に使うなど、免許の目的の範囲を超えて運用する | 第110条 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 資格の要る無線設備を無資格で操作する | 第113条 | 30万円以下の罰金 |
| 傍受した無線通信の秘密を漏らす・窃用する | 第109条 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(無線通信の業務に従事する人は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金) |
| 放送・携帯電話・警察や消防・鉄道などの無線設備を壊す、機能に障害を与えて通信を妨害する | 第108条の2 | 5年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金 |
従業員が会社の業務として第110条や第113条に違反した場合は、本人に加えて会社にも同じ条文の罰金刑が科されます(両罰規定、第114条)。無線機の選定や運用を現場だけに任せず、会社として確認しておきたい理由の一つです。
北海道総合通信局は、免許を受けていない無線機でも、電波を出せる状態になっていれば、実際に電波を出したかどうかにかかわらず、原則として不法無線局の開設にあたると説明しています。また、免許や登録を受けた無線局が電波法に違反した場合は、刑事罰とは別に、総務大臣が運用の停止や周波数・出力の制限を命じたり、免許を取り消したりすることがあります(第76条)。
罰則の懲役は2025年6月から拘禁刑に
2025年6月1日に刑法などの改正が施行され、懲役と禁錮が廃止されて拘禁刑に一本化されました(出典: 法務省「拘禁刑下の矯正処遇等について」)。電波法の罰則も、現在は拘禁刑で定められています。「1年以下の懲役」と書かれた解説は、改正前の表記です。
業務で無線機を使う前に確認したいこと
導入や買い替えの前に、方式ごとの手続き、技適マーク、古い機器の扱い、アマチュア無線の流用がないかを確かめておくと安心です。
| 確認すること | 見るところ |
|---|---|
| 方式と手続き | 免許局・登録局・免許不要のどれに当たるか。登録や免許が必要なら、有効期限と更新の時期 |
| 技適マーク | 機器のマークと番号。海外通販品や中古品、改造された機器は特に確かめる |
| アマチュア無線の流用 | 資格を持つスタッフが、業務連絡にアマチュア無線を使っていないか |
| 古い無線機 | アナログ方式の簡易無線(350MHz帯・400MHz帯)は2024年11月30日で使用期限を迎えた。旧スプリアス規格の機器は、他の無線局に妨害を与えない場合に限り当分の間使える |
古い無線機の扱いは、総務省の簡易無線局のデジタル化についてとスプリアス規格の経過措置のページで確認できます。
免許や登録の管理を増やしたくない場合は、特定小電力トランシーバーか、IP無線・スマホのトランシーバーアプリが候補になります。近距離で済むなら特定小電力、上下階や離れた拠点をまたぐならIP無線やアプリが向いています。IP無線の仕組みはIP無線の解説で紹介しています。
スマートフォンをトランシーバーのように使うアプリには、LINE WORKS ラジャーのようなサービスもあります。インターネット回線を使うため、利用者が無線局の免許や登録を受ける必要はありません。ボタンを押して話すPTT方式で音声がグループに届き、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。ただし、回線がつながらない場所では使えません。
よくある質問
受信するだけなら電波法違反になりませんか?
受信専用の機器で聞くだけなら、無線局にはあたりません。電波法の無線局の定義から、受信のみを目的とするものが除かれているためです。ただし、送信もできる無線機を電波を出せる状態で設置していれば、受信だけのつもりでも開設罪に問われる場合があります。聞こえた通信の内容を漏らしたり利用したりすることも禁じられています。
非常時にだけ使うなら、免許のない無線機を持っていてもよいですか?
免許が必要な無線機であれば、認められません。北海道総合通信局は、緊急時にだけ使う目的であっても、免許が不要になる理由にはあたらないと説明しています。災害への備えとして用意するなら、特定小電力トランシーバーのような免許のいらない機器か、登録を済ませたデジタル簡易無線を選んでおくと安心です。
技適マークのない機器を使える例外はありますか?
限られた場面で特例があります。Wi-FiやBluetoothなど国際規格の機器を実験や試験に使う場合は、総務省に届け出れば、届出の日から最長180日まで使えます(技適未取得機器を用いた実験等の特例制度)。日本に入国する人が持ち込む一部の機器にも、入国から最長90日の特例があります。いずれも業務用のトランシーバーを日々の連絡に使うための制度ではないため、業務では技適マーク付きの機器を選ぶと安心です。
まとめ
電波法は、限りある電波を混信なく使うために、無線局の免許、無線機の技術基準、操作する人の資格、運用のルール、罰則を定めた法律です。業務で無線機を使うときに押さえておきたい点は次のとおりです。
- 無線局は原則免許制。デジタル簡易無線は登録か免許が必要で、特定小電力トランシーバーやIP無線・アプリは手続き不要
- 免許なしで使えるのは、技適マーク付きの機器を改造せずに使う場合だけ
- アマチュア無線は、資格や免許があっても仕事には使えない
- 免許や登録のない開設は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。業務での違反は会社も罰金の対象
今使っている無線機があれば、方式と技適マーク、登録や免許の有効期限を一度確かめておくと安心です。新しく導入する場合は、連絡を取りたい範囲と必要な手続きをあわせて比べると選びやすくなります。
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