〜 大成建設と建設コンサルタントが語る実践事例 〜
建設業界では、担い手不足への対応や生産性向上に向けた取り組みが求められる一方、現場では情報共有や記録管理など、さまざまな課題が残されています。
こうした課題解決のヒントをお届けするため、6月18日、LINE WORKS本社(渋谷サクラステージ)にて、建設業向けオフラインイベント「利益を守る建設DX 証跡管理とAIで進める現場改革」を開催しました。建設業を中心に24社の皆さまにご参加いただきました。
本記事では、ご参加いただけなかった皆さまにもイベントの内容をお届けできるよう、会場で紹介された実践事例や当日の様子をお伝えします。
ご登壇いただいたのは、以下のお二人です。
・田中 吉史 氏(大成建設株式会社 建築本部 生産技術イノベーション部 生産技術ソリューション推進室 室長)
15年間の現場経験を経て、現在は本社部門でICT/DXの推進を担う。
・ 科部 元浩 氏(株式会社Malme 技術部統括)
ゼネコンで現場監督を経験し、現在は建設コンサルタントとして企業の課題解決を支援する。
また当日は、会場の真下で工事が進むJR渋谷駅改良中央工区を担当する、大成建設の安達 拓也 所長にもゲストとしてご参加いただき、現場の視点からお話しいただきました。
イベントでは、「生産性向上」「情報(証跡)管理」「安全・教育」の3つのテーマでディスカッションを行いました。
また、安達所長からは、会場から臨む現場の工事概要や、DXの取り組みについてご紹介いただきました。

アンケートから見えた、建設現場の課題
冒頭では、LINE WORKSが今年4月に建設業の皆さまを対象に実施したアンケート結果を共有しました。「現在の業務で負担が大きいと感じること」の1位は「書類・報告書の作成」、2位は「社員教育・引き継ぎ」。続いて、「内容確認・チェック」、「必要な情報の検索」が挙げられました。こうした現場の声を起点に、当日のディスカッションを進めました。

テーマ① 生産性向上・業務効率化
はじめに安達所長と田中氏より、現場におけるコミュニケーションの重要性についてお話しいただきました。建設現場では、作業手順の変更や熱中症対策、雨漏りの報告といった緊急を要する連絡が数多く発生します。こうした情報は、社内だけでなく協力会社とも迅速に共有することが欠かせません。関係者が多く、即時性が求められる場面も増える中、円滑なコミュニケーションを支える手段としてLINE WORKSが活用されています。
協力会社の職人さんも含め、同じツールでつながることで、緊急連絡や日々のやり取りがスムーズになり、現場全体の業務効率化につながっていると紹介いただきました。

田中氏からは、現場で特に好評だった活用例として「忘れ物のトーク」が紹介されました。「鍵をなくした」「落とし物があった」といった、現場で起こりがちな出来事も、LINE WORKSを通じて速やかに共有でき、作業員の皆さまとの連携に役立っているそうです。
■協力会社とのつながりかた
では、こうした協力会社との連携は、実際にどのような形で展開されているのでしょうか。ディスカッションでは、社外・協力会社とのつながりかたとして、LINE WORKSには大きく3つの運用パターンがあることが紹介されました。

・ パターン1:自社のLINE WORKSに協力会社・関係会社を含めて運用する
・ パターン2:協力会社側のLINE WORKSアカウントと連携する(最も採用が多い方法)
・ パターン3:協力会社の個人LINEとつながる
大成建設では、協力会社のアカウントも現場側で用意し、同一のLINE WORKS環境で運用(パターン1)。利用開始から約7年が経過し、社員に加えて協力会社や職長クラスまで、約15,000アカウントが稼働していると紹介されました。田中氏が紹介した九州の大規模工場の現場では、1現場だけでも約1,000アカウントが利用されています。1次〜3次の協力会社に加え、別途工事の事業者や発注者側の関係者も含まれ、工事グループごとにトークルームを分け、運用ルールを定めることで、情報共有の円滑化と現場の生産性向上につなげています。
一方、科部氏からは、パターン3の活用について紹介がありました。中堅・中小規模のゼネコンなどでは、元請側がLINE WORKSを使い、職人さんとは普段使っている個人LINEとつながる運用も見られます。元請側のやり取りをLINE WORKS上に残すことで、ログが残り、セキュリティ面の管理も可能となります。
グループを分けておくことで、「必要な協力会社への連絡が漏れていた」といった事態を防ぎやすくなります。また、現場に来る頻度が低い職人さんにも、事前確認や連絡をトークで行えます。やり取りが文字で残るため、「言った、言わない」といった伝達の行き違いを防ぐと同時に、電話対応の削減にもつながります。
どの運用が正解というものではなく、自社の規模やセキュリティ要件、協力会社との関係性に応じて、適した運用方法を選べることもLINE WORKSの特長の1つです。また、文字だけでなくスタンプを通じて相手の反応や感情を確認しやすいことが、現場での円滑なコミュニケーションや心理的安全につながるという意見も交わされました。
テーマ② 情報(証跡)管理・情報資産の活用
2つ目のテーマは、会議・打合せの記録をはじめとする情報(証跡)管理です。LINE WORKSの調査では、議事録作成に1日1時間以上を費やす方が約4割にのぼり、悩みの1位は「話しながらメモを取るのが難しい」(51%)、2位は「記録が漏れたり、抜けていることがある」(48%)でした。

ここで紹介したのが、AI議事録サービス「LINE WORKS AiNote」です。録音から文字起こし、要約までをAIで自動化し、建設業界用語にも対応しています。対面での会議や打合せは、スマートフォンの簡単な操作で録音でき、データはPCにも同期。各種Web会議にも対応しています。

大成建設では、大型プロジェクトの現場では、AiNoteの活用が進んでいます。同現場では、対面会議の記録に月平均約54時間、AiNoteが活用されています。
従来は、作業所責任者クラスの社員も自らレジュメを作成し、会議で発言しながらメモを取ることが当たり前でしたが、AiNoteの導入後は、記録を気にせず会話に集中できるようになったそうです。また建設用語にも対応しているため、議事録を数多く作成する現場担当者からは、修正の手間が大きく減ったという声が寄せられています。
安達所長からは、過去の大型プロジェクトに関わっていた当時の議事録作成について紹介がありました。当時担当していた工事では、一言一句漏らさず記録する必要があったため、多いときには10名ほどの事務担当者が携わり、複数人での作成・その会議内容等を修正に2時間ほどを費やすことも珍しくなかったそうです。今は僅か20分ほどで、議事録の大枠ができることに驚かれていました。田中氏からも、「7割程度の精度で形になれば、その後の修正は楽になる。要約の精度も向上しており、今後さらに活用していくべきだ」とコメントいただきました。

■「証跡」としての記録——万一のときに効くのは
議事録は作成者によって表現が変わることがありますが、音声データには実際の発言がそのまま残ります。田中氏からは、万一のトラブルに備えるうえでも、元の音声データを残すことが重要であるとの意見がありました。AiNoteでは、音声と実務で活用できる文字起こしデータの両方が残り、要約した内容と該当する音声箇所を確認できます。田中氏は、これがこれからの記録(証跡)のあり方だと話しました。
■記録は、人を育てる——技術継承・人材育成
記録は、若手社員との1on1やOJTの振り返り、技術・知識の継承にも活用できます。所長クラスは多い時には20〜30人の部下を抱え、半年に一度は面談を行います。AiNoteを活用すれば、記録を取ることに気を取られず面談に集中でき、半年後にも「あのとき、こう言っていた」と過去のやり取りを振り返ることができます。継続的な人材育成に役立つほか、ハラスメントといった万一の事態が生じた際にも、適切な記録が働く人と会社の双方を守ることにつながります。田中氏は、記録を残すことが、これからのスタンダードになっていくのではないかと話しました。
科部氏は、生成AIの発展により、「蓄積した記録を将来のナレッジ活用につなげられる時代になった」と補足しました。ベテラン社員の経験や判断の背景を記録として残しておけば、退職後も過去の知見を検索・参照し、次の世代へ受け継ぐことができます。だからこそ、いま記録を残しておくことが重要だと話しました。
テーマ③ 安全・教育・ナレッジ活用
最後のテーマは、生成AIの安全な活用と、教育・ナレッジの共有です。大成建設は2025年に「DX銘柄」に初選定され、生成AIの活用を全社的に推進しています。一方で、AIの利活用にあたっては、情報セキュリティやAIガバナンスを重視し、業務情報やお客様情報を適切に保護するため、会社が整備した、安全な生成AI環境を活用することを徹底されています。
会社が認めたセキュアな環境のAIを使う——これが大前提です。

田中氏が課題として挙げたのは、協力会社も含めた生成AIの活用環境の整備です。社員だけでなく、現場をともにつくる協力会社に対しても、安全や品質に関する情報を適切に参照できる仕組みが、今後ますます重要になります。田中氏は、「協力会社が安全に生成AIを活用できる環境整備も、今後は元請の仕事になってきそうな気がします」と話しました。
■LINE WORKS のAI製品を、日常業務の延長で活用
科部氏は、生成AI活用において、まずセキュアな環境を整えることが重要だと話しました。各自が無料のAIをばらばらに使用すると、コンプライアンスや情報セキュリティ上のリスクが高まります。そのうえで、いきなり新しいツールの利用を求めるのではなく、「LINE WORKSのような日頃から使い慣れたサービスの延長線上でAI製品を使っていけば、導入時の教育コストも抑えられ、定着や活用効果も期待できるのではないか」と話しました。

そのひとつが、AIアシスタント「LINE WORKS AiStudio」です。社内規定や業務マニュアル、蓄積された資料などをもとに、自社の業務に合わせたAIアシスタントを構築できます。また、入力したデータは、AIモデルの学習に利用されることはありません。建設業では、次のような使い方が想定できます。
・ 社内問い合わせ対応:規定・申請方法などへの質問にAIが24時間自動回答
・ 教育・引き継ぎ:新入・中途社員への繰り返しの説明を、教育マニュアルからAIが即回答
・ 過去情報の活用:トークや資料に埋もれた過去のやり取り・決定の経緯をAIが探し出す

ディスカッションの中では、「AIツールを配布しているが、現場でどう活用するかが課題」といった実情も共有されました。科部氏によれば、定着の鍵は小さな成功体験。問い合わせの一次対応のような日常の入口にAIを置き、「聞いてみたら意外とすぐ解決した」という体験を作ることが近道です。また、以前はマニュアルを整備しなければAIに読み込ませることができませんでしたが、いまは過去のチャットのやり取りなど、日々蓄積された記録からもAIが回答を引き出せるようになっています。日々の記録を残すこと自体が、そのままナレッジの整備につながります。
第2部 交流会・デモ体験・オフィスツアー
第2部では、AiNoteやAiStudioをはじめとした各サービスのデモ体験や、製品担当者への相談の時間を設けました。参加者同士でも「現場DXの進め方」「AI活用のリアルな課題」「技術継承・人材育成」といったテーマで、情報交換が行われました。あわせて、オフィスツアーや窓越しの渋谷再開発現場の見学を実施しました。


まとめ
DXは、それ自体が目的ではなく、現場の生産性を高め、情報や利益を守るための手段です。本イベントでは、証跡管理とAIを軸に、「生産性向上」「情報(証跡)管理」「安全・教育」の3つのテーマで、現場の実践事例を交えながら考えました。紹介された取り組みは、いずれも現場で今日から始められるものばかりです。本記事が、皆さまの現場DX推進のヒントになれば幸いです。
■ イベント概要
イベント名:利益を守る建設DX 証跡管理とAIで進める現場改革 〜大成建設と建設コンサルタントが語る実践事例〜
開催日時:2026年6月18日(木)15:00〜17:00
会場:LINE WORKS株式会社 本社(東京都渋谷区桜丘町1-1 渋谷サクラステージ SHIBUYAタワー23F)
主催:LINE WORKS株式会社
参加:建設業を中心に24社28名
登壇者:
大成建設株式会社 建築本部 生産技術イノベーション部 生産技術ソリューション推進室 室長 田中 吉史 氏
株式会社Malme 技術部統括 科部 元浩 氏
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https://cloud-player.1roll.jp/?v=mOSjgmUYLbGXtggE&ciid=661
▼建設業界の方向けお役立ち情報
https://lp.line-works.com/usage-construction/
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