特定小電力トランシーバーとは|免許不要の仕組み・通信距離・選び方を解説

特定小電力トランシーバーとは、送信出力を10mW以下に抑えることで、免許も資格もなく使える近距離連絡用の無線機です。   この記事では、免許不要の条件と通信距離の目安、選び方、旧スプリアス規格の扱い、他の無線方式との違いを解説します。

目次

    特定小電力トランシーバーとは:免許不要で使える条件

    特定小電力トランシーバーは、出力10mW以下の小さな電波を使うため、免許も資格もなく使える近距離用の無線機です。

    電波法で特定小電力無線局に区分される無線機のうち、音声の連絡に使うものを指します。技適マーク(電波法の技術基準に適合していることを示す表示)の付いた機器なら、申請もなく買ったその日から使い始められます。

    出力が小さい分、届く範囲は限られます。見通しのよい屋外でも数百m〜1km程度、建物の中では数十mほどが目安です。手軽さと距離の短さは、同じ低出力から生まれる表と裏の関係にあります。

    なお、特定小電力無線局にはワイヤレスマイクや、離れた場所の計測データを送るテレメーターなどの用途もあります。トランシーバーはそのうちの無線電話用に当たります。

    免許がいらない理由と、機器に求められる条件

    電波法第4条は、無線局を開くには総務大臣の免許が必要だと定めています。そのうえで同条第3号は、一定の条件を満たす無線局を免許の対象から外しています。条件は、出力が小さいこと、混信を防ぐ機能を持つこと、技適マークのある機器だけを使うことです。特定小電力無線局はこの枠組みで定められています。総務省 電波利用ポータル「特定小電力無線局」でも、無線従事者資格も無線局免許も不要と説明されています。

    免許がいらない代わりに、機器そのものには細かな技術基準があります。無線電話用では、主に次のような条件が総務省告示と無線設備規則(e-Gov法令検索)で決められています。

    • 送信出力は10mW以下(狭帯域化された一部の中継・同時通話用チャンネルのみ100mW以下)
    • 使える周波数は421MHz帯・422MHz帯・440MHz帯の決められたチャンネルだけ
    • 本体は容易に開けられない一体構造で、アンテナの利得(電波を強める度合い)にも上限がある
    • ほかの無線局が電波を出しているときは送信しない仕組み(キャリアセンス)
    • 一定の時間で送信が自動的に止まる仕組み(送信時間制限)

    技適マークのない機器や、改造した機器は使えない

    免許なしで使えるのは、技適マークの付いた機器をそのままの状態で使う場合に限られます。海外向けのモデルや個人輸入品には、技適を取得していないものがあります。こうした機器で国内で電波を出すと、免許を受けずに無線局を開いたものとして電波法違反になるおそれがあります。電波法第110条の罰則は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

    技適マーク付きの機器でも、改造すると技術基準から外れ、免許不要の扱いは受けられません。出力を上げる、アンテナを付け替える、延長ケーブルでアンテナを外に出すといった改造が該当します。遠くまで届かせたい場合は、ロングアンテナ仕様など、メーカーが認証を受けたモデルから選びます。免許制度や罰則の全体像は、電波法の解説で確認できます。

    通信距離の目安:屋外と屋内でどれだけ変わるか

    届く距離は見通しのよい屋外で数百m〜1km程度ですが、市街地や屋内では数十〜200m程度まで縮みます。

    カタログに書かれた通信距離は、見通しのよい場所での値です。販売各社の案内に見られる一般的な目安は次のとおりです。

    使う場所 距離の目安 距離が縮む主な理由
    見通しのよい屋外(広場・農地など) 数百m〜1km程度 障害物が少なく、電波が弱まりにくい
    市街地・住宅街 100〜200m程度 建物や車両で電波が反射・吸収される
    屋内の同じフロア 数十m〜100m程度 壁・棚・設備にさえぎられる
    上下のフロア間 届かないことがある 床のコンクリートや鉄骨で大きく弱まる
    地下・鉄筋コンクリート造の建物 さらに短くなる 鉄筋コンクリートが電波を通しにくい

    同じ機種でも、アンテナの長さ、端末を持つ高さ、周りの人や什器の量で届き方は変わります。導入前に、実際に使う場所の端から端まで試し通話をしておくと安心です。

    届く範囲を広げる方法

    中継器(レピーター)を置くと、端末から受けた電波を別の周波数で送り直すため、通話できる範囲はおおむね2倍程度まで広がるとされます。フロアの間や建物の陰を補う使い方が中心で、中継に対応した機種と中継用のチャンネルが必要です。

    ただし中継器も小電力の無線設備のため、コンクリートの壁や床を何枚も挟む環境では効果が限られます。屋外で距離を稼ぎたい場合は、ロングアンテナ仕様のモデルを選ぶと届きやすくなる傾向があります。方式ごとの距離の違いは、トランシーバーの通信距離の解説でも紹介しています。

    チャンネルと通信方式:交互通話・同時通話・中継の違い

    周波数はメーカー共通で告示に定められており、通話のしかたは交互通話・同時通話・中継通話の3つに分かれます。

    使えるチャンネルと周波数

    一般的な機種が使うチャンネルは、次の4つの区分です。

    通話のしかた 周波数 チャンネル数
    交互通話 422.050〜422.175MHz 11ch
    交互通話 422.200〜422.300MHz 9ch
    同時通話・中継通話 421.575〜421.7875MHzと440.025〜440.2375MHzの組み合わせ 18ch
    同時通話・中継通話 421.8125〜421.9125MHzと440.2625〜440.3625MHzの組み合わせ 9ch

    対応するチャンネル数は機種によって異なり、交互通話の20chと中継・同時通話の27chをすべて使える機種もあります。複数のグループで使う現場や、近くで同じ無線を使う人が多い場所では、対応チャンネルの多い機種を選ぶと混信を避けやすくなります。

    交互通話・同時通話・中継通話の違い

    3つの違いは、使う周波数の数と中継器の有無です。

    通話のしかた 仕組み 向いている使い方
    交互通話(単信方式) 1つの周波数を使い、送信ボタンを押している人だけが話す 同じチャンネルの全員に一斉に伝える、一般的な使い方
    同時通話(複信方式) 送信と受信で別の周波数を使い、電話のように同時に話せる ハンズフリーで話したい少人数の連絡
    中継通話(半複信方式) 中継器を介し、2つの周波数を使って交互に話す 中継器で届く範囲を広げたい場合

    交互通話は、ボタンを押している間だけ話せるPTT(プッシュ・トゥ・トーク)と呼ばれる方式です。相手が話している間はこちらの声が届かないため、話し終わりに「どうぞ」と添えて区切りを伝える運用がよく見られます。同時通話の仕組みは、同時通話ができる無線機の解説で詳しく紹介しています。

    メリット・デメリットと向いている現場

    免許不要で月額費用も回線も要らない点が強みで、届く距離の短さと会話が記録に残らない点が弱みです。

    メリットとデメリット

    観点 メリット デメリット
    手続き 免許・登録・資格が不要で、買ってすぐ使える 技適のない機器は使えず、改造もできない
    費用 本体の買い切りで、月々の通信料がかからない 台数が多いと初期費用がかさむ
    つながり方 携帯電話の回線やWi-Fiがなくても、端末同士で直接話せる 屋内のフロア間や市街地では、届く距離が大きく縮む
    周波数 メーカーが違っても、同じ周波数に合わせれば話せる 多くの利用者と周波数を共有するため混信しやすく、アナログ方式は第三者に聞かれるおそれがある
    運用 電源を入れてチャンネルを合わせるだけで使える 会話が記録に残らず、聞き逃した内容を後から確かめられない

    向いている現場と、制約が出やすい現場

    向いているのは、1つのフロアや見通しのきく範囲で完結する連絡です。

    • 小売店のレジとバックヤードの呼び出し
    • 飲食店のホールと厨房の連絡
    • 平屋や鉄骨造の倉庫でのピッキング指示
    • 1つの会場で完結する屋外イベントの進行

    反対に、次のような現場では電波が届きにくく、中継器の設置や別の通信手段との組み合わせが必要になることがあります。

    • 複数のフロアにまたがる介護施設やホテル
    • 地上と地下、別棟を行き来する建設現場
    • 地下駐車場や地下の売り場
    • 離れた拠点どうしの連絡

    選び方:チャンネル・アンテナ・電源など7つの確認項目

    出力の上限は法令で決まっているため、チャンネル・アンテナ・電源など使う場所と運用に合う条件で選びます。

    確認項目 見るところ 選び方の目安
    チャンネル・通話方式 対応チャンネル数と、中継・同時通話への対応 複数のグループで使う、中継器を置く予定がある場合は中継対応の機種
    アンテナ ショート・ロングなどのアンテナ仕様 屋内の近距離はショート、屋外や広い敷地はロングが届きやすい
    電源 乾電池式か充電式か、連続して使える時間 1シフトを通して使えるか。乾電池式は替えを手に入れやすく、充電式は電池代を抑えやすい
    防水・防じん IP規格の等級 屋外や水回りはIP67(粉じんが入らず、一時的な水没にも耐える)、屋内中心ならIP54(防じん・防まつ)程度が目安
    イヤホンマイク 接続端子と、対応するイヤホンマイク・ヘッドセット 両手を使う作業や接客中に使うならハンズフリー対応の組み合わせ
    方式・秘話 アナログ方式かデジタル方式か、秘話機能の有無 会話を聞かれにくくしたい場合はデジタル方式や秘話機能付き。アナログ機とは通話できない点に注意
    サイズ・重さ 本体の大きさとボタンの押しやすさ 長時間持ち歩くなら小型軽量、手袋で操作するならボタンの大きいもの

    旧スプリアス規格の機器は使えなくなる?

    古い技術基準(旧スプリアス規格)の機器も当分の間は使えますが、いつまで使えるかは決まっていません。

    スプリアスとは、必要な周波数の外に漏れ出る不要な電波のことです。その許容値を定めた無線設備規則が2005年12月に改正され、旧規格の機器は2022年11月30日まで使える経過措置が設けられていました。その後、新型コロナウイルス感染症の影響で機器の製造や移行作業が遅れたため、2021年8月の省令改正で期限が延長されました。

    2022年12月1日以降は、他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り使える、という条件が付いています。総務省は、社会経済状況の回復を踏まえて移行期限を検討するとしています(出典: 総務省 電波利用ポータル「スプリアス発射の強度の許容値に係る技術基準の改正に伴う経過措置」)。

    手元の機器が旧規格かどうかは、本体の銘板に記載された技適番号(工事設計認証番号)で確かめられます。番号は総務省の技術基準適合証明等を受けた機器の検索で照会できるほか、旧規格の機種をサポート情報で公表しているメーカーもあります。

    買い替えの際は、次に紹介するほかの方式も候補に入れると、今の不満をあわせて解消できる場合があります。

    デジタル簡易無線・IP無線・スマホアプリとの違い

    屋外の広い範囲ならデジタル簡易無線、フロア間や拠点間ならIP無線やスマホアプリが向いています。

    方式 免許・手続き 届く範囲の目安 主な費用 向いている使い方
    特定小電力トランシーバー 不要 屋外で数百m〜1km程度、屋内は数十m程度 本体の購入費 1フロア・近距離の連絡
    デジタル簡易無線 免許局は免許、登録局は登録の手続きが必要 見通しのよい屋外で数km程度 本体の購入費と電波利用料 屋外の広い現場、警備・イベント
    IP無線(専用機) 不要(携帯電話の回線を使う) 携帯電話の回線がつながる範囲 専用機の費用と月々の通信料 車両や移動しながらの広域連絡
    スマホのトランシーバーアプリ 不要(携帯電話の回線やWi-Fiを使う) 回線がつながる範囲 アプリの利用料と通信費 フロア間・拠点間の連絡、会話の履歴を残したい現場

    デジタル簡易無線は出力が大きく、屋外では遠くまで届きます。ただし周波数も方式も違うため、特定小電力トランシーバーとは交信できません。同じ現場で使う機器は、どちらかの方式にそろえる必要があります。詳しくはデジタル簡易無線の解説をご覧ください。

    IP無線とスマホのアプリは携帯電話の回線やWi-Fiを使うため、建物の構造や距離に左右されず、フロア間や離れた拠点ともつながります。IP無線の仕組みはIP無線の解説にまとめています。

    スマートフォンをトランシーバーのように使うアプリには、LINE WORKS ラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すPTT方式で音声がグループに届いて履歴に残り、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。

    一方で、アプリやIP無線は回線がつながらない場所や通信障害のときには使えず、スマートフォンの電池の管理も必要です。

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    よくある質問

    特定小電力トランシーバーはどうやって使い始めますか?

    技適マーク付きの機器なら、電源を入れて、話す相手と同じチャンネルに合わせるだけで使えます。免許の申請や開設の届け出はいりません。グループで使う場合は、関係のない通話が聞こえないよう、全台でチャンネルとグループ番号(トーン信号の設定)をそろえておきます。

    メーカーが違う機種同士でも話せますか?

    同じ周波数に合わせれば、基本的に話せます。周波数は告示でメーカー共通に決まっているためです。ただし、チャンネル番号の振り方やトーン信号の名称・番号は機種によって異なることがあります。取扱説明書の周波数表で合わせてから、試し通話で確かめてください。秘話機能などメーカー独自の機能は、他社の機種では働きません。

    同時に何人まで話せますか?

    交互通話なら、同じチャンネルとグループ設定にした全員に一斉に声が届きます。話せるのは一度に1人で、誰かが送信している間は、ほかの人がボタンを押しても声は届きません。電話のように複数人で同時に話したい場合は同時通話に対応した機種を選びますが、参加できる台数には機種ごとに上限があります。

    災害時にも使えますか?

    使えます。携帯電話の基地局やインターネットを経由しないため、停電や通信障害が起きても、電池が残っていれば端末同士で話せます。届くのは近距離に限られるので、同じ敷地や避難所の中の連絡など、範囲を決めて使うのが現実的です。乾電池式なら予備の電池を備えておくと安心です。

    スマートフォンのトランシーバーアプリで代わりになりますか?

    回線が安定している現場なら、代わりになります。フロア間や拠点間の連絡、会話の履歴を残したい場合は、アプリのほうが向いています。反対に、携帯電話の電波が届きにくい場所や、回線に頼れない災害時の備えとしては、特定小電力トランシーバーに分があります。どちらか一方に決めず、用途で使い分ける方法もあります。

    まとめ

    特定小電力トランシーバーは、近距離の連絡を免許なしで手軽に始められる無線機です。押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 出力10mW以下で免許・資格は不要。ただし技適マーク付きの機器を改造せずに使うことが条件
    • 届く距離は屋外の見通しで数百m〜1km程度、屋内では数十m程度まで縮む
    • 旧スプリアス規格の機器は当分の間使えるが、期限は決まっていない

    導入や買い替えの前には、実際に使うフロアや敷地で試し通話をして、どこまで届くかを確かめておくと安心です。手持ちの機器があれば、技適番号で規格もあわせて確認しておきましょう。

    フロア間や拠点間の連絡、会話の記録が課題になっている場合は、アプリ型も選択肢になります。スマートフォンをトランシーバーのように使える LINE WORKS ラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。

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