鋼製橋梁や産業機械製造などを手がける株式会社釧路製作所は、社内コミュニケーション基盤を構築するためにLINE WORKSを導入。さらにJobocoを通して業務アプリが作成できるkintoneとLINE WORKSを連携することで、手作業の多かったバックオフィス業務を大幅に効率化させました。事務用品の管理やアルコールチェック記録、社員食堂の食券作成業務など、身近な業務課題を1つずつ改善し、DXへの取り組みを加速させています。
本事例のポイント
- LINE WORKSでスムーズな安否確認体制を確立
- kintoneと連携し、在庫管理やアルコールチェック記録などの業務を効率化
- 紙で作成・管理していた社員食堂の利用券をデジタル化し、総務の負担が大幅減
御社の事業内容をご紹介ください。
羽刕(うしゅう)さん :
釧路市と雄別炭鉱を結んでいた鉄道会社の機関車製造・修理部門が独立するかたちで1956年に設立された当社は、1960年代から鋼製橋梁の設計・製造を主業とするようになりました。設計・原寸CADシステムやNC一次加工ライン、仮組立形状シミュレーションシステムなどITを活用した高度な生産技術を有し、これまで200橋ほどの製造を手がけてきました。近年は、高い技術力を活かして製缶、大型クレーン製造、水門製造、製紙業向け産業機械製造などに参入。また、道内のロケット開発のベンチャー企業に出資してロケット部品を供給するなど、宇宙開発分野への進出も果たしています。
以前はどのような課題を抱えていましたか。
羽刕さん :
市場の縮小や人口減少など、当社の事業を取り巻く外部環境は厳しさを増す一方です。当社は「強い会社が生き残れるのではなく、変われる会社が生き残れる」との認識に立ち、製造のみならず工程管理や財務会計領域などにも積極的にシステム導入を進めて生産性の向上を図ってきました。しかしバックオフィス業務に関しては、紙や人手に頼る部分がまだ残っており、これを改善することが大きな課題でした。
小澤さん :
以前のアナログな仕事の代表例として、総務部が社員食堂の利用者に配布する食券の作成業務が挙げられます。紙の食券は、配布したら都度作成しており、原紙をコピーして断裁した20枚の食券を1セットにして綴じるという手間が生じていました。この手作業にかなりの時間と労力を費やしており、多い時では丸1日かかることもありました。
竹内さん :
購買業務に携わる私は、現場担当の社員のシーズンごとの作業服を調達する際、紙の申込書を各人に配付してサイズを記入してもらい、それを回収して取りまとめるのに手間がかかっており、こうした業務をどうにかデジタル化できないものかと思っていました。
羽刕さん :
また、当社は十数年前から他のグループウェアを利用していますが、UIがPCベースでスマホでは使いづらく、アカウントやメールアドレスは現場で作業をする社員に付与していませんでした。そのため、バックオフィスが行う会社の重要な案内や業務連絡などが全社で迅速に共有できないことも大きな課題でした。
どのような経緯でLINE WORKSとkintoneを導入されたのですか。
羽刕さん :
バックオフィスの負担軽減のためにアナログ業務のデジタル化と情報伝達環境の改善を進めようした矢先に、コロナ禍が発生。テレワーク勤務が必須となり、業務連絡用として2020年6月に全社員にスマホを支給するのと同時にLINE WORKSを導入しました。
また、時期を同じくしてアナログ業務をデジタル化する仕組みを構築するために、ノンプログラミングでさまざまな業務アプリを作れるkintoneと、プログラミング技術がなくてもLINE WORKSと連携できるJobocoを導入しました。社員間の連絡ツールとして使い勝手が良いLINE WORKSと連携できれば、社内のさまざまなデータ登録の省力化や業務プロセスを可視化するのに利用できるだろうとの考えもありました。
まずはLINE WORKSの導入を進めたそうですが、どのような活用や成果がありましたか?
【トーク】安否確認の訓練に活用することでLINE WORKSの浸透を促進
【アンケート】社員へのヒアリング業務を省力化
【掲示板】会社からの重要な通達を速やかに周知
羽刕さん :
当社が立地する釧路は地震が多く、東日本大震災でも津波被害が出ています。緊急時の対応方針をすぐに伝えるために、全社員が入った「緊急連絡網」グループを作りました。LINE WORKSはスマホでも使いやすく、また誰がメッセージを読んだか個人単位で把握できる既読機能があり、非常時の社員の安否確認をスムーズに行うのに有用だと考えました。
導入から1年ほどは毎月1回、トークで安否確認の訓練を続け、しばらくすると全社員がこまめにLINE WORKSをチェックするようになりました。
小澤さん :
見返す必要がある会社からの通達事項はLINE WORKSの掲示板にもアップしています。メールアドレスを持たない社員にも直接情報が届くので、重要な伝達事項をより素早く周知できるだけでなく、未読者の確認もできるため、ちゃんと読まれているか不安になることなくなりました。社員も、スマホからいつでもどこでも閲覧できます。
竹内さん :
LINE WORKSのアンケート機能は、さまざまなヒアリング業務に活用して時短につなげています。紙で運用していた現場担当の作業服の調達では、サイズ確認をアンケート機能で行うことで、確認の手間を削減。回答データは自動的に集計できるので、とりまとめる作業が不要になりスムーズに発注できるようになりました。女性社員にとっては、服のサイズを紙に記入するよりアンケート機能で回答する方が抵抗感も小さいようです。
アンケート機能の活用で多数の社員へのヒアリングが格段にスピードアップ
羽刕さん :
業務連絡や情報共有がスピーディに行われるようになり社内のコミュニケーション基盤が整ったことを受け、次のステップとして手間のかかっていたアナログ業務を効率化すべく、kintoneとJobocoの活用を進めました。
LINE WORKSとkintoneをJobocoで連携した結果、どのような成果を得ましたか。
・事務用品の在庫が一定数減るとトークに自動通知される仕組みを構築
・アルコールチェックの測定結果の記録を効率化し安全管理担当者の負担を軽減
・Botから社員食堂の利用予約が可能になり、紙の食券作成業務が不要に
竹内さん :
まず着手したのが、事務用品の在庫管理と発注業務の改善です。各部署にあった事務用品のストックを一元化し、その在庫状況をkintoneで作成したデータベースで管理するようにしました。
事務用品を持ち出す人は、Jobocoで構築したLINE WORKSのBotで「消耗品持ち出し登録」を実行します。必要な備品と数を登録すると、kintoneのデータベースに反映されます。消耗品ごとに設定した数までストックが減ると、自動的に購買担当者に補充注文を促すトークが発信されます。従来のやり方では、不足分があるかどうか都度在庫を確認して発注する必要がありましたが、この通知により発注タイミングが自動で把握できるようになったため、在庫管理が大幅に効率化されました。
羽刕さん :
ドライバーの飲酒検査義務化が白ナンバー車を使う事業者にも拡大されることを受け、アルコールチェッカーによる測定結果をLINE WORKSのBotから入力すると、そのデータがkintoneのアルコールチェック記録アプリに保存される仕組みもつくりました。kintoneからいつでも入力の有無を確認でき、登録されたデータの検索も可能なので、記録保管における安全管理担当者の負担が軽減されています。
社員がLINE WORKSのBotから登録したアルコール検知の記録をkintoneで集計する仕組みを実現
小澤さん :
次に社員食堂の食券作成業務の改善に挑みました。紙の食券を作成・配布することをやめ、LINE WORKSのBotからその日の食堂の利用を予約すると、kintoneで作成した管理アプリにその情報が記録されるフローを構築。まる1日かかっていた食券作成の業務がなくなり、さらにペーパーレス化にもつながりました。また代金は給与から差し引きますが、個々の社員の利用回数がkintoneにしっかり記録されるので、紙の食券を数える必要もなくなり、精算作業も以前と比べてかなり楽になりました。
LINE WORKSのBotで食券の作成と予約をデジタル化し業務負担の軽減に。予約情報をkintoneで管理し代金の精算業務が省力化
新保さん :
食券作成業務が大きく効率化したことを実感しています。今まで食堂の利用者は当日の朝に食堂へ出向いて予約をする必要がありましたが、LINE WORKSのBotから食堂の利用登録を行えるようになり、出先にいる社員もスマホから簡単に予約できるようになりました。その結果、食堂の利用者が以前より増えました。
年配の社員も使いやすいよう、LINE WORKSのBotの質問項目をできるだけシンプルにしたことも利用促進につながっていると思います。
羽刕さん :
中小企業はスピード感をもって目前の課題解消をすることが大切です。社員に自発的にそれを実践してもらいたいとの考えから、2023年の春にDX推進チームを発足させました。ほかの社員の声も拾いながらkintoneとLINE WORKSを活用して、目の前にある業務課題に対して1つ1つ改善を進めてもらっていますが、まだまだ多くの業務課題を解消できるはずだと期待を寄せています。
竹内さん :
さらに次のステップとしては、事務用品の在庫管理の仕組みを応用して、製作部門担当者が調達する鋼材の在庫管理や発注業務にも活かし、現場の業務も効率化できればと考えています。
LINE WORKS活用に関する今後の展望をお聞かせください。
羽刕さん :
名刺管理サービスの情報をLINE WORKSのアドレス帳で管理するなど、導入済の他のツールや既存のグループウェアの機能を見直し、分散しているシステムをLINE WORKSに集約・一本化することを考えています。このことでコスト削減とツールの管理効率化が期待できます。
また勤怠管理クラウドの出退勤時刻の打刻をLINE WORKSから可能にするなど、さまざまなシステムとの連携も検討しています。
LINE WORKSが、社内コミュニケーションの円滑化だけではなく、業務データを可視化するための情報プラットフォームとして当社の成長戦略において重要な役割を担ってきていると感じています。
【お話を伺った方】
羽刕 洋さん
1985年に入社。経営企画室長を経て20年8月に代表取締役社長に就任。
小澤 健志さん
総務・庶務業務を担当。社内DX推進チームのサブリーダーも務める。
竹内 将人さん
製作グループで資材や備品などの購買を担当する。
新保 美玖さん
品質保証室で部材や橋梁製品の品質検査に携わる。
※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2024年3月当時のものです。
Joboco・・・LINE WORKSと業務アプリ構築サービス「kintone」を連携するチャットボットをブラウザから簡単に作成できるサービス。
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