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トランシーバーは傍受される?聞かれやすいのはアナログ方式
トランシーバーの会話は、同じ周波数に合わせた受信機があれば第三者にも聞こえ、音声をそのまま送るアナログ方式は特に聞かれやすくなります。電波は、話し相手の無線機と同じように、届く範囲にあるほかの受信機にも届きます。
トランシーバーは、音声を電波にのせて送り、同じ周波数に合わせた無線機がその電波を受けて音声に戻す仕組みです。
アナログ方式は、音声を変換しないまま電波にのせる方式です。同じチャンネルに合わせた無線機や、広い範囲の周波数を受信できる受信機を使えば、第三者でも会話を聞き取れます。デジタル方式の無線機でも、秘話を設定していなければ、同じ方式に対応した受信機で会話を聞ける状態です。
第三者が無線の会話を聞くことを盗聴と呼ぶ場合もありますが、電波法の条文では傍受という言葉を使います。この記事でも傍受と書きます。
傍受と混信の違い
混信は、近くで同じ周波数を使っている別のグループの声が、意図せず自分の無線機に入ってくる現象です。傍受は、第三者が受信機を使って会話を聞き取ることを指します。
別のグループの声が入ってくる環境では、こちらの声も相手の無線機に届いている可能性があります。顧客の名前や警備の配置、金額などを無線で話している現場なら、混信に気づいたときに、話している内容もあわせて見直しておくと安心です。
無線方式別の傍受リスク
傍受のされやすさは、アナログ方式、秘話なしのデジタル方式、秘話ありのデジタル方式、回線を使う方式の順に低くなります。アナログ方式は同じチャンネルに合わせた無線機で聞け、秘話ありのデジタル簡易無線は周波数を合わせただけでは聞けず、IP無線やアプリは受信機で電波を拾って聞く方法が使えないためです。
| 方式 | 音声の送り方 | 聞かれにくくする仕組み | 傍受のされやすさ |
|---|---|---|---|
| 特定小電力トランシーバー(アナログ方式の機種) | 音声をそのまま電波にのせる | 基本的にない。メーカー独自の秘話機能を持つ機種もある | 高い。同じチャンネルに合わせた無線機で聞ける |
| デジタル簡易無線 | 音声をデジタル信号に変えて送る | 秘話コードを設定すると、同じ番号の無線機だけが音声に戻せる | 秘話なしなら対応する受信機で聞ける。秘話ありなら周波数を合わせただけでは聞けない |
| IP無線 | 音声をデータにして携帯電話の回線で送る | 無線機どうしが電波を直接やりとりしない。通信の暗号化の方式は製品ごとに異なる | 受信機で電波を拾って聞く方法は使えない |
| スマホのトランシーバーアプリ | 音声をデータにして携帯電話の回線やWi-Fiで送る | IP無線と同じ。参加者はログインするアカウントで管理する | 受信機で聞く方法は使えない。アカウントと端末の管理が対策の中心になる |
350MHz帯・400MHz帯のアナログ方式の簡易無線は、2024年11月30日で周波数の使用期限を迎え、同年12月1日以降は使えません(出典: 総務省 電波利用ポータル「簡易無線局のデジタル化について」)。この期限の対象は簡易無線局で、免許のいらない特定小電力トランシーバーは、アナログ方式の機種も今まで通り使えます。
特定小電力トランシーバー
特定小電力トランシーバーは、免許や登録をしないで使える無線機です。使う電波の型式と周波数は総務省令で決まっています(出典: 総務省 電波利用ポータル「免許及び登録を要しない無線局」)。メーカーが違っても同じ周波数のチャンネルを使うため、アナログ方式の機種の会話は、同じチャンネルに合わせた他社の無線機でも聞こえます。
届く距離は、販売各社の案内による目安で、見通しのよい屋外なら1km前後、建物の多い市街地や屋内では100〜200m程度です。店舗や施設の中で使っていても、電波が建物の外や隣の敷地まで届く場合があります。
秘話機能を持つ機種もありますが、メーカー独自の機能のため、他社の機種と組み合わせると秘話をかけたまま話せない場合があります。
デジタル簡易無線と秘話コード
デジタル簡易無線は音声をデジタル信号に変えて送るため、アナログ方式の受信機では内容を聞き取れません。ただし、デジタル簡易無線の信号に対応した受信機を使えば、秘話を設定していない会話は聞けます。
デジタル簡易無線には、ユーザーコードと秘話コードという2つの番号の設定があります。ユーザーコードは、通話する相手のグループを分けるための番号です。標準規格(ARIB STD-T98)のうち、変調方式の一つである4値FSK方式の規定では0〜511の範囲で設定し、受信する側の設定によってはユーザーコードに関係なく受信できる仕組みも定められています。ユーザーコードは混信を減らすための設定で、傍受を防ぐ設定にはなりません。
秘話コードは、音声の信号を別の信号に変えるための番号です。送る側は番号から作った符号の列を使って信号を変換し、同じ番号を設定した無線機だけが元の音声に戻せます。同じ規定では、秘話コードにあたる秘話キーは15ビットで、使える値は1〜32,767です。メーカーが違う無線機どうしでも秘話をかけたまま話せるよう、変換の手順も規格で共通になっています(出典: 電波産業会「デジタル簡易無線局の無線設備(ARIB STD-T98)」)。
秘話を設定すると、周波数を合わせただけでは会話を聞けなくなり、傍受の手間は大きく増えます。ただ、変換の手順は公開された規格で決まっていて番号の候補も限られるため、傍受を完全に防げるとまでは言えません。
IP無線・スマホのトランシーバーアプリ
IP無線やスマホのトランシーバーアプリは、音声をデータにして携帯電話の回線やWi-Fiで送ります。無線機どうしが電波を直接やりとりしないため、受信機を周波数に合わせて会話を聞く方法は使えません。
回線を使う方式で会話が外部に漏れるのは、ログインIDやパスワードを他人に知られた場合や、端末をなくした場合、退職した人のアカウントが残っている場合などです。通信をどう暗号化しているかはサービスによって異なるため、導入前に提供元が公開しているセキュリティ情報を確かめておきましょう。
傍受は違法?電波法で罰せられる行為
電波法には聞くこと自体を罰する規定がなく、聞いた内容を漏らす行為や、自分や他人の利益のために使う行為が処罰の対象です。電波法第59条は、特定の相手に向けた無線通信を傍受して、その存在や内容を漏らすことと、窃用することを禁じています。
窃用は、聞いた内容を自分や他人の利益のために使うことです。受信だけを目的とする設備は無線局に含まれないため(第2条第5号)、受信機を持つのに免許はいりません。聞くこと自体を罰する規定もありません(出典: e-Gov法令検索「電波法」)。
| 行為 | 電波法上の扱い |
|---|---|
| 業務用無線の会話を受信機で聞く | 聞くこと自体を罰する規定はない |
| 聞いた内容を他人に話す、SNSに書き込む | 秘密を漏らす行為にあたる。1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(第109条第1項) |
| 聞いた内容を自分や自社の利益のために使う | 窃用にあたる。罰則は上と同じ(第109条第1項) |
| 無線通信の業務に従事する人が、業務で知った秘密を漏らす・窃用する | 2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第109条第2項) |
| 当事者以外が内容を復元できないよう措置された無線通信(暗号通信)を、漏らす・窃用する目的で復元する | 復元しただけで1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。未遂も罰する(第109条の2) |
IP無線やアプリのように、携帯電話会社などの電気通信事業者が取り扱う通信は、電波法第59条の対象から除かれています。こうした通信の秘密は、電気通信事業法第4条で保護されています(出典: e-Gov法令検索「電気通信事業法」)。
第三者が聞くこと自体は法律で防げないため、会話を守るには、無線を使う側の備えが必要です。
トランシーバーの傍受を防ぐ対策
トランシーバーの傍受には、無線で話す内容を決め、秘話を正しく設定し、聞かれると困る連絡は回線を使う方式に移す、の3段階で備えます。デジタル簡易無線の秘話は変換の手順が公開された規格で決まっていて番号の候補も限られ、傍受を完全に防げるとまでは言えないためです。
無線で話してよい内容を決める
話す内容のルールづくりは、費用をかけずに、どの方式でもすぐ始められる対策です。秘話を設定しても傍受を完全には防げないため、聞かれても困らない内容だけを無線で話すことを基本にします。
- 顧客や患者のフルネーム、電話番号、住所は口にしない
- 暗証番号、金庫や鍵の番号、現金の額は無線で話さない
- 警備の配置や巡回の時刻は、社内だけで通じる呼び方で伝える
- 込み入った内容は「内線で折り返します」と伝え、無線以外の手段に切り替える
秘話を設定し、コードを管理する
秘話機能のある無線機を使っている場合は、まず全台の秘話設定を確かめます。秘話コードが違う無線機とは会話ができないため、全台で番号がそろっているかもあわせて確認しておきます。中古品や譲り受けた無線機には前の利用者の設定が残っていることがあるので、使い始める前に番号を変えておきましょう。
無線機をなくしたときや退職者が出たときは、秘話コードの変更も検討してください。特定小電力トランシーバーなどにあるトーンスケルチは、決めた信号音を含む電波を受けたときだけスピーカーから音を出す機能です。電波そのものは誰でも受信できるため、混信の対策には役立ちますが、傍受の対策にはなりません。
機密性の高い連絡は回線を使う方式に移す
個人情報や金額など、聞かれると困る内容を音声でやりとりする必要がある現場では、IP無線やスマホのトランシーバーアプリへの切り替えが選択肢になります。受信機で電波を拾って聞く方法が使えなくなる代わりに、対策の中心はアカウントと端末の管理です。切り替える場合は、専用のIP無線機とスマホのアプリの違いを比べて、どちらにするかを決めましょう。
スマートフォンをトランシーバーのように使うアプリには、LINE WORKSラジャーのようなサービスもあります。LINE WORKSラジャーはインターネット回線で音声を送る仕組みで、利用者はLINE WORKS IDでログインしてチャンネルに参加します。公式サイトに載っているセキュリティ・管理機能は、端末の紛失・盗難時の遠隔データ削除や、外部のMDMと連携して決めた端末からだけログインを許可する機能などです。MDMは、企業がスマートフォンをまとめて管理する仕組みを指します。フリープランで使える管理機能は、メンバー管理だけです。
回線を使う方式は、携帯電話の電波もWi-Fiも届かない場所や、通信障害のときには使えません。圏外になりやすい場所がある現場では、秘話を設定した無線機と使い分ける方法もあります。
よくある質問
自分たちの無線が傍受されているか確かめる方法はありますか?
話している側から確かめる方法はありません。受信機は電波を受け取るだけなので、誰かが聞いていても、送信している側の無線機では分からないからです。聞かれている前提で、話す内容と秘話の設定を決めておくと安心です。
傍受されやすい場所や状況はありますか?
電波が届く範囲なら、どこでも受信される可能性があります。見通しのよい屋外や高い場所ほど電波は遠くまで届き、デジタル簡易無線は見通しのよい屋外で1〜5km程度届くとされています(販売各社の案内による目安)。人の出入りが多いイベント会場や商業施設では、近くで受信機を使っている人がいても見分けられません。敷地の外まで電波が届いている前提で考えておきましょう。
無線で顧客の個人情報を話しても問題ありませんか?
話しただけで直ちに法律違反になるとは限りませんが、避けたほうが安心です。個人情報保護法第23条は、個人情報取扱事業者に、個人データの漏えいの防止など安全管理のために必要かつ適切な措置を求めています。顧客台帳の内容を秘話のない無線で読み上げる運用があれば、話す内容のルールや連絡手段を見直しておきましょう(出典: 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。
まとめ
トランシーバーの会話は、電波が届く範囲なら第三者にも受信される可能性があり、傍受のされやすさは方式によって変わります。押さえておきたい点は次のとおりです。
- アナログ方式は、同じチャンネルに合わせた無線機でそのまま聞こえる
- デジタル簡易無線の秘話は傍受の手間を大きく増やすが、傍受を完全には防げない
- ユーザーコードとトーンスケルチは混信を減らす設定で、傍受対策にはならない
- 電波法が罰するのは、聞いた内容を漏らす行為と利益のために使う行為、そのための暗号通信の復元で、聞くこと自体の罰則はない
- IP無線やアプリは受信機では聞かれない代わりに、アカウントと端末の管理が欠かせない
まずは、今使っている無線機の方式と秘話の設定を確かめ、無線で話してよい内容を現場で決めておきましょう。それでも聞かれると困る連絡が残る場合は、回線を使う方式も選択肢になります。スマートフォンをトランシーバーのように使えるLINE WORKSラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。