目次
人手不足の現状|求人倍率・企業の不足感・倒産件数
求人倍率は落ち着いて見えますが、正社員が足りない企業は半数を超え、人手不足による倒産も過去最多を更新しています。
| 指標 | 最新の数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 有効求人倍率 | 1.18倍(正社員は1.00倍)/2026年7月 | 厚生労働省「一般職業紹介状況」 |
| 正社員が不足している企業 | 51.3%/2026年7月 | 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」 |
| 人手不足倒産 | 237件(前年同期比37.7%増)/2026年上半期 | 東京商工リサーチ |
有効求人倍率は1倍台前半で推移
有効求人倍率は、ハローワークで仕事を探している人1人に対して、求人が何件あるかを示す指標です。2026年7月は1.18倍で、正社員に限ると1.00倍でした(出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)について」)。
数字だけを見ると落ち着いていますが、ハローワークを通さない採用は含まれません。地域による差も大きく、就業地別では福井県と山梨県の1.69倍から大阪府の0.95倍まで開きがあります。
正社員が足りない企業は半数を超える
帝国データバンクの2026年7月の調査では、正社員が不足していると答えた企業は51.3%で、7月としては4年連続で半数を超えました。業種別では金融(67.1%)、建設(66.0%)、運輸・倉庫(65.6%)など6業種で6割を超えています。非正社員では飲食店が57.7%で最も高くなっています(出典: 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」)。
2026年版中小企業白書も、中小企業・小規模事業者の人手不足は依然として深刻で、とくに中規模企業で不足感が強いと分析しています(出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第1部第1章第3節」)。
人手不足倒産と現場への影響
人を確保できずに事業を続けられなくなる人手不足倒産は、東京商工リサーチの集計で2026年上半期に237件となり、過去最多を更新しました。このうち人件費の高騰を要因とするものは120件と、前年同期の2.4倍に増えています(出典: 東京商工リサーチ「2026年上半期『人手不足』倒産」)。
人が足りない状態が続くと、残った従業員に負担が集まり、退職が続く悪循環にもつながります。帝国データバンクの集計では、従業員や経営幹部の退職が原因となった倒産が2025年度に118件と、年度で初めて100件を超えました(出典: 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」)。退職が次の退職を呼ぶ流れと防ぎ方は、連鎖退職の解説で紹介しています。
人手不足が起きる原因
原因は、働き手の減少や働き方の変化といった社会全体の要因と、採用・定着・業務の進め方という自社の要因に分けられます。
働き手の減少
2026年版中小企業白書は、15〜64歳の人口は今後も減る見込みで、人手不足はさらに深刻になると推測しています。中小企業の雇用者数は、中位推計で2040年に2018年比で約8%、低位推計では約16%減る可能性があります(出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第1部第1章第3節」)。同じ人数を採り続けようとすると、企業どうしの採用の競争は年々厳しくなります。
業種・職種・地域のミスマッチ
人が足りない業種と、仕事を探す人が多い業種は一致していません。同白書では、建設業、運輸業・郵便業、情報通信業などで不足感が強いとされています。職種別では、専門的・技術的職業やサービスの職業で不足している割合が高くなっています。地域でも、先ほどの求人倍率のように都道府県で差があります。
労働時間の上限規制と、職場選びの変化
2024年4月からは建設業と自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用され、トラックドライバーなどの時間外労働は年960時間が上限になりました(出典: 厚生労働省「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」)。業務量が変わらなければ、同じ人数で働ける時間が減る分だけ不足感は強まります。
働く側の職場選びも変わっています。2026年版中小企業白書によると、中小企業へ転職した人の入職理由は「仕事の内容に興味があった」が最も多く、労働時間・休日などの労働条件、能力や資格をいかせることが続きます(出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第3章第1節」)。仕事内容や条件が伝わらない求人には、応募が集まりにくくなります。
自社の採用・定着・業務の進め方
外部の環境とは別に、自社で変えられる原因もあります。求める人物像があいまいな求人、評価の基準が見えず成長を実感しにくい職場、特定の人にしか分からない業務、人を探して歩き回る連絡の方法などです。どれが当てはまるかによって、効く対策が変わります。
自社の人手不足タイプを見極める|4つの型
自社の人手不足は、採用難・離職・業務量過多・ピーク偏りの4タイプに分かれ、優先したい対策がそれぞれ異なります。
タイプは、感覚ではなく社内のデータで確かめます。欠員が埋まるまでの期間、応募数の推移、入社1年以内の退職者数と退職理由、部署別の残業時間、時間帯別の忙しさを並べると、傾向が見えてきます。複数のタイプに当てはまる場合は、影響がいちばん大きいものから手をつけます。
| タイプ | よく見られる兆候 | 優先したい対策(次章の番号) |
|---|---|---|
| 採用難型 | 欠員が3か月以上埋まらない/求人広告費を増やしても応募が増えない/条件面で内定辞退が続く | 1 採用チャネル、2 人物像と求人条件、3 多様な人材、4 賃金・休日・働き方 |
| 離職型 | 入社1年以内の退職が多い/中堅層が抜けてベテランと新人だけになっている/残業や休みの取りやすさに偏りがある | 4 賃金・休日・働き方、5 評価と育成 |
| 業務量過多型 | 特定の人がいないと回らない業務がある/紙・電話・口頭の連絡に時間を取られる/管理職が現場作業に追われている | 6 棚卸しと標準化、7 デジタル化、8 外部委託、10 連絡と情報共有 |
| ピーク偏り型 | 特定の時間帯・曜日・季節だけ人が足りない/応援を頼むのに手間取る/シフト作成に時間がかかる | 9 シフトと配置、10 連絡と情報共有、3 多様な人材 |
人手不足の対策10選|採用・定着・業務の見直し
対策は、採用・定着・業務の見直しの3方向に分けられます。自社のタイプに合う2〜3個から始めると進めやすくなります。
1〜3は人を採るための対策、4〜5は長く働いてもらうための対策、6〜10は少ない人数でも業務が回るようにする対策です。
1. 採用チャネルを広げる
求人媒体を1つに固定していると、届く層が限られます。2026年版中小企業白書によると、中小企業への入職者の約7割は転職者です。60歳代以上を除く各年代では、仕事探しにインターネットを使わなかった人は2〜3割にとどまります(出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第3章第1節」)。
応募の入口を広げるには、求人サイトや自社ホームページの採用情報を整えることが出発点になります。そのうえで、ハローワーク、社員からの紹介(リファラル採用)、地域の求人媒体を組み合わせます。
2. 求める人物像と求人条件を見直す
同白書によると、求める人材像を明確にできている事業者は、できていない事業者に比べて、予定人数を採用できた割合が高くなっています。採用した人の定着割合も高いという結果です。
必須条件を並べすぎた求人は、応募の入口を狭めます。本当に必要な経験や資格を絞り込み、短い時間でも担える業務を切り出すと、これまで応募してこなかった層にも届きやすくなります。
3. シニア・副業人材・外国人材など多様な人材を受け入れる
シニア層、子育て中の人、副業・兼業の人材、外国人材など、これまで採用の対象として意識してこなかった層を受け入れる対策です。受け入れには、勤務時間や業務範囲の切り出しと、仕事の教え方の準備が必要になります。
同白書によると、数時間単位で働くスポットワーク人材や副業・兼業人材を活用している中小企業は、全体ではまだ少数です。ただし宿泊業・飲食サービス業では活用する企業が多く、副業・兼業人材を活用した企業が挙げた効果では、人手不足や業務負担の軽減が最も多くなっています(出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第3章第2節」)。
4. 賃金・休日・働き方を見直す
賃金や休日、残業、勤務時間の柔軟さは、応募と定着の両方に関わります。同白書で、人材定着率が高い中小企業が取り組んだことを見ると、最も多いのは賃金水準の向上です。休暇の取得推進、時間外労働の削減、柔軟な働き方の導入が続きます(出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第3章第1節」)。
賃上げは毎年続く費用になるため、業務の見直しで生産性を高める取り組みと並行して考えると、無理なく続けられます。
5. 評価と育成の仕組みを整えて定着を高める
採用した人に長く働いてもらえれば、同じ人数を採り直す負担が減ります。同白書では、人事評価制度を設けている事業者で、採用した従業員の定着割合が高いことも示されています。
評価の基準を伝える、定期的に面談する、新人の立ち上がり期間に教える担当を決めるといった仕組みは、大きな費用をかけずに始められます。離職率の計算方法や改善策は、離職率の解説にまとめています。
6. 業務を棚卸しし、標準化する
人を増やす前に、いまの業務を書き出して、やめられる作業、まとめられる作業、手順をそろえられる作業を探します。特定の人にしか分からない業務を手順書や動画にしておくと、新人が早く仕事を覚えられ、休みや退職で業務が止まる心配も減ります。費用がほとんどかからないため、どのタイプでも最初に取り組みやすい対策です。
7. デジタル化・省力化投資で作業を減らす
紙やExcelでの管理をシステムに移す、配膳や仕分けに機械を使うなど、技術で作業そのものを減らす対策です。定型の入力作業は、RPA(パソコン操作を自動で実行するソフトウェア)に任せる方法もあります。導入費用は、省力化投資補助金などの制度で一部を補える場合があります(よくある質問で紹介します)。
浮いた時間を集めて必要な人数を見直す考え方は、省人化の解説で詳しく扱っています。
8. 外部委託(アウトソーシング)を活用する
給与計算などの事務、清掃、配送など、自社で抱えなくてもよい業務を専門の事業者に任せる対策です。社内の人手を、接客や製造など自社にしかできない仕事に回せます。委託先への指示や品質の確認にも手間がかかるため、任せる範囲と基準を先に決めておきます。
9. シフトと人の配置を見直す
忙しさが時間帯や曜日で大きく変わる職場では、過去の来客数や作業量をもとにシフトを組み直すと、人が足りない時間帯と余る時間帯の差を小さくできます。1人が複数の持ち場をこなせるように教える多能工化や、忙しい持ち場へすぐ応援に入れる体制づくりも、ピーク偏り型に効く対策です。
10. 現場の連絡と情報共有を速くする
広い売場や施設、複数のフロアで働く現場では、人を探して歩く、電話がつながるまで待つ、口頭で伝えた内容が次の勤務帯に届かない、といった時間が積み重なります。人数が同じでも、連絡の手間が減れば、応援や引き継ぎに回せる時間が生まれます。業務チャット、インカム、スマートフォンのトランシーバーアプリなどから、現場の動き方に合う手段を選びます。
スマートフォンをトランシーバーのように使えるアプリには、LINE WORKS ラジャーのようなサービスもあります。ボタンを押して話すと音声がグループに届いて履歴に残り、アドバンストプランでは発話を自動でテキストに変換できます。
業界別に優先したい人手不足対策
優先したい対策は業界で異なります。現場で連携する業種は連絡とシフト、規制の影響が大きい業種は業務の効率化が軸になります。
| 業界 | 人手不足の特徴 | 優先したい対策 |
|---|---|---|
| 建設 | 正社員の不足感が高い(66.0%)。2024年4月から時間外労働の上限規制が適用 | 6 棚卸しと標準化、7 デジタル化(工程・書類)、10 連絡と情報共有 |
| 運輸・物流 | 正社員の不足感が高い(運輸・倉庫65.6%)。ドライバーの時間外労働は年960時間が上限 | 7 デジタル化(配車・倉庫)、2 人物像と求人条件、10 連絡と情報共有 |
| 介護・医療 | 夜勤や少人数の時間帯がある。国がICT・介護ロボットの活用を推進 | 4 賃金・休日・働き方、5 評価と育成、7 デジタル化(記録)、10 連絡と情報共有 |
| 小売 | レジ応援やバックヤードとの往復など、時間帯で忙しさが変わる | 9 シフトと配置、10 連絡と情報共有、3 多様な人材 |
| 飲食・宿泊 | 非正社員の不足感が高い(飲食店57.7%)。スポットワーク・副業人材の活用がほかの業種より多い | 9 シフトと配置、3 多様な人材、6 棚卸しと標準化 |
| 製造 | 熟練者への依存、設備トラブル時のライン間の連携 | 6 棚卸しと標準化、7 デジタル化・省力化投資 |
表の不足感の数値は、帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」によります(飲食店は非正社員、ほかは正社員)。介護分野では、厚生労働省がICT機器や介護ロボットの活用促進、生産性向上ガイドラインの作成などに取り組んでいます(出典: 厚生労働省「介護分野の生産性向上」)。
物流では、農林水産省の令和5年度食料・農業・農村白書が、NX総合研究所の試算を紹介しています。2019年度と比べて、輸送能力が2024年度に14.2%、2030年度に34.1%不足する可能性があるという内容です(出典: 農林水産省「令和5年度 食料・農業・農村白書」)。
業界ごとの詳しい対策は、飲食店の人手不足対策、運送業の2024年問題、建設業の2024年問題、介護DXの進め方の各記事で紹介しています。
人手不足対策の進め方と失敗しやすい点
対策は、原因の仮説づくり、現場での確認、優先順位付け、小さく試して効果を測る、の4段階で進めると失敗を減らせます。
| ステップ | やること |
|---|---|
| Step1 タイプを仮に決める | 採用・退職・残業・シフトのデータから、当てはまるタイプを1つ選ぶ |
| Step2 現場で確かめる | 管理職だけでなく現場のスタッフにも聞き、1〜2週間ほど業務にかかる時間を記録する |
| Step3 優先順位を決める | 効果の大きさ、始めやすさ、費用で対策を比べ、2〜3個に絞る |
| Step4 小さく試して測る | 1部署・1拠点で試し、削減できた時間や残業時間で効果を確かめてから広げる |
効果は金額に換算するより、削減できた作業時間や残業時間、常勤の何人分の業務時間にあたるかで示すと、現場とも共有しやすくなります。2026年版中小企業白書で、ITツールの効果を高めるのに有効だった取り組みを見ると、最も多いのは現場からの意見収集です。段階的な導入、従業員への研修・勉強会が続きます(出典: 中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章第2節」)。
つまずきやすいポイント
| つまずき | 内容と対策 |
|---|---|
| 目的があいまいなままツールを入れる | 解決したい業務が決まっていないと、現場で使われず元のやり方に戻りやすくなります。どの業務の時間を減らすのかを先に決めます。 |
| 採用の強化だけに頼る | 働き手が減るなかで採用費だけを増やすと、費用に見合う成果が出にくくなります。定着や業務の見直しと並行します。 |
| 現場の声を聞かずに決める | 管理する側だけで決めた仕組みは、現場の実態に合わないことがあります。計画の段階から現場のメンバーに加わってもらいます。 |
| 施策を一度にいくつも始める | 採用・定着・デジタル化を同時に動かすと、現場の負担が先に増えます。順番を決めて一つずつ進めます。 |
よくある質問
人手不足と人材不足の違いは何ですか?
人手不足は仕事に必要な人数が足りない状態、人材不足は必要な知識や技能を持つ人が足りない状態を指すのが一般的な使い分けです。人数はそろっていても、特定の業務を任せられる人がいなければ人材不足にあたります。対策も、人手不足は採用や業務の見直し、人材不足は育成や専門人材の確保が中心になります。
人手不足対策に使える補助金・助成金はありますか?
省力化の設備やITツールの導入、賃上げと設備投資の組み合わせを支援する制度があります。代表的なのは、カタログから製品を選ぶ型と個別の設備導入に対応する型がある中小企業省力化投資補助金、ITツールの導入を支援するデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)、事業場内の最低賃金の引上げと設備投資を行う事業者向けの業務改善助成金(厚生労働省)です。補助上限額や公募期間は公募回ごとに変わるため、最新の公募要領をご確認ください。
外国人材の採用は人手不足対策になりますか?
働き手の層を広げる選択肢の一つです。2026年版中小企業白書で紹介されている調査では、外国人を雇用している企業の割合は宿泊業で約5割、製造業で約3割と、業種によって差があります。外国人は在留資格で認められた範囲で働くため、採用時には在留カードの「就労制限の有無」欄で、就労できるかどうかを確認します(出入国在留管理庁「『在留カード』はどういうカード?」)。言葉や生活面で相談できる体制もあわせて整えておくと、定着しやすくなります。
まとめ
人手不足は、働き手の減少という変えにくい要因と、採用・定着・業務の進め方という自社で変えられる要因が重なって起きています。対策を選ぶときに押さえておきたい点は次のとおりです。
- 求人倍率が落ち着いて見えても、正社員の不足感と人手不足倒産は高い水準が続いている
- 原因を採用難・離職・業務量過多・ピーク偏りの4タイプで見極め、効く対策を絞り込む
- 採用・定着の対策と、少ない人数でも回る業務の見直しを並行して進める
- 1部署・1拠点で小さく試し、削減できた時間で効果を確かめてから広げる
何から始めるか迷ったときは、まず1つの部署で、欠員の状況と退職理由、どの業務に時間がかかっているかを書き出してみてください。自社のタイプが見えると、10の対策のうちどれから手をつければよいかが絞り込めます。
現場どうしの連絡の手間を減らしたい場合は、音声でやりとりするツールも選択肢になります。スマートフォンをトランシーバーのように使えるLINE WORKS ラジャーも、その一つです。フリープランは0円で試せます(会話は40分で一度切断)。有償プランは30日間の無償トライアルがあります。