介護ICT補助金とは|補助率・上限額と使える制度の一覧、申請の流れ

介護ICT補助金とは、介護ソフトやインカム、見守り機器の導入費用を都道府県が補助する事業で、国の介護テクノロジー導入支援事業を指します。   申請先は都道府県で、事業名や公募の時期、独自の要件は県ごと・年度ごとに異なります。

目次

    介護ICT補助金とは|介護テクノロジー導入支援事業のしくみ

    一般に介護ICT補助金と呼ばれるのは、国の財源をもとに都道府県が実施する介護テクノロジー導入支援事業です。介護保険のサービス事業所などが所在地の都道府県に申請し、事業名や補助率、公募の時期は都道府県ごとに異なります。

    国は令和6年度に、介護ロボット導入支援事業とICT導入支援事業を統合して、この事業に再編しました(出典: 厚生労働省「令和6年度予算案の概要(老健局)」)。前身のICT導入支援事業では、令和4年度に5,075の事業所が補助を受けています(出典: 厚生労働省「介護テクノロジー導入・定着支援事業」)。

    細かな条件は、自県の公募要領で確かめることになります。

    当初予算の基金事業と補正予算の事業がある

    2026年10月時点では、令和8年度当初予算による基金事業と、令和7年度補正予算による事業の2つがこの補助の財源です(出典: 厚生労働省 老健局「令和8年度予算案の概要」)。

    予算 国の事業名 予算額 特徴
    令和8年度当初予算 介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金) 基金86億円の内数 介護テクノロジーの導入経費を補助する。補助率と上限額は都道府県が要綱で決める
    令和7年度補正予算 介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等支援事業 220億円 見守り機器・介護記録ソフト・インカムを集中的に支援する。補助率4/5(事業者の負担は1/5)

    補正予算の事業は令和8年度に繰り越して実施されていて、都道府県では「介護テクノロジー定着支援事業」「介護テクノロジー導入支援事業」などの名前で公募されています。国は、見守り機器・介護記録ソフト・インカムを集中的に支援する理由を「業務時間削減効果が確認されているため」と説明しています(出典: 厚生労働省 老健局「令和7年度補正予算案の概要」)。実施している事業や名前は都道府県によって違うため、所在地の都道府県のページで確かめてください。

    補助率と上限額(基準額)

    2026年10月時点の補正予算の事業は補助率4/5、基準額はインカム1台100万円、介護ソフト100万〜250万円です。補助額は、実際にかかった費用の4/5と区分ごとの基準額を比べて、少ないほうの金額になります。

    国の実施要綱に示された基準額は次のとおりです(出典: 厚生労働省「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」鹿児島県掲載)。

    区分 基準額
    移乗支援・入浴支援の機器、介護業務支援のインカム 1台あたり100万円
    介護ソフト・バックオフィスソフト 職員数に応じて100万〜250万円(1〜10人100万円、11〜20人150万円、21〜30人200万円、31人以上250万円)
    介護ソフトと一体で使う端末・Wi-Fi環境の整備など(定着促進費用) 介護ソフトの基準額に15万円を上乗せ(115万〜265万円)
    上記以外の介護テクノロジー 1台あたり30万円
    パッケージ型導入(複数の機器を連動させる導入) 400万円以上1,000万円以下で都道府県が定める額
    導入と一体で行う業務改善支援 48万円

    職員数で料金が変わらない契約の介護ソフトは、一律250万円(定着促進費用を含めると265万円)が基準額です。訪問介護などの居宅サービス事業所や居宅介護支援事業所が、令和8年度中にケアプランデータ連携システムで5事業所以上とデータ連携する場合は、5万円が加算されます。インカムの100万円は1台あたりの上限で、導入できる台数は都道府県が必要と認める範囲です(出典: 厚生労働省「介護テクノロジー定着支援事業Q&A(令和8年度)」鹿児島県掲載)。

    たとえば職員25人の施設が介護ソフトに300万円をかけた場合、費用の4/5は240万円になります。この区分の基準額は200万円のため、補助額は200万円です(試算)。

    基金を財源とする事業では、補助率と上限額を都道府県が要綱で決めます。国の令和7年度の資料では、要件を満たす場合は3/4、それ以外は1/2が補助率の下限でした(出典: 厚生労働省「介護テクノロジー導入・定着支援事業」)。事業所ごとの合計の上限を別に設けている県もあるため、金額は所在地の都道府県の実施要綱で確認してください。

    補助の対象になる事業所と機器

    介護保険のすべてのサービス事業所が対象で、機器は福祉用具情報システム(TAIS)で選定されたものが基本です。国の実施要綱は、訪問介護事業所や居宅介護支援事業所を含むすべてのサービス事業所と、養護老人ホーム・軽費老人ホームを対象とし、サービスの種類で対象を制限しないよう都道府県に求めています。

    機器は、公益財団法人テクノエイド協会の福祉用具情報システム(TAIS)で「介護テクノロジー」に選定されたものが対象です。TAISに載っていない機器も、同じ水準の機能があると都道府県が判断すれば対象にできます。勤怠管理や給与計算などのバックオフィスソフトも、都道府県の判断で対象になります。

    • 介護ソフトは、記録・情報共有・請求を転記なしで行えるもの(すでに使っているソフトとの組み合わせでもよい)
    • 居宅系の事業所の介護ソフトは、ケアプランデータ連携標準仕様のCSV出力・取込にも対応
    • 施設系の介護ソフトは、科学的介護情報システム(LIFE)のCSV連携仕様に準じた出力にも対応
    • 販売価格が公表され、一般に購入できる機器(開発費は対象外)
    • 通信費は対象外
    • ほかの補助金(基金の介護テクノロジー導入支援事業やIT導入補助金など)で助成を受けたものは対象外

    介護ソフトの機能は、厚生労働省の「介護テクノロジーの利用促進」のページにある介護記録ソフト機能調査結果で確認できます。この調査はソフト事業者へのアンケート結果をまとめたもので、随時更新されるため、申請時点の最新版を見てください。

    重点分野は9分野16項目

    補助の対象になる介護テクノロジーは、国が定める「介護テクノロジー利用の重点分野」に当てはまる機器です。重点分野は令和6年6月に改訂され、令和7年4月から9分野16項目で運用されています。分野には、移乗支援、排泄支援、見守り・コミュニケーション、入浴支援、介護業務支援などがあります。改訂では、機能訓練支援、食事・栄養管理支援、認知症生活支援・認知症ケア支援の3分野が加わりました(出典: 厚生労働省「ロボット技術の介護利用における重点分野」の改訂)。

    インカムは介護業務支援の機器として扱われる

    国の実施要綱では、TAISの「介護業務支援」に掲載されたインカムは、移乗支援・入浴支援の機器と同じ1台100万円の区分です。パッケージ型導入の例にも「介護ソフト+インカム」が挙げられていて、介護ソフトとインカムを同時に入れる計画も立てられます。

    インカムには、専用の無線機のほか、スマートフォンのアプリを使うものもあります。個々の製品が補助の対象になるかは、TAISへの掲載状況と都道府県の判断で決まるため、製品ごとにTAISと公募要領で確認してください。

    スマートフォンをトランシーバーのように使えるLINE WORKSラジャーも、アプリ型のインカムの一つです。ボタンを押して話すとグループに音声が届き、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。インカムを計画に入れる場合は、機器の見積を取る前に介護施設で使うインカムの種類と費用を比べて、候補を絞っておきましょう。

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    補助を受けるための主な要件

    補助の要件は、業務改善の支援と計画の提出、3年間の効果報告が中心で、施設系は委員会の設置、居宅系はケアプランデータ連携も求められます。機器の購入だけで終わらせず、導入を業務の見直しにつなげることが前提になっているためです。

    2026年10月時点の補正予算の事業で、国の実施要綱が定める主な要件は次のとおりです。

    要件 内容
    業務改善支援 コンサルティング会社などから課題の抽出・助言・導入後の評価を受けるか、介護生産性向上総合相談センターや都道府県、国の委託事業が行う研修を受ける
    業務改善計画と効果報告 業務改善計画を作って都道府県に出し、補助を受けた翌年度から3年間、効果を報告する。計画づくりでは、原則として介護生産性向上総合相談センターに相談する
    委員会の設置(施設・居住・短期入所・多機能系) 利用者の安全、サービスの質の確保、職員の負担軽減を検討する委員会を置く
    ケアプランデータ連携(訪問・通所などの居宅系) 令和8年度内に、ケアプランデータ連携システム(同等の機能を持つと認められたシステムを含む)の利用を始める
    情報セキュリティ 情報処理推進機構(IPA)のSECURITY ACTIONで、一つ星か二つ星を宣言する
    賃金への還元 業務改善で収支がよくなった場合は職員の賃金に還元し、そのことを職員に知らせる

    国が示したQ&A(令和8年度)によると、ケアプランデータ連携は、システムの利用開始に加えて実際にデータを連携した実績も求められます。研修は、原則として機器を導入する前に受けることになっています(出典: 厚生労働省「介護テクノロジー定着支援事業Q&A(令和8年度)」鹿児島県掲載)。都道府県が独自の条件を加える場合もあり、県が指定する研修会への参加を必須にしている例があります。研修の日程が公募より前に組まれることもあるため、所在地の都道府県の実施要綱を早めに確認しておくと安心です。

    申請の流れと公募時期の確かめ方

    申請は、公募要領を確かめてから計画・申請・交付決定・導入・実績報告と進み、導入後も3年間は効果を報告します。公募の時期は都道府県や年度によって異なるため、所在地の都道府県の介護担当課のページで、最新の実施要綱と公募期間を確認します。

    ステップ やること 注意点
    1. 公募要領の確認 自県の事業名・対象・期間を確かめ、指定された研修を受ける 事前の見込額調査や計画書の事前審査を行う県もある
    2. 計画づくり・見積 現場の課題を洗い出して業務改善計画を作り、機器の見積を取る 契約・発注の前に、対象になる時期を県の要綱で確かめる
    3. 交付申請 申請書、業務改善計画、見積書、カタログなどを出す 介護ソフトを申請するときに、職員数が分かる資料を求める県もある
    4. 交付決定 県から交付決定の通知を受ける 申請額が予算を上回ると、減額や不採択になる場合もある
    5. 契約・導入・支払い 交付決定のあとに契約し、導入して代金を払う 交付決定前の契約・導入を対象外とする県と、その年度の4月1日以降の購入を対象にする県がある
    6. 実績報告・補助金の受け取り 支払いの証拠書類などを出し、補助額が確定したら補助金を請求する 補助金は後払い。報告の期限は県が決める
    7. 効果報告 翌年度から3年間、業務改善の効果を報告する 導入前の業務時間などを記録しておくと比べやすい

    自県のページは「(都道府県名) 介護テクノロジー 補助金」で検索すると見つけやすくなります。国の資料や、対象機器を探せるTAISへの案内は、厚生労働省の「介護テクノロジーの利用促進」のページにまとまっています。

    導入後の財産処分に注意する

    補助金で買った単価30万円以上の機器を、国が定める期間内に目的外で使ったり、譲渡・廃棄したりする場合は、財産処分の手続きが必要です。国の資料では期間の例として介護ソフト・介護ロボットとも5年が示され、手続きには2〜3か月ほどかかる想定です(出典: 厚生労働省「補助金を活用して導入した介護テクノロジー等の財産処分手続の手順」)。機器の入れ替えを予定しているときは、先に都道府県へ相談してください。

    介護施設が使えるほかの補助金・助成金

    ITツールの導入ならデジタル化・AI導入補助金、賃上げと設備投資を同時に行うなら業務改善助成金も候補になります。同じ機器・経費に複数の制度から重ねて補助を受けることはできないため、制度を組み合わせるときは経費ごとに申請先を分けて計画します。

    下の表は、2026年10月時点の各制度の公募要領と公式ページにもとづく内容です。

    制度 使いやすい場面 介護事業所が確認したい点
    介護テクノロジー導入支援事業(都道府県) 介護ソフト、インカム、見守り機器などを入れたい 補正予算の事業は補助率4/5。公募の時期は県ごと・年度ごとに異なる
    デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) 事務局に登録されたITツール(ソフトウェア・クラウド)を入れたい 介護業の業務プロセス(ケアプラン作成、介護記録、見守りシステムなど)が設定されている。介護サービス事業者は賃上げ要件の適用外
    業務改善助成金(厚生労働省) 事業場内最低賃金の引上げと、生産性を高める設備投資を同時に行う 申請期間は年度ごとに決まる。PC・スマートフォン・タブレットは、物価高騰等要件に当てはまる特例事業者だけが対象(令和8年度申請分)

    デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領(通常枠)では、介護保険法にもとづく介護サービス事業者は、賃上げ計画の要件の適用外です(出典: デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠))。介護ソフトなどのITツールをどちらの制度で入れるかを決めるときは、デジタル化・AI導入補助金の申請枠と補助率を確かめて、経費ごとの申請先を決めておきましょう。

    業務改善助成金の申請期間は年度ごとに決まり、都道府県によって締切が異なることもあります。最新の申請期間は、厚生労働省の「業務改善助成金」のページで確認してください。

    生産性向上推進体制加算とのつながり

    補助の対象になる見守り機器・インカム・介護記録ソフトは、生産性向上推進体制加算で導入を求められる機器と重なります。生産性向上推進体制加算は令和6年度の介護報酬改定で新設された加算で、施設系・居住系・短期入所系・多機能系のサービスが対象です。

    2026年10月時点の単位数は、加算(Ⅰ)が月100単位、加算(Ⅱ)が月10単位です(出典: 厚生労働省「生産性向上推進体制加算(Ⅰ)及び(Ⅱ)の解説」令和8年3月更新)。

    区分 主な要件
    加算(Ⅱ)10単位/月 委員会で安全対策などを検討し、生産性向上ガイドラインにもとづく業務改善を続ける。見守り機器・インカム等・介護記録ソフト等のうち1つ以上を導入する。年1回、実績データを出す
    加算(Ⅰ)100単位/月 (Ⅱ)の要件に加え、3種類すべてを導入し、データで業務改善の成果を確かめる。介護助手の活用などで職員の役割分担を進める

    加算でいうインカム等は、インカムやビジネス用のチャットツールを使って職員間の連絡調整を速くするICT機器のことです。加算(Ⅰ)(Ⅱ)とも、同じ時間帯に勤務するすべての介護職員が使う必要があります。委員会は3か月に1回以上開きます。単位数や要件は介護報酬改定で見直されることがあるので、最新の内容は厚生労働省の資料で確認してください。

    令和8年度の介護報酬改定では、処遇改善加算に、生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分が設けられました。上乗せの特例要件は、訪問・通所サービスなどではケアプランデータ連携システムへの加入と実績報告です。施設サービスなどでは、生産性向上推進体制加算(Ⅰ)か(Ⅱ)の取得と実績報告が要件になります。社会福祉連携推進法人に所属していることも、特例要件の一つです(出典: 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」)。補助金の要件にある委員会の設置やケアプランデータ連携は、こうした加算の準備にもなります。

    よくある質問

    交付決定の前に購入した機器も補助の対象になりますか?

    都道府県によって異なります。交付決定のあとに契約・購入するよう定めている県では、交付決定前に買った機器は対象外です。その年度の4月1日以降に買った機器を対象にする県もあります。見積を取るのは問題ありませんが、発注や契約の前に、所在地の都道府県の要綱で対象になる期間を確かめてください。

    今年度の公募が終わっていたら、どう準備すればよいですか?

    翌年度の公募に向けて、要件を先にそろえておくと申請を進めやすくなります。SECURITY ACTIONの宣言、施設系なら委員会の設置、居宅系ならケアプランデータ連携システムの利用開始と連携先の確保などです。国のQ&A(令和8年度)では、研修は補助を受ける年度に受講することになっているため、翌年度の研修の日程を早めに確かめておきます。導入前の業務時間や残業時間を記録しておくと、業務改善計画と効果報告の両方に使えます。

    タブレットなどの端末や通信費も対象になりますか?

    端末は、介護ソフトなどの機器と一緒に導入する場合に対象になります。毎月の通信費は対象外です。2026年10月時点の補正予算の事業では、介護ソフトと一体で使うPC・タブレット(リースを含む)とWi-Fi環境の整備費を、定着促進費用として補助できます。介護ソフト以外の機器に付帯する端末も、主となる機器と一緒に入れる場合は対象です。国のQ&Aでは、以前の要綱にあった端末1台10万円以内の定めはなくなり、基準額の範囲内で補助するとしています。

    クラウド型の介護ソフトの利用料やリース料も対象になりますか?

    対象になります。国のQ&Aでは、補助の対象額はその年度に支払った金額とされています。複数年分の利用料を初年度にまとめて払えば全額が、毎年払いなら1年分が対象です。介護テクノロジーのレンタル費用も補助の対象です。

    障害福祉サービスの事業所も使えますか?

    介護テクノロジー導入支援事業の対象は、介護保険のサービス事業所と養護・軽費老人ホームです。障害福祉分野には、別に「障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業」があります(出典: 厚生労働省「令和7年度障害福祉関係補正予算案(抜粋)」)。

    まとめ

    介護ICT補助金を検討するときに押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 申請先は都道府県。事業名・公募の時期・独自の要件は県ごと、年度ごとに異なる
    • 2026年10月時点の補正予算の事業は補助率4/5。インカムは1台100万円、介護ソフトは100万〜250万円が基準額
    • 業務改善の支援、計画と3年間の効果報告、委員会またはケアプランデータ連携が主な要件
    • 契約・購入してよい時期は県の要綱で確かめる。同じ経費をほかの補助金と重ねて受けることはできない

    最初の一歩としては、自県の公募ページを開き、現場で手間がかかっている業務と、その業務にかかっている時間を書き出すところから始めてみてください。今年度の公募に間に合わなくても、この記録は翌年度の申請と効果報告にそのまま使えます。

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