介護ICT補助金とは|補助率・上限額と使える制度の一覧、申請の流れ

介護ICT補助金とは、介護ソフトやインカム、見守り機器の導入費用を都道府県が補助する制度で、主に介護テクノロジー導入支援事業を指します。   この記事では、補助率・上限額と要件、ほかの補助金、申請の流れと公募時期の確かめ方を解説します。

目次

    介護ICT補助金とは|介護テクノロジー導入支援事業のしくみ

    介護ICT補助金は、国の財源をもとに都道府県が実施する補助で、介護ソフトやインカム、見守り機器の導入費用が対象です。

    もとは介護ロボット導入支援事業とICT導入支援事業に分かれていた補助を、令和6年度に統合したのが介護テクノロジー導入支援事業です(出典: 厚生労働省 老健局 令和6年度概算要求の概要)。ICT導入支援事業の補助事業所数は、令和元年度195、令和2年度2,560、令和3年度5,371、令和4年度5,075と推移してきました(出典: 厚生労働省「介護テクノロジー導入・定着支援事業」)。

    申請先は国ではなく、事業所がある都道府県です。事業名や補助率、公募の時期は都道府県ごとに異なるため、最終的には自県の公募要領で確認することになります。

    当初予算の基金事業と補正予算の事業がある

    2026年9月時点では、令和8年度当初予算の基金事業と、令和7年度補正予算の事業の2本立てで実施されています。下の表は、その時点の国の資料にもとづく内容です(出典: 厚生労働省 老健局「令和8年度予算案の概要」)。

    予算 国の事業名 予算額 特徴
    令和8年度当初予算 介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金) 基金86億円の内数 介護テクノロジーを導入する経費を補助。補助率や上限額は都道府県が要綱で定める
    令和7年度補正予算 介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等支援事業 220億円 見守り機器・介護記録ソフト・インカムを集中的に支援。事業者の負担は1/5(補助率4/5)

    補正予算の事業は、令和8年度に繰り越して実施されています。都道府県での事業名は「介護テクノロジー定着支援事業」「介護テクノロジー導入支援事業」などさまざまです。補正予算の資料では、見守り機器・介護記録ソフト・インカムを集中的に支援する理由を、業務時間の削減効果が確認されているためと説明しています(出典: 厚生労働省 老健局「令和7年度補正予算案の概要」)。予算の組み立ては年度ごとに変わるため、最新の内容は所在地の都道府県の実施要綱で確認してください。

    補助率と上限額(基準額)

    2026年9月時点の補正予算の事業は補助率4/5、基準額はインカム1台100万円、介護ソフト100万〜250万円です。

    下の表は、2026年9月時点の「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」(国が示したもの)にもとづく基準額です(出典: 三重県公表資料「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」)。補助額は、実際にかかった費用の4/5と基準額を比べて、少ないほうになります。

    区分 基準額
    移乗支援・入浴支援の機器、介護業務支援のインカム 1台あたり100万円
    介護ソフト・バックオフィスソフト 職員数に応じて100万〜250万円(1〜10人100万円、11〜20人150万円、21〜30人200万円、31人以上250万円)
    介護ソフトと一体で使う端末・Wi-Fi環境の整備など(定着促進費用) 介護ソフトの基準額に15万円を上乗せ(115万〜265万円)
    上記以外の介護テクノロジー 1台あたり30万円
    パッケージ型導入(複数の機器を連動させる導入) 400万円以上1,000万円以下で都道府県が定める額
    導入と一体で行う業務改善支援 48万円

    介護ソフトの基準額は、職員数によって料金が変わる契約の場合です。それ以外の契約は一律250万円(定着促進費用を含めると265万円)になります。訪問系などの居宅サービス事業所や居宅介護支援事業所が、令和8年度中にケアプランデータ連携システムで5事業所以上とデータ連携する場合は、5万円が加算されます。

    たとえば職員25人の施設が介護ソフトに300万円をかけた場合、4/5は240万円ですが、基準額が200万円のため補助額は200万円です(試算)。区分や金額は年度によって変わることがあるため、最新の内容は所在地の都道府県の実施要綱で確認してください。

    基金による事業の補助率・上限額は、都道府県が要綱で定めます。国の令和7年度の資料では、要件を満たす場合は3/4を下限、それ以外は1/2を下限としていました(出典: 厚生労働省「介護テクノロジー導入・定着支援事業」)。

    補助の対象になる事業所と機器

    介護保険のすべてのサービス事業所が対象で、機器はTAISで介護テクノロジーとして選定されたものが基本です。

    令和8年度(令和7年度からの繰越分)の実施要綱では、介護保険法にもとづくすべてのサービス事業所(訪問介護や居宅介護支援を含む)と、養護老人ホーム・軽費老人ホームが対象です。要綱は、サービスの種類で対象を制限しないよう都道府県に求めています。

    機器は、公益財団法人テクノエイド協会の福祉用具情報システム(TAIS)で「介護テクノロジー」として選定されたものが対象です。TAISに掲載されていない機器でも、同じ水準の機能があると都道府県が判断すれば対象になり得ます。勤怠管理や給与などのバックオフィスソフトも、都道府県の判断で対象になります。

    • 介護ソフトは、記録・情報共有・請求を転記なしで一気通貫に行えるものに限る
    • 居宅系の事業所の介護ソフトは、ケアプランデータ連携標準仕様のCSV出力・取込への対応も必要
    • 施設系の介護ソフトは、LIFEのCSV連携仕様に準じた出力への対応も必要
    • 販売価格が公表され、一般に購入できる機器に限る(開発費は対象外)
    • 通信費は対象外
    • ほかの補助金(基金の介護テクノロジー導入支援事業やIT導入補助金など)で助成を受けたものは対象外

    介護ソフトの機能は、厚生労働省が公表している介護記録ソフト機能調査結果で確認できます。調査結果は随時更新されるため、申請時点の最新版を確認してください。

    重点分野は9分野16項目

    対象機器の枠組みになっているのが、国の「介護テクノロジー利用の重点分野」です。令和6年6月に改訂され、令和7年4月から9分野16項目で運用されています。移乗支援・排泄支援・見守り・コミュニケーション・入浴支援・介護業務支援などに、機能訓練支援、食事・栄養管理支援、認知症生活支援・認知症ケア支援の3分野が加わりました(出典: 厚生労働省「介護テクノロジー利用の重点分野」の改訂)。

    インカムは介護業務支援の機器として扱われる

    令和8年度(令和7年度からの繰越分)の要綱では、TAISの「介護業務支援」に掲載されているインカムを、移乗支援・入浴支援の機器と同じ1台100万円の区分にしています。パッケージ型導入の例にも「介護ソフト+インカム」が挙げられています。フロア間の連絡や夜勤帯の応援要請を声で済ませたい施設にとっては、介護ソフトと組み合わせて計画しやすい機器です。

    インカムには、専用の無線機のほか、スマートフォンのアプリを使うものもあります。個々の製品が補助の対象になるかは、TAISでの掲載状況と都道府県の判断によるため、製品ごとにTAISと公募要領で確認してください。

    アプリ型の一つに、スマートフォンをトランシーバーのように使えるLINE WORKS ラジャーがあります。ボタンを押して話すとグループに音声が届いて履歴に残り、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。介護現場でのインカムの選び方は、介護施設のインカムの記事で紹介しています。

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    補助を受けるための主な要件

    業務改善支援を受けること、業務改善計画と3年間の効果報告、施設系は委員会、在宅系はデータ連携が主な要件です。

    2026年9月時点の補正予算の事業で、国が実施要綱(令和8年度・令和7年度からの繰越分)に示している要件は次のとおりです。機器を買うだけでなく、導入を業務の見直しにつなげることが前提になっています。

    要件 内容
    業務改善支援 コンサルティング会社などから課題抽出・助言・事後評価の支援を受けるか、介護生産性向上総合相談センターへの相談や国・都道府県の研修を受ける
    業務改善計画と効果報告 業務改善計画を作って都道府県に提出し、補助を受けた翌年度から3年間、効果を報告する
    委員会の設置(施設・居住・短期入所・多機能系) 利用者の安全、サービスの質の確保、職員の負担軽減を検討する委員会を置く
    ケアプランデータ連携(訪問・通所などの居宅系) 令和7年度内にケアプランデータ連携システムの利用を始めている
    セキュリティ IPAのSECURITY ACTIONで一つ星か二つ星を宣言する
    賃金への還元 業務改善で収支が改善した場合は職員の賃金に還元し、職員に周知する

    都道府県が独自の条件を加えている場合もあり、県が指定する研修やセミナーへの参加を必須にしている例があります。研修の日程が公募より前に設定されることもあるため、最新の内容は所在地の都道府県の実施要綱で早めに確認しておくと安心です。

    申請の流れと公募時期の確かめ方

    公募要領の確認から交付決定、導入、実績報告と進み、導入後も3年間の効果報告が続きます。

    ステップ やること 注意点
    1. 公募要領の確認 自県の事業名・対象・期間を確認し、必須の研修を受ける 事前協議や見込額調査を先に行う県もある
    2. 計画づくり・見積 現場の課題を洗い出し、業務改善計画を作る。機器の見積を取る この段階では契約・発注をしない
    3. 交付申請 申請書、業務改善計画、見積書、カタログなどを提出する 職員数の証明が必要な区分もある
    4. 交付決定 県から交付決定の通知を受ける 申請額が予算を超えると抽選になる県もある
    5. 契約・導入・支払い 交付決定後に契約し、導入して代金を支払う 交付決定前の導入は補助の対象外
    6. 実績報告・補助金の受け取り 支払いの証憑などを提出し、額の確定後に補助金を受け取る 補助金は後払い。期限は県の要綱で定められる
    7. 効果報告 翌年度から3年間、業務改善の効果を報告する 導入前の業務時間などを記録しておくと比べやすい

    公募の時期は都道府県ごとに大きく異なり、年度ごとにも変わります。申請を考えたら、所在地の都道府県の介護担当課のページで、最新の実施要綱と公募期間を確認してください。自県のページは「(都道府県名) 介護テクノロジー 補助金」で検索すると見つけやすくなります。

    国の事業の資料や、対象機器を探せるTAISへの案内は、厚生労働省の「介護テクノロジーの利用促進」のページにまとまっています。公募が締め切られていた場合は、翌年度の公募に向けて準備を進めることになります。

    導入後の財産処分に注意する

    補助金で買った単価30万円以上の機器を、決められた期間内に目的外で使ったり、譲渡・廃棄したりする場合は、財産処分の手続きが必要です。期間は介護ソフト・介護ロボットでいずれも5年とされ、手続きには2〜3か月ほどかかる想定です(出典: 厚生労働省「補助金を活用して導入した介護テクノロジー等の財産処分手続の手順」)。機器を入れ替える予定があるときは、先に都道府県へ相談してください。

    介護施設が使えるほかの補助金・助成金

    ITツールならデジタル化・AI導入補助金、賃上げと設備投資を同時に行うなら業務改善助成金も選択肢です。

    下の表は、2026年9月時点の各制度の公募要領と公式ページにもとづく内容です。

    制度 向いているケース 介護事業所が確認したい点
    介護テクノロジー導入支援事業(都道府県) 介護ソフト、インカム、見守り機器などを導入したい 補正予算の事業は補助率4/5。公募の時期と期間は県ごと・年度ごとに異なる
    デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) 事務局に登録されたITツール(ソフトウェア・クラウド)を導入したい 介護業のプロセス(ケアプラン作成、介護記録、見守りシステムなど)が設定されている。介護サービス事業者は賃上げ要件の適用外
    業務改善助成金(厚生労働省) 事業場内最低賃金の引上げと、生産性を高める設備投資を同時に行う 申請期間は年度ごとに設定される。PC・スマートフォン・タブレットは、物価高騰等要件に当てはまる特例事業者のみ対象(令和8年度申請分)

    デジタル化・AI導入補助金は、2026年の公募要領(通常枠)で、介護保険法にもとづく介護サービス事業者を賃上げ計画の要件から外しています(出典: デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠))。枠や補助率、締切はIT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)の解説記事にまとめています。

    業務改善助成金の申請期間は年度ごとに定められ、都道府県によって期限が異なることもあります。最新の申請期間は、厚生労働省の「業務改善助成金」のページで確認してください。

    最新の内容は、介護テクノロジー導入支援事業は所在地の都道府県の実施要綱で、ほかの制度はそれぞれの公募要領で確認してください。

    どの制度も、同じ機器・経費に重ねて補助を受けることはできません。介護ソフトは介護テクノロジー導入支援事業、勤怠管理ソフトはデジタル化・AI導入補助金というように、経費を分けて計画する形になります。

    生産性向上推進体制加算とのつながり

    補助で入れた見守り機器・インカム・介護記録ソフトは、生産性向上推進体制加算の算定要件にも関わります。

    生産性向上推進体制加算は、令和6年度の介護報酬改定で新設された加算で、施設系・居住系・短期入所系・多機能系のサービスが対象です。2026年9月時点の単位数は、加算(Ⅱ)が月10単位、加算(Ⅰ)が月100単位です(出典: 厚生労働省「生産性向上推進体制加算(Ⅰ)及び(Ⅱ)の解説」令和8年3月更新)。

    区分 主な要件
    加算(Ⅱ)10単位/月 委員会で安全対策などを検討し、ガイドラインにもとづく業務改善を続ける。見守り機器・インカム等・介護記録ソフト等のうち1つ以上を導入。年1回、実績データを提出
    加算(Ⅰ)100単位/月 (Ⅱ)の要件に加え、3種類すべてを導入し、業務改善の成果を確認する。介護助手の活用などで職員の役割分担を進める

    ここでのインカム等は、インカムやビジネス用のチャットツールで職員間の連絡調整を速くするICT機器を指し、同じ時間帯に勤務するすべての介護職員が使うことが求められます。委員会は3か月に1回以上の開催が必要です。単位数や要件は介護報酬改定で見直されることがあるため、最新の内容は厚生労働省の資料で確認してください。

    令和8年度の介護報酬改定では、処遇改善加算に生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分が設けられました。施設サービス等では、生産性向上推進体制加算(Ⅰ)か(Ⅱ)を取得していること(または社会福祉連携推進法人に所属していること)が、上乗せ区分の特例要件です(出典: 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」)。補助金の要件である委員会や業務改善計画は、加算の準備とそのまま重なります。

    よくある質問

    交付決定の前に購入した機器も補助の対象になりますか?

    対象になりません。都道府県の実施要綱では、交付決定を受けてから契約・購入するよう定めているのが一般的です。見積の取得は問題ありませんが、発注や契約は通知を受け取ってから進めてください。扱いの細部は県の要綱で確認できます。

    今年度の公募が終わっていたら、どう準備すればよいですか?

    翌年度の公募に向けて、要件を先にそろえておくと申請が進めやすくなります。SECURITY ACTIONの宣言、施設系なら委員会の設置、居宅系ならケアプランデータ連携システムの利用開始、県の研修の受講などです。導入前の業務時間や残業時間を記録しておくと、計画づくりと効果報告の両方に使えます。

    スマートフォンやタブレット、通信費も対象になりますか?

    2026年9月時点の補正予算の事業では、介護ソフトと一体で使うPC・タブレット(リースを含む)とWi-Fi環境の整備費は、定着促進費用として対象です。介護ソフト以外の機器に付帯する端末も、主となる機器と一緒に導入する場合は対象にできます。毎月の通信費は対象外です。

    障害福祉サービスの事業所も使えますか?

    介護テクノロジー導入支援事業の対象は、介護保険のサービス事業所と養護・軽費老人ホームです。障害福祉分野には、別に「障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業」が設けられています(出典: 厚生労働省「令和7年度障害福祉関係補正予算案(抜粋)」)。

    まとめ

    介護ICT補助金で押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 申請先は都道府県。事業名・公募の時期・独自要件は県ごと、年度ごとに異なるため、最新の実施要綱で確認する
    • 2026年9月時点の補正予算の事業は補助率4/5。インカムは1台100万円、介護ソフトは100万〜250万円が基準額
    • 業務改善支援、業務改善計画と3年間の効果報告、委員会またはデータ連携が主な要件
    • 契約・購入は交付決定のあと。同じ経費をほかの補助金と重ねて受けることはできない

    最初の一歩としては、自県の公募ページを確認し、現場で困っている業務と、その業務にかかっている時間を書き出すところから始めてみてください。今年度の公募に間に合わない場合でも、この記録は翌年度の申請と効果報告にそのまま役立ちます。

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