目次
デジタル簡易無線とは:特徴と主な使われ方
デジタル簡易無線は最大5Wの電波を使うデジタル方式の無線で、資格は不要ですが、免許か登録の手続きが必要です。
電波法でいう簡易無線局のうち、音声をデジタル信号にして送る方式のものをデジタル簡易無線(DCR)と呼びます。出力は、免許不要の特定小電力トランシーバー(10mW以下)の500倍にあたります。見通しのよい屋外なら数km先とも話せるため、特定小電力では届かない広い現場の連絡に使われています。
手続きは総務省の各地の総合通信局で行い、免許で使うものを免許局、登録で使うものを登録局と呼びます。音声のほかデータも送ることができ、機種によっては会話を第三者に聞かれにくくする秘話機能も使えます。
よく使われるのは、次のような場面です。
- 建設・土木現場での重機の誘導や、上下に分かれた作業の連絡
- 警備や交通誘導の配置連絡
- 屋外イベントや祭りの運営
- 港湾・物流拠点・工場など、広い敷地の構内連絡
- スカイスポーツなどのレジャー(登録局のみ)
アナログ簡易無線は2024年11月末で使えなくなった
350MHz帯と400MHz帯のアナログ方式の簡易無線は、2024年11月30日で使用期限を迎えました。12月1日以降にアナログの周波数で電波を出すと、電波法違反として取締りの対象になります。アナログとデジタルを切り替えて使えるデュアル方式の無線機も、アナログ側は使えません。デュアル機の免許局は、メーカーでアナログ側の停波措置を受けないと次の再免許を受けられません(出典: 総務省 電波利用ポータル「簡易無線局のデジタル化について」)。
免許局と登録局の違い
登録局は手続きが簡単でレンタルやレジャーにも使え、免許局は免許を受けた組織のメンバーだけで使う業務用の区分です。
どちらの区分で使えるかは無線機ごとに決まっていて、本体や箱に記載された種別コードで見分けられます。主な違いは次のとおりです(出典: 九州総合通信局「デジタル簡易無線(登録局)」、関東総合通信局「簡易無線局(CR)免許局のページ」)。
| 比較項目 | 免許局 | 登録局 |
|---|---|---|
| 無線機の種別コード | 3B | 3R(上空でも使えるものは3S) |
| 手続き | 免許の申請。交付まで最大1か月ほど | 登録の申請。交付まで15日ほど |
| 周波数帯とチャンネル数 | 460MHz帯で75ch(ほかに中継用20ch)。150MHz帯の免許局もある | 350MHz帯で地上用82ch+上空でも使える15ch |
| 最大出力 | 5W | 5W(上空でも使えるチャンネルは1W) |
| キャリアセンス | なし | あり |
| 使える人 | 免許を受けた組織に所属する人だけ | 登録した人以外にも使わせられる(レンタルも可) |
| レジャーでの利用 | できない | できる |
| 他の利用者との通信 | できない | できる |
| 有効期間 | 5年(再免許で更新) | 5年(再登録で更新) |
キャリアセンスは、送信する前に同じチャンネルが使われていないかを確かめ、使われていれば電波を出さない仕組みです。混信を防げる一方で、利用者の多い場所では送信しにくくなることがあります。免許局にはこの機能はありません。
社内の業務連絡に数台から数十台を使うだけなら、手続きが簡単で手数料も安い登録局で足ります。中継器で届く範囲を広げたい場合や、他の利用者と混ざらない運用をしたい場合は免許局を検討します。
2023年の増波で使えるチャンネルが増えた
2023年6月1日の制度改正で、登録局の地上用は30chから82chに、上空でも使えるチャンネルは5chから15chに増えました。免許局(460MHz帯)も65chから75chに増え、中継用の20ch(10ペア)が加わっています。増えたチャンネルを使うには、増波に対応した無線機と、新規の登録・免許または変更の手続きが必要です。
増波前の無線機も、これまでのチャンネルの範囲で引き続き使えます。包括登録を増波後のチャンネルで受けておけば、増波前の機種もその登録の範囲で使えます(出典: 総務省 電波利用ポータル「デジタル簡易無線局の増波等について(令和5年度改正)」)。
通信距離の目安
見通しのよい屋外なら1〜5km程度が目安ですが、市街地や建物の中では届く距離が大きく縮みます。
カタログの通信距離は、障害物のない見通しのよい場所での値です。販売各社の案内に見られる一般的な目安は次のとおりです。
| 使う場所 | 距離の目安 | 距離が縮む主な理由 |
|---|---|---|
| 見通しのよい屋外(農地・港湾・海上など) | 1〜5km程度。条件がよければそれ以上 | 障害物が少なく、電波が弱まりにくい |
| 市街地 | 数百m〜1km程度 | 建物や車両で電波が反射・吸収される |
| 山間部 | 尾根や谷を挟むと届かないことがある | 地形や樹木で見通しがさえぎられる |
| 建物の中・地下 | 同じフロアでも不安定なことがある | コンクリートや鉄骨が電波を通しにくい |
2023年の改正で中継器を使った通信もできるようになりましたが、中継は免許局でのみ運用できます。導入前には、実際に使う場所の端から端まで試し通話をしておくと安心です。方式ごとの距離の違いは、トランシーバーの通信距離の解説でも紹介しています。
登録・免許の手続きと費用
登録局は総合通信局に登録すれば使え、手数料は電子申請で1,500円から、電波利用料は1台年200〜290円です。
登録局の手続き(個別登録と包括登録)
登録には、無線機を1台ずつ登録する個別登録と、2台以上をまとめて登録する包括登録があります。台数の多い業務用途では、包括登録が便利です。手続きの流れは次のとおりです。
- 登録局用の無線機(種別コード3Rまたは3S)であることを確かめる
- 総合通信局に登録を申請する(電子申請または書面)
- 登録を受ける(申請から15日ほど)
- 包括登録の場合は、無線機を使い始めた日から15日以内に開設届を出す
包括登録は、申請だけでは手続きが終わりません。開設届で使う無線機の製造番号などを届け出て完了します。あとから無線機を買い足したときも、その分の開設届が必要です。提出先は、登録申請が本社所在地を管轄する総合通信局、開設届が無線機の常置場所を管轄する総合通信局です(出典: 関東総合通信局「デジタル簡易無線局(CR)登録局のページ(令和7年10月1日以降の申請)」)。
2025年10月1日から登録状はデジタル化され、紙の登録状は交付されなくなりました。登録内容はWebサイトで閲覧するか、書面の登録事項証明書で確かめます。それまでに受け取った登録状は、登録事項証明書とみなされます。電子申請は、総務省の電波利用 電子申請から行えます。
免許局の手続き
免許局は、無線局事項書と工事設計書を添えて、無線機の常置場所を管轄する総合通信局に免許を申請します。任意団体の場合は、規約や代表者がわかる資料も添付します。免許の交付までは最大1か月ほどかかり、手数料は無線機1台(1局)ごとにかかります。
かかる費用の一覧
| 費用 | 登録局 | 免許局 |
|---|---|---|
| 新規の申請手数料 | 個別登録:書面2,730円/電子1,500円 包括登録:書面3,330円/電子1,950円 |
書面で1局3,700円(出力1W超〜5W以下)+免許事項証明書の交付請求480円 |
| 更新の手数料 | 個別:書面1,730円/電子700円 包括:書面2,130円/電子1,050円 |
書面で1局2,700円(出力1W超〜5W以下)+交付請求480円 |
| 電波利用料(毎年) | 1台あたり 個別200円/包括290円 | 1局あたり200円 |
| 無線機本体 | 機種・台数・付属品で異なるため、販売店の見積もりで確認 | |
登録局の書面申請の額には、登録事項証明書の交付請求手数料480円が含まれます。電子申請で証明書が必要な場合は、別に440円かかります。手数料と電波利用料は2025年10月1日改定の額で、今後も改定されることがあります。最新の額は総務省や各総合通信局のページでご確認ください。
有効期間と更新の時期
登録・免許とも、有効期間は5年です。続けて使うには、登録局は満了の3か月前から1か月前まで、免許局は6か月前から3か月前までに更新(再登録・再免許)を申請します。この期間を過ぎると更新の申請はできず、新規の手続きからやり直しになります。担当者が替わっても期限がわかるよう、登録番号と有効期限を台帳で管理しておくと安心です。
登録せずに使うとどうなる?罰則と見落としやすい点
登録や免許がないまま使うと不法無線局の開設にあたり、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。
罰則は電波法(e-Gov法令検索)第110条に定められています。デジタル簡易無線の無線機は、電波を出したあとに、機器に記憶された呼出名称(識別用の番号)を自動で送る仕組みです。総務省は電波監視システム(DEURAS)を整備しており、総合通信局は不法無線局の電波を調べて証拠を集め、捜査機関に告発しています。見つかるかどうかにかかわらず、登録なしで電波を出すこと自体が違法です。
意図せず手続きが抜けやすいのは、次のようなケースです。
- 包括登録の申請だけ済ませ、開設届を出していない
- 有効期間が切れたまま使い続けている
- 中古品や譲り受けた無線機を、自分の名義で登録せずに使っている
- 登録局の無線機を社外の人に使わせたのに、運用の届出をしていない
- 免許局の無線機を、協力会社など所属外の人に貸している
電波法の免許制度や罰則の全体像は、電波法の解説で確認できます。
特定小電力・IP無線・スマホアプリとの違い
屋外の広い現場ならデジタル簡易無線、近距離なら特定小電力、フロア間や拠点間ならIP無線やスマホアプリが向いています。
| 方式 | 手続き | 届く範囲の目安 | 主な費用 | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|---|
| デジタル簡易無線 | 免許または登録 | 見通しのよい屋外で数km程度 | 本体、申請手数料、電波利用料 | 屋外の広い現場、警備・イベント |
| 特定小電力トランシーバー | 不要 | 屋外で数百m〜1km程度、屋内は数十m程度 | 本体 | 1フロア・近距離の連絡 |
| IP無線(専用機) | 不要(携帯電話の回線を使う) | 回線がつながる範囲 | 専用機と月々の通信料 | 車両や移動しながらの広域連絡 |
| スマホのトランシーバーアプリ | 不要(携帯電話の回線やWi-Fiを使う) | 回線がつながる範囲 | アプリの利用料と通信費 | フロア間・拠点間の連絡、会話の履歴を残したい現場 |
デジタル簡易無線と特定小電力トランシーバーは、周波数も方式も違うため交信できません。同じ現場で使う無線機は、どちらかにそろえる必要があります。特定小電力の仕組みは特定小電力トランシーバーの解説にまとめています。
デジタル簡易無線の強みは、携帯電話の回線に頼らないことです。山間部の工事現場や海上など、携帯電話がつながりにくい場所でも、電波の届く範囲なら話せます。反対に、ビルの上下階や地下、離れた拠点との連絡は苦手で、会話も記録に残りません。
IP無線とスマホのアプリは回線を使うため、建物の構造や距離に左右されず、フロア間や離れた拠点ともつながります。IP無線の仕組みはIP無線の解説で紹介しています。
スマートフォンをトランシーバーのように使うアプリには、LINE WORKS ラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すPTT方式で音声がグループに届いて履歴に残り、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。ただし、回線がつながらない場所では使えないため、圏外になる場所が多い現場では無線機のほうが確実です。
よくある質問
デジタル簡易無線を使うのに資格は必要ですか?
必要ありません。簡易無線局の操作には無線従事者の資格がいらないため、応援のスタッフやアルバイトも操作できます。必要なのは、無線機ごとの登録または免許です。
個人や家族のレジャーでも使えますか?
登録局なら使えます。登録局はスカイスポーツを含むレジャーにも使えることが認められており、家族や仲間との連絡にも使えます。上空で使う場合は、上空でも使える無線機(種別コード3S)と、上空を含む範囲での登録が必要です。免許局はレジャーには使えません。
災害時にも使えますか?
使えます。携帯電話の基地局やインターネットを経由しないため、停電や回線の混雑があっても、電池が残っていて電波の届く範囲なら話せます。いざというときに使えるよう、予備の電池を用意し、登録の有効期限も日頃から確かめておきましょう。
電波利用料はいつ、どうやって払いますか?
届いた納付書で、金融機関などから納めます。登録局の包括登録では、開設届を出すと、開設した月の翌月末ごろに納付書が届きます。免許局では、免許の日から1週間ほどで届きます。その後も毎年納める必要があり、送付先を本社以外にしたい場合は納入告知先の申出をします。
まとめ
デジタル簡易無線は、特定小電力より遠くまで届き、携帯電話の回線がなくても使える無線です。押さえておきたい点は次のとおりです。
- 最大5Wで、見通しのよい屋外なら数km先まで届く。資格は不要だが、免許か登録が必要
- 社内の業務連絡なら手続きの簡単な登録局、中継や所属メンバーだけの運用なら免許局
- 有効期間は5年。包括登録は開設届まで出して手続きが完了する
導入の前には、実際に使う場所で試し通話をして、届く範囲を確かめておくと安心です。台数に合わせて個別登録か包括登録かを決めておくと、手続きもスムーズです。すでに使っている場合は、有効期限と、登録した台数が実際の運用と合っているかを確認しておきましょう。
建物の上下階や離れた拠点との連絡、会話の記録が課題になっている場合は、アプリ型も選択肢になります。スマートフォンをトランシーバーのように使える LINE WORKS ラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。