目次
MCA無線とは:仕組みと2つのサービス
MCA無線は、中継局を多くの利用者で共同利用する業務用無線で、移動無線センターが1982年から提供してきました。
MCAはMulti-Channel Access(マルチチャネルアクセス)の略です。利用者ごとに専用の周波数を持つのではなく、中継局が通話のたびに空いているチャンネルを割り当てることで、限られた周波数を多くの利用者で使い回します。提供しているのは一般財団法人移動無線センターで、全国の中継局を通じて、事務所の指令局と車両や携帯機の間で広い範囲の通話ができます。
ボタンを押して話す操作は一般的な無線機と同じで、特定の相手を呼ぶ個別通信、グループ通信、通話中の無線機も引き込む一斉通信が使えます。利用者は電波法に基づいて無線局の免許を受けて使います。この点が、サービス終了のときの手続きに関わってきます。
現在提供されているMCA無線は、次の2つです(出典: 移動無線センター「mcAccess eとは」、同「MCAアドバンスとは」)。
| 項目 | 800MHz帯デジタルMCA(mcAccess e) | MCAアドバンス |
|---|---|---|
| サービス開始 | 2003年10月 | 2021年4月 |
| 通信の仕組み | 800MHz帯の電波を使う専用のデジタル網 | LTE技術を使う専用網に、携帯電話事業者のLTE網を使う回線を組み合わせて二重化 |
| 主な端末 | 車載型・携帯型の無線機 | スマートフォン型の端末 |
| 主な機能 | 音声通話、メッセージ、録音 | 音声通話に加えて映像配信、チャット、GPS |
| サービス終了日 | 2029年5月31日 | 2027年3月31日 |
2つのサービスは電波も端末も違い、終了日も2年以上離れています。自社がどちらを使っているかは、契約内容や無線局の免許の内容で確かめられます。
災害に強いとされてきた理由と弱み
MCA無線は携帯電話とは別の専用網を使うため、災害で一般の回線が混み合っても影響を受けにくいとされてきました。中継局には耐震構造や非常用発電機などの備えがあり、自治体の防災連絡や、企業のBCP(事業継続計画)の連絡手段として使われてきました。
一方で、話せるのは中継局の電波が届く範囲に限られ、トンネルや山間部、ビルの谷間では届かないことがあります。端末ごとに月々の利用料もかかります。
MCA無線のサービス終了はいつ?終了日と経緯
MCAアドバンスは2027年3月31日、800MHz帯デジタルMCAは2029年5月31日にサービスを終了します。
どちらも移動無線センターが発表し、総務省の電波利用ポータルでも案内されています。発表からの流れは次のとおりです。
| 年月日 | できごと | 出典 |
|---|---|---|
| 2023年5月24日 | 800MHz帯デジタルMCAの新規申込の受付を、5月31日で原則終了すると発表 | 移動無線センター「800MHz帯デジタルMCA 新規の申込受付終了について」 |
| 2023年10月30日 | 移動無線センターの理事会で、800MHz帯デジタルMCAを2029年5月31日で終了すると決定 | 移動無線センター「800MHz帯デジタルMCAサービス終了についてのお知らせ」 |
| 2023年11月1日 | 800MHz帯デジタルMCAの終了を利用者に案内 | 同上 |
| 2024年7月1日 | MCAアドバンスを2027年3月31日で終了すると発表。新規・増設の申込の受付も終了 | 移動無線センター「MCAアドバンスサービスの終了についてのお知らせ」 |
| 2025年1月1日 | 総務省の新たな周波数割当計画が施行され、800MHz帯デジタルMCAの周波数の使用期限が2029年5月31日と定められる | 総務省 電波利用ポータル「『MCA無線』サービス終了に伴う再免許等手続について」 |
| 2027年3月31日 | MCAアドバンスのサービス終了 | 同上 |
| 2029年5月31日 | 800MHz帯デジタルMCAのサービス終了 | 同上 |
終了日は、2026年9月24日に移動無線センターと総務省のページで確認したものです。変更がある場合はこれらのページで告知されるため、移行の計画を立てる前に最新の情報をご確認ください。
800MHz帯デジタルMCAが終わる理由
導入から20年が経ち、端末の供給がすでに止まって故障への対応も難しくなり、設備を維持し続けることが困難になったためです。移動無線センターは、利用者が移行するための期間として5年を設けたうえで終了日を決めました。2023年5月の時点で10万局を超える利用があったサービスです。
MCAアドバンスが終わる理由
低価格なIP無線や衛星通信が広がるなど業務用無線を取り巻く環境が変わり、加入局数が当初の想定を大きく下回ったためです。長く安定してサービスを続けるのは難しいと判断されました。全国118か所の中継局のうち、利用がほとんどない一部の局は、サービス終了より前に休止・廃止される予定です。先に終了日を迎えるため、MCAアドバンスを使っている場合は移行を急ぐ必要があります。
MCA無線の利用者に必要な手続き
利用者は無線局の免許を受けているため、サービスの種類に合わせた免許の手続きが必要です。
総務省と移動無線センターは、サービス終了に伴う無線局の手続きを次のように案内しています(出典: 総務省 電波利用ポータル「『MCA無線』サービス終了に伴う再免許等手続について」、移動無線センター「MCAサービス終了についてのお知らせ(周波数の有効期限及び免許の有効期間について)」2025年7月1日)。
| サービス | 免許の扱い | 利用者が気をつけること |
|---|---|---|
| 800MHz帯デジタルMCA | 2025年1月1日以降の再免許では、免許の有効期間が2029年5月31日までになり、周波数の使用も同日までに限られる | 免許の有効期間が2029年5月31日以降の日付になっている局は、次の再免許を受けられない |
| MCAアドバンス | 周波数の使用期限が法令で定められていない。再免許で希望を書かないと、有効期間は5年になる | 再免許の申請では「希望する免許の有効期間」欄に「令和9年3月31日まで」と書く。有効期間が2027年3月31日より後の局は、サービス終了までに無線局廃止届を出す |
とくに気をつけたいのはMCAアドバンスです。サービスが終わっても免許の有効期間は残るため、終了後の直近の電波利用料の応答日(免許を受けた日にあたる毎年の日)までに廃止届を出していないと、サービス終了後も電波利用料の徴収の対象になります。
サービス終了を待たずに代替手段へ切り替え、使わなくなった無線局を廃止するときも、総務大臣への届出が必要です(電波法(e-Gov法令検索)第22条)。台数が多い組織では、切り替えた端末と届出の状況を台帳で管理しておくと漏れを防げます。サービス終了や移行の相談は、移動無線センターの各地域の窓口が受け付けています。
MCA無線の代替策:4つの選択肢
代替の主な選択肢は、IP無線、デジタル簡易無線、衛星通信、スマホのトランシーバーアプリの4つです。
MCA無線の強みだった広い範囲での通話と災害時のつながりやすさを、1つの方式ですべて引き継げるものはありません。何を優先するかで候補が変わります。
| 選択肢 | 届く範囲 | 主な費用 | 災害時の見方 |
|---|---|---|---|
| IP無線(専用機) | 携帯電話の回線がつながる範囲 | 専用機と月々の通信料 | 回線の混雑や基地局の停電の影響を受ける |
| デジタル簡易無線 | 見通しのよい屋外で数km程度 | 本体、申請手数料、毎年の電波利用料 | 回線に頼らずに話せるが、離れた拠点には届かない |
| 衛星通信 | 空が開けた屋外なら山間部や海上も | 端末と通信料が他の方式より高め | 地上の設備が被災しても使えるが、屋内では使いにくい |
| スマホのトランシーバーアプリ | 携帯電話の回線やWi-Fiがつながる範囲 | アプリの利用料と通信費 | IP無線と同じく回線の状況に左右される |
IP無線:広い範囲の連絡を置き換えやすい
携帯電話の回線で音声を送る業務用の無線機で、利用者が免許を受ける必要はありません。回線がつながる場所なら距離に関係なく話せるため、車両の運行管理や拠点間の連絡など、MCA無線に近い使い方で移行できます。一方で、災害時には一般の携帯電話と同じ回線を使うため、混雑や基地局の停電の影響を受けることがあります。仕組みはIP無線の解説で紹介しています。
デジタル簡易無線:回線に頼らない連絡手段を残せる
最大5Wの電波で端末どうしが直接やりとりする無線で、見通しのよい屋外なら数km先まで届きます。携帯電話の回線を使わないため、停電や回線の混雑があっても電波の届く範囲なら話せます。その代わり、MCA無線のように遠く離れた拠点とは話せません。
使うには総合通信局への登録か免許が必要で、登録局の電波利用料は1台あたり年200円(個別登録)または290円(包括登録)です(2025年10月1日改定。出典: 関東総合通信局「デジタル簡易無線局(CR)登録局のページ」)。手続きの流れはデジタル簡易無線の解説にまとめています。
衛星通信:地上の設備が被災しても使える
通信衛星を経由して話すため、地上の基地局や中継局が被災しても、空が開けた屋外なら山間部や海上とも連絡できます。端末や通信料は他の方式より高めで、屋内では使いにくいため、全員の日常の連絡用というより、災害対策本部や拠点に数台置く備えに向いています。
スマホのトランシーバーアプリ:手持ちのスマートフォンで始められる
スマートフォンにアプリを入れ、ボタンを押して話すPTT(Push to Talk)方式で使います。携帯電話の回線やWi-Fiがつながれば、フロアや拠点をまたいで話せます。業務用のスマートフォンをすでに配っている組織なら、専用機をそろえずに一部の部署から試せます。回線が使えない場所や通信障害のときに話せない点は、IP無線と同じです。
車両で使う場合は、走行中にスマートフォンを手に持って通話することや画面を注視することが道路交通法第71条で禁止されているため、停車してから確認する運用を決めておきます。
スマートフォンをトランシーバーのように使うアプリには、LINE WORKS ラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すと音声がグループに届いて履歴に残り、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。ただし、回線がつながらない場所では使えないため、災害時の備えは別の手段と組み合わせて考える必要があります。
代替策の選び方と移行の進め方
平時の連絡は使い方に合う方式で置き換え、災害時の連絡は回線に頼らない手段と組み合わせて備えます。
MCA無線を何に使っていたかで、向いている移行先が変わります。
| MCA無線の主な使い方 | 移行先の候補 |
|---|---|
| 車両の運行管理・拠点間の連絡 | IP無線、スマホのトランシーバーアプリ |
| 工場・現場など敷地の中での連絡 | デジタル簡易無線、スマホのトランシーバーアプリ |
| 自治体・企業の災害時の連絡 | 平時に使う方式に、デジタル簡易無線や衛星通信を組み合わせる |
災害への備えとしてMCA無線を置いていた組織では、1つの方式にまとめず、平時の主な連絡手段と、回線が使えないときの予備の手段を分けておくと、MCA無線に近い安心感を保ちやすくなります。運送業の連絡手段全体を見直す場合は、トラック無線・トランシーバーの選び方もあわせてご覧ください。
移行の進め方
- 利用中のサービス(MCAアドバンスか800MHz帯デジタルMCAか)と、台数・用途・免許の有効期間を確かめる
- 届いてほしい範囲、同時に話す人数、災害時に必要な連絡を書き出し、移行先の候補を絞る
- 一部の部署や車両で試し、通話の品質や操作、運用のルールを確かめる
- 切り替えを広げ、使わなくなった無線局の廃止届を出す
台数の多い組織ほど、試験から全面的な切り替えまでの期間を長めに見込んでおくと安心です。MCAアドバンスは終了日まで残りの期間が短いため、候補の比較と試験を早めに始めておきましょう。
よくある質問
サービス終了後もMCA無線の端末は使えますか?
使えません。終了日を過ぎると中継局を通じた通信が止まるため、端末が手元にあっても通話はできなくなります。800MHz帯デジタルMCAは、周波数の使用そのものが2029年5月31日までと定められています。
MCA無線とIP無線の違いは何ですか?
MCA無線は移動無線センターの専用網を使い、利用者が無線局の免許を受けて使います。IP無線は携帯電話の回線を使い、利用者の免許はいりません。MCA無線は災害時に一般の回線の混雑の影響を受けにくく、IP無線は回線がつながる範囲なら距離に関係なく話せるのが強みです。
これからMCA無線を新しく契約できますか?
できません。800MHz帯デジタルMCAの新規申込は2023年5月31日で原則終了し、MCAアドバンスも2024年7月1日の発表とあわせて新規・増設の受付を終えています。これから業務用無線を導入する場合は、ほかの方式から選ぶことになります。
まとめ
MCA無線は、中継局を共同利用して広い範囲で話せる業務用無線ですが、2つのサービスとも終了が決まっています。押さえておきたい点は次のとおりです。
- MCAアドバンスは2027年3月31日、800MHz帯デジタルMCAは2029年5月31日に終了
- MCAアドバンスは、再免許での有効期間の指定と、終了までの廃止届が必要
- 代替はIP無線・デジタル簡易無線・衛星通信・スマホのアプリ。災害時の備えは組み合わせで考える
まずは自社が使っているサービスと台数、免許の有効期間を確かめるところから始めると、残りの期間で何から進めればよいかが見えてきます。移行の相談は移動無線センターの窓口でも受け付けています。
車両や拠点をまたぐ日常の連絡をスマートフォンで置き換える場合は、アプリ型も選択肢になります。スマートフォンをトランシーバーのように使える LINE WORKS ラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。