連鎖退職とは|原因と前兆、止まらないときの対策・防止策を解説

連鎖退職とは、1人の退職をきっかけに、同じ職場で退職が短期間に次々と続く現象で、ドミノ退職とも呼ばれます。   この記事では、連鎖退職が起こる原因と前兆、企業への影響に加え、退職が止まらないときの対策と予防策を解説します。

目次

    連鎖退職とは|ドミノ倒し型と蟻の一穴型

    連鎖退職は、欠員の負担が残った人に集まる型と、退職をきっかけに職場の問題が表に出る型の2つに大きく分けられます。

    連鎖退職は法令や統計で定義された用語ではなく、人事や組織運営の現場で使われてきた言葉です。数か月から1年ほどの間に、同じ部署や同じ立場の社員が続けて辞め、前の退職が次の退職のきっかけになっている状態を指します。一定の時期に退職が集中する退職ラッシュや、人数の多さに着目した大量離職と重なる部分もありますが、連鎖退職は退職どうしのつながりに目を向けた言葉です。

    青山学院大学の山本寛教授は、著書『連鎖退職』(日経プレミアシリーズ、2019年)で、連鎖退職を次の2つのパターンに分けて説明しています。

    型 きっかけと広がり方 起きやすい職場
    ドミノ倒し型 1人が辞めたあとの引き継ぎや補充が追いつかず、残った人の負担が増えて不満が表に出て、次の退職につながる ぎりぎりの人員で業務を回している職場。中小企業やベンチャーで起きやすいとされる
    蟻の一穴型 誰かの退職をきっかけに、評価の仕組みや仕事の慣習など、職場が抱えていた問題に目が向き、不信感が広がる 大企業で起きやすいとされる

    実際には、2つが重なって進むことも少なくありません。負担が増えて余裕がなくなったところに、信頼していた先輩の退職が重なると、それまで様子を見ていた人も転職を考え始めます。身近な人が辞めたことで、胸の内にあった不満や迷いが具体的な行動に変わりやすくなるためです。

    連鎖退職が起こる主な原因

    連鎖退職は、業務負荷の偏り、キーパーソンの退職、上司や評価への不信、将来への不安が重なったときに起こりやすくなります。

    転職した人が前の勤め先を辞めた理由をみると、女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」(12.9%)が最も多く、2番目は「職場の人間関係が好ましくなかった」(11.5%)です。男性では、定年・契約期間の満了を除くと「給料等収入が少なかった」(9.9%)が最も多くなっています(いずれも「その他の個人的理由」などを除く。出典: 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況(PDF)」)。こうした労働条件や人間関係、収入への不満を抱えた職場で、1人の退職が引き金になって起こるのが連鎖退職です。

    業務負荷の集中と人手不足

    少ない人数で回している職場では、1人の欠員が、そのまま残った人の残業や休日出勤に跳ね返ります。その人にしかできない業務が多いほど引き継ぎに時間がかかり、負担は長引きます。休みを取りにくい状態が続くと、体調や家庭との両立を理由に辞める人が出て、さらに負担が集まります。業務が特定の人に偏る状態の見直し方は、属人化の原因と解消ステップをまとめた記事で整理しています。

    キーパーソンやエース社員の退職

    後輩の相談に乗っていた中堅社員や、成果を上げていた社員が辞めると、周りの人は仕事の支えを失います。目標にしていた先輩の姿も見えなくなり、あの人が辞めるならと、自分が会社に残る理由を考え直す人も出てきます。蟻の一穴型は、こうした退職をきっかけに始まることがあります。

    上司のマネジメントと人間関係

    人間関係の不満には、上司との関係や、相談しにくい雰囲気も含まれます。指示が一部の人にしか伝わらない、勤務帯の違う人との申し送りが食い違う、要望を出しても返事がない。こうしたすれ違いが重なると、言っても変わらないという受け止めが職場に広がり、1人の退職をきっかけに同じ思いを抱えた人が動き出しやすくなります。

    評価や待遇への不満

    評価の基準が見えず、昇給や昇格の見通しが立たない職場では、努力が報われるかどうか分からないまま働くことになります。待遇の水準に加えて、なぜその評価なのかが説明されていないことが、不信感につながります。

    会社の将来への不安

    業績の悪化や事業の縮小、組織変更や経営方針の大きな転換は、会社の先行きへの不安を生みます。同じ調査では、35〜39歳の男性で「会社の将来が不安だった」が12.7%と、給料(11.2%)や労働条件(11.1%)を上回っていました。職場を支える年代の社員が、会社の先行きを重く見ていることがうかがえます。

    辞めていく層によって原因の見当がつく

    連鎖の中心にいる層を見ると、原因の見当がつきます。新人が続けて辞める場合は、求人のときの説明と実際の仕事との差や、配属後に相談できる相手がいないことなど、受け入れの体制に原因があることが多くみられます。中堅社員が続く場合は、役割の重さに見合う裁量や将来の見通しが示されていないことが考えられます。成果を上げている社員が続く場合は、評価の分かりにくさや挑戦の機会の少なさが背景として挙げられます。

    優秀な人ほど辞めると言われるのは、社外にも選択肢を持つ人ほど、職場の変化を早く読み取って動きやすいためと考えられます。辞めていく人の能力や意欲の問題としてではなく、職場の環境を映すサインとして受け止めると、手を打つ場所が見えてきます。

    連鎖退職が企業に与える影響

    退職が続くと、現場の業務やサービスの質が落ちるだけでなく、採用と育成の負担、社外からの評判にも影響が広がります。

    影響 内容
    業務とサービスの質の低下 シフトの穴や案件の遅れが生じます。引き継ぎが終わらないまま退職が続くと、顧客対応や品質管理で取りこぼしが出やすくなり、売上や取引先からの信頼にも響きます。
    残った社員の負担と次の退職 業務量が増えるうえに、次は自分が限界になるのではという不安が広がり、次の退職を呼びます。
    採用と育成の負担 補充の募集や選考、入社後の教育が重なり、本来は業務の改善や顧客対応に使えた時間が採用と教育に取られます。
    知識やノウハウの喪失 顧客ごとの事情や過去のトラブル対応など、マニュアルにない知識が退職とともに失われ、後任が一人前になるまでの時間が延びます。
    社外からの評判 口コミサイトなどで退職の多さが知られると、応募が集まりにくくなり、補充の採用がさらに長引きます。

    連鎖退職の前兆

    連鎖退職の前兆は、部署ごとの数値、職場の会話や相談の量、面談での言葉の3つに表れることが多く、早めに気づけます。

    見る場所 前兆の例 気づくための工夫
    数値 部署ごとの離職率の上昇、残業時間の増加、有給休暇の取得の偏り、社員サーベイ(仕事への意欲や会社への愛着を測るエンゲージメント調査など)の結果の悪化 全社の平均ではなく、部署別・勤続年数別に毎月確認する
    職場の様子 雑談や相談が減る、会議での発言が減る、申し送りの内容が薄くなる 現場のリーダーが職場が静かになったと感じたら、早めに話を聞く
    面談 「来期のことはまだ分からない」といった言葉が増える、社外のキャリアの話題が増える 1on1を定期的に続け、本音を話しやすい関係をつくっておく

    数値は、全体の平均に埋もれると変化が見えなくなります。参考として、令和7年の全国の離職率は13.7%でした(入職率は14.7%。出典: 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」)。特定の部署だけが大きく上回っている場合や、同じ時期に同じ立場の人が続けて辞めている場合は、連鎖の始まりとして状況を確かめます。離職率の計算方法や業種別の平均は、離職率の計算方法と業界別平均をまとめた記事で紹介しています。

    職場の様子や面談での変化は、相談しにくい雰囲気の職場ほど表に出にくくなります。相談が減ったと気づいたときには、すでに何人かが退職を決めていることもあります。日頃から意見や不安を口にしやすい状態をつくる考え方は、心理的安全性を高める方法をまとめた記事が参考になります。

    連鎖退職が止まらないときの対策

    退職が続いているときは、現状の把握、負担の軽減、方針の説明を数週間のうちに進め、制度の見直しは並行して行います。

    1. 退職の理由と現状を把握する

    最初に取り組みたいのは、何が起きているのかを正確につかむことです。退職した人と在籍している人の両方から話を聞き、表向きの理由の奥にある事情を確かめます。直属の上司には話しにくいこともあるため、人事や別の部署の担当者が聞くと、本音を聞きやすくなります。

    あわせて、部署ごとの退職者数、残業時間、欠員の状況を並べ、連鎖がどこから始まっているのかを確かめます。起点になっている部署が分かれば、限られた手をそこに集中できます。

    2. 残った社員の負担を減らす

    次の退職を防ぐために、早めに手をつけたいのが負担の軽減です。業務を棚卸しして、優先度の低い業務は一時的に止める、手順を簡単にする、といった判断を管理職と人事で行います。人手が足りない場合は、他部署からの応援や、派遣・外部委託の活用も選択肢です。負担が軽くなったことを、残った社員が実感できるかどうかが分かれ目になります。

    3. 現状と今後の方針を社員に説明する

    何も説明がないと、残った社員は次は自分の番かもしれないと不安を募らせます。経営層や部門長から、把握している状況、いま取っている対応、今後の見通しを伝え、質問や相談を受ける場を設けます。根拠のない約束をする必要はありません。分かっていることと、まだ分からないことを正直に伝える姿勢が信頼につながります。説明は一度で終わらせず、進み具合にあわせて続けます。

    4. 日々の情報共有を立て直す

    人間関係の不満の多くは、伝わっていない、届いていないという日々のすれ違いから始まります。制度と違い、連絡の仕組みは数週間で変えられます。

    • 口頭だけに頼らず、指示や決定事項を文字でも残る形で共有する
    • 勤務帯をまたぐ申し送りの項目と時間を決める
    • 全員向けの連絡と、チーム内の連絡の経路を分ける
    • 現場から本部へ意見を上げる経路と、返事をする担当者を決める

    現場で働く人が多く、全員がパソコンの前にいるわけではない職場では、スマートフォンで音声と文字を扱える連絡手段も選択肢になります。その一つがLINE WORKS ラジャーです。スマートフォンをトランシーバーのように使え、ボタンを押して話すとグループに音声が届きます。音声は履歴に残り、あとから確認できます。アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。

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    5. 管理職を支える

    部下が続けて辞めていく状況では、直属の管理職も大きな負担を抱えます。業務の一部を人事や他の管理職が引き受けたり、1on1の進め方を相談できる相手をつけたりして支えます。支えがないまま対応を続けると、管理職自身が疲れ切って職場を離れてしまうこともあります。管理職を1人にしないことが、立て直しを続ける土台になります。

    連鎖退職を防ぐための予防策

    平時の予防は、評価の考え方を説明すること、入社前後のずれを減らすこと、中堅層と将来を話し合うことが柱になります。

    評価と待遇の考え方を説明する

    待遇をすぐに大きく変えられなくても、評価の基準や昇給・昇格の条件、求める役割を言葉にすることはできます。管理職から部下に直接伝え、なぜ今の評価なのかを説明するだけでも、受け止め方は変わります。

    採用と受け入れの段階でずれを減らす

    新しく入った人の退職が続くと、教える側の負担が増え、連鎖の起点になることがあります。厚生労働省によると、令和4年3月に卒業して就職した人の3年以内の離職率は、大学卒で33.8%、高校卒で37.9%でした(出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」)。求人の段階では、仕事の内容や勤務の条件をできるだけ具体的に伝えます。入社後は1か月・3か月・6か月などの節目で面談を行い、相談相手(メンター)を決めておくと、入社前後のずれを早く埋められます。

    中堅層やキーパーソンと将来を話す場をもつ

    連鎖のきっかけになりやすいのは、周りへの影響が大きい中堅社員やキーパーソンの退職です。年に1回以上は、今の役割の意味や、この先3〜5年に期待すること、本人が感じている行き詰まりを話し合う場を設けます。あわせて、その人にしかできない業務を少しずつ周りに任せていくと、本人の負担が下がり、万一退職しても影響を小さくできます。

    よくある質問

    連鎖退職はどれくらいの人数・期間で警戒すればよいですか?

    明確な基準はありません。同じ部署や同じ立場で、数か月から半年ほどの間に複数の人が続けて辞めたら、連鎖の可能性を考えて状況を確かめてください。人数の多さよりも、前の退職が次の退職のきっかけになっているかどうかが判断のポイントです。

    辞めたいと申し出た社員は引き止めたほうがよいですか?

    まずは退職を考えた理由を聞き、改善できることがあれば伝えます。そのうえで、最終的には本人の判断を尊重します。民法第627条では、期間の定めのない雇用は、退職の申し入れから2週間が経つと終了すると定められています(e-Gov法令検索「民法」)。強い引き止めは、周りの社員の不信感にもつながります。聞き取った理由は、残る社員への対策に生かします。

    「逃げ遅れ」という言葉は何を指していますか?

    SNSや口コミで、退職が続く職場に残ることを表す言葉として使われています。残った人に負担と不安が集まる状況を、働く側から表現したものです。会社としては、残る社員が安心して働けるよう、負担の見直しと状況の説明を早めに行うことが大切です。

    まとめ

    連鎖退職は、1人の退職をきっかけに、負担の偏りや職場への不信が表に出て広がる現象です。押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 負担が連鎖するドミノ倒し型と、職場の問題が表に出る蟻の一穴型がある
    • 原因は業務負荷の偏り、キーパーソンの退職、上司や評価への不信、将来への不安の重なり
    • 退職が続いているときは、現状の把握、負担の軽減、方針の説明を数週間のうちに進める
    • 平時は評価の説明、受け入れ体制の整備、中堅層との対話で予防する

    退職が続いて不安を感じたら、まずは部署ごとに、この半年で誰がどの順番で辞めたのかを書き出してみてください。連鎖の起点と、いま負担が集まっている人が見えてきます。

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