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ナースコールのスマホ連動とは|呼び出しがスマホに届く仕組み
ナースコールのスマホ連動は、居室からの呼び出しを、スタッフが持ち歩くスマートフォンで受けられるようにする仕組みです。ナースコールの制御装置が受けた呼び出しを、ゲートウェイや施設の電話交換機(PBX)がスマホ向けの信号に変え、施設内のネットワークを通して担当のスタッフに届けます。
これまで呼び出しは、ナースステーションの親機か、PHSなどの子機で受けるのが一般的でした。スマホ連携と呼ぶメーカーもあり、指している仕組みは同じです。
呼び出しがスマホに届くまでの基本的な流れ
スマホの画面に何を表示できるかは、ナースコールの製品によって違います。部屋番号や呼び出しの種類のほか、見守りカメラの映像まで表示できる製品もあります。何台のスマホを同時に鳴らせるか、スマホから居室の方と話せるかも、製品ごとに確かめておきたい点です。
PHSの終了とスマホへの切り替え
病院や介護施設では長く、PHSがナースコールの子機と内線電話を兼ねてきました。携帯電話会社が提供していた公衆PHSは、2023年3月末にすべてのサービスを終えています。一方、施設の中にアンテナを置いて使う構内PHSは自営PHSとも呼ばれ、免許のいらない無線局として今も使えます(総務省 電波監理審議会資料(令和5年9月22日))。
導入から年数のたった構内PHSは、旧スプリアス規格の機器かどうかも確かめておきましょう。旧規格の機器の使用期限は当分の間延長されていますが、総務省は移行期限を今後検討するとしています(総務省 電波利用ポータル「スプリアス発射の強度の許容値に係る技術基準の改正に伴う経過措置」)。
電波環境協議会が2024年度に行った病院の調査では、業務用の自営PHSを導入している病院のうち「今後も継続して利用予定」が73.9%でした。2020年度の86.3%から下がり、「今後別システムに切り替える予定」は4.9%から12.1%に増えています。業務用スマートフォンを導入している1,114病院に用途をたずねた質問では、「ナースコール連携」を挙げた病院は13.4%でした(電波環境協議会「2024年度医療機関における適正な電波利用推進に関する調査の結果」)。
PHSと同じ1.9GHz帯では、2017年にTD-LTE方式のデジタルコードレス電話も制度化されました。sXGPとも呼ばれる方式で、携帯電話の端末を子機に使えるシステムもあります。総務省の資料では、病院などで使われている自営PHSからの置き換えに期待が示されています(総務省「1.9GHz帯TD-LTE方式のデジタルコードレス電話の増波に伴う関係省令等の改正」)。構内PHSを更新するか別の方式に切り替えるかを決める場合は、構内PHSの代替手段の比べ方を先に確かめておくと、ナースコールの方式とあわせて更新の計画を立てられます。
ナースコールの種類とスマホ連動の方式
ナースコールのスマホ連動の方式は、今のナースコールに機器を足すか、システムごと入れ替えるか、配線のいらない無線式を入れるかの3つです。どの方式を選べるかは、今使っているナースコールが有線式か無線式か、電話設備と連動する構成かによって変わります。
ナースコールは、呼び出しの伝え方と受け方で、主に次の3つに分けられます。
| 種類 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 有線式 | 居室のボタンと制御装置を配線でつなぎ、ナースステーションの親機でまとめて受ける | 通信が安定しやすい。ボタンの増設や間取りの変更には配線工事がかかる |
| 無線式 | 居室のボタンから無線で呼び出しを送る | 配線工事を減らせる。電波の届く範囲の確認が要り、ボタン側の電池交換が要る機種もある |
| 電話設備と連動する構成 | 施設の電話交換機(PBX)とナースコールをつなぎ、内線電話の端末で呼び出しを受ける | 内線通話と呼び出しを同じ端末で受けられる |
スマホ連動の3つの方式は、今の設備をどこまで残すかで違いが出ます。
| 方式 | 今の設備 | 工事の規模 | 合う施設 | 確認したいこと |
|---|---|---|---|---|
| 今のナースコールにゲートウェイを足す | 居室のボタンや配線、制御装置を残す | ゲートウェイの設置とWi-Fiなどの整備 | 今のナースコールをまだ数年使う施設 | 今の機種と世代が対応しているか。PBXとつなぐ場合は電話設備の対応 |
| スマホに対応したシステムに入れ替える | 制御装置や居室のボタンを入れ替える | 大きい | 新築や大規模な改修、設備の更新時期を迎えた施設 | 初期費用と工事の期間 |
| 配線のいらない無線式を入れる | 居室の配線を使わない | 小さい | 配線工事の難しい建物、居室の少ない施設 | Wi-Fiや携帯回線の電波の入り方と月々の費用 |
今のナースコールを残したい場合は、ゲートウェイを足せるかどうかで進め方が決まります。対応の可否はメーカーと機種、導入した時期によって違うため、制御装置の型番と設置年を控えて、メーカーか保守業者に問い合わせてください。対応していないときや設備の更新時期が近いときは、システムの入れ替えも見積もりに入れておくと比べやすくなります。
スマホ連動のメリット|呼び出し対応で変わること
ナースコールの呼び出しをスマホで受けると、ナースステーションに戻らずに、誰がどの部屋から呼んでいるかを見て動けます。PHSでも呼び出しは受けられますが、スマホは画面が大きく、ほかのアプリと組み合わせて使えるためです。
製品によって、使い方の例は次のとおりです。
- 部屋番号や呼び出しの種類を画面で見て、急ぐ呼び出しから対応
- 複数のスタッフのスマホをほぼ同時に鳴らし、近くにいる人が対応
- ナースコールの子機と内線電話をスマホ1台にまとめ、2台持ちを解消
- 見守りセンサーの通知や介護記録のソフトを同じスマホで確認
- 呼び出しと応答の履歴を残し、呼び出しの多い時間帯を把握
どこまでできるかは、ナースコールの製品と、つなぐ機器の組み合わせで決まります。見守りセンサーや介護記録のソフトとつなぎたい場合は、今使っている機器とつなげるかを、見積もりの前にメーカーへ確かめておきましょう。
導入前に確認したい注意点|通信環境・医療機器・端末の管理
ナースコールのスマホ連動を安定して使うには、通信環境と医療機器への電波の影響、スマホの管理方法を導入前に整えておく必要があります。多くの方式は施設内のWi-Fiで呼び出しを届けるうえ、病院では医用電気機器との距離への配慮が、スマホには紛失や情報漏えいへの備えが要るためです。
Wi-Fiの届かない場所をなくし、ほかの通信方式とも比べる
ゲートウェイを足す方式やシステムを入れ替える方式の多くは、施設内のWi-Fiでスマホに呼び出しを届けます。前述の電波環境協議会の調査では、無線LANを導入している病院の49.1%が電波に関するトラブルを経験していました。トラブルを経験した病院の69.9%は、その内容に「特定の場所で電波が十分に届かない」を挙げています。
スタッフは居室のほか、廊下や浴室、トイレ、食堂でも呼び出しを受けます。導入前にサイトサーベイと呼ばれる電波の強さの調査を行い、スタッフが動く範囲でつながるようにアクセスポイントを置いてください。総務省の説明会資料では、2.4GHz帯は電子レンジやBluetooth機器などと干渉しやすいため、干渉の少ない5GHz帯を使うことが対策に挙がっています(総務省「医療機関において安心・安全に電波を利用するための説明会」資料(令和5年度))。
ナースコール用の通信を事務用や来客用のWi-Fiとどう分けるかも、メーカーやネットワークの業者と決めておきましょう。Wi-Fiのほかに、前述の1.9GHz帯のTD-LTE方式や携帯電話の回線を使う方式もあり、建物の構造によって合う方式が変わります。
病院では医療機器への電波の影響に配慮する
携帯電話は、電波の受信状況が悪い場所ほど送信の出力が大きくなり、医用電気機器に影響を与えるおそれが増すとされています(前述の総務省の説明会資料)。電波環境協議会の指針では、携帯電話を使える場所でも、医用電気機器とは1m程度離すことを目安にできるとしています(電波環境協議会「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」等の公表について)。
同じ説明会資料には、病院が電波の管理を担う担当者を決め、エリアごとに携帯電話の利用ルールを定める進め方が示されています。前述の2024年度の調査では、業務用スマートフォンを導入している病院に管理の方法もたずねています。「医療機器への影響防止策の設定(医療機器との離隔距離など)」を挙げた病院は4.1%でした。スマホ連動を入れるときは、ナースコール用のスマホの扱いもこの利用ルールに加えておくと安心です。
無線式のナースコールには、心電図などを離れた場所で見守る医用テレメータと、一部のチャネルを共用する機器があります。同じ説明会資料には、混信を防ぐため、共用されているチャネルをできるだけ使わないようにする注意が書かれています。使うチャネルは、医療機器を管理する担当者と事前に調整しておきましょう。
端末の管理と運用のルールを決めておく
スマホはPHSより多くの情報を扱えるため、紛失や情報漏えいへの備えが要ります。業務用の端末として配り、紛失したときに遠隔でロックやデータの消去ができるモバイル端末管理(MDM)を使うと安心です。充電の場所と予備機、勤務交代のときの受け渡し、ケースの消毒のしかたも、導入前に決めておきましょう。ナースコール用のスマホにほかのアプリを入れてよいかは、ナースコールの仕様と施設の管理ルールの両方で決まるので、メーカーにも確認してください。
導入の進め方と費用・補助の確認
ナースコールのスマホ連動の導入は、今の設備の確認から始め、方式ごとの見積もりを比べてから、補助金や加算の対象になるかを確かめます。費用はゲートウェイやサーバー、スマホの台数、アクセスポイントの工事、アプリや保守の月額などで決まり、公表されている相場が少ないためです。
- 今のナースコールのメーカー・型番・設置年と、PHSや内線電話の台数を調べる
- スマホで見たい情報と、見守りセンサー・介護記録とつなぐかを決める
- 施設内の電波を調べ、Wi-Fiなどを整える範囲を決める
- ゲートウェイの追加とシステムの入れ替えの両方で見積もりを取り、初期費用と月々の費用を比べる
- 一部のフロアで試し、運用ルールを整えてから全館に広げる
費用は施設の規模と方式で大きく変わるため、同じ条件で複数の会社から見積もりを取ると比べやすくなります。
介護施設で確認したい補助金と加算
介護施設では、都道府県が行う、介護テクノロジーの導入を支援する補助金を使える場合があります。国が示した2026年度(令和8年度)の実施要綱では、福祉用具情報システム(TAIS)で介護テクノロジーに選ばれた機器が補助の対象です。TAISに載っていない機器も、都道府県が同じ水準の機能と判断すれば対象になります。Wi-Fi環境の整備は、対象の機器とあわせて導入する場合に限って付帯経費として補助の対象になり、通信費は含まれません(三重県のサイトに掲載された国の「令和8年度(令和7年度からの繰越分)介護テクノロジー定着支援事業実施要綱」)。
ナースコールのスマホ連動に使う機器が対象になるかは、その機器がTAISに掲載されているかと、所在地の都道府県の公募要領で確かめてください。事業の名前や補助の条件は、年度と都道府県によって変わります。補助金を使う場合は、補助率と上限額、申請の流れと公募時期を見積もりの前に確かめておくと、公募の時期に合わせて導入の段取りを組めます。
2024年度の介護報酬改定で新設された生産性向上推進体制加算は、加算(Ⅰ)が月100単位、加算(Ⅱ)が月10単位です(2026年10月時点)。対象は短期入所系・居住系・多機能系・施設系のサービスです。要件になる機器は、見守り機器、インカムやビジネス用のチャットツールなど職員間の連絡に使うICT機器、介護記録ソフトなどの3種類です。加算(Ⅰ)は3種類すべて、加算(Ⅱ)は1種類以上を使うことが求められます。インカム等は同じ時間帯に勤務する全ての介護職員が使うことが条件で、加算(Ⅰ)では見守り機器を全ての居室に入れることも必要です(厚生労働省「生産性向上推進体制加算(Ⅰ)及び(Ⅱ)の解説」)。
ナースコールのスマホ連動そのものは、この3種類の機器に挙げられていません。見守りセンサーの通知をスマホで受ける構成にするなら、要件の機器に当たるかを、事業所の指定を受けた自治体に確認しておきましょう。
スタッフ同士の連絡はインカムと組み合わせる
ナースコールは利用者からスタッフへの呼び出しの仕組みで、スタッフ同士の応援の依頼や状況の共有には別の手段が要ります。呼び出しを受けたあとに「205号室に行きます」と周りに伝えるような短い連絡には、ボタンを押して話すPTT(Push-to-Talk)方式のインカムが合います。誰が対応するかが伝わり、重なりや漏れを防ぎやすくなるためです。
| 項目 | ナースコール | インカム |
|---|---|---|
| 連絡の流れ | 利用者・患者からスタッフへ | スタッフ同士 |
| 主な用途 | 呼び出し、緊急時の知らせ | 応援の依頼、対応状況の共有、業務の連絡 |
| 話し始める人 | 利用者・患者 | スタッフ |
インカムもあわせて選ぶ場合は、持ち歩く端末をそろえられるよう、介護施設ならインカムの種類と費用、加算の要件を、病院なら医療機器への電波の影響とナースコールとの役割分担を、ナースコールの方式と一緒に確かめてください。
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よくある質問
PHSとスマホを併用しながら、少しずつ切り替えることはできますか?
製品によっては、同じナースコールでPHSとスマホを併用できる構成があります。フロアごとや端末の更新時期に合わせて段階的に切り替えられるかを、メーカーに確認してください。
スタッフの私物のスマホでナースコールを受けてもよいですか?
業務用の端末を用意するほうが安心です。私物の端末では、紛失したときの遠隔ロックや、利用者の情報を扱うアプリの管理を施設側で行いにくくなります。私物を使う場合は、入れてよいアプリや情報を保存してよい範囲、退職するときの扱いを、ルールとして決めておきましょう。
夜勤で呼び出しに気づけないことはありませんか?
音量やバイブの設定、充電切れによって、気づくのが遅れることはあります。応答がないときにほかのスタッフのスマホへ呼び出しを転送する機能があるかを、製品を選ぶ段階で確かめておきましょう。勤務の始めに音量と電池の残量を見る習慣をつけておくと安心です。
停電やWi-Fiの障害のとき、呼び出しはどうなりますか?
製品と設備の構成によって違います。ナースコールの制御装置やアクセスポイントが、停電のときに非常用の電源で動くかを導入前に確かめておきましょう。スマホに届かないときに親機などで呼び出しを受けられるかも、メーカーに確認してください。
まとめ
ナースコールのスマホ連動を検討するときに押さえておきたい点は、次のとおりです。
- 方式は、ゲートウェイの追加、スマホに対応したシステムへの入れ替え、配線のいらない無線式の3つ
- 今のナースコールが対応しているかは、制御装置の型番と設置年を控えてメーカーに確認
- 導入前に、Wi-Fiの届かない場所の解消、病院では医療機器との距離とチャネルの調整、端末の管理ルールを整備
- 介護施設は、都道府県の補助金と生産性向上推進体制加算の要件もあわせて確認
手始めに、今のナースコールの型番と設置年を確かめ、メーカーにスマホ連動への対応を問い合わせてみてください。
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