IP無線とは?仕組み・メリット・デメリットから専用機・アプリの選び方まで解説

IP無線とは、携帯電話の回線を使い、無線機と同じようにボタンを押してグループで話せる通信手段です。   回線がつながる範囲なら離れた拠点とも話せ、利用者に免許はいりませんが、圏外では使えません。

目次

    IP無線とは|携帯電話の回線を使う無線機

    IP無線は、声をデータにして携帯電話の回線で送る無線機です。ボタンを押して話すと、同じグループの全員に声が届きます。端末はIP無線専用の無線機と、スマートフォンにアプリを入れて使うタイプの2つで、どちらも携帯電話の回線がつながる範囲で話せます。

    従来の無線機は、端末どうしで電波を直接やりとりします。IP無線の場合は、声が携帯電話の回線(4G・5G)とサーバーを通って、同じグループの端末に届く仕組みです。ボタンを押している間だけ話し、離すと相手の声を聞く操作方式をPTT(Push to Talk)といいます。

    STEP 1
    ボタンを押して話す

    →
    STEP 2
    声をデータに変換

    →
    STEP 3
    携帯電話の回線で送信

    →
    STEP 4
    サーバーからグループ全員へ

    IP無線で声が届くまでの流れ

    IPトランシーバー、LTEトランシーバー、PoC(Push to talk over Cellular)とも呼ばれ、どれも同じ仕組みを指します。端末は、IP無線専用の無線機と、スマートフォンにアプリを入れて使うタイプの2つです。アプリは、携帯電話の回線のほかWi-Fiでも使えます。

    従来の無線機・携帯電話との違い

    IP無線は免許や登録の手続きがなく、距離を気にせず話せます。圏外では使えず、月々の通信料がかかる点が無線機と違います。通信事業者が免許を受けた携帯電話の回線を使い、端末どうしで電波を直接やりとりしないためです。

    方式 免許・登録 話せる範囲の目安 話し方 主な費用
    IP無線(専用機・アプリ) 不要 携帯電話の回線(アプリはWi-Fiも)がつながる範囲 ボタンを押してグループ全員に話す 端末と、月々の通信料や利用料
    デジタル簡易無線 登録または免許が必要(無線従事者の資格は不要) 見通しのよい屋外で1〜5km程度、建物の多い市街地や屋内では数百m〜1km程度 ボタンを押してグループ全員に話す 本体、申請手数料、毎年の電波利用料
    特定小電力トランシーバー 不要 見通しのよい屋外で1km前後、建物の多い市街地や屋内では100〜200m程度 ボタンを押してグループ全員に話す 本体
    携帯電話 不要(通信事業者が免許を受けている) 回線がつながる範囲 相手を呼び出して1対1で話す 端末と月々の通信料

    無線機の距離は、販売各社の案内による目安です。電波を直接届ける無線機は、携帯電話の圏外でも話せる反面、建物の上下階や離れた拠点とは電波が届かないことがあります。IP無線の場合は、この2点が反対になります。

    免許や登録がいらない理由

    携帯電話も電波を出す無線局の一つで、本来は電波法の免許が必要です。北海道総合通信局は、電気通信事業者が免許の手続きをしているため、携帯電話の端末を使う人が手続きをする必要はないと案内しています(出典: 北海道総合通信局「電波利用環境FAQ」)。IP無線はこの携帯電話の回線を使うので、利用者が免許や登録を受ける必要はありません。操作に無線従事者の資格もいりません(電波法施行規則第33条)。

    総務省の電波利用ポータルも、仕事で使う無線の一つにIP無線を挙げています。携帯電話が利用できるエリアならどこでも使えて混信しないこと、通信料がかかることが紹介されています(出典: 総務省 電波利用ポータル「アマチュア無線は仕事に使えません!」)。

    IP無線とデジタル簡易無線の機能を1台にまとめた機種では、デジタル簡易無線として使う部分に登録か免許が必要です。こうした機種を選ぶ場合は、デジタル簡易無線の登録の方法と費用を導入前に確かめておくと、使い始めが遅れません。

    携帯電話との違い

    携帯電話では相手を1人ずつ呼び出し、相手が出てから話します。IP無線はボタンを押すだけで、同じグループの全員に声が一度に届きます。短い指示や報告を何人にも同時に伝えたい場面で使いやすい方式です。PTTでは基本的に1人ずつ順番に話すため、大勢で意見を交わす打ち合わせには電話会議のほうが合います。

    IP無線のメリットとデメリット

    IP無線は、上下階や離れた拠点とも手続きなしで話せます。圏外や通信障害の影響を受けやすく、通信料が毎月かかる点が弱点です。声を携帯電話の回線で送るため、回線がつながれば距離を気にせず話せる一方、通信障害が起きると同じ回線を使う全員の連絡が止まります。

    メリット

    • 回線がつながれば、建物の上下階や離れた拠点、外出中のスタッフとも話せる
    • 免許や登録の手続きがなく、人数の増減に合わせて端末を足し引きしやすい
    • 決められたグループの端末にだけ声が届き、ほかの無線機と混信しない
    • 機種やサービスによっては、会話の履歴を残したり、位置情報を確認したりできる

    デメリット

    IP無線は、携帯電話の回線がなければ使えません。電波が届かない山間部やトンネル、Wi-Fiも使えない地下では話せず、通信障害が起きると同じ回線を使う全員の連絡が止まります。圏外になりやすい現場では、端末どうしで直接話せるデジタル簡易無線のほうが確実です。

    費用のかかり方も違います。電波を直接届ける無線機は、本体を買えば月々の通信料はかかりません。IP無線は、台数分の通信料や利用料が毎月かかります。

    回線が混み合うと、つながりにくくなることがあります。スマートフォンで使う場合は、電池の持ちを確かめ、充電の方法も決めておくと安心です。

    災害時・BCP対策に使える?

    IP無線はデータ通信で声を送るため、災害直後も電話よりつながりやすいと考えられます。総務省によると、2011年の東日本大震災では携帯電話の音声通話に最大70〜95%の通信規制がかかり、パケット通信の規制はなかったか、あっても最大30%で一時的でした。ただし、基地局が止まった地域では使えません。

    大きな災害の直後は、安否確認の電話が集中して回線が混み合います(出典: 総務省「災害時には『災害用伝言サービス』やメールを御活用ください」)。

    停電や設備の損壊で基地局が止まった地域では、IP無線も使えません。複数の通信事業者の回線を使い分けられる機種もあります。災害への備えとしては、携帯電話の回線を使わないデジタル簡易無線や衛星電話と組み合わせておくと安心です。ふだんの業務でIP無線を使っていれば、非常時も同じ操作で連絡を取り合えます。

    専用機とスマホアプリ、どちらを選ぶ?

    スマートフォンを業務で使っていない現場や屋外の厳しい環境なら専用機、業務でスマートフォンを使う現場ならアプリが合います。専用機はボタン操作だけで使え、アプリは電話やチャットと無線をスマートフォン1台にまとめられるためです。

    専用機はさらにハンディ型と車載型に分かれ、IP無線の端末はアプリと合わせて次の3種類です。

    種類 特徴 合う使い方
    ハンディ型(専用機) 手に持って使うトランシーバー型。ボタン操作だけで使え、防水・防じん性能を備えた機種もある 屋外の作業、スマートフォンを業務で使っていない現場
    車載型(専用機) 車に取り付けて使う 車両と拠点の連絡。運転中は停車してから話す運用にする
    スマホアプリ 業務で使うスマートフォンにアプリを入れて使う。Wi-Fiでも使える 業務でスマートフォンを使っている現場、少人数から試したい場合

    専用機は、ボタンを押すだけで話せるため、スマートフォンの操作に慣れていないスタッフにも渡しやすい端末です。台数分の本体を購入し、故障や紛失に備えて予備機も用意しておく必要があります。

    アプリは、業務で使うスマートフォンに入れると、電話やチャットと無線を1台にまとめられ、無線機との2台持ちを解消できます。雨や粉じんの多い現場では、防水・防じん対応のスマートフォンやケースを選んでおきましょう。

    費用のかかり方と購入・レンタル

    費用は、端末、通信料や利用料、イヤホンマイクなどの付属品の3つに分けて考えると整理しやすくなります。専用機の場合は、本体の購入費と台数分の通信料です。アプリは利用料に加え、スマートフォンを新しく用意する場合はその端末代がかかります。金額は製品や台数、契約の形で大きく変わるため、見積もりで確かめてください。

    専用機は、購入のほかにレンタルでも使えます。イベントなど短い期間だけならレンタル、毎日の業務で使い続けるなら購入と、使う期間で選ぶと無駄がありません。比べるときは、月々の費用だけでなく、端末の買い替えも含めた数年分の合計で見ると判断しやすくなります。レンタルを候補に入れる場合は、レンタルの料金相場と、購入・アプリ型との比べ方を見積もりの前に確かめておきましょう。

    スマートフォンをトランシーバーのように使うアプリには、LINE WORKSラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すPTT方式で、声がグループに届き、会話は履歴に残る仕組みです。アドバンストプランでは、発話を自動でテキストに変換できます。

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    IP無線と相性の良い現場・苦手な現場

    IP無線は、上下階や離れた拠点との連絡が多い現場で使いやすく、圏外になりやすい山間部や地下の現場には合いません。介護施設・病院・ホテルで階をまたいで呼び出す連絡や、物流・運輸で拠点と外回りのスタッフをつなぐ連絡がその例です。携帯電話の回線が届けば距離に関係なく話せる一方、回線が届かない場所では話せないためです。

    現場 IP無線が合う理由 確認しておきたい点
    介護施設・病院・ホテル 階をまたぐ呼び出しや、部署どうしの連絡がしやすい 地下や機械室で回線やWi-Fiがつながるか
    物流・運輸・警備 拠点と外回りのスタッフを1つのグループでつなげる 運転中の通話は道路交通法で制限されるため、停車してから話す運用にする
    建設・土木 複数の現場や事務所との連絡をまとめられる 地下や山間部の現場は圏外になりやすい
    小売・商業施設 売場・バックヤード・事務所をまたいで話せる 1フロアで完結するなら特定小電力トランシーバーでも足りる
    イベント運営 広い会場や複数の会場に分かれたスタッフをまとめられる 人が大勢集まる場所では回線が混むことがある

    携帯電話がつながりにくい屋外の現場や、1フロアで完結する店舗では、電波を直接届ける無線機のほうが合う場合もあります。こうした現場では、業務用無線機の5つの方式の違いを免許・届く範囲・費用で比べたうえで、IP無線を使うかを決めましょう。

    よくある質問

    IP無線と簡易無線の無線機は、互いに話せますか?

    直接は話せません。IP無線は携帯電話の回線、簡易無線は無線機どうしの電波で声を送るため、方式が違います。同じ現場で一緒に話したい場合は、どちらかの方式にそろえるか、両方の機能を1台にまとめた機種を検討します。

    何人まで同じグループで話せますか?

    上限は製品やプランによって違うため、仕様の確認が必要です。複数の人が同時に話せる設定を用意している製品もあります。使う人数と、同時に話す場面があるかを先に決めておくと、各サービスの仕様を比べやすくなります。

    位置情報はわかりますか?

    GPSに対応した機種やサービスなら、端末の位置を管理画面の地図で確認できます。外回りのスタッフや配送車両がどこにいるかを把握したい場合に使えます。対応しているかどうかは製品によって違うため、導入前に確かめておきましょう。

    会話の内容を他人に聞かれることはありませんか?

    聞かれにくさは製品によって違います。IP無線の声は、携帯電話の回線とサーバーを通って、決められたグループの端末に届きます。通信をどこまで暗号化しているか、会話の履歴を誰が見られるかを、個人情報を扱う業務で使う前に確かめておくと安心です。ほかの無線機と比べてIP無線を選ぶかを決めるときは、無線の方式ごとの傍受されやすさと対策も確かめておくと判断しやすくなります。

    まとめ

    IP無線は、携帯電話の回線を使って、無線機のようにグループで話せる通信手段です。導入を考えるときに押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 回線がつながる範囲なら、上下階や離れた拠点とも話せる
    • 利用者に免許・登録・資格は不要。回線の免許は通信事業者が受けている
    • 圏外や通信障害の影響を受け、月々の通信料がかかる
    • 端末はハンディ型・車載型の専用機とスマホアプリ。スマートフォンを業務で使っているかと現場の環境で選ぶ

    導入の前に、使う場所のうち電波の弱いところで、携帯電話の回線やWi-Fiがつながるかを確かめておくと安心です。圏外になりやすい場所がある場合は、無線機との併用も含めて考えましょう。

    業務でスマートフォンを使っている現場なら、アプリを入れて電話と無線を1台にまとめる方法もあります。スマートフォンをトランシーバーのように使えるLINE WORKSラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。

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