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飲食店でインカムが役立つ場面と相性の良い店
厨房から客席が見えない飲食店や、少ない人数でピークに対応している店では、スタッフが呼びに行く往復をインカムで減らせます。相手が声の届かない場所にいると、スタッフは呼びに行くか、相手の手が空くまで待つしかないためです。2階席や個室、テラス席がある店では、その往復がさらに長くなります。
飲食店では、厨房とホール、ホールのスタッフ同士、店長とスタッフの間で、一日に何度も連絡が発生します。
| 場面 | 連絡する相手 | 伝える内容の例 |
|---|---|---|
| 料理の仕上がり | 厨房からホールへ | どの卓の料理ができたか、誰が運ぶか |
| 注文の追加・変更 | ホールから厨房へ | 追加の注文、提供の順番、取り消し |
| 案内と片付け | 入口とホールのスタッフ同士 | 空いた卓、次に案内する組、片付けの応援 |
| アレルギーや予約の共有 | ホールと厨房、店長 | アレルギーのあるお客様の卓、予約客の到着、誕生日などの対応 |
| 応援の依頼・店長の呼び出し | スタッフから店長やほかのスタッフへ | レジや入口の応援、判断に迷うお客様対応の相談 |
お客様からアレルギーについて聞かれたときも、ホールのスタッフはその場で厨房に原材料を確かめられます。小規模な一般飲食店向けの衛生管理の手引書(日本食品衛生協会、2024年1月改訂)は、厚生労働省のサイトで公開されている資料です。この手引書は、アレルゲンの情報を正確に伝え、わからないときはわからないと答えるよう勧めています。聞き違いを防ぐため、アレルギーの連絡は受けた人が復唱すると安心です。
カウンター中心で全員の姿が見える小さな店なら、声をかけるだけで足りる場合も少なくありません。インカムの販売各社の解説には、客席に30人以上が入れる店をひとつの目安に挙げるものもあります。席数とあわせて、ピーク時にスタッフが連絡のために持ち場を離れている回数を数えると、自店に必要かどうかを判断しやすくなります。
飲食店で使われるインカムの種類
飲食店のインカムは、特定小電力トランシーバー、デジタル簡易無線、IP無線、スマホアプリの4つに分かれます。違いのもとは、端末同士が電波を直接やりとりするか、Wi-Fiや携帯電話の回線を通すかにあります。ワンフロアの店なら特定小電力、複数フロアや複数店舗とも連絡するならスマホアプリやIP無線が候補です。
| 方式 | 届く範囲の目安 | 免許・手続き | 飲食店で合う使い方 |
|---|---|---|---|
| 特定小電力トランシーバー | 屋内や市街地で100〜200m程度 | 不要 | ワンフロアの店、厨房とホールが近い店 |
| デジタル簡易無線 | 市街地で1km前後、見通しのよい屋外で数km | 資格は不要。無線機ごとに登録または免許が必要 | 大型店、複数フロアの店、駐車場や店外の行列まで連絡する店 |
| IP無線 | 携帯電話の回線が届く範囲 | 不要。回線の契約が必要 | 離れた店舗や配達のスタッフとの連絡 |
| スマホアプリ | Wi-Fiか携帯電話の回線が届く範囲 | 不要 | 複数フロアや複数店舗、本部との連絡 |
届く範囲は販売各社が示している目安です。壁や大型の冷蔵庫に遮られると、店内でも短くなります。
特定小電力トランシーバーは、無線局の免許も無線従事者の資格も要らない無線機です(総務省 電波利用ポータル「特定小電力無線局」)。本体を買えば、月々の通信料はかかりません。交代で話す交互通話が基本で、電話のように同時に話せる機種もあります。
デジタル簡易無線は、特定小電力より広い範囲に届く無線機です。使う人に資格は要りませんが、無線機ごとに総合通信局への登録か免許の手続きが必要です(近畿総合通信局「簡易無線局(免許局・登録局)」)。店内だけで連絡する店なら、ここまで広い範囲は必要ないこともあります。
IP無線とスマホアプリは、回線がつながる場所なら階や建物をまたいで話せて、別の店舗や本部とも連絡できます。IP無線は専用の端末と1台ごとの通信料が必要で、スマホアプリの端末はスマートフォンです。どちらの方式も、Wi-Fiも携帯電話の電波も届かない場所では使えません。
店のタイプ別のおすすめ
店の広さと、店の外まで連絡するかどうかで、候補になる方式はおおむね絞れます。
| 店のタイプ | 連絡の特徴 | 候補になる方式 |
|---|---|---|
| カウンター中心の小さな店 | 全員の姿が見える範囲で連絡が済む | 声かけで足りることが多い。使うなら特定小電力 |
| ワンフロアのレストラン・居酒屋 | 厨房とホールのやりとりが多い | 特定小電力(同時通話の機種も候補)、スマホアプリ |
| 2階席・個室・テラス席のある店 | 壁や階をまたいで連絡する | スマホアプリ(Wi-Fiと携帯電話の電波を確認)、デジタル簡易無線 |
| 複数店舗を運営し、本部とも連絡する | 店の外の相手とも話したい | スマホアプリ、IP無線 |
| 催事への出店や繁忙期だけ使う | 使う期間が短い | レンタルの特定小電力 |
建物の構造や店内のWi-Fiの状況で合う方式は変わるので、表は目安としてご覧ください。
飲食店のインカムを選ぶ5つのポイント
飲食店のインカムは、店内のいちばん遠い場所まで届くか、手がふさがっていても話せるか、接客の妨げにならないかを先に確かめて選びます。スタッフは、料理やトレーを持ったまま、お客様と話しながら連絡を取るためです。あわせて、厨房・ホール・店長でチャンネルを分けられるか、スタッフの入れ替わりや複数店舗に対応できるかも比べます。
①店内のいちばん遠い場所まで届くか
声が届きにくいのは、厨房の奥や洗い場、バックヤード、2階席、個室、テラス席です。無線機なら壁や階をまたいで届くか、スマホアプリなら店内のWi-Fiと携帯電話の電波が入るかを確かめてください。デモ機やレンタル、アプリの無料プランを使い、客席が埋まるピークの時間帯に条件の悪い場所同士で試し通話をしておくと確実です。
②手がふさがっていても話せるか
料理やトレーを持っていると、本体のボタンは押せません。ボタンを押している間だけ話すPTT(プッシュ・トゥ・トーク)方式の機種でも、胸元やイヤホンのコードのボタンで送信できれば扱いやすくなります。声を出すと送信が始まるVOX機能や、電話のように双方が同時に話せる同時通話の機種を選べば、ボタン操作そのものを減らせます。
交互通話では、誰かが話している間、ほかの人は送信できません。厨房とホールの短いやりとりが続く店では待ち時間が生まれやすいため、同時通話の機種も比べてみてください。同時通話の機種は、同時に話せる人数と機種の種類を確かめておくと、店の人数に合うかを判断できます。
③厨房・ホール・店長でチャンネルを分けられるか
全員が1つのチャンネルで話すと、案内の連絡も料理の連絡も全員の耳に入り、自分に関係のある話を聞き分けにくくなります。厨房用とホール用にチャンネルを分け、全員に届ける共通のチャンネルを1つ用意する形が基本です。店長やホールの責任者が複数のチャンネルを同時に聞けると、店全体の状況をつかみやすくなります。同時に聞けるチャンネルの数は機種やサービスで異なるので、必要なチャンネルを先に書き出してから比べてください。
ピーク時の聞き逃しが心配な店では、届いた音声を後から聞き直せるかも比べておくと安心です。無線機は受けた音声を残さない機種が多い一方、スマホアプリには音声の履歴が残るものがあります。
④接客中に目立たず、お客様の声も聞こえるか
ホールのスタッフは、お客様と話しながらインカムを使います。耳掛け型の小さなイヤホンマイクや片耳のワイヤレスイヤホンのように、目立ちにくく片方の耳が空くものを選んでください。受けた声はイヤホンで聞き、スピーカーから客席に漏れないようにします。有線のイヤホンマイクは、コードを制服の内側に通してクリップで留めると、料理を運ぶときに引っかかりにくくなります。一日中着けるものなので、重さや耳の痛くなりにくさも試しておきたい点です。片耳のワイヤレスイヤホンを無線機で使いたい場合は、無線機をワイヤレスで使う方法と、Bluetoothでつなぐときの注意点を確かめてから選んでください。
⑤スタッフの入れ替わりや複数店舗に対応できるか
飲食店では、シフトによってその日の人数が変わり、アルバイトの入れ替わりも珍しくありません。無線機はその日に働く人数分の本体が必要で、足りない分はレンタルで補う方法もあります。スマホアプリはアカウントの追加と削除で人数に合わせられます。ただし、スマートフォンを店で用意するか、私物の端末を使ってもらうかは先に決めておくことが大切です。
複数店舗を運営していて、店舗同士や本部とも同じ手段で連絡したい場合は、回線を使うIP無線やスマホアプリが候補になります。
スマートフォンをトランシーバーのように使えるアプリの一つが、LINE WORKSラジャーです。インターネットにつながっていれば、距離の制限なく話せます。複数人が同時に話せる双方向通話と、周りの騒音を抑えるノイズ抑制は、すべてのプランで使える機能です。手持ちのBluetoothイヤホンや有線イヤホンも使えます。
厨房の騒音・水・油と衛生への備え
厨房では、騒音の中でも声が届くマイクとイヤホン、水しぶきに耐える防水の等級、手洗いとイヤホン共用の決まりをそろえます。水への強さは端末やイヤホンのIPコードで確かめ、水はねの多い場所ではIPX5、シンクなどに落とすおそれのある場所ではIPX7が目安です。
騒音の中で聞き取り、伝える
厨房では換気扇や食器洗浄機、揚げ物や炒め物の音が重なり、ピーク時にはホールも話し声で騒がしくなります。聞き取りにくさの原因は、聞く側だけでなく話す側のマイクにあることもあります。マイクが口から離れていると、声と一緒に周りの音も拾うためです。口元にマイクを固定できるヘッドセットや、周りの音を抑えるノイズキャンセリング機能のあるマイクを使うと、相手に届く声が聞き取りやすくなります。
聞く側は、音量を上げる前に、耳に合ったイヤホンを選んでください。厨房のスタッフは遮音性のあるイヤホン、お客様と話すホールのスタッフは片耳用、と持ち場で分ける方法もあります。
水しぶきと油への強さはIPコードで確かめる
端末やイヤホンの防水・防塵の性能は、IP67のようなIPコードで表示されています。1桁目が粉塵、2桁目が水に対する保護の等級で、水に対する等級はJIS C 0920で次のように定められています。
| 表示 | 水に対する保護 | 飲食店での目安 |
|---|---|---|
| IPX4 | あらゆる方向からの水の飛まつに耐える | ホール、洗い場から離れた調理台のまわり |
| IPX5 | あらゆる方向からのノズルによる噴流水に耐える | 洗い場の近く、水はねの多い厨房 |
| IPX7 | 一時的に水に沈めても有害な浸水がない | シンクや寸胴に落とすおそれのある場所 |
IPX7だけの表示は水に沈めたときの等級で、噴流水への保護を含むとは限りません。水はねと水没の両方が心配な場所では、IPX5/IPX7のように両方の等級を表示した機種を選ぶと安心です。
IPコードの試験には真水が使われ、JIS C 0920は、高い圧力や溶剤を使って洗う場合に保護が不十分なことがあるとしています。油や洗剤がかかる場所で使うなら、メーカーの案内もあわせて確かめてください。粉を多く扱う店では、1桁目の粉塵の等級も目安になり、5は防じん形、6は耐じん形を表します。
スマホアプリを使う場合は、スマートフォン本体のIPコードを確かめておきましょう。本体をポケットやケースに入れ、調理台の上に置かないようにすると、水や油がかかりにくくなります。
手洗いとイヤホン共用の決まり
2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになりました(厚生労働省「HACCP(ハサップ)」)。先に触れた小規模な一般飲食店向けの手引書は、手洗いのタイミングとして、調理施設に入る前、盛り付けの前、作業内容を変えたときなどを挙げています。
厨房では、ボタンに触れずに話せる機種や胸元で押せるボタンを選ぶと、調理の手を止めずに連絡できます。調理や盛り付けの途中で本体やスマートフォンに触れると、そのたびに手を洗い直すことになるからです。
イヤホンマイクをシフト交代で共用する場合は、交代のたびに耳に触れる部分を消毒してください。耳に触れる部品を外せる機種なら、スタッフごとに個人用のイヤーピースを用意して本体だけを共用する方法もあります。誰がどの手順で消毒するかを店の衛生管理の決まりに書き加えておけば、スタッフが入れ替わっても同じ手順を続けられます。
インカムのメリットとデメリット
飲食店のインカムは、関係する全員に一度で伝わり移動が減る一方、お客様の声に気づきにくくなる点は、着け方と話し方を決めて補います。ホールのスタッフは片耳で着け、お客様と話している間は接客を優先してインカムには後から応答する、といった決めごとが対策になります。
飲食店でインカムを使うメリットは、主に次の4つです。
- 料理の仕上がりや空いた卓を、呼びに行かずに関係する全員へ一度で伝えられる
- 応援の依頼や店長への相談を、持ち場を離れずにできる
- 新人が判断に迷ったとき、バックヤードまで聞きに行かずに先輩へ確認できる
- アレルギーや予約の情報を、厨房とホールで同時に共有できる
一方で、使い方を決めずに始めると、次のようなことが起きやすくなります。
| 起きやすいこと | 対策 |
|---|---|
| インカムの声に気を取られ、お客様の呼びかけに気づきにくい | ホールのスタッフは片耳で着ける。お客様と話している間は接客を優先し、インカムには後から応答する |
| 話している内容がお客様に聞こえる | 受けた声はイヤホンで聞く。客席の近くでは、お客様の名前やほかの卓の事情を声に出さない |
| 連絡が増えて、作業に集中しにくい | チャンネルを分ける。呼びかけは相手、自分、用件の順に短く話し、業務に関係のない会話はしない |
| 顔を合わせて話す機会が減る | 営業前の打ち合わせや営業後の振り返りは対面で行う |
| 電池切れや紛失、故障で使えない端末が出る | 充電の場所と担当を決め、予備の端末を用意する |
| 台数や月額が増えて、費用が想定を超える | 本体代だけでなく、人数と使う年数を掛けた合計で比べる |
導入の進め方と費用の目安
ピーク時の試し通話、使い方の決めごと、1店舗での試用の順に進めると、導入しても使われないまま終わる事態を防げます。使い方を決めずに機器だけを配ると、連絡が増えて作業に集中しにくくなるなどの問題が起きやすいためです。
- 使う場所、人数、連絡する相手を書き出し、デモ機やレンタル、アプリの無料プランでピーク時に試し通話をする
- チャンネルの分け方、呼びかけ方、客席の近くでの話し方、充電と保管の担当を決める
- 1店舗や特定の時間帯で試し、スタッフの意見を聞いてから台数やプランを決める
費用のかかり方は方式によって違い、最初にまとめて払う方式と、毎月や毎年払い続ける方式があります。
| 方式 | 最初にかかる費用 | 続けてかかる費用 |
|---|---|---|
| 特定小電力トランシーバー | 本体が1台1万〜4万円程度 | 電池やイヤホンマイクの買い替え |
| デジタル簡易無線 | 本体代と登録の手数料 | 電波利用料が1台あたり年200円(個別登録)または290円(包括登録) |
| IP無線 | 本体が1台6万〜10万円程度 | 通信料が1台あたり月2,000円前後 |
| スマホアプリ | スマートフォンを店で用意する場合は端末代 | ユーザー数に応じた月額 |
本体価格と通信料は販売各社が公開している目安で、電波利用料は2025年10月1日改定の額です(関東総合通信局「デジタル簡易無線局(CR)登録局のページ」)。人数と使う年数を掛けた合計を出すときは、台数と年数で見た方式ごとの総額の試算を自店の人数に置き換えると見積もりやすくなります。
よくある質問
インカムとトランシーバーは何が違いますか?
現場ではほぼ同じ意味で使われる言葉です。ヘッドセットやイヤホンマイクを着けて話す形をインカム、本体を手に持って話す無線機をトランシーバーと呼ぶことが多くあります。トランシーバーにイヤホンマイクをつなげば、インカムとして使えます。両手を使う場面が多い飲食店では、イヤホンマイクを着ける形が便利です。
アルバイトの私物のスマートフォンをインカムに使ってもよいですか?
使えますが、始める前に決めておきたいことがあります。本人の同意を得ること、業務用のアカウントを使って辞めたときに削除すること、通信量や電池の負担をどう扱うか、紛失したときの連絡先の4つです。私物を使いたくないスタッフもいるので、店で用意する端末を数台置いておくと運用しやすくなります。店の決まりとして書き出すときは、費用負担や労働時間など私物の端末を業務に使うときの社内ルールと照らし合わせると、抜けを防げます。
インカムはレンタルと購入のどちらがよいですか?
使う期間で選ぶのが基本です。催事への出店や繁忙期など短い期間だけ台数を増やすなら、レンタルは初期費用を抑えられ、終わったら返却できます。毎日使う分を借り続けると、購入より割高になりやすいので注意してください。人数の増減が多い店では、ユーザー単位で契約できるスマホアプリも比べる候補になります。
まとめ
飲食店のインカムを選ぶときに押さえておきたい点は、次のとおりです。
- 厨房から客席が見えない店、2階席や個室がある店、少ない人数でピークに対応する店ほど役立つ
- ワンフロアなら特定小電力、複数フロアや複数店舗ならスマホアプリ、デジタル簡易無線、IP無線が候補
- 厨房では口元のマイクとIPコードの防水の等級を確かめ、手洗いとイヤホン共用の決まりを作る
- ホールは片耳で着け、客席の近くでの話し方を決めておく
候補を2つほどに絞ったら、ランチやディナーのピークに、厨房の奥や2階席など声が届きにくい場所同士で試し通話をしてみてください。
複数フロアや複数店舗の連絡にスマートフォンを使う方法を検討するなら、LINE WORKSラジャーも選択肢の一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。