特定小電力トランシーバーとは|免許不要の仕組み・通信距離・選び方を解説

特定小電力トランシーバーとは、出力の小さい電波を使い、技適マーク付きなら免許も資格もいらない近距離用の無線機です。   届く距離は見通しのよい屋外で1km前後、建物の多い市街地や屋内では100〜200m程度が目安です。

目次

    特定小電力トランシーバーとは|免許なしで使える条件

    特定小電力トランシーバーは、出力の小さい電波を使う近距離用の無線機で、技適マーク付きの機器なら免許も資格もいりません。手続きがいらないため、店舗や倉庫、イベントなどで買ってすぐに使い始められます。電波法第4条第3号が、出力1W以下などの条件を満たす無線局の免許を不要としているためです。

    技適マークは、電波法の技術基準に適合した無線機であることを示すマークで、多くは本体の銘板に表示されています。電波法施行規則には特定小電力無線局という区分があり、トランシーバーはその中の無線電話用です。同じ区分には、ワイヤレスマイクや、離れた場所の計測値を送るテレメーターなども含まれます。

    一般的な機種の送信出力は10mW以下です。出力が小さい分、届く範囲は近距離に限られます。買ってすぐ使える手軽さと距離の短さは、どちらも出力の小ささから来ています。

    免許がいらない理由と、機器に求められる条件

    電波法第4条は、無線局を開くには総務大臣の免許が必要だと定めています。ただし、同条第3号に当てはまる無線局は免許がいりません。条件は、出力が1W以下であること、混信を防ぐ機能を持つこと、技適マークの付いた機器だけを使うことです。特定小電力無線局はこの規定に沿った区分です。総務省 電波利用ポータル「特定小電力無線局」も、無線従事者資格と無線局免許はどちらも不要と説明しています。

    その代わり、機器そのものには細かな技術基準があります。無線電話用の主な条件は、平成元年郵政省告示第42号と無線設備規則に定められた次の5つです。

    • 送信出力は10mW以下(6.25kHz間隔の一部の同時通話・中継用チャンネルだけ100mW以下)
    • 使える周波数は告示で決められたチャンネルだけ。一般的な機種は421MHz帯・422MHz帯・440MHz帯を使う
    • 本体は容易に開けられない一体構造で、アンテナの利得にも上限がある
    • ほかの無線局が同じ周波数で電波を出しているときは送信しない仕組み(キャリアセンス)
    • 1回の送信を一定の時間で止める仕組み(送信時間制限)

    技適マークのない機器や、改造した機器は使えない

    免許なしで使えるのは、技適マークの付いた機器を改造せずに使う場合に限られます。海外で売られている無線機や個人輸入品は、技適マークのないものがあるため注意してください。総務省の技適マークのQ&Aは、米国向けのFRSやGMRSと呼ばれる無線機を国内で使うと電波法違反になると案内しています。

    技適マークの付いた機器でも、改造すると技術基準に適合している証明の効力がなくなります。改造の例は、出力を上げる、アンテナを付け替える、ケーブルでアンテナを延ばすなどです。こうした機器で電波を出すと電波法違反になるおそれがあり、電波法第110条の罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。遠くまで届かせたい場合は、ロングアンテナ仕様のモデルを購入時に選びます。

    通信距離の目安|屋外と屋内でどれだけ変わるか

    販売各社の案内では、見通しのよい屋外で1km前後、建物の多い市街地や屋内では100〜200m程度が目安です。一般的な機種の送信出力は10mW以下と小さく、建物や壁、床のコンクリートで電波がさえぎられると届く距離が縮みます。

    通信距離に規格で決まった値はなく、場所ごとの目安は次のとおりです。

    使う場所 距離の目安 距離が縮む主な理由
    見通しのよい屋外 1km前後(条件がよければ2km程度) 障害物が少なく、電波が弱まりにくい
    建物の多い市街地 100〜200m程度 建物や車両に電波がさえぎられる
    屋内の同じフロア 100〜200m四方程度 壁や棚、設備に電波がさえぎられる
    上下のフロア間 1〜2フロア程度。建物によっては届かない 床のコンクリートや鉄骨で電波が弱まる
    地下・鉄筋コンクリート造の建物 さらに短くなる 厚い壁や床が電波を通しにくい

    同じ機種でも、アンテナの長さや本体を身に着ける位置、周りの人や什器の量で届き方は変わります。導入前に、実際に使う場所の端から端まで試し通話をしておくと安心です。

    届く範囲を広げる方法

    アンテナは本体と一体で付け替えられないため、屋外や広い敷地で使う場合は、購入時にロングアンテナ仕様を選んでください。本体を体で覆わないように着け、イヤホンマイクを使って腰より高い位置に付けると、電波が届きやすくなります。

    フロアの間や建物の陰を補いたい場合は、中継器が選択肢になります。中継器は端末から受けた電波を別の周波数で送り直す機器で、中継に対応した機種でなければ使えません。販売各社の解説では、届く範囲がおおむね2倍に広がる場合があるとされています。

    チャンネルと通話方式|交互通話・同時通話・中継通話の違い

    周波数は告示でメーカー共通に決まっていて、通話のしかたは交互通話・同時通話・中継通話の3つに分かれます。交互通話は1つの周波数を使ってボタンを押している人だけが話し、同時通話は送信と受信で別の周波数を使うため電話のように話せます。中継通話は、中継器を介して2つの周波数で交互に話す方式です。

    使えるチャンネルと周波数

    12.5kHz間隔のチャンネルは、次の4つの区分に分かれています。

    通話のしかた 周波数 チャンネル数
    交互通話 422.050〜422.175MHz 11ch
    交互通話 422.200〜422.300MHz 9ch
    同時通話・中継通話 421.575〜421.7875MHzと440.025〜440.2375MHzの組み合わせ 18ch
    同時通話・中継通話 421.8125〜421.9125MHzと440.2625〜440.3625MHzの組み合わせ 9ch

    交互通話用は合わせて20ch、同時通話・中継用は27chです。交互通話の20chだけを使える機種もあれば、両方の47chを使える機種もあります。近くで同じ無線を使う人が多い場所や、複数のグループで使い分けたい現場では、対応チャンネルの多い機種のほうが混信を避けやすくなります。

    交互通話・同時通話・中継通話の違い

    3つの方式は、使う周波数の数と中継器の有無で分かれます。

    通話のしかた 仕組み 主な使い方
    交互通話(単信方式) 1つの周波数を使い、送信ボタンを押している人だけが話す 同じチャンネルの全員に一斉に伝える、一般的な使い方
    同時通話(複信方式) 送信と受信で別の周波数を使い、電話のように同時に話せる ハンズフリーで話したい少人数の連絡
    中継通話(半複信方式) 中継器を介し、2つの周波数を使って交互に話す 中継器で届く範囲を広げたい場合

    交互通話は、ボタンを押している間だけ話せるPTT(プッシュ・トゥ・トーク)と呼ばれる方式です。相手が話している間はこちらの声が届かないため、話し終わりに「どうぞ」と添えて区切りを伝える運用がよく見られます。

    メリット・デメリットと相性の良い現場

    免許も登録も月々の通信料もいらない点が強みで、届く距離の短さと会話が記録に残らない点が弱みです。端末同士が直接話すため回線の契約はいりませんが、出力が小さく、屋内のフロア間や市街地では届く距離が縮みます。相性が良いのは、小売店のレジとバックヤードや飲食店のホールと厨房など、1つのフロアで完結する連絡です。

    メリットとデメリット

    観点 メリット デメリット
    手続き 免許・登録・資格が不要で、買ってすぐ使える 技適マークのない機器や、改造した機器は使えない
    費用 本体の買い切りで、月々の通信料がかからない 台数が多いと初期費用がかさむ
    つながり方 携帯電話の回線やWi-Fiがなくても、端末同士で直接話せる 屋内のフロア間や市街地では、届く距離が大きく縮む
    周波数 メーカーが違っても、同じ周波数に合わせれば基本的に話せる 多くの利用者と周波数を共有するため混信しやすく、同じ周波数の受信機があれば会話を聞かれるおそれがある
    運用 電源を入れてチャンネルを合わせるだけで使える 会話が記録に残らず、聞き逃した内容を後から確かめられない

    相性の良い現場と、制約が出やすい現場

    相性が良いのは、1つのフロアや見通しのきく範囲で完結する連絡です。

    • 小売店のレジとバックヤードの呼び出し
    • 飲食店のホールと厨房の連絡
    • 平屋や鉄骨造の倉庫でのピッキング指示
    • 1つの会場で完結する屋外イベントの進行

    次のような現場では電波が届きにくく、中継器を置くか、別の通信手段と組み合わせることになる場合があります。

    • 複数のフロアにまたがる介護施設やホテル
    • 地上と地下、別棟を行き来する建設現場
    • 地下駐車場や地下の売り場
    • 離れた拠点どうしの連絡

    選び方|チャンネル・アンテナ・電源など7つの確認項目

    出力の上限は法令で決まっていて機種による差が小さいため、使う場所と運用に合わせて7つの項目で選びます。7つの項目は、チャンネル・通話方式、アンテナ、電源、防水・防じん、イヤホンマイク、方式・互換性、サイズ・重さです。屋外や広い敷地ならロングアンテナ、両手を使う作業ならハンズフリーで話せる組み合わせが目安です。

    確認項目 見るところ 選び方の目安
    チャンネル・通話方式 対応チャンネル数と、中継・同時通話への対応 複数のグループで使う、中継器を置く予定がある場合は中継対応の機種
    アンテナ ショート・ロングなどのアンテナ仕様 屋内の近距離ならショート、屋外や広い敷地ならロングが届きやすい
    電源 乾電池式か充電式か、連続して使える時間 1シフトを通して使えるか。乾電池式は替えを手に入れやすく、充電式は電池代を抑えやすい
    防水・防じん IP規格の等級 屋外や水回りはIP67(粉じんが入らず、一時的な水没にも耐える)、屋内中心ならIP54(防じん・防まつ)程度が目安
    イヤホンマイク 接続端子と、対応するイヤホンマイク・ヘッドセット 両手を使う作業や接客中に使うなら、ハンズフリーで話せる組み合わせ
    方式・互換性 アナログ方式かデジタル方式か、秘話機能の有無、今ある機種との組み合わせ 会話を聞かれにくくしたい場合はデジタル方式や秘話機能付き。アナログ機とデジタル機は通話できないため、今ある機種と混ぜて使うなら同じメーカー・シリーズでそろえると設定を合わせやすい
    サイズ・重さ 本体の大きさとボタンの押しやすさ 長時間持ち歩くなら小型軽量、手袋で操作するならボタンの大きいもの

    使えなくなる特定小電力トランシーバーはある?旧スプリアス規格の扱い

    旧スプリアス規格の機器も当分の間は使えますが、いつまで使えるかはまだ決まっていません。総務省が、社会経済状況の回復を踏まえて移行期限を総合的に検討するとしているためです。

    スプリアスとは、必要な周波数の外に漏れ出る不要な電波のことです。その許容値は技術基準の改正で2005年12月から新しい値になり、旧規格の機器には2022年11月30日まで使える経過措置が設けられました。その後、新型コロナウイルス感染症の影響で機器の製造や移行作業が遅れたため、2021年8月の省令改正で期限が当分の間に延長されています。

    2022年12月1日以降は、他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り使える、という条件が付きました。この条件は免許不要の無線局にも付いています。総務省は、社会経済状況の回復を踏まえて移行期限を総合的に検討するとしています(出典: 総務省 電波利用ポータル「スプリアス発射の強度の許容値に係る技術基準の改正に伴う経過措置」)。

    手元の機器が新旧どちらの規格かは、本体の銘板にある技適番号で確かめられます。総務省の技術基準適合証明等を受けた機器の検索で番号を調べ、「スプリアス規定」の項目が「新規定」と表示される機器は、そのまま使えます。

    2024年11月30日に使用期限を迎えたのは、アナログ方式の簡易無線局の一部の周波数です。特定小電力トランシーバーの周波数はこの中に含まれていません(出典: 近畿総合通信局「簡易無線局(免許局・登録局)」)。旧規格の機器を買い替える際は、次に紹介するほかの方式も候補に入れておくと、距離や記録の課題もあわせて見直せます。

    デジタル簡易無線・IP無線・スマホアプリとの違い

    屋外の広い範囲ならデジタル簡易無線、フロア間や拠点間ならIP無線やスマホアプリが合います。デジタル簡易無線は最大5Wの出力で屋外では遠くまで届き、IP無線とスマホアプリは携帯電話の回線やWi-Fiを使うため、建物の構造や距離に左右されにくいためです。

    方式 免許・手続き 届く範囲の目安 主な費用 合う使い方
    特定小電力トランシーバー 不要 見通しのよい屋外で1km前後、市街地や屋内は100〜200m程度 本体の購入費 1フロア・近距離の連絡
    デジタル簡易無線 免許局は免許、登録局は登録の手続きが必要 見通しのよい屋外で1〜5km程度 本体の購入費と毎年の電波利用料 屋外の広い現場、警備・イベント
    IP無線(専用機) 不要(通信事業者との契約が必要) 携帯電話の回線がつながる範囲 専用機の費用と月々の通信料 車両や移動しながらの広域連絡
    スマホのトランシーバーアプリ 不要(携帯電話の回線やWi-Fiを使う) 回線がつながる範囲 アプリの利用料と通信費 フロア間・拠点間の連絡、会話の履歴を残したい現場

    デジタル簡易無線は、使う周波数帯も方式も異なるため、特定小電力トランシーバーとは交信できません。同じ現場で使う機器は、どちらかの方式にそろえてください。デジタル簡易無線にそろえる場合は、登録の手順と費用を導入前に確かめておくと、使い始めが遅れません。

    IP無線とスマホのアプリは、回線がつながる範囲ならフロア間や離れた拠点ともつながります。

    スマートフォンをトランシーバーのように使うアプリの一つが、LINE WORKSラジャーです。ボタンを押して話す方式で、インターネットにつながっていれば距離の制限なくグループで会話でき、音声は履歴に残ります。アドバンストプランでは、発話を自動でテキストに変換することもできます。

    アプリやIP無線は、回線がつながらない場所や通信障害のときには使えません。スマートフォンの電池の管理も必要です。

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    よくある質問

    特定小電力トランシーバーはどうやって使い始めますか?

    技適マーク付きの機器なら、電源を入れて、話す相手と同じチャンネルに合わせるだけで使えます。免許の申請や届け出はいりません。グループで使う場合は、関係のない通話が聞こえないよう、全台でチャンネルとグループの設定をそろえておきます。

    メーカーが違う機種同士でも話せますか?

    同じ周波数のチャンネルに合わせれば、基本的に話せます。周波数は告示で決まっていて、メーカーによる違いがないためです。ただし、チャンネル番号の振り方やグループ設定のしかたは、機種によって異なることがあります。秘話機能などメーカー独自の機能は、他社の機種と組み合わせると使えない場合もあります。取扱説明書の周波数表で合わせてから、試し通話で確かめてください。

    同時に何人まで話せますか?

    交互通話なら、同じチャンネルとグループ設定にした全員に一斉に声が届きます。話せるのは一度に1人で、誰かが送信している間は、ほかの人がボタンを押しても声は届きません。電話のように複数人で同時に話したい場合は同時通話に対応した機種を選びますが、参加できる台数には機種ごとに上限があります。同時通話で話す人数が多い場合は、同時通話で話せる人数の目安と機種の選び方を確かめてから台数を決めます。

    話している途中で送信が止まるのはなぜですか?

    平成元年郵政省告示第49号の技術基準で、送信できる時間に上限が決められているためです。無線電話用の機器は原則として、1回の送信を30秒以内で止めて2秒休むか、通話全体を3分以内で区切って2秒空けます。長い説明は区切って話すと、途中で切れずに伝えられます。

    災害時にも使えますか?

    使えます。携帯電話の基地局やインターネットを経由しないため、停電や通信障害が起きても、電池が残っていれば端末同士で話せます。届くのは近距離に限られるので、同じ敷地や避難所の中の連絡など、範囲を決めて使うのが前提です。乾電池式なら、予備の電池を備えておきましょう。

    まとめ

    特定小電力トランシーバーは、近距離の連絡を免許なしで手軽に始められる無線機で、押さえておきたい点は次の3つです。

    • 一般的な機種の出力は10mW以下で、免許・資格は不要。技適マーク付きの機器を改造せずに使うことが条件
    • 届く距離は見通しのよい屋外で1km前後、市街地や屋内では100〜200m程度が目安
    • 旧スプリアス規格の機器は当分の間使えるが、期限は決まっていない

    導入や買い替えの前には、実際に使うフロアや敷地で試し通話をして、どこまで届くかを確かめておくと安心です。手持ちの機器があれば、技適番号で規格もあわせて確認しておきましょう。

    フロア間や拠点間の連絡、会話の記録が課題になっている場合は、アプリ型も選択肢になります。スマートフォンをトランシーバーのように使えるLINE WORKSラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。

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