業務用インカムの種類と選び方|免許・費用・通信距離を比較

業務用インカムは、現場のスタッフ同士が離れた場所から声で連絡を取り合う通信機器で、種類によって通信距離・免許・費用が変わります。   この記事では、主な5種類の違いと選び方、費用の目安、導入の進め方を解説します。

目次

    業務用インカムとは|トランシーバー・無線機との違い

    業務用インカムは、現場のスタッフ同士が離れた場所から声で連絡を取り合うための業務用の通信機器です。

    インカムはインターコミュニケーションシステムの略で、もとはヘッドセットやイヤホンマイクを着けて話す通話装置を指す言葉です。現場ではトランシーバーや無線機とほぼ同じ意味で使われ、メーカーや販売店によって呼び方が分かれます。

    トランシーバーは送信と受信を1台でこなす無線機のことで、これにイヤホンマイクをつないでインカムとして使う形もよく見られます。呼び方の違いはインカムとトランシーバーの違いで詳しく解説しています。

    話し方は、ボタンを押している間だけ声を送るPTT(プッシュ・トゥ・トーク)方式が中心です。電話のように複数人が同時に話せる同時通話に対応した機種もあります。

    業務用インカムは、声を運ぶ経路で大きく2つに分かれます。機器どうしが電波で直接つながる無線機と、携帯電話の回線やWi-Fiを通じてつながるIP無線・アプリ型です。この違いが、届く距離や手続きの要否、費用のかかり方を左右します。

    電波で直接つながる無線機
    • 特定小電力無線
    • デジタル簡易無線
    • デジタル小電力コミュニティ無線(デジコミ)
    • 回線がなくても話せる(届く距離は出力と建物しだい)
    携帯回線・Wi-Fiでつながる方式
    • IP無線(専用機)
    • アプリ型インカム(スマートフォン)
    • 回線の圏内なら距離の制限がない(圏外では使えない)

    業務用インカムの5つの種類と比較

    主な種類は5つで、免許不要で近距離向けの特定小電力無線から、全国で話せるIP無線・アプリ型まで性質が分かれます。

    特定小電力無線 デジタル簡易無線 デジコミ IP無線 アプリ型
    通信距離の目安 屋外で数百m〜1km程度、屋内は数十m程度 見通しのよい屋外で1〜5km程度 見通しのよい屋外で1km程度 携帯回線の圏内 携帯回線・Wi-Fiの圏内
    免許・登録 不要 登録または免許が必要 不要 不要(回線の契約が必要) 不要
    出力 10mW以下 最大5W 500mW ― ―
    月々の費用 なし なし(電波利用料が年1回) なし 通信料 アプリの利用料
    専用の機器 必要 必要 必要 必要 不要(スマホを使う)
    会話の記録 残らない 残らない 残らない 機種による 対応するサービスがある
    向いている現場 1フロア・近距離の連絡 屋外の広い現場 屋外イベント・広い施設 車両や移動しながらの広域連絡 フロア間・拠点間の連絡

    通信距離はメーカーや販売各社の案内に見られる目安で、建物の中や市街地では大きく縮みます。

    特定小電力無線|免許不要で近距離向け

    特定小電力無線は、出力10mW以下の小さな電波を使う無線機で、免許も登録も資格も要りません。本体を買えば月々の費用はかからず、5種類のなかでいちばん手軽に始められる方式です。

    その分、届く範囲は限られます。1フロアで完結する店舗や倉庫なら十分でも、鉄筋コンクリートの建物で上下のフロアをつなぐと、声が途切れることがあります。仕組みと選び方は特定小電力トランシーバーとはで解説しています。

    デジタル簡易無線|屋外の広い現場向け

    デジタル簡易無線は最大5Wの出力で、見通しのよい屋外なら数km先とも話せます。建設現場での重機の誘導や警備、屋外イベントなど、広い敷地での連絡に向いています。

    使うには、総務省の総合通信局への登録(登録局)か免許(免許局)が必要です。登録は総務省「電波利用 電子申請」からオンラインで申請できます。登録局と免許局の違いや手続きの流れは、デジタル簡易無線とはにまとめています。

    なお、アナログ方式の簡易無線(350MHz帯・400MHz帯)は2024年11月30日で使用期限を迎えました。12月1日以降にアナログの周波数で電波を出すと電波法違反になります(総務省 電波利用ポータル「簡易無線局のデジタル化について」)。

    デジタル小電力コミュニティ無線(デジコミ)|免許不要でやや遠くまで

    デジタル小電力コミュニティ無線(デジコミ)は、142MHz帯・146MHz帯を使う出力500mWの無線機です。電波法上は特定小電力無線局の一種で、免許も登録も要りません。見通しのよい屋外なら1km程度と、特定小電力無線より遠くまで届きます。

    相手の位置を確かめられる機種もあり、屋外イベントや広い施設でスタッフの配置を把握したい場合に使えます。特定小電力では距離が足りないものの、登録の手続きは避けたいという場合の候補です。

    IP無線|携帯回線で広い範囲をカバー

    IP無線は、携帯電話の回線を使う専用の無線機です。電波法上の免許は要らず、回線の圏内なら距離に関係なく話せます。その代わり、本体代に加えて1台ごとに月々の通信料がかかります。

    配送車両との連絡や、広い範囲を移動しながら動く警備・イベント運営に向いています。詳しくはIP無線とはで紹介しています。

    アプリ型インカム|スマートフォンをインカムとして使う

    アプリ型インカムは、スマートフォンにアプリを入れてPTT通話をする方式です。スタッフが業務用のスマホを持っていれば、専用の機器を買わずに始められます。費用は、ユーザーごとの月額利用料が中心です。

    アプリ型はBluetoothでつながるから距離が短い、と誤解されることがあります。Bluetoothはイヤホンとスマホをつなぐための規格で、声そのものは4G/5GやWi-Fiの回線で届きます。そのため回線の圏内なら別のフロアや離れた拠点とも話せますが、圏外になる地下や山間部では使えません。無料アプリとの違いや選び方はトランシーバーアプリとはで解説しています。

    業務用インカムの選び方|4つの判断軸

    最初に使う場所と距離で方式を絞り、機能、免許・技適、ヘッドセットの順に確かめると迷いにくくなります。

    ①使う場所と通信距離

    いちばん先に確かめたいのは、どこで使うかです。場所ごとの候補は次のとおりです。

    使う場所 候補になる方式
    1フロアや狭い敷地で完結する 特定小電力無線
    見通しのよい屋外の広い敷地 デジタル簡易無線、デジコミ
    上下のフロア、複数の建物、離れた拠点をつなぐ IP無線、アプリ型
    携帯電話の電波が届きにくい山間部や地下 回線に頼らない無線機(デジタル簡易無線など)

    屋内では、鉄筋コンクリートの壁や床で電波が思った以上に弱まります。特定小電力無線で導入したものの、上の階に届かなかったということも起こりえます。購入前にデモ機やレンタル、アプリの無料プランなどを使い、実際に使う場所の端から端まで試し通話をしておくと安心です。方式ごとの距離の違いはトランシーバーの通信距離でも紹介しています。

    ②必要な機能

    方式の候補が絞れたら、現場で必要な機能を洗い出します。機種やサービスで差が出やすいのは次の項目です。

    機能 確認すること 必要になりやすい現場
    同時通話 電話のように複数人が同時に話せるか(PTTは一度に1人ずつ話す) 重機の誘導など、話しながら指示を受ける作業
    会話の記録・文字起こし 聞き逃した声を再生できるか、文字で残るか、どのくらいの期間残るか 申し送りや指示の確認が多い現場
    グループ管理 部門やフロアごとにグループを分けられるか、途中で変更できるか シフトやスタッフの入れ替わりが多い現場
    位置情報 スタッフの居場所を確かめられるか 広い屋外施設、イベント会場
    騒音への強さ 周りの音を抑えるマイクや処理があり、騒がしい場所でも聞き取れるか 工場、厨房、建設現場
    緊急呼出 ボタン1つで管理者や全員に知らせられるか 警備、一人で作業する場面
    電池の持ち 1回の勤務を通して使えるか、予備電池や充電の方法 長時間のシフト、屋外での作業
    防水・防塵 IP規格の等級(IP67など) 屋外、工場、水回りの作業

    防水・防塵の性能はIP規格の2桁の数字で表され、1桁目が防塵、2桁目が防水の等級です。建設現場や工場なら、粉じんが入らず一時的な水没にも耐えるIP67以上がひとつの目安になります。カタログに防水とだけ書かれている場合は、等級まで確かめておきましょう。

    ③免許・登録と技適マーク

    電波法では、無線局を開くには原則として免許が必要です。この記事で取り上げた5種類のうち、登録か免許が要るのはデジタル簡易無線だけで、ほかは手続きなしで使えます。

    デジタル簡易無線の登録は有効期間が5年で、更新の申請は満了の3か月前から1か月前までです。この期間を過ぎると更新はできず、新規の手続きからやり直しになります。担当者を決め、登録番号と期限を台帳で管理しておくと安心です。

    どの方式でも確かめたいのが技適マークです。技適マークは、無線機が電波法の技術基準に適合していることを示す表示です。技適マークのない無線機を使うと、電波法違反になる場合があります。罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(総務省 電波利用ポータル「技適マークのQ&A」)。

    海外向けのモデルや個人輸入品には、技適を取得していないものがあります。導入前に本体や取扱説明書で、技適マークか技適番号の記載を確認してください。免許制度や罰則の全体像は電波法の解説にまとめています。

    ④ヘッドセット・周辺機器

    聞き取りやすさや作業のしやすさは、イヤホンマイクやヘッドセットの選び方でも大きく変わります。

    装着方式 特徴 向いている現場
    耳掛け型 軽く、着け外しが速い 飲食店、小売店、ホテル
    スピーカーマイク 本体とケーブルでつなぎ、肩口で聞いて話せる。音量が大きく丈夫 倉庫、工場、屋外作業
    ヘッドバンド型 両耳を覆い、周りの音をさえぎりやすい 騒音の大きい工場、厨房
    骨伝導イヤホン 耳をふさがず、周りの音も聞こえる 警備、イベントの誘導、介護
    イヤーマフ一体型 耳を守る防音具と通話を両立できる 建設・解体の現場

    複数のスタッフで共有する場合は、耳パッドを交換できるか、アルコールで拭ける素材かも確認しておきたい点です。スマホのアプリで使うなら、Bluetoothヘッドセットとの接続の安定性や、PTTボタン付きモデルの有無で操作感が変わります。ワイヤレスの機器選びはワイヤレスインカムの選び方で紹介しています。

    現場・業種別のおすすめタイプ

    1フロアの現場は特定小電力、屋外の広い現場はデジタル簡易無線、フロアや拠点をまたぐ現場はIP無線やアプリ型が向きます。

    業種 主な連絡の場面 向いている方式 選ぶときのポイント
    介護施設 フロア間の呼び出し、夜勤帯の連絡 アプリ型 複数のフロアを1つのグループでつなげるか
    建設現場 広い敷地での誘導、作業の連絡 デジタル簡易無線、アプリ型 屋外で届く距離と、建物の内部への届きやすさ
    小売店 売場とバックヤードの呼び出し 特定小電力無線、アプリ型 1店舗なら特定小電力、店舗間の連絡まで考えるならアプリ型
    飲食店 ホールと厨房の連絡 特定小電力無線、アプリ型 厨房の騒音の中で聞き取れるか
    ホテル フロント・客室・清掃の連携 アプリ型、IP無線 複数フロアへの届き方と、部門ごとのグループ分け
    工場 ライン間の連絡 デジタル簡易無線、アプリ型 騒音対策と防水・防塵の等級
    警備・イベント 広い範囲での配置の連絡 デジタル簡易無線、IP無線、アプリ型 会場の広さと、人数の増減への対応
    運輸・配送 拠点と車両の連絡 IP無線、アプリ型 運転中は通話せず、停車中に確認する運用を決める

    同じ業種でも、建物の構造やスタッフのスマホの有無、管理する人の体制によって向く方式は変わります。表は、候補を2つほどに絞るための目安としてお使いください。

    スマートフォンをインカムのように使うアプリには、LINE WORKS ラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すPTT方式で音声がグループに届き、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。ただし、回線がつながらない場所では使えないため、圏外になる場所が多い現場では無線機のほうが確実です。

    LINE WORKS ラジャーの資料請求をする

    LINE WORKS ラジャー公式サイトをみる

    導入費用の目安と比べ方

    費用は本体価格だけでなく、月々の通信料や利用料、登録の手数料まで含め、使う年数の合計で比べます。

    方式によって、最初にまとまった費用がかかるか、毎月少しずつかかるかが変わります。主な費用の目安は次のとおりです。

    方式 最初にかかる費用 継続してかかる費用
    特定小電力無線 本体 1台1万円前後から なし(電池やイヤホンマイクの買い替えは別)
    デジタル簡易無線(登録局) 本体(販売店の見積もりで確認)、登録の手数料(電子申請で1,500円から) 電波利用料 1台あたり年200〜290円
    デジコミ 本体 1台2万5,000円前後 なし
    IP無線 本体(販売店の見積もりで確認) 通信料 1台あたり月額2,000円前後から
    アプリ型 手持ちのスマホを使えば端末代はかからない 利用料 1ユーザーあたり月額0円〜3,000円前後

    参考: 本体価格と月額は、メーカーや販売各社が公開している情報をもとにした目安です(アプリ型は年額契約時の月あたり料金を含みます)。登録の手数料と電波利用料は2025年10月1日改定の額です(関東総合通信局「デジタル簡易無線局(CR)登録局のページ」)。最新の金額は各社や総務省のページでご確認ください。

    比べるときは、使う人数と年数を決めて合計を出すと差が見えてきます。無線機は台数分の本体代に加え、イヤホンマイクや予備バッテリー、故障したときの買い替えがかかります。アプリ型は端末代がかからない代わりに、人数×月額×月数で費用が積み上がります。スタッフにスマホを配っていない現場では、端末の用意も含めて比べてください。方式ごとの詳しい相場は業務用インカムの値段と価格相場で比べています。

    導入の進め方と失敗しやすいポイント

    要件の整理、現場での試用、1部署での試験導入、全体への展開の順に進めると、届かない・定着しないといった失敗を防げます。

    1. どこで・誰が・何台・いくつのグループで使うかを書き出す(建物の構造やスマホの配備状況も含める)
    2. デモ機やレンタル、アプリの無料プランを使い、実際の場所と忙しい時間帯に試す
    3. 1つの部署や拠点で試験導入し、充電や紛失時の対応、グループの分け方などのルールを決める
    4. 必要な台数やプランを決め、使い方の説明会を開いてほかの部署へ広げる

    導入後につまずきやすいのは、次のような点です。

    つまずきやすい点 起きること 事前に確認すること
    カタログの通信距離だけで選んだ 上の階や地下、バックヤードで声が届かない 使う場所ごとの聞こえ方を試用の段階で確かめる
    騒がしい場面で試していない ピーク時や機械の音で指示が聞き取れない 忙しい時間帯と騒がしい場所で試す
    機器の管理担当を決めていない 充電忘れや紛失、故障したままの放置が起きる 充電・保管・紛失時の対応と担当者を決める
    デジタル簡易無線の更新を忘れた 有効期間が切れたまま使い、電波法違反になる 登録番号と期限を台帳で管理する
    私物スマホへのインストールが進まない プライバシーへの不安から利用が広がらない 業務用端末を用意するか、端末の利用ルールを先に決める
    人数や拠点が増えることを考えていない 台数や拠点を追加するたびに機器を選び直す 増減したときの追加方法と費用を確かめる

    よくある質問

    業務用インカムを使うのに資格は必要ですか?

    必要ありません。特定小電力無線やデジコミのような免許の要らない無線機も、デジタル簡易無線も、無線従事者の資格なしで操作できます。IP無線とアプリ型は携帯電話の回線を使うため、資格も免許も要りません。デジタル簡易無線で必要なのは、無線機ごとの登録または免許です。

    インカムはレンタルと購入のどちらがよいですか?

    使う期間で選ぶのが基本です。イベントや繁忙期など短い期間だけ台数が必要なら、レンタルは初期費用を抑えられ、終わったら返却できます。毎日使う現場で借り続けると、購入より割高になりやすくなります。人数の増減が多い現場では、ユーザー単位で契約できるアプリ型も比べる候補になります。

    インカムの導入に補助金は使えますか?

    使える場合があります。中小企業・小規模事業者向けのデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)では、IT導入支援事業者が登録したITツールが補助の対象です。インカムアプリが登録されたITツールであれば、対象になることがあります。枠や補助率、対象になる経費は公募ごとに決まるため、検討中のサービスの提供会社かIT導入支援事業者に確認してください。

    業務用インカムの会話が傍受されることはありますか?

    方式によって異なります。アナログ方式の無線は、同じ周波数に合わせた受信機で聞かれるおそれがあります。デジタル簡易無線には、会話を聞かれにくくする秘話機能を備えた機種があります。IP無線やアプリ型では、通信を暗号化しているか、退職した人のアカウントをすぐ止められるかを確認しておくと安心です。

    まとめ

    業務用インカムを選ぶときに押さえておきたい点は、次のとおりです。

    • 方式は使う場所と距離で決まる。1フロアなら特定小電力無線、屋外の広い現場ならデジタル簡易無線、フロアや拠点をまたぐならIP無線かアプリ型
    • 登録か免許が要るのはデジタル簡易無線だけ。有効期間は5年で、どの方式でも技適マークのある機器を選ぶ
    • 費用は本体価格だけでなく、月額や手数料を含めた年数単位の合計で比べる

    候補を2つほどに絞ったら、デモ機やレンタル、無料プランを使って、実際に使う場所と時間帯で試してみてください。声の届き方やスタッフの慣れやすさは、カタログを見比べるだけでは分からない部分です。

    フロア間や拠点間の連絡が課題なら、アプリ型も選択肢になります。スマートフォンをインカムのように使える LINE WORKS ラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。

    LINE WORKS ラジャーの資料請求をする

    LINE WORKS ラジャー公式サイトをみる