介護DXの最初の3ステップ|ICT導入で現場の負担を減らす進め方

介護DXとは、ICT導入で介護現場の負担を減らす取り組みです。最初の3ステップを軸に、見守りシステムやナースコール、フロア間連絡・申し送りのDX、使える補助金、つまずきやすいポイントまで整理します。

目次

    本記事は2026年6月時点の公的情報に基づき作成しています。介護DXに関連する補助金や加算の制度名・補助率・上限額・単位数・公募スケジュール・施行時期は年度ごとに改定されます。最新の正確な情報は、必ず厚生労働省・各都道府県・各事業事務局の公式情報でご確認ください。

    介護DXとは何か

    介護DXは個別ツールの導入ではなく、現場の情報の流れ全体をデジタルで作り直し続ける継続的な活動です。

    介護DXとは、介護現場の業務プロセスをデジタル技術で見直し、職員の負担軽減と介護の質の両立を目指す取り組みです。単に介護記録ソフトを入れることではなく、これまで紙と口頭で成り立っていた情報の流れを、デジタルで一元化・可視化していく活動全体を指します。介護現場のDXと呼ばれることもあります。

    厚生労働省は介護分野のDX推進を施策として明確に位置づけ、ICTや介護ロボットの活用、介護記録のデータ標準化、関係者間の情報共有基盤の整備を進めています(出典: 厚生労働省「介護分野のDXの推進について」)。介護業界のDXは個々の施設の効率化にとどまらず、国全体で進む長期的な取り組みになっています。

    なぜ今、介護DXが必要なのか

    介護DXが急がれている背景には、人口構造の変化があります。厚生労働省は、いわゆる団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年に向けて、医療と介護の両方を必要とする85歳以上の人口が増える一方で、働き手となる現役世代が減っていくと見込んでいます。同じ人数、あるいはより少ない人数で、増える利用者を支える体制をどう作るかが、業界共通の課題になっています。

    人手を増やすことで解決できない以上、一人あたりの業務をいかに軽くするかが現実的な打ち手になります。介護DXは、この「限られた人手で質を落とさない」という要請に応えるための手段として注目されています。

    介護DXで変えられる4つの領域

    現場の業務を俯瞰すると、デジタル化の余地は大きく4つの領域に分けられます。どれか一つだけを導入しても効果は限定的で、組み合わせて初めて負担感が変わるのが実態です。

    領域 対象業務 代表的なツール 導入のしやすさ
    記録・情報共有 介護記録、ケアプラン、LIFE連携、請求 介護記録ソフト、タブレット端末 中(運用設計が必要)
    見守り 居室の状態確認、離床・転倒検知、睡眠計測 見守りセンサー、カメラ型見守り 中(機器設置あり)
    ナースコール 入居者からの呼び出し対応、職員への通知 ナースコール設備、スマホ連携端末 高〜中(既存設備と接続)
    通信・連絡 フロア間連絡、申し送り、夜勤帯の呼び出し インカム、トランシーバーアプリ、業務チャット 高(スマホで始めやすい)

    よく誤解される「介護DX=ロボット導入」ではない

    介護DXと聞くと、介護ロボットや最新テクノロジーを想像する方もいます。厚生労働省の重点分野にロボットが含まれるのは事実ですが、実際に多くの施設で効果を出しているのは、記録ソフトの導入や連絡手段の見直しといった地味な取り組みです。派手な技術から入るよりも、毎日発生する小さな手間を減らす方が、継続しやすく費用対効果も読みやすくなります。

    科学的介護とLIFE・介護情報基盤の位置づけ

    記録のデジタル化は、LIFEや介護情報基盤を通じて加算算定や外部連携にもつながる国レベルの土台になります。

    介護DXを単なる現場効率化と捉えると、もう一つの大きな流れを見落とします。それが、蓄積したデータを使ってケアの根拠を確かめる科学的介護の動きです。介護DXの全体像をつかむうえで、この国レベルの仕組みを理解しておくと、自施設で何を優先すべきかの判断軸が定まります。

    LIFE(科学的介護情報システム)とは

    LIFEは、利用者の状態やケアの内容、その結果をデータとして集め、フィードバックを返す厚生労働省のシステムです。施設がLIFEにデータを提出すると、全国のデータと比較した分析が返ってきて、ケアの見直しに使えます。この仕組みを活用すると、介護報酬の科学的介護推進体制加算の算定にもつながります(出典: 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」)。

    ここで重要なのは、LIFE連携は記録のデジタル化が前提になるという点です。紙の記録を手作業でLIFEの様式に転記していては負担が大きく、続きません。記録ソフトがLIFEのデータ出力に対応していれば、日々の入力がそのまま提出データに変換されます。記録領域のDXが、科学的介護への入口になっているわけです。

    2026年度に始まる介護情報基盤

    もう一つ押さえておきたいのが、介護情報基盤です。これは利用者本人・市町村・介護事業所・医療機関が、利用者に関する情報を共有・活用できるようにする全国共通の仕組みで、標準化対応が完了した市町村から順次データ送信が始まる段階的なスケジュールが示されています。入退院時や事業所間の情報のやりとりが、紙やFAXから電子的な共有へ移っていく流れです。

    施行スケジュールや対応要件は今後も更新されるため、最新情報は厚生労働省の公式ページでご確認ください。少なくとも、記録のデジタル化は「自施設の効率化」だけでなく「外部との情報連携の土台」にもなる、という方向性は固まっています。記録領域から着手しておく価値は、年々高まっています。

    介護DXの進め方|最初の3ステップ

    進め方は、手間の棚卸し、効果と着手しやすさでの領域選定、1フロアでの試用という3ステップが基本です。

    介護DXを進めるうえで最大のつまずきは「どこから手を付ければよいか分からない」ことです。網羅的な検討から始めると計画倒れになりやすく、補助金の申請期間にも間に合いません。ここでは施設規模にかかわらず汎用的に使える3ステップを紹介します。

    ステップ1: 現場の「繰り返し手間」を棚卸しする

    まず行うのは、技術選定ではなく現場の観察です。朝礼からの1日の流れを時系列で書き出し、以下の問いで棚卸しします。

    • 同じ情報を何度書いている業務はどれか
    • 口頭で伝えていて記録が残らない業務はどれか
    • フロアや建物を物理的に移動して伝達している業務はどれか
    • 夜勤帯で一人にかかる負担が大きい業務はどれか
    • 新人が覚えるのに時間がかかっている業務はどれか

    棚卸しの段階では、解決策を考えずに事実だけを並べます。現場の職員に30分だけ時間をもらい、付箋で書き出してもらうだけでも十分です。

    ステップ2: 「効果が大きく、始めやすい」領域から着手する

    棚卸しした業務を、負担の大きさと導入のしやすさの2軸で並べます。補助金の有無や機器設置の工事期間も加味します。多くの施設では、既存の電話やインカムで不便を感じているフロア間連絡と、紙で管理している記録の2つが最も早く効果を出しやすい領域です。

    ここで重要なのは、一度にすべてを置き換えようとしないことです。優先順位の1位だけを3か月で定着させ、現場が慣れてから次の領域に進む。この刻み方が、結果的に最短距離になります。

    ステップ3: 小さく試して、現場の反応で判断する

    選定した領域のツールを、まずは1フロアや1ユニットで試用します。いきなり全施設で展開するのは、現場の反発や運用設計のミスを拡散させるリスクがあるため避けます。

    試用期間中にチェックする観点は以下の通りです。

    • 職員のITリテラシーで無理なく使えるか
    • 既存業務フローを大きく変えずに組み込めるか
    • 入居者や家族から見て違和感がないか
    • トラブル時にサポート窓口が機能するか

    フリープランや無償トライアルのあるツールを優先すると、意思決定のハードルが下がります。現場の音声連絡を見直す場面では、スマートフォンとアプリで始められる選択肢として、LINE WORKS ラジャーのような現場向け音声コミュニケーションツールが候補になります。専用機器を配る必要がなく、職員が普段使っているスマホでそのまま試せるため、試用段階でのコミットメントが小さく済みます。

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    見守りシステムと介護DX

    見守りシステムは負担軽減の効果が見えやすく、検知後の連携設計までを含めて選ぶのが成功の条件です。

    見守りシステムは、介護DXの中でも「効果が可視化されやすい」領域です。夜間巡視の回数削減や、転倒・離床への早期対応を通じて、職員の心理的負担と身体的負担の両方に関わります。

    見守りシステムの主な方式

    見守りシステムは検知の仕組みによって方式が分かれます。どれが正解ということはなく、施設の構造や入居者の状態像に合わせて選びます。

    方式 仕組み 主な用途 留意点
    ベッドセンサー型 マットや体動センサーで離床・呼吸・心拍を検知 転倒予防、睡眠状態の把握 設置対象ベッドの選定が必要
    カメラ型 居室カメラの画像解析で姿勢・動作を検知 転倒・異変検知、夜間の状況確認 プライバシー配慮と同意取得
    センサー複合型 人感・開閉・環境センサーを組み合わせ 徘徊検知、居室内の活動量把握 誤検知のチューニング
    ウェアラブル型 腕時計型で心拍・活動量を計測 体調変化の早期把握 入居者が装着を受け入れるか

    生産性向上推進体制加算とのつながり

    見守り機器を導入する施設に知っておいてほしいのが、令和6年度の介護報酬改定で新設された生産性向上推進体制加算です。見守り機器などのテクノロジーを1つ以上導入し、職員の負担軽減を検討する委員会を開いて、業務改善の効果を示すデータを定期的に提供するといった要件を満たすと算定できる加算です。入所・泊まり・居住系のサービスが対象とされています。

    つまり見守りシステムの導入は、職員の負担を直接減らすだけでなく、要件を満たせば加算という形で運営にも返ってくる構造になっています。算定区分・単位数・要件の詳細や対象サービスは改定で変わるため、算定を前提に投資判断をする場合は、厚生労働省や自治体の最新の通知でご確認ください。

    見守りシステムだけで完結しない理由

    見守りシステムは「異変を検知する」装置です。異変に気づいたあとの「誰が駆けつけるか」「誰に知らせるか」という連携は別の仕組みで設計する必要があります。ここが連絡手段の領域とつながる部分です。検知から通知、駆けつけまでの流れを施設全体で一本化しないと、せっかくのセンサー情報が活きません。

    ナースコールと介護DX

    ナースコールは家庭用・施設用・スマホ連携の違いを押さえて選ぶと、夜勤帯の負担を大きく左右します。

    ナースコールは介護DXの論点としては見落とされがちですが、夜勤帯の負担を左右する核心的な設備です。家庭用・施設用・スマホ連携と選択肢は広がっています。

    ナースコール家庭用と施設用の違い

    家庭用ナースコールは主に在宅介護や小規模な住宅型施設で使われる、シンプルな押しボタン式の呼び出し機器です。親機と子機の1対1、あるいは少数セットで構成されます。一方、施設用のナースコール設備は、多居室からの呼び出しをナースステーションや職員が持つ端末に集約・記録する大型のシステムです。

    小規模な介護施設であれば、家庭用ナースコールの拡張版で運用できるケースもあります。ただし入居者が増える、夜勤帯の職員数が少ない、フロアが広いといった条件が重なると、施設用または後述のスマホ連携型への切り替えが現実的になります。

    ナースコールをスマホで受ける仕組み

    近年は、既存のナースコール設備にゲートウェイを追加し、職員のスマホや専用端末に通知を飛ばす方式が一般的になりつつあります。利点は次の通りです。

    • ナースステーションに張り付く必要がなくなる
    • 呼び出しの発生場所と内容を画面で確認できる
    • 応答履歴が自動で残り、対応漏れの検証ができる
    • 緊急度の判断を現場で即座にできる

    導入の際は、既存のナースコール設備との互換性、通信エリア(Wi-Fiやモバイル回線のカバー状況)、職員の端末管理ポリシーを事前に確認します。ナースコール本体を新設する場合と、既存設備にスマホ連携を追加する場合では、初期費用も工期も大きく異なります。

    フロア間連絡・申し送りのDX

    連絡手段の見直しはスマホで小さく始めやすく、即効性の高い領域として最初の一歩に向いています。

    記録や見守りの議論に比べて地味ですが、職員同士の連絡手段の見直しは即効性の高い領域です。PHSや家庭用トランシーバー、あるいは館内放送で運用している施設では、呼び出しが届かない、個人を特定できない、記録が残らないといった課題が日常的に発生します。

    口頭申し送りのロスを減らす

    シフト交代時の申し送りは、介護現場で最も情報量が多い瞬間です。全員で集まる方式だと時間がかかり、当直明けの職員の残業を増やす要因にもなります。一方、記録ソフトだけに頼ると、文字では伝わらないニュアンスが抜け落ちます。

    現場で効果を出しやすいのは、記録ソフトで事実を残しつつ、音声ベースで補足を伝える組み合わせです。音声メッセージや音声をテキスト化する機能があれば、聞き逃した職員が後から確認できるため、全員が同時刻に集まる必要が減ります。

    夜勤帯の呼び出しと安全確保

    夜勤帯は少人数運営が基本です。離れた居室で異変が起きた際、一人で対応するか応援を呼ぶかの判断を瞬時に行う必要があります。館内PHSが古くなり、バッテリーや音質に不安を抱えたまま運用している施設は少なくありません。

    スマートフォンを業務連絡に使う選択肢も広がっています。専用機器を一台ずつ配るコストや管理負担を抑えられる点、聞き逃した連絡を音声履歴で確認できる点、設備更新のタイミングを柔軟にできる点は、特に中小規模の施設にとって扱いやすい方法です。スマホをインカムのように使う仕組みの詳しい比較は介護施設のインカム選びの記事でも整理しています。

    介護DXに使える補助金

    初期費用は、介護テクノロジー導入・定着支援事業などの制度で抑えられ、領域を決めてから探すのが要点です。

    介護DXの初期費用を抑えるうえで、補助金制度の活用は外せない論点です。かつて「介護ICT導入支援事業」「介護ロボット導入支援事業」と呼ばれていた事業は、現在は介護テクノロジー導入・定着支援事業として一本化され、ICT枠と介護ロボット枠に整理されています。さらに、看護DXや次世代介護機器の効果検証を目的とした事業や、自治体独自の上乗せ補助も並走しています(出典: 厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」)。

    制度は毎年度の見直しがあり、地域や法人区分によっても条件が変わるため、本記事では代表的な制度の整理にとどめます。最新の要件・金額・公募スケジュールは各制度の公式情報でご確認ください。介護施設の補助金活用を詳しく整理した実務記事は介護ICT補助金の記事で別途解説しています。

    制度名 主な対象 想定される用途 確認先
    介護テクノロジー導入・定着支援事業(ICT枠) 介護記録・情報共有・請求ソフト等 記録ソフト、タブレット、Wi-Fi環境、インカム等の通信機器、研修費 都道府県の介護保険主管課
    介護テクノロジー導入・定着支援事業(介護ロボット枠) 厚生労働省の重点分野に該当する機器 見守りセンサー、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、コミュニケーション機器 都道府県の介護保険主管課
    次世代介護機器導入促進支援事業 先進的な介護機器の導入と効果検証 介護記録ソフトと現場連絡ツールの組合せ、見守り機器との連動構成など 所管自治体・実施自治体の介護所管課
    看護デジタルトランスフォーメーション効果検証事業 医療機関の看護現場におけるDX推進 看護記録の電子化、看護師間の情報共有、患者状態モニタリング 事業実施主体(年度ごとに公表)
    都道府県・市町村独自の補助 自治体ごとに名称・対象範囲が異なる上乗せ補助 介護テクノロジー定着支援、ICT環境整備、デジタル化支援など 所在地の都道府県・市町村
    デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金) 中小企業向けのITツール全般 業務ソフト、クラウドサービス(事前登録されたITツール) 中小企業基盤整備機構の公式サイト
    業務改善助成金 賃金引上げとセットの設備投資 業務効率化につながる機器・ソフト 厚生労働省・都道府県労働局

    補助金活用で失敗しないために

    補助金は申請期間や交付決定前の発注制限など、手続き上の制約が多い制度です。現場が先に機器を購入してから補助金を探すと対象外になるケースがあります。順番としては、領域を決める、補助金を確認する、対象となるツールを選定する、という流れが確実です。自治体の介護保険担当窓口に早めに相談するのも有効です。

    制度名・補助率・上限額・対象経費・申請フロー・財産処分手続まで、介護施設向けの補助金活用に絞った詳細は介護ICT補助金の記事で整理しています。経済産業省系のIT導入補助金(2026年度より「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更)の枠組みや、GビズID・SECURITY ACTIONなどの事前準備はIT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)の記事で扱っています。

    介護DXでつまずきやすいポイント

    失敗の多くは、現場不在の導入と複数領域の同時着手に集約され、事前に知れば回避しやすくなります。

    順調に進んでいるように見える介護DXでも、運用開始から数か月で形骸化するケースは珍しくありません。事前に知っておくと回避しやすい失敗パターンを整理しました。

    失敗パターン 内容・対策
    現場の声を聞かずに導入 経営層だけで決めると現場が使わず定着しない。ステップ1の棚卸しに現場職員を必ず巻き込む
    複数領域を同時に着手 記録も見守りも連絡も一気に切り替えると混乱する。1領域ずつ順番に定着させる
    機能の多さで選定 高機能でも現場が使いこなせなければ意味がない。職員のITリテラシーに合うシンプルさを優先する
    無償トライアルを使わない カタログだけで選ぶと実運用とのギャップが大きい。試用できるツールを優先する
    補助金ありきで選定 補助対象だから導入、という順序は失敗しやすい。課題から逆算して対象制度を探す
    運用ルールを決めない ツールを入れても使い方が職員ごとにばらつくと効果が出ない。運用ルールを文書化する

    よくある質問

    介護DXとは具体的に何をすることですか

    介護記録・見守り・ナースコール・職員間連絡といった業務を、紙や口頭からデジタルに置き換えて、負担を減らしながらケアの質を保つ取り組みの総称です。記録ソフトの導入、見守りセンサーの設置、連絡手段のアプリ化などが具体例にあたります。最新技術を一度に入れることではなく、繰り返し発生している手間を一つずつ減らしていく活動と捉えると進めやすくなります。

    介護DXは小規模な施設でも取り組めますか

    取り組めます。規模が小さいほど、一領域への集中投資で変化を実感しやすい面もあります。全施設一斉ではなく、1ユニットから試すアプローチは大規模施設と同じです。ただし補助金の採択枠や要件は規模によって異なる場合があるため、自治体窓口への事前相談を推奨します。

    職員のITリテラシーに不安があります

    介護DXの成否を左右する重要な論点です。現場で日常的に使われているスマートフォンを起点にできるツールは、新しい機器の操作を覚える負担が少なく、浸透しやすい傾向があります。導入前に1週間から1か月の試用期間を設けて、実際に現場の職員が違和感なく使えるか確認する方法が確実です。

    LIFEへの対応は必須ですか

    LIFEへのデータ提出は、科学的介護推進体制加算など一部の加算を算定する場合の要件になっています。算定しない場合に提出が義務というわけではありませんが、記録のデジタル化が進んでいれば提出の負担は大きく下がります。加算の算定区分や要件は介護報酬改定で変わるため、自施設で算定を検討する際は最新の通知でご確認ください。

    見守りシステムとナースコールはどちらを優先すべきですか

    施設の構造と入居者の状態像で答えが変わります。転倒や離床の頻度が高く、夜間巡視の負担が大きい施設は見守りシステムから、呼び出し時の応答遅延や誤応答が課題の施設はナースコールから、という考え方が目安です。両方に課題がある場合は、ステップ1の棚卸しで職員が挙げた件数の多い方を優先します。

    介護DXで具体的にどれくらい業務が減りますか

    現場と対象領域によって変動幅が大きいため、一般化した数字で答えることは難しい領域です。記事やベンダーが提示する削減時間はあくまで参考値と捉え、自施設で試用した結果の実測値で判断する方が確実です。時間ベースで測る場合、記録・申し送り・移動・巡視の4項目を前後で計測する方法が扱いやすい指標になります。

    補助金を使わずに始めることはできますか

    できます。フリープランや低価格のクラウドサービスから始める場合、補助金の申請手続きを経由せずに試用できます。効果を確認したうえで有償プランへ切り替える際に、その時点で使える補助金を改めて確認するアプローチも有効です。

    まとめ

    介護DXは、最新技術を一度に導入する取り組みではありません。現場で繰り返し発生している手間を棚卸しし、効果が大きく始めやすい領域から順に置き換えていく、地道な積み重ねです。導入を進めるうえで押さえておきたい論点は次のとおりです。

    • 介護DXの対象は記録・見守り・ナースコール・通信の4領域
    • 背景には2040年に向けた人手不足があり、記録のデジタル化はLIFEや介護情報基盤への土台にもなる
    • 進め方は棚卸し、領域選定、小さな試用の3ステップ
    • 見守りシステムは検知後の連携設計までセットで考え、生産性向上推進体制加算の要件も確認する
    • ナースコールは家庭用・施設用・スマホ連携の違いを理解して選ぶ
    • 補助金は領域を決めてから探す順序で使う

    フロア間の連絡や夜勤帯の呼び出しといった通信領域は、スマートフォンで小さく始められるため、介護DXの入口として検討しやすい領域です。LINE WORKS ラジャーはフリープランがあり、有償プランには30日間の無償トライアルがあります。現場の職員が普段使っているスマホにアプリを入れるだけで試せるため、導入前の意思決定コストを抑えやすい選択肢です。

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