主なユーザーに“デスクレスワーカー”を据え、創業からわずか7年で“ARR100億円”を突破するなど「爆速」成長を続けるビジネスコミュニケーションツール「LINE WORKS」。
450万ID(2023年時点)を獲得し、今後も堅調な伸びが期待されているが
「『LINE WORKS』は単なるビジネスチャットではない。建設・工事、介護、教育、物流、小売店といった、DX難易度の高いデスクレスワーカーの働き方を根本的に変えられるポテンシャルがある」
そう語るのは「LINE WORKS」を手掛ける、ワークスモバイルジャパン事業企画本部長の大竹哲史氏だ。
では、日本の労働人口のおよそ半数、約3100万人を占めるデスクレスワーカーの働き方には、どのような課題があり「LINE WORKS」はどう貢献可能なのかを聞いた。
DXはオフィスワーカーのための“バズワード”じゃない
──「LINE WORKS」はなぜデスクレスワーカーのDXにこだわるのですか?
大竹 規制強化などで労働時間の上限が決まることに加えて、生産人口は減少。労働力の低下は目に見えています。
この環境下で売上を維持、あるいは伸ばすためには、現在の従業員数の労働力を前提とし、より少ない工数で従来の業務を回したり、新しい価値を生んだりする必要があります。
そのため、デジタルツールをうまく使い、労働力を代替しなければ継続的な成長がない。これが“DX”が重要だと盛んに言われるようになった一因です。
一方で、日本の労働人口のおよそ半数、約3100万人を占めるデスクレスワーカーとデジタルツール活用の相性はあまりよくなく、圧倒的にDXが遅れています。
この状況が続くと日本経済全体が上向きません。
──デスクレスワーカーのDXはなぜ遅れているのでしょうか。
これまで、デスクレスワーカーにとってデジタルツールは“使いたくても使えない”存在だったためです。
主な要因は二つ。一つは、オフィスと異なりインターネット環境の整備が不十分で、Wi-Fiなどが整っていないこと、また整えるのが困難なこと。
もう一つは、デジタルツールを開発するITベンダー側が、デスクレスワーカー向けのビジネスに注力してこなかったためです。
インターネット環境が整備されているオフィスワーカー向けのツールを開発すれば十分にビジネスを拡大する余地があり、開発が遅れました。
──その状況が続いてしまっている?
2016年(※1)にパソコンとスマホの世帯保有状況がほぼ横並びになり、スマホが普及しました。デスクレスワーカーもインターネット環境にある程度アクセスしやすくなりました。
※1 出典:平成29年版『情報通信白書』(総務省)
これをきっかけにスマホで扱えるアプリケーションも増加しました。ただ多くはパソコンをUI/UXの中心に据えて作りこんだものを、スマホに置き換えています。
スマホにおいてはコンシューマー向けのサービス開発が先行し、今やスマホファーストが常識になっていますが、ビジネス向けのアプリやシステムはまだまだ“パソコンファースト”を前提にしている場合が多いんです。
──たしかに、出先になるとスマホで仕事がしづらいと感じることがあります。
「LINE WORKS」は450万IDを獲得するなど、デスクレスワーカーへの普及が進んでいます。
これはコンシューマー向けのサービスである「LINE」を踏襲したUI/UXを徹底しているビジネスチャットだからこそだと考えています。
“誰一人取り残さない”デジタル化を目指せ
──デスクレスワーカーのDXの鍵はスマホファーストにあるんですね。
大前提として、スマホやタブレットを主軸とするモバイルファーストは必要です。ただそれだけを進めればデスクレスワーカー全体のDXが進むわけではないという難しさもあります。
──どういうことですか?
オフィスワーカーが多く働く会社では、あらかじめ業務に必要なアプリケーションが揃ったパソコンが支給されています。社員は、始業したらまずパソコンを起動してログインします。一方で、こうした状況をデスクレスワーカーは整えづらい。
まず、スマホは画面が小さく、情報の整理や同時表示も難しい。メールやアプリを開いたり、スケジューラーを確認したりと、複数のアプリを行き来しなければなりません。
デスクレスワーカーにとって、端末操作はあくまで隙間時間での業務であり、様々なアプリを使いこなしてもらうのは非常に大変です。
むしろ、増えれば増えるほど、仕事に必要な情報やアプリへのアクセスがしづらくなるとも言えます。
それから多くの業務用アプリはアカウント登録時にメールアドレスが必要ですが、そもそもデスクレスワーカーの多くは一人ひとりのメールアドレスを持たされていません。
──たしかに、店舗のメールアドレスを共有で使っていたりしますね。
はい。その結果、デスクレスワーカーはデジタル化が可能な業務領域が多くありながら、事務所に戻ってから紙で報告書を書く、出退勤はタイムカード。こうしたことが当たり前に続いています。
スマホからもっと自然に業務にアクセスできる状態を整えないと、“デジタル化したくても、できない”“現状維持の方がむしろラク”という状況は一向に改善しないと私は考えています。
デスクレスワーカーにとっての“OS”になる
──その問題をどう解決しようと考えていますか。
端的に言うと、「LINE WORKS」がデスクレスワーカーにとっての”OS”になる、という構想を描いています。
「とにかくこれを立ち上げれば仕事が始まる」「すべての業務にアクセスできる」といった入り口を担うイメージです。
「LINE WORKS」は一人ひとりにメールアドレスがなくても利用が可能です。IDを共用のアカウントから一人ひとりに付与できます。
その上で ビジネスチャットという枠組みを超え他社の様々な業務用アプリを「LINE WORKS」上で使えるよう連携を進めています。
元々「LINE WORKS」はスケジュールの共有や掲示板などの機能も備えており、それらの更新通知はトークに届きます。
同様に、業務にまつわる各社のあらゆるサービスを「LINE」のUI/UXに近い環境でユーザーに届けることができれば、DXできる領域をさらに拡張できると考えています。
──具体的にはどのような連携が進んでいますか?
最近の例を挙げると、勤怠管理システムの「freee 勤怠管理Plus」「freee人事労務」と連携を進めました。
従業員がいちいち勤怠専用サイトに行かなくても「LINE WORKS」上で日々の「出勤」「退勤」の打刻ができる。打刻修正の通知がきた場合も、同じトークルーム上でその場で、修正が完了できます。
パソコンで仕事をしていない従業員への浸透率が格段に上がると思います。
また、労務の管理者側にもメリットがあります。従業員のスマホに打刻忘れや各種申請の通知が届くため、従業員の専用サイトへのアクセス習慣が浸透しないことによって起こる手戻り作業が、大幅に削減できるんです。
実際に、創業から100年以上経っている老舗企業で、年間474時間の勤怠管理に係る事務処理が削減された事例もあります。
従業員に新しいツールを使ってもらう教育コストがかからず、スムーズに利用できたとの声をいただいています。
──バックオフィスのDXがかなり進みそうですね。
はい。また、近年は建設、介護、医療など様々な現場のニーズに沿ったデジタルツールも増えています。そうしたバーティカルな機能を持つサービスとの連携も進めています。
社用車を使う現場でのアルコールチェック、またワクチン接種を受けた医療従事者は健康観察日誌の記入が義務付けられるなど、各現場特有の管理業務が日々増しています。
こうした業務の煩雑化を防ぐために、各業界のニーズに沿った課題解決の手段を持つ企業と連携する。幅広い業界に進んでいけば、日本を総デジタル化できると考えています。
鍵は、シンプルで直感的なUI/UX
──連携するツールが増えればUIはどんどん煩雑になりそうですが、どう工夫しているのですか。
連携を進めても、ユーザーにとって使いにくくては、意味がありません。
特に「LINE WORKS」自体の機能については、モバイル端末での使い勝手に重点を置く方針をぶらさず、UI/UXの改善を続けています。
──具体的にはUI/UXをどう改善しているのでしょうか。
例えば、ボタンを一つ追加する場合でも、協力してくれるお客様のところへモックを持っていき、実際に触っていただいています。
その反応を見て、ボタンの配置やデザインを修正しています。様々な業種・業態のお客様へのヒアリングを徹底し、地道に改善に取り組んでいます。
例えば改良のつもりで、ある機能に2箇所からアクセスできる導線にしてみたところ、「どっちから使うのがいいのか?」と困惑されてしまったこともあります。
我々のようなオフィスワーカーの観点で「これがベストではないか」と考えたUI/UXが、デスクレスワーカーにとっての使い勝手の良さに当てはまるとは限らない、ということをよく痛感します。
また一方で、要望を取り込み過ぎないというバランスを保つことも意識しています。
大切なのは多くの人にとってシンプルでかつ直感的に使いやすいこと。それがプラットフォーマーとしての役割だとも思っています。
“OS”に乗るアプリケーションはひろがるのか?
──連携先の企業には何かメリットがあるのでしょうか?
連携先の企業からするとどうしても自社のリソースだけではリーチが難しいユーザーが出ます。
既に450万IDを取得している「LINE WORKS」がハブとなれば連携先のサービスを認知してもらう機会が生まれます。
個人メールアドレスが付与されていないデスクレスワーカーなど、なかなか手が届かないターゲットへ、サービスを展開しやすくなる点も魅力に感じていただいていますね。
またそれぞれのアプリケーションの使い方やマニュアル、質問対応なども「LINE WORKS」のトーク上で完結できます。導入における教育コストが自ずと下がり、連携先のツールの活用率も高まると考えています。
──ターゲットへの認知も広がり、連携先企業の負荷も減らしているのですね。
さらに言えば、開発面においても当初から「LINE WORKS」はAPIを公開しており工数の負荷を軽減しています。
また、アプリディレクトリという、連携アプリを簡単に追加できるアプリストアのような機能を顧客に提供し、連携先が選ばれやすくなる工夫もしています。
契約から請求までの煩雑さを解消し、連携先も開発パートナーも含め、全員が儲かる仕組みを作ってきたんです。
──なぜ「LINE WORKS」だけではなく、全員が儲かる仕組みを作ったのですか。
ITや様々な技術を活用し、少子高齢化による労働力の減少という社会課題をどうすれば解決できるのか? 我々は、まだ誰も解決したことのない、世界最先端のマーケットに挑んでいるといえます。
本気でこの状況を変えるのは、我々一社だけでは難しい。できるだけ多くの企業が手を取り合い、様々な技術を広げ、この社会課題を解決するべきだと思っているためです。
そのために必要となる土台を作るのが我々が果たすべき役割です。
様々な企業のDX推進に取り組んでいる、またこれから取り組みたいと考えている方には、ぜひ「LINE WORKS」という土台を有効活用してほしいですね。
執筆:長谷川賢人
撮影:大橋友樹
デザイン:小鈴キリカ
取材・編集:山口多門
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2023-10-26 NewsPicks Brand Design
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