介護DXとは|国の施策・メリット・進め方と補助金を解説

介護DXとは、デジタル技術とデータを使って介護の業務を見直し、職員の負担軽減とケアの質の向上につなげる取り組みです。   機器の導入は出発点で、データをケアや働き方の見直しに使うところまでが介護DXです。

目次

    介護DXとは|ICT化・デジタル化との違い

    介護DXとは、記録や連絡などの業務をデジタル技術とデータで見直し、職員の負担軽減とケアの質の向上を図る取り組みです。紙の記録をタブレット入力に切り替えるICT化やデジタル化は途中の段階で、記録や見守りのデータをケアの内容や人の配置を決める材料に使い始めたとき、介護DXと呼べる状態に近づきます。

    DXはデジタルトランスフォーメーションの略です。介護の現場では、紙の記録、口頭の申し送り、居室からの呼び出しへの対応といった毎日の業務が見直しの対象になります。厚生労働省は「介護DXの推進」として、ICT等を使った業務の効率化と、利用者本人・市町村・介護事業所・医療機関が利用者の情報を電子で共有する介護情報基盤の整備を進めています。

    ICT化・デジタル化との違い

    ICT化やデジタル化は、介護DXを進める途中の段階にあたります。経済産業省のDXレポート2(中間取りまとめ)は、DXをデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3段階に分けています。介護の業務に当てはめた例は次のとおりです。

    段階 DXレポート2での意味 介護現場での例
    デジタイゼーション 紙などのアナログ・物理データをデジタルデータにする 紙の介護記録をタブレットでの入力に切り替える
    デジタライゼーション 個別の業務やプロセスをデジタル化する 入力した記録を看護職員やケアマネジャーと共有し、転記をなくす
    デジタルトランスフォーメーション 組織全体の業務やプロセスをデジタル化し、事業やビジネスモデルを変える 記録や見守りのデータをもとに、ケアの内容や職員の配置、勤務の組み方を見直す

    タブレットで記録していても紙の様式への書き写しが残っているなら、まだ1段目の途中です。記録や見守りのデータを、ケアの内容や人の配置を決める材料に使い始めたとき、介護DXと呼べる状態に近づきます。

    介護DXが求められる背景

    2040年に向けて介護を必要とする人は増え、働き手は減るため、少ない職員でケアの質を保てる仕組みづくりが急がれています。厚生労働省の推計では、介護職員の必要数は2040年度に約272万人で、2022年度より約57万人多くなります。

    厚生労働省の「介護DXの推進」によると、2040年頃には団塊ジュニア世代が65歳以上になり、医療と介護の両方を必要とする人が多い85歳以上の人口が増える見込みです。同じ時期に生産年齢人口の減少が速まり、介護を含む各分野で人材不足がさらに大きな課題になるとしています。

    介護職員の必要数も増える見通しです。厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月公表)では、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人が必要と推計されています。2022年度の215万人と比べると、2040年度には約57万人多い計算です。

    採用を増やすだけでこの差を埋めるのは難しく、国は介護テクノロジーの導入支援に力を入れています。厚生労働省の説明会資料は、介護テクノロジーの導入を進める理由の一つに、政府の「省力化投資促進プラン」(2025年6月)を挙げています。このプランでは、2040年に20%以上の業務効率化が必要とされました。介護テクノロジー導入支援事業も、職員の業務負担を軽くし、生み出した時間を直接的な介護ケアの業務に充てることを目的にしています。

    介護DXのメリット

    主なメリットは、職員の負担軽減、情報共有の速さ、データにもとづくケアの見直し、制度への対応のしやすさの4つです。転記や集計、人を探して歩く時間が減り、記録や呼び出しがその場で伝わるため、申し送りや応援の依頼にすぐ応じられます。

    メリット 現場で起きる変化
    職員の負担軽減 転記や集計、人を探して歩く時間が減る。見守り機器の通知を見てから訪室するかを判断できる
    情報共有の速さ 記録や呼び出しがその場で伝わり、申し送りや応援の依頼にすぐ応じられる
    データにもとづくケア 記録や見守りのデータから利用者の状態の変化に気づき、ケアの見直しにつなげやすくなる
    制度への対応 LIFEへのデータ提出、介護情報基盤での情報確認、生産性向上推進体制加算の準備を進めやすくなる

    法人内で効果を説明するときは、導入前後の業務時間や残業時間を比べた数字を用意しておくと、話を進めやすくなります。

    介護DXで取り組む主な領域

    介護DXの主な対象は記録・情報共有、見守り、ナースコール、職員間の連絡の4領域で、勤怠やシフトなどの事務作業も対象です。厚生労働省の説明会資料(2026年8月)は、見守り機器・介護記録ソフト・インカムの3つについて業務時間の削減効果が確認されていると説明しており、国は令和7年度補正予算でこの3つの導入を集中的に支援しています。

    領域 主な対象業務 主なツール
    記録・情報共有 介護記録、ケアプランのやりとり、LIFEへのデータ提出、請求 介護記録ソフト、タブレット端末、ケアプランデータ連携システム
    見守り 居室の様子の確認、離床や転倒の検知、睡眠の把握 センサー型・カメラ型の見守り機器
    ナースコール 利用者からの呼び出しへの対応 ナースコール設備とスマートフォンの連携
    職員間の連絡 フロア間の連絡、応援の依頼、申し送り インカム、スマートフォンのトランシーバーアプリ、ビジネスチャット
    事務作業 勤怠の管理、シフトの作成、給与の計算 勤怠管理やシフト作成のソフト

    国の令和7年度の資料では、事務作業のソフトも、転記などの作業が発生しない環境が整っている場合に限り、介護テクノロジー導入支援事業の補助対象に挙げられています。

    記録・情報共有

    介護記録ソフトとタブレットがあれば、職員はケアの直後にその場で記録を入力でき、紙からパソコンへの書き写しはいりません。記録と請求が連動するソフトを選ぶと、同じ内容を何度も入力する手間も減らせます。

    居宅介護支援事業所とサービス事業所の間では、毎月のケアプランの計画・予定・実績を、ケアプランデータ連携システムを使ってデータでやりとりすることも可能です。厚生労働省の同じ説明会資料には、紙でやりとりする場合と比べて印刷・郵送・移動などの作業時間が約3分の1に減るという試算が載っています。

    見守り

    見守り機器は、利用者の離床や体の動きをセンサーで検知し、職員の端末に通知する機器です。主な方式と、導入時に確かめたい点は次のとおりです。

    方式 仕組み 導入時に確かめたい点
    ベッドセンサー型 マットや体動センサーで離床や呼吸、心拍などを検知する どの利用者のベッドに置くか、どんな条件で通知するか
    カメラ型 居室の映像から姿勢や動きの変化を検知する プライバシーへの配慮と、本人・家族の同意
    センサー複合型 人感センサーやドアの開閉、室温などの情報を組み合わせる 誤った通知を減らすための設定の調整
    ウェアラブル型 腕時計型などの端末で心拍や活動量を測る 利用者が身につけることを負担に感じないか

    見守り機器で分かるのは、利用者に異変があったかどうかまでです。通知を受けた職員が誰に伝え、誰が居室へ向かうかを、ナースコールや職員間の連絡の手段とあわせて決めておくと、通知をすぐケアにつなげられます。

    ナースコール

    ナースコール設備をスマートフォンと連携させると、職員はナースステーションに戻らなくても、呼び出した居室や内容を手元の端末で確認できます。応答の履歴が残る仕組みなら、呼び出しが集中する時間帯を後から振り返ることも可能です。導入前には、今の設備と連携できるか、館内のWi-Fiが居室や廊下の奥まで届くか、端末を誰がどう管理するかを確かめてください。ナースコールから取り組む場合は、スマホ連動の方式と、今の設備で連携できるかの確かめ方を先に見ておくと、メーカーへの問い合わせや見積もりの依頼に進めます。

    職員間の連絡・申し送り

    PHSや館内放送で連絡している施設では、呼び出しが相手に届かない、誰が応じたか分からない、内容が記録に残らないといった困りごとが起きやすくなります。夜勤帯は少ない人数で離れた居室を受け持つため、ケアの最中で手がふさがっていても応援を呼べる手段が欠かせません。

    インカムの利点は、職員が手を止めずに声をかけ合えることです。スマートフォンのアプリ型なら、インターネット回線を通じて別のフロアや別の建物にも声が届き、記録の入力と連絡を業務用スマートフォン1台にまとめられます。職員間の連絡から取り組む場合は、1フロアで試す機器を選ぶ前に、介護施設で使うインカムの種類と費用、加算の要件を比べてください。

    スマートフォンをトランシーバーのように使えるアプリには、LINE WORKSラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すとグループに音声が届いて履歴に残り、インターネット経由のため会話できる距離に制限がありません。アドバンストプランでは、発話を自動でテキストに変換できます。

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    国が進める介護DXの施策|LIFE・介護情報基盤・加算

    国の主な施策はLIFE、介護情報基盤、生産性向上推進体制加算の3つで、順に押さえると準備の段取りを立てやすくなります。LIFEはデータの提出とフィードバック、介護情報基盤は利用者の介護情報の電子的な閲覧の仕組みで、生産性向上推進体制加算はテクノロジーを導入して業務改善を続ける事業所を評価する加算です。

    2026年6月25日には、社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)が公布されました。この法律による介護保険法の改正で、介護サービスの生産性の向上などに関する施策を講じることが、国の責務として定められています。都道府県には、関係機関で構成する協議会を置いて取り組みを促すことが求められます。施行は原則として2027年4月1日です(出典: 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(通知)」)。

    LIFE(科学的介護情報システム)

    厚生労働省のLIFEの利活用のための自治体職員向け手引きによると、LIFEは、介護施設・事業所が利用者の状態やケアの計画・内容などのデータを提出し、全国のデータにもとづくフィードバックを受け取れるシステムです。厚生労働省のLIFEのページにあるとおり、科学的介護推進体制加算など、LIFEへのデータ提出を算定要件とする加算もあります。

    紙の記録から提出用の様式に書き写していると、提出のたびに手間がかかります。LIFEへの出力に対応した記録ソフトなら、毎日の入力をそのまま提出用のデータに使えて便利です。

    介護情報基盤(2026年4月から順次開始)

    介護情報基盤は、自治体・利用者・介護事業所・医療機関などが、利用者の介護情報を電子的に閲覧できるようにする仕組みです(出典: 厚生労働省「介護情報基盤について」)。2026年4月1日以降、標準化への対応を終えた市町村から順に情報共有が始まりました。2028年4月1日までに全市町村で活用を始めることが目標です。市町村ごとの開始時期は介護情報基盤ポータルで確認できます。

    事業所の職員は、インターネットにつながった端末から介護保険資格確認等WEBサービスを使い、利用者の被保険者証の情報や要介護認定の情報などを確認します。利用には、クライアント証明書の設定などの端末の準備と、マイナンバーカードを読み取るカードリーダーが必要です。厚生労働省のWebマガジンによると、2026年度はカードリーダーの購入費用と接続サポートの費用が、助成限度額の範囲で全額助成の対象です。申請は介護情報基盤ポータルから行います。

    利用者の資格や要介護認定、給付の状況を手元で確認できるようになれば、利用者や家族への確認、市町村への問い合わせの負担が減ることも期待できます(厚生労働省のWebマガジン)。ケアプランデータ連携システムは、2027年1月に介護保険資格確認等WEBサービスへ統合される予定です。

    生産性向上推進体制加算

    生産性向上推進体制加算は、2024年度の介護報酬改定で新設された加算です。評価の対象は、委員会で利用者の安全やケアの質、職員の負担軽減の方策を検討したうえでテクノロジーを導入し、業務改善を続ける事業所です。業務改善の効果を示すデータは、年1回提出します。対象は短期入所系・居住系・多機能系・施設系のサービスです。同じ改定で、これらのサービスには委員会の設置も義務づけられ、3年間の経過措置が設けられました(出典: 厚生労働省「生産性向上推進体制加算について」)。

    算定に使うテクノロジーは、次の3種類です。

    種類 内容 留意点
    見守り機器 利用者の離床などを感知し、職員に通報できるセンサー 加算(Ⅰ)はすべての居室に導入する
    インカム等 インカムやビジネス用のチャットツールなど、職員間の連絡調整を速くするICT機器 加算(Ⅰ)(Ⅱ)とも、同じ時間帯に勤務するすべての介護職員が使う
    介護記録ソフト等 介護記録の作成を効率化するICT機器 データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る

    加算(Ⅱ)は月10単位で、委員会での検討や年1回のデータ提出に加えて、3種類のうち1つ以上の導入が必要です。加算(Ⅰ)は月100単位で、3種類すべての導入に加え、加算(Ⅱ)のデータで業務改善の成果が確認されていることと、職員間の役割分担の取り組みが必要です。

    2026年度の処遇改善加算の上乗せ区分

    2026年度には、2027年度の介護報酬改定を待たずに期中改定が行われました。介護職員等処遇改善加算には、生産性向上や協働化に取り組む事業所を対象とする上乗せの区分が新しく設けられています。上乗せの要件である令和8年度特例要件は、3つの選択肢のうち1つを満たす形です。選択肢は、訪問・通所サービス等のケアプランデータ連携システムへの加入、施設サービス等の生産性向上推進体制加算の取得、社会福祉連携推進法人への所属です(出典: 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」)。加算の単位数や要件は改定のたびに変わるため、算定を検討するときは最新の通知を確認してください。

    介護DXの進め方|4つのステップ

    介護DXの進め方の基本は、業務の棚卸し、取り組む領域と目標の決定、1フロアでの試行、定着と効果の確認の4ステップです。複数の領域を同時に切り替えると覚えることが一度に増えて現場が混乱しやすいため、1つの領域を1フロアで試してから広げます。

    ステップ1 業務を棚卸しする

    最初に、施設長や現場のリーダーなど、取り組みを進める担当を決めます。生産性向上推進体制加算の委員会がある施設なら、その委員会で進められます。担当が決まったら1日の業務を時系列で書き出し、次のような業務を探してください。

    • 同じ情報を何度も書き写している業務
    • 口頭で伝えていて記録に残らない業務
    • 人を探したり伝言したりするために歩き回っている業務
    • 夜勤帯に1人の職員へ負担が集中する業務
    • 新しい職員が覚えるのに時間がかかる業務

    現場の職員に短い時間をもらい、付箋に書き出してもらうだけでも、困りごとの多い業務が見えてきます。

    ステップ2 取り組む領域と目標を決める

    書き出した業務を負担の大きさと変えやすさで並べ、最初に取り組む領域を1つに絞ります。あわせて、記録にかかる時間、残業時間、移動の回数など、導入前後で比べる指標を決めて、今の数字を測っておきましょう。生産性向上推進体制加算で提出するデータの項目にある総業務時間や超過勤務時間の変化、年次有給休暇の取得状況も、指標を選ぶ参考になります。

    ステップ3 1フロアで試す

    選んだツールは、まず1つのフロアかユニットで試します。試行の期間には、職員が無理なく使えるか、今の業務の流れに組み込めるか、困ったときに問い合わせ先がすぐ対応してくれるかを確かめてください。無償の試用期間があるツールなら、費用をかけずに現場の反応を確かめられます。

    ステップ4 定着させて効果を確かめる

    使い方のルールを文書にまとめ、試したフロアのリーダーを中心にほかのフロアへ広げていきます。導入前に測った指標を定期的に比べ、委員会などで振り返ると、次の領域に進むかどうかを判断しやすくなります。進め方に迷ったときの相談先は、都道府県の介護生産性向上総合相談センターです。厚生労働省の「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」も、サービスの種類ごとに取り組みの手順をまとめています。

    介護DXに使える補助金

    介護DXの導入費用は都道府県の介護テクノロジー導入支援などで補える場合があり、領域を決めてから制度を探すと選びやすくなります。2026年度は、令和7年度補正予算による介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等支援事業を都道府県が実施しており、見守り機器・介護記録ソフト・インカムの導入を重点的に支援しています。

    この事業の負担割合は、国・都道府県が5分の4、事業者が5分の1です(2026年10月時点。出典: 厚生労働省「ケアプランデータ連携システムの統合と介護情報基盤について」)。

    制度 主な対象 確認先
    介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等支援事業(令和7年度補正予算) 見守り機器・介護記録ソフト・インカムなどの導入、導入と一体で行う業務改善やWi-Fi環境の整備、事業者グループでの協働化 所在地の都道府県の介護保険担当課
    介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金) 介護ロボット、介護ソフト・タブレット端末・インカムなどのICT、複数の機器を連動させるパッケージ型の導入 所在地の都道府県の介護保険担当課
    介護情報基盤の導入に係る助成 カードリーダーの購入、介護保険資格確認等WEBサービスへの接続サポート 介護情報基盤ポータル
    デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) 中小企業・小規模事業者などのITツールの導入 中小機構 補助金活用ナビ
    市区町村などの独自の補助 自治体によって名称・対象が異なる 所在地の自治体

    都道府県が公募するときの事業名は、国の資料の名称と同じとは限りません。2026年度は「介護DX支援事業」「介護テクノロジー定着支援事業」「介護現場デジタル改革推進事業」など、都道府県によって名前が異なります。補助率や対象機器、申請の時期は、所在地の都道府県の公募要領で確かめてください。

    要件には、業務改善計画の提出と効果の報告、施設系サービスでの委員会の設置、居宅系サービスでのケアプランデータ連携システムの利用などが含まれることがあります。交付決定より前に契約・発注した分の扱いも都道府県によって異なり、補助の対象外とする県もあれば、決められた期間内の実施分を遡って対象にする県もあります。発注の時期も公募要領で確認しておくと安心です。

    都道府県の介護テクノロジー導入支援を使う場合は補助率と上限額、申請の流れを、デジタル化・AI導入補助金を使う場合は申請枠と補助率、申請の要件を、発注の前に確かめておくと、申請の時期に合わせて導入の段取りを組めます。

    介護DXでつまずきやすいポイント

    介護DXでよくあるつまずきは、現場の声を聞かないままの導入、複数の領域の同時着手、通信環境や運用ルールの準備不足です。現場の声を聞かずに決めると使いにくさが残って定着せず、Wi-Fiが整っていないと居室や廊下の奥で入力や通話ができません。

    つまずき 起きやすいこと 対策
    現場の声を聞かずに決める 使いにくさが残り、定着しない 棚卸しの段階から現場の職員に加わってもらう
    複数の領域を同時に切り替える 覚えることが一度に増え、現場が混乱する 1つの領域が定着してから次に進む
    紙とデジタルの二重入力が残る かえって手間が増えたと受け止められる 紙の様式をやめる時期を決め、入力項目を絞る
    Wi-Fiなどの通信環境が整っていない 居室や廊下の奥で入力や通話ができない 試す前に電波の届き方を確かめ、必要なら整備する
    使い方のルールと相談先がない 職員ごとに使い方がばらつき、効果が出にくい 運用ルールを文書にし、困ったときの相談先を決める
    情報の安全管理を後回しにする 端末の紛失やパスワードの共用から、利用者の情報が漏れるおそれがある 端末とログインの管理、離席時のロックなどのルールを先に決める
    補助金に合わせて機器を選ぶ 課題に合わない機器が使われずに残る 課題から領域を決め、使える制度を後から探す

    情報の安全管理については、厚生労働省の「介護事業所における情報安全管理の手引き」(2026年4月)にチェックリストがあります。手引きは、個人の端末を業務に使わないこと、IDやパスワードを共用しないこと、公衆無線LANを使わないことなどを対策に挙げています。

    新しい機器に慎重な声が出るのは、忙しいなかで手間が増えることへの不安から来ることもあり、自然な反応です。普段のスマートフォンに近い操作のツールを選ぶ、操作の説明を短く区切って行うといった工夫で、始めるときの負担を減らせます。

    よくある質問

    介護DXは小規模な事業所でも取り組めますか?

    取り組めます。職員が少ない事業所は方針を話し合って決めやすく、1つの領域に絞って変化を確かめやすいのも利点です。スマートフォンやタブレットで使えるクラウド型の記録・連絡ツールなら、設置工事なしで試せます。補助金の要件は事業所の種類で異なるため、都道府県の窓口に早めに相談すると安心です。

    LIFEへの対応は必須ですか?

    LIFEへのデータ提出が必要になる主な場面は、科学的介護推進体制加算など、LIFEへの提出を算定要件とする加算を算定するときです。都道府県の補助金でも、LIFEへのデータ提供を要件の一つに挙げる場合があります。提出した事業所が受け取れるのは、全国のデータにもとづくフィードバックです。算定するかどうかは、提出の手間と、フィードバックをケアの見直しに使えるかをあわせて考えると決めやすくなります。

    訪問・通所の事業所では何から始めればよいですか?

    記録と、ケアマネジャーとのやりとりから始めると取り組みやすくなります。訪問先や送迎の合間にスマートフォンやタブレットで記録できれば、事務所に戻ってから書き写す必要がありません。居宅介護支援事業所とのケアプランのやりとりは、ケアプランデータ連携システムでデータに切り替えられます。このシステムへの加入は、2026年度の処遇改善加算の上乗せ区分の特例要件の選択肢にもなっています。

    介護DXにはどれくらいの費用がかかりますか?

    取り組む領域と規模で大きく変わるため、一律の目安は示せません。クラウド型のサービスには利用人数に応じた月額料金で使えるものがあり、少人数で試せば初期費用を抑えられます。見守り機器やナースコールの更新は台数や工事の有無で費用が変わるので、補助金の対象になるかもあわせて確認すると計画を立てやすくなります。

    まとめ

    介護DXは、記録や連絡などの業務をデジタル技術とデータで見直し、職員の負担軽減とケアの質の向上を図る取り組みです。進めるときに押さえておきたい点は次のとおりです。

    • 機器の導入は出発点で、データをケアや働き方の見直しに使うところまでが介護DX
    • 主な領域は記録・情報共有、見守り、ナースコール、職員間の連絡の4つ
    • LIFE、介護情報基盤、生産性向上推進体制加算の動きにあわせて準備する
    • 業務の棚卸しから領域を1つに絞り、1フロアで試してから広げる
    • 補助金は都道府県の公募要領で、事業名・補助率・要件・発注できる時期を確かめる

    何から始めるか迷ったときは、職員の皆さんと一緒に、1日のうち記録・申し送り・呼び出しに使っている時間を書き出してみてください。毎日くり返している手間のなかから、最初に取り組む業務を見つけやすくなります。

    職員間の連絡を見直す場合は、スマートフォンをトランシーバーのように使えるLINE WORKSラジャーも選択肢の一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。

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